Mar. 24 〜 Mar. 30,  2014

” Conscious Uncoupling "
"コンシャス・アンカップリング "


今週のアメリカでは、金曜にカリフォルニアで起こったマグニチュード5.1の地震のニュースもさることながら、 引き続き報道時間が割かれていたのが、行方不明になったマレーシア航空の捜索ニュース。
そしてクリミア情勢をきっかけに日に日に険悪になる米ソ関係にも、メディアが関心を注いでいたけれど、 その悪化する米ソ関係が少なからず影響を与えると懸念されているのがニューヨークの不動産事情。 現在新しいラグジュリー・コンドミニアムが次々と建設されているニューヨークであるけれど、 そんな高級コンドミニアムやタワー・ハウスのバイヤーの40%を占めるといわれるのが投資目的の外国人。 中でもロシア人が非常に多いのが実情。
実際のところ、マンハッタンで最高額のコンドミニアムを購入したのもロシアの大富豪ドミトリー・リボロフレフ。 名義こそは彼の大学生になる娘のものではあったものの、15 セントラル・パーク・ウエストのペントハウスを8800万ドル(約88億円)で 購入。彼以外にも、マンハッタンの中に複数の高額コンドやペントハウスを所有するロシアン・リッチは少なくないのだった。

しかしながらクリミア情勢をきっかけに、アメリカがロシアに対する経済制裁を与えた場合、 ロシア人のVISAに規制が掛って不可能になるのがアメリカにおける不動産購入。 ニューヨークで最大手の高額不動産ブローカー、ダグラス・エリマンの関係者は、 「クリミア情勢をめぐる米ソ関係の悪化を理由に、ロシア人バイヤーがペントハウス・ハンティングの NY旅行をキャンセルした」というエピソードをニューヨーク・タイムズ紙の 不動産セクションの記事で語っていたけれど、 これから続々と売りに出される見込みのタワー・ハウスやペントハウスは、ロシア人バイヤーを失った場合、 かなりの打撃を受けることが見込まれているのだった。


一方、エンターテイメントの世界では火曜日にアナウンスされたグウィネス・パルトローとコールド・プレーのクリス・マーティンの 離婚が今週最大の話題。 でも、離婚のニュースそのものよりも 世の中の人々が話題にしていたのが、アナウンスメントの中で グウィネス・パルトローが用いた「コンシャス・アンカップリング」という言葉なのだった。
アナウンスメントが行なわれたのは、グウィネス・パルトローのライフスタイル・ブログ、「Goop / グープ」において。 写真上、左のグウィネスの短いメッセージと共に、2人をフィチャーしたインスタグラム・フォト(写真上右)が添えられた 同ポストは、あっと言う間に大センセーションを巻き起こし、グープのサイトは 開設以来、初めてダウンしたことが 伝えられているのだった。

このアナウンスメントは、「グウィネス&クリスは 結婚生活を続けるためにこれまで様々な形で努力をしてきたものの、 結論として別れることに決めたこと」、「別れるとは言っても、2人は常に家族であり、2児の親として近しい関係で あり続けること」、「自分達は常にその関係をプライベートに保ってきており、”コンシャスにアンカップル”をして、 親権をシェアすることになっても、その状況には変わりが無い」という内容で ”グウィネス&クリス” という連名の記名。
これを受けて エンターテイメント・メディアは、こぞって 2人が「オープン・マリッジ(浮気を認可した結婚)であった」という憶測や、 「マクロバイオティックやヴィーガンといった特殊なダイエットを子供にまで 押し付けるグウィネスに クリスが不満を持っていた」等、様々な離婚原因の仮説を 展開していたけれど、 一般社会で トレンディングとなっていたのは グウィネスが用いた「コンシャス・アンカップリング」、 「コンシャスリー・アンカップルド」という 意味を成すようで、成さない言葉。 なので、今週は本当に何度と無く この言葉を聞くことになったのだった。
私の友人にしても、 2個パックのヨーグルトを切り離す際や、割り箸を切り離す際などに 「コンシャスリー・アンカップルド」と言ってふざけていたけれど、 メディアが指摘していたのは 「きっとグウィネスは、このアナウンスメントをするに際して、 コピーライターにお金を払って この言葉をクリエイトさせたに違いない」ということ。

通常アメリカでは、セレブリティが離婚を発表する場合、Divorce / ディヴォース(離婚)という言葉を使うケースは殆ど無くて、 ”Separate / セパレート”、 ”End / エンド” もしくは ”Come To End / カム・トゥ・エンド”、”No Longer Together / ノー・ロンガー・トゥゲザー” 等、 遠まわしな表現を用いるもの。 それでも「コンシャス・アンカップリング」というのは、あまりに耳慣れない表現である上に、 多くの人々にとって はっきり意味が把握出来ないとあって、 この不思議な言葉のチョイスが グウィネス・パルトロー&クリス・マーティンの離婚報道を 更に大きなものにしていたと言っても過言ではないのだった。


