Mar. 25 〜 Mar. 31, 2013

” Trending #HotJeses? ”

今週、アメリカで 大きく報じられていたのが、北朝鮮が 韓国と ”State of War”、すなわち戦争状態に入ったことを宣言し、 核ミサイルのターゲットにハワイ、グアム、アラスカを挙げて、アメリカをも挑発していたニュース。
米国政府関係者の間では、28歳の北朝鮮の新リーダー、金正恩(キムジョンウン)が、単に指導力を示そうとしているのか、世界の注目を集めようとしているのか、 彼がどの程度、世界状況を理解しているのかが 全く掴めないこともあって、警戒の姿勢は見せているものの、 核ミサイル攻撃については、それほど深刻には捉えていないのが実情なのだった。

その一方で、今週のアメリカはイースター、パスオーバーを迎えて、スプリング・ブレーク(春休み)に入っていたけれど、 この時期から人々が意識し始めるのが、水着を着るビーチ・シーズン。
このため、春の到来と共にニューイヤー・レゾルーションで挫折していたエクササイズを再開する人々は多いけれど、 そんな中で報じられたのが、「エクササイズの好き嫌いは 遺伝子に影響される」という医学レポート。
アイオワ州立大学の調査によれば、エクササイズによってエンドーフィンが脳に発生して、 達成感や、満足感、幸福感を得るケースと、単に疲れて、気分が落ち込むケースに別れるのは、 その50%が遺伝子の影響を受けているとのこと。 また同調査では、「エリート・アスリートは時に、肉体的に苦しめば、苦しむほど満足感を得るというマゾヒスト であるケースも少なくない」としているけれど、逆に運動が嫌いな人は、エクササイズだけでなく 食事を作るといった作業に至るまで、ストレスや体力の限界を感じることが少なくないという。
エクササイズを楽に行なうためには、自然の中で、音楽に合わせてするのが一番で、逆に 白、黒、赤といったインテリアの室内で行なうと、必要以上に激しく運動をしたと錯覚し易いとのこと。
でも、遺伝子の影響で運動が嫌いな人が 運動をしない方が良いかといえば、残念ながら答えはNoで、 エクササイズが好きでも嫌いでも、健康にメリットをもたらすことには変わりは無いようなのだった。



ところで、史上最高の売り上げを誇る書籍と言えば、文句無しにバイブル、すなわち聖書であるけれど、 今、アメリカでは そのバイブルが再び、トレンドとして脚光を浴び始めているのだった。
そのトレンドの大きな一端を担っているのが、3月からケーブル局のヒストリー・チャンネルでスタートしていた ミニ・シリーズ 「The Bible / ザ・バイブル」の高視聴率。 日曜夜の 最高視聴率番組になっている 「ザ・バイブル」は、 劇場公開映画並みのバジェットを投じて製作されたドラマ・シリーズで、最新の特撮技術を用いたもの。
特に、ジーザスを演じているディオゴ・モーガード (写真上、中央) は、そのルックスの良さも手伝って大人気を博しており、 ツイッター上では 「#HotJeses/ハッシュタグ、ホット・ジーザス」でトレンディングになっているほど。 全米各地では同番組のウォッチ・パーティーも行なわれており、 同シリーズは今日、イースター・サンデー(復活祭の日曜日)に 最終回を迎えるのだった。

「ザ・バイブル」のプロデューサーは、「サバイバー」等のヒットTVで知られるマーク・ブルネットと、彼の妻で、同シリーズの中で、 ジーザスの母であるマリアを演じている女優のローマ・ダウニー。
2人は、「ザ・バイブル」が、毎回1500万人前後の視聴者を獲得している理由について、 「新しいローマ法王が誕生して、カソリック教徒が そのルーツを意識し、信仰心を新たにしているため」と 説明しているけれど、実際にはアメリカでは 若い世代を中心に カソリック離れがどんどん顕著になり、 逆に 増えているのが Atheist / エイシエスト、すなわち無宗教の人々。
でも、バイブルが今、ポップ・カルチャーとして再浮上しているトレンドは顕著で、 例えば、ケーブル局のゲーム・ショー・チャンネルで、目下 最高視聴率を獲得しているのが、 聖書の中からクイズを出題する 「アメリカン・バイブル・チャレンジ」。
それ以外にも、ハリウッドでは既に バイブルがらみの映画が3本企画されており、いずれもアング・リー、クリストファー・ノーランといった 一流監督を起用したメガ・プロジェクトになっているのだった。



