Mar. 21 〜 Mar. 27 2016

”Trump VS. Women!?”
トランプ VS. ウーマン



今週日曜はイースター・サンデー。 クリスチャンが家族で教会に出かけ、エッグ・ハンティングが行われ、 ニューヨークでは5番街では 趣向を凝らしたイースター・テーマのハットのパレードが行われる日であるけれど、 そんな中、またしても起こったのがテロ。パキスタンで最低65人の死者と300人の負傷者を出したこのテロは、 タリバンの自爆犯によるもの。
ヴァチカンでは、ローマ法王がブリュッセルで火曜日に起こったテロを受けて、愛と平和を呼びかけるイースター・ミサのメッセージを 送ったばかりであったけれど、そのブリュッセルのテロのせいで メディア報道の影が薄くなったのが オバマ大統領の 現職米国大統領としては88年ぶりのキューバ訪問。 それだけでなく、オバマ氏はテロが起こった直後に行われた野球の親善試合を観戦したことで、共和党側から顰蹙を買う羽目になったけれど、 アメリカのホームランド・セキュリティがフラストレーションを露わにしたのは、ブリュッセルのテロの実行犯のID及び、近々テロが起こる危険について アメリカ側が警告していたにもかかわらず、インターポールがそれに対応しなかったこと。
これについては、ヨーロッパ全体のテロ予算が アメリカ1国のテロ予算よりも遥かに少ないことに加えて、 アメリカ国内では ISISのトレーニングを受けて帰国したテロリスト、及び出国前に逮捕されているテロリスト志願者の数が 200人程度であるのに対して、ヨーロッパにはISISのトレーニングを受けて自国に戻ったテロリストの数が少なくとも7000人居ると指摘されていることもあり、 アメリカのメディアは同情的なポジションで報道を行なっていたのだった。




このテロを受けて、共和党大統領候補を争うテッド・クルーズが アメリカ国内のイスラム教徒居住地区の警備強化を訴えた一方で、 既に世界に16億人存在するイスラム教徒の旅行を含むアメリカ入国を一時的にでも禁じるポリシーを謳っているドナルド・トランプは、 米国内のイスラム教徒を、ナチス・ドイツ下のユダヤ教徒のように一定の居住地区に閉じ込める案についてインタビューで言及するなど、 その強行なテロ対策を打ち出していたけれど、これについてはニューヨーク市警察の署長、ビル・ブラッドレーが 「イスラム人居住地区に対する警備強化がテロ対策だと思っているのなら、テロというものを全く理解していない」と痛烈な批判を展開。
もう1人の共和党候補である ジョン・ケイシック、及び民主党候補のヒラリー・クリントン、バーニー・サンダースの2人は、 イスラム教徒に対する差別に反対の立場を明らかにしているのだった。

そんな中、今週物議をかもしたのが反トランプ勢力が打ち出した写真上左の選挙広告。 ドナルド・トランプ夫人であるメラニアがモデル時代に GQのグラビア用に撮影した写真に フィーチャーされているのが、 「メラニア・トランプに次のファースト・レディになって欲しくなければ、テッド・クルーズに投票するべき」という内容の ヘッドライン。
この広告は テッド・クルーズ陣営とは全く無関係であったものの、その背後で動いているのがテッド・クルーズと決め付けた ドナルド・トランプは 「そっちがそう出るなら、こちらもハイディ・クルーズの過去を暴いてやる」と、 テッド・クルーズの夫人、ハイディが過去にうつ病を患った際のエピソードを持ち出す構えを見せたことから、 既にアグリーを極めている共和党候補戦が、お互いの夫人に対する攻撃という新たな局面を迎えていたのだった。

今回もローブローで攻撃を仕掛けたのはトランプ側。 写真写りの悪いハイディと、エアブラシで肌がピカピカのメラニアの写真を並べて、 「これを見れば、過去を暴く必要などないのは一目瞭然」という支持者のツイートを、自分の728万人のフォロワーに対してリツイートする という行為に出たけれど、多くのメディアは「リツイートはツイートと同じ」として、 その稚拙な行為に批判的なリアクション。 テッド・クルーズも「本当の男は、女性を攻撃したりしない」とツイッターで反撃していたのだった。

その一方で、週末にはタブロイド誌のエクスワイアがテッド・クルーズが過去に5人の女性を相手に不倫をしたというスキャンダルを掲載。 この報道に唯一実名でコメントをしていたのが、トランプの元選挙参謀であったため、今度はテッド・クルーズ側が これをドナルド・トランプ陣営の差し金だと決め付けて、更にアグリーな舌戦を繰り広げていたのが今週。
でも後に、このスキャンダルは既にキャンペーンを打ち切ったマルコ・ルビオ陣営がずっとプロモートを試みては失敗していたネタであることが 判明。同スキャンダルについては クルーズ本人はもちろん、不倫相手と言われた女性全員がその関係を否定しているのだった。