さて今日、3月30日付けのニューヨーク・タイムズ紙によれば、グウィネス・パルトローが「コンシャス・アンカップリング」という言葉を用いて離婚のアナウンスメントを行っていたせいで コスタリカでのバケーションが台無しになってしまったのが、「コンシャス・アンカップリング」のオリジネーターであり、サイコセラピストである キャサリーン・ウッドワード・トーマス。(56歳、写真上)
彼女は、元キャバレー・パフォーマーというユニークな経歴の持ち主で、2004年に出版した 「Calling in 'the One' / コーリング・イン・ザ・ワン」という 恋愛指南本が15万部を売り上げて以来、 コスモポリタン誌やグラマー誌といった女性誌で、恋愛アドバイザーとして活躍してきているのだった。

でもそんな彼女も、数年前に離婚をすることになり、その離婚について友人と語っていた際に、 友人の口から出てきた言葉が「コンシャス・アンカップリング」。
キャサリーン・ウッドワード・トーマスによれば、「コンシャス・アンカップリング」が意味するのは ”Low Stress Divorce / ストレス・レベルの低い離婚”、 ”Respective Separation / お互いに敬意を抱きながらの別れ”。
彼女は2011年から 「コンシャス・アンカップリング」 というネーミングのオンライン・ワークショップをスタート。 参加者は75分のセミナーに 297ドルを支払うというけれど、既に何千人もの人々が 彼女の 「ストレスを感じない離婚」のレクチャーを受けているのだった。

従って、多くの人々にとっては聞きなれない言葉であった「コンシャス・アンカップリング」も、実は 一部の世界では良く知られた言葉。 それだけに グウィネス・パルトローが自らのウェブサイトで この言葉を使ってアナウンスメントを行った際に、 キャサリーン・ウッドワード・トーマスの名前を出さず、あたかも自らのホリスティック・ドクターの指南であるかのように 言葉の注釈文をホリスティック・ドクターに書かせていたことは、本来ならばトレードマーク違反に当たるとも言える行為なのだった。


ニューヨーク・タイムズ紙の記事では、 「コンシャス・アンカップリング」 の反対の意味に当たる 「アンコンシャス・カップリング」 というコンセプトがあるとしたら、それは携帯の出会い系アプリ 「Tinder / ティンダー」や、 「Glinder / グラインダー」などを使って、深く考えずに 相手を見つけて デートや関係を結ぶことだと記載されていたけれど、 私もこの解釈には100%同感。

それよりも 最も一般的に人々が行っていると私が思うのは、 「アンコンシャス・アンカップリング」で、これは要するに 「関係の自然消滅」。 「何となく連絡を取らずにいたら、終わってしまった」 というような関係。 その一方で、一部の結婚願望が強い人々が行っているのが、「コンシャス・カップリング」。 すなわち意識的にカップルになろうとすることで、結婚やその後の家族計画を念頭に入れながら、 宗教、学歴、職業、収入、健康、ライフスタイル、家族構成など、条件が整った中から 相手を選んで、恋愛感情を高めようとするのがこのカテゴリー。
こうした人々は、ユダヤ教徒のみがメンバーとなっているJ-Date / ジェイ・デート(Jはジューイッシュ=ユダヤ教を意味するもの)、 キリスト教徒がメンバーの ”Christian Mingle / クリスチャン・ミングル” といった、結婚を前提とした シリアスな出会いを提供する オンライン・デート・サイトで相手に出会い、ジワジワと交際を深めていく傾向にあるのだった。

グウィネス・パルトローとクリス・マーティンに話を戻せば、2人はつい最近、 カリフォルニアのマリブに約14億円の邸宅を2人で購入したばかり。
NYポスト紙によればこの邸宅は、同じ屋根の下に暮らしながらも家の中が、完全に2世帯に分かれていることが報じられており、 子供を一緒に育てながらも、お互いが別の空間で暮らせるようになっているとのこと。
同報道が事実であれば、このハウジング・アレンジメントは離婚したカップルとしては 極めてユニークなもの。 もしこれが 子供が居る一般人カップルであった場合、別れたい伴侶と顔を合わせる事無く、 同じ屋根の下に暮らすことが出来るのなら、 特に離婚をする必要が無いのが実際のところ。
したがって 「コンシャス・アンカップリング」というのは、 確かに耳慣れない表現ではあるけれど、 グウィネス・パルトローとクリス・マーティンのケースでは 何となく その意味が納得出来る、 新しいパターンの離婚と言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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