とはいっても、ハリウッドで バイブルがホットになるのは、これが初めてではなく、 ハリウッドの歴史上、最も大きな商業的なサクセスを収めた映画、すなわち 制作費に対する 興行売り上げが高いとされる2本の映画が、チャールトン・ヘストンがモーゼを演じて、1956年に公開された「The Ten Commandments / 邦題:十戒」と、 メル・ギブソン監督作品で、2004年に封切られた「The Passion of the Christ / 邦題:パッション」。
したがって、新ローマ法王が誕生した今年、再びバイブル・プロジェクトがハリウッドで浮上してくるのは 決して不思議ではないけれど、ハリウッドで ”ジンクス” と言われるのが、ジーザスを演じたアクターがキャリア・スランプに陥るというもの。 過去には、「Last Temptation / 最後の誘惑」でジーザスを演じた、ウィレム・デフォー、 前述の「パッション」の主演、ジム・カヴィーゼルなどが、その好例と言われているのだった。

アメリカでは、聖書を所有している世帯は何と80%。 またアメリカ人がホテルから最も頻繁に盗むアイテムと言われるのも聖書。
今やカソリック信者がローマ法王をツイッターでフォローする時代であるだけに、 メディアも 現在のバイブル・トレンドが、シリアスな信仰ベースなものではなく、禁欲の象徴と言えるジーザスを「ホット!」などと言ってしまうことからも 分かるように、身近でカジュアルなポップ・カルチャーとしてのものと 認識しているようなのだった。
カソリックの信仰のスタイルにしても、若い世代を中心に 本来カソリック教会が禁じている妊娠中絶、避妊、同性婚を肯定するといったものに なりつつあるのが実情。ことに同性婚については、アメリカの18〜34歳という若い世代の支持率が約77%にも達しており、 35〜65歳における38%という支持率を大きく上回っているのだった。

アメリカより遥かに伝統的な教えにしたがってカソリックを信仰しているのは、アフリカや南米の貧困諸国。 過去数年、これらの諸国で急速に、しかも若い世代を中心にカソリックが増えている理由の1つは、 地元政府の替わりに、カソリック教会が子供達の教育や医療を供給しているためで、 西アフリカのガーナでは、カソリック教会が担う 教育と医療の負担は、全体の60〜70%。
したがって、カソリック教徒が増えるのは当然の成り行きと言えるのだった。



ところでアメリカでは、今週、連邦最高裁が同性婚の審議に入ったことも大きく報じられていたけれど、 TVや映画、音楽といったポップ・カルチャーの影響で、ゲイ・ピープルに対する理解が、過去数年で急速に高まったアメリカでは、 今や同性婚を指示する世論が全体の過半数を超えるという新しい局面を迎えている段階。
でも法の専門家は、最高裁は同性婚を認めるには ”時期尚早”という姿勢を見せるだろうと予測。 その一方で、もう1つの同性婚の焦点となっている通称DOMA (The Defense of Marriage Act)は違憲とするだろうと見込まれているのだった。 DOMAはクリントン大統領がサインした法案で、「アメリカ合衆国は男女間の結婚以外は 婚姻と認めない」というもの。
この法案のせいで、同性婚が法的に認められている州で結婚したゲイ・カップルが、税金や相続といった問題で、 婚姻関係が認めてもらえず、不当に高額な相続税や、税金を支払う結果となっており、 法案にサインしたクリントン元大統領も、現在はDOMAを違憲とする側に回っているのだった。

最高裁の判断が下されるのは、2ヶ月ほど先であるけれど、 それ以外にも 移民法がここへ来て大きく変わりそうな気配を見せており、 アメリカが転換期を迎えていることは確かなのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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