ハイディ・クルーズのうつ病を示唆したトランプ側の攻撃は、女性だけでなく、うつ病に悩む多くのアメリカ人の間でも顰蹙を買っていたけれど、 トランプの女性蔑視発言には長い歴史があって、 先週には 反トランプを掲げる女性グループが、 トランプの女性に対するコメントを集めた写真上のビデオを発信。
加えてウェブサイト、”デイリー・ワイヤー”でも、このビデオに登場するコメントを含む。 トランプがこれまでに語った女性に対する7つのワースト・コメントを掲載しているけれど、 それはかなり恐ろしい内容なのだった。

1. “You know, it doesn’t really matter what they write as long as you’ve got a young and beautiful piece of ass.”
”若くて美しい女と寝れる限りは、メディアが何を書き立てようと構わない” エスクワイア誌のインタビューで語ったコメント。

2. “You have to treat [women] like shit.”
”女はクソみたいに扱わなければならない” NYマガジンのインタビューで語った、トランプが友人に言って聞かせたアドバイス。

3. “Look at that face. Would anyone vote for that?”
”あの顔を見てみろ、誰が投票したいと思うか?” 共和党予備選候補だったカイリー・フィオリーナについて語ったコメント。

4.“If I told the real stories of my experiences with women, often seemingly very happily married and important women, this book would be a guaranteed best-seller”
”もし自分が関係した女性、それも一見幸せな結婚をしていて、重要なポジションにある女性たちとの関係についての暴露本を出版したら、 絶対にベストセラーになるだろう” 自らの著書「アート・オブ・カムバック」の中で書いているセンテンス。

5.“Blood coming out of her wherever”
”彼女の何処かから血が出ている” 共和党予備選第1回ディベートのホストで、フォックス・ニュースの美女キャスター、ミーガン・ケリーが 「自分に不当に厳しい質問をした」という腹いせに、いかにもミーガン・ケリーが生理中で機嫌が悪かったかのように語ったコメント。

6. "A woman who is very flat-chested is very hard to be a 10."
”胸が平らな女性は どう考えても10(=完璧なルックス)とは見なされない” ラジオのインタビューで、女優の二コレット・シェリダンについて 語ったコメント。

7. “Nice tits, no brains.”
”ナイスなオッパイ、脳ミソ無し” ドナルド・トランプが自分の2人目の夫人であるマーラ・メイプルについて 語ったと言われるコメント。

こうしたコメントを受けて、女性だけでなく、男性の間でも、トランプが白人男性至上主義を復活させようとしていると指摘する 声が聞かれるけれど、今週にはマイリー・サイラスが そんなトランプに対して ”Trump can't stop won't stop saying stupid a** sexist s***!!!! Are you f****** kidding! ” というくだりで、団結した女性の強さをアピールするメッセージをソーシャル・メディア上で発信しているのだった。 (ちなみに最初の2つの*は共にS、次の3つの***は"hit"、3つ目の******は"ucking")



こんな状況なので現時点で女性投票者を対象としたウォールストリート・ジャーナルのアンケートによれば、 トランプにポジティブな意見を持っていると応えたのは僅か20%。ネガティブな意見を持っていると解答した女性は70%。 共和党支持者の女性だけでその数字を見ても、ネガティブな意見をもつ女性が41%となっているのだった。
その一方で、ヒラリー・クリントンとトランプのどちらを支持するかを女性投票者に尋ねた結果は、ヒラリー支持が60%、トランプ支持が31%。 ちなみに同じ数字を前回の選挙のオバマ大統領とミット・ロムニーで比較すると、オバマ氏が55%、ミット・ロムニーが44%となっており、 前回の選挙後に指摘された通り、オバマ氏は女性票、それもマイノリティ人種の女性票を集めて再選されているのだった。 というのも前回選挙でオバマ大統領に投票した白人女性は42%、これに対してミット・ロムニーは56%の白人女性票を獲得。
でもこの白人女性の支持をヒラリー・クリントンVS.トランプで比較すると、ヒラリー支持は48%、トランプ支持は38%。 2012年の大統領選挙の際には、トランプとは違った形の女性蔑視発言をして、多くの女性の怒りを買っていたミット・ロムニーの方が、 現在のトランプより28%も多い支持を女性から得ていたことになるのだった。

今週、私はアメリカ人の友達3人とメラニア・トランプ夫人について話す機会があったけれど、 男性1人を含む3人はこぞってメラニア夫人を嫌っていて、その理由は「夫があんなに酷い女性蔑視発言をしていても 平気でいられるなんて、女性としての誇りが無さ過ぎる」、「そんな女性がファースト・レディになったら、ここまでやっと盛り立ててきた 女性の社会的地位が転落する」というもので、メラニア夫人自身よりも、トランプの女性蔑視を容認する妻としての 姿勢が批判されていたのだった。

その一方で、3月14日にフェイスブックにポストされたのが、これまでで最もパワフルなアンチ・トランプ・メッセージと言われる写真上の ドナルド・トランプに対するオープン・レター。
この300ワードのレターの筆者は、ベストセラー作家で、”ヒューマン・オブ・ニューヨーク”のブログを手掛ける ブランドン・スタントン(32歳)。 ポストされて以来、8時間で71万2000回シェアされた同レターは、今ではその数が113万を超えて、ヒラリー・クリントンを含む 231万人が 「 いいね!」をしているだけでなく、7万以上のコメントが寄せられ、 フェイスブック史上、最も数多くシェアされたポストになっているのだった。

フェイスブックにアカウントが無い人のためにこのレターの全文を以下にコピーしたけれど、その内容を要約すると…
「私は政治的になるのを避けようとしてきましたが、貴方に対する反発は もはや政治の問題ではなく、モラルの問題です。 私はあなたの人種差別イメージのリツイート、人種差別のウソのリツイートを見てきましたし、あなたが白人至上主義者との関係否定に48時間を要した様子、 あなたが訴訟代を払ってやると言って支持者の暴力を煽った様子、テロリストの家族に対する拷問やその殺害を奨励し、 イスラム教徒を豚の血が滴る銃弾で処刑するプランを話す様子、貴方が難民をヘビと呼んで、「イスラム教徒は我々を嫌悪している」と 宣言する様子を見てきました。が、 ジャーナリストとして何百人ものイスラム教徒とインタビューをしてきた私が確証するのは、 嫌悪しているのは(イスラム教徒ではなく)あなただということです。
あなたこそが 自分の権力を追求するために 偏見や暴力を煽っているのです。あなたの言動はここ2、3ヶ月で変わることはないでしょうし、 あなた自身もずっと今のままであり続けることでしょう。」

このポストに対して寄せられたコメントは、個人的にとても興味深く読んだけれど、多くの人々が危惧していたのが 正しい情報、正確な報道に接する事が無く、ミスインフォームされた状態で、トランプに対して熱烈な支持をする人々の様子。
すなわち2004年に 大量破壊兵器がイランに存在したと信じて、ジョージ・W・ブッシュに投票した共和党支持者が、 今度はドナルド・トランプがそのビジネス手腕でアメリカを再び強大な国にすると信じているようであるけれど、 それとは別に、今日日曜付けの報道では トランプが日本を名指しで アメリカに対して国防費を支払わせる発言をしていたので、 日本国民とて この大統領選挙の茶番が他人事ではなくなってきているのだった。

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Humans of New York 3月14日 11:44
An Open Letter to Donald Trump:
Mr. Trump,
I try my hardest not to be political. I’ve refused to interview several of your fellow candidates. I didn’t want to risk any personal goodwill by appearing to take sides in a contentious election. I thought: ‘Maybe the timing is not right.’ But I realize now that there is no correct time to oppose violence and prejudice. The time is always now. Because along with millions of Americans, I’ve come to realize that opposing you is no longer a political decision. It is a moral one.
I’ve watched you retweet racist images. I’ve watched you retweet racist lies. I’ve watched you take 48 hours to disavow white supremacy. I’ve watched you joyfully encourage violence, and promise to ‘pay the legal fees’ of those who commit violence on your behalf. I’ve watched you advocate the use of torture and the murder of terrorists’ families. I’ve watched you gleefully tell stories of executing Muslims with bullets dipped in pig blood. I’ve watched you compare refugees to ‘snakes,’ and claim that ‘Islam hates us.’ I am a journalist, Mr. Trump. And over the last two years I have conducted extensive interviews with hundreds of Muslims, chosen at random, on the streets of Iran, Iraq, and Pakistan. I’ve also interviewed hundreds of Syrian and Iraqi refugees across seven different countries. And I can confirm? the hateful one is you.
Those of us who have been paying attention will not allow you to rebrand yourself. You are not a ‘unifier.’ You are not ‘presidential.’ You are not a ‘victim’ of the very anger that you’ve joyfully enflamed for months. You are a man who has encouraged prejudice and violence in the pursuit of personal power. And though your words will no doubt change over the next few months, you will always remain who you are.
Sincerely,

Brandon Stanton
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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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