Mar. 31 〜 Apr. 6,  2014

” Per Se, D. Ansel Bakery, Grade C? "
"ミシュラン3つ星レストラン &クロナッツ・ベーカリーの
不衛生スキャンダル!それでも食べたい?! "


今週からアメリカで開幕したのがメジャー・リーグ・ベースボールのシーズン。
でもニューヨークのホームチームは ヤンキーズ&メッツが共に2連敗の幕開けで、 「今シーズンもあまり期待が持てない」という印象をニューヨーカー&ニューヨークのスポーツ・メディアに与えていたのが実情。
そんな中、金曜にトロントで行われた ヤンキーズ第三戦に先発した田中投手については、 先頭打者にホームランこそは打たれたものの、7回を投げて勝利投手となり、 157億円ピッチャーの面目を保っているのだった。

それ以外に今週は、オバマ・ケアが3月31日のデッドラインまでに、当初目的としていた700万人以上の 新規健康保険加入者を獲得したことも 大きく報じられていたけれど、 ニューヨーク・エリアで週末にショッキングなニュースとして伝えられていたのが、 ”クロナッツ”で世界的なセンセーションを巻き起こしたドミニク・アンセル・ベーカリー(写真下)が、 市のヘルス・デパートメントによって営業停止処分にされたというニュース。



これが報じられたのは4月4日、金曜のことで、ドミニク・アンセル・ベーカリーを訪れた来店客が 店内のキッチンの床を這い回るネズミの映像を撮影して、YouTube上にポストしたのが事の発端。 このビデオのセンセーションがあっという間に広まり、市のヘルス・デパートメントが衛生上の問題を理由に 営業停止処分にしたというのがその経緯なのだった。

ドミニク・アンセル・ベーカリーと言えば、3月に最新のカルト・デザート、”クッキー・ショット”を発売したばかりで、 午前はクロナッツ、午後はクッキー・ショットの行列ができていたベーカリー。 そんな人気絶頂の段階での営業停止は、同店にとって大きなダメージになることは明らか。
ドミニク・アンセル・ベーカリー側は、NBCニュースに対して 「木曜(4月3日)に このビデオの存在を知ってから、直ぐにスタッフを総動員して 7時間掛けて店内を清掃、および捜索したけれど、ビデオに映っていたと思しき1匹のネズミしか見当たらなかった」 とコメント。来店客がネズミを持ち込んだ可能性を示唆していたのだった。
しかしながら、市のヘルス・デパートメントは金曜日の午後4時過ぎに同店を閉鎖。 ドミニク・アンセル・ベーカリー側では、「店は営業できなくても、クロナッツやクッキー・ショットを目当てにやってきた人々に 事情を説明するために、スタッフを配備することを明らかにしていたのだった。

昨今、ヘルス・デパートメントとのトラブルが話題になった人気スポットはドミニク・アンセル・ベーカリーだけでなく、 数週間前に、ニューヨークで かなりの大報道になっていたのが、 タイム・ワーナー・センター内に2004年にオープンしたミシュラン3つ星レストラン、”Per Se / パー・セ”が、 42もの衛生上の違反を抱えて、市のヘルス・デパートメントから 劣悪レベルとみなされる ”グレードC ”のレイティングをされかけているというニュース。
ニューヨーク市では、2011年からヘルス・デパートメントの調査員がレストランの視察を行い、衛生管理をチェックし、 それをA, B, Cというグレードで評価するシステムを導入。 レストラン側は、来店客の目に付く位置にそのグレードを表示することが義務付けられているのだった。
写真下、上段一番右のパー・セの入り口の写真の矢印で表示されている「A」の文字がそのグレードのサイン。 ニューヨークでは、一流レストランから、小さなカフェ、ピザやベーグルの専門店まで、このグレードのサインを表示していて、 グレードB、Cのサインを店頭に表示することが 売り上げ低下に繋がることが指摘されて久しい状況なのだった。



パー・セはナパのヨントヴィルにあるレストラン、”フレンチ・ランドリー”のサクセスで、一躍アメリカのトップ・シェフの仲間入りを果たした トーマス・ケラー(写真上)のレストラン。僅か16テーブルしか無い店内は、1晩に1回転しかしないポリシーで、 ランチもディナーも、同じテイスティング・メニューをサーブするのみ。
オープン当初150ドルだったテイスティング・メニューのお値段は 今や310ドルで、物価をはるかに上回るペースで 上昇しているのだった。

そのパー・セは、レストラン・インサイダーによれば、過去にも何度かヘルス・デパートメントから違反の多さで警告を受けてきた存在。 前回、多数の違反が問題になった際にも、”グレードC ”になりかかったというけれど、関係者が電話1本で それを ”ペンディング”、すなわち保留のステータスにさせて、再度の視察で”グレードA ”を維持したという。
現在も、パー・セは ”ペンディング”のステータスではあるものの、今回はその違反の多さが メディアに大きく取り沙汰されており、レストラン側は新たな視察で衛生上の問題が無いことを立証するとしているのだった。
ちなみに、パー・セの違反事項の内容は、食材を扱うエリアに手を洗う施設が無いこと、食材の保存がヘルス・デパートメントが定めた 温度で行われていない、といったもの。

NYポスト紙によれば、中には料理のクォリティを維持するためにあえてグレードBに甘んじるレストランもあって、 その好例が 寿司レストランの ”Ushiwaka Maru / 牛若丸”。 同店はシェフがグローブをするのを拒んで、素手でお寿司を握るためにグレードBになっているとのこと。
これを受けて、同店を大評価するレストランターで、長寿人気レストラン ”グラマシー・タバーン”や、大人気のバーガー・チェーン ”シェイク・シャック”の経営で知られる ダニー・メイヤーは 「グレードBに惑わされずに、牛若丸に足を運ぶべき」 とツイートしたことが伝えられているのだった。
レストラン関係者の間でもヘルス・デパートメントの視察や、グレードのシステムに疑問を投げかける声は多く、 例えば視察時に運悪く 店内にハエが飛んでいただけで、衛生コード違反とみなされてしまう厳しさ。

パー・セがグレードC並みの違反を抱えていたことについては、先日の第1回目ディナー・クラブでも、 話題に上っていたけれど、この2つの不衛生スキャンダルで どちらが同情に値するかと言えば、 私にとってはドミニク・アンセル・ベーカリー。
というのも、クロナッツは100個売ったところで 500ドルの売り上げ。 でもトーマス・ケラーのパー・セにとっては、500ドルという金額はたった1人の来店客から得られる売り上げ。 310ドルのコースを さほど高くないワインと一緒に味わった場合、チップとタックスを加えると、1人500ドルになってしまうのだった。 もちろんワインが高額である場合、その金額が2倍になっても全く不思議ではない状況。
確かにヘルス・デパートメントの視察は厳しすぎる点はあるものの、NY市内の87%のレストランがグレードAを獲得していることを考慮すれば、 パー・セのようにNYで1、2を争う高額レストランが、衛生上の問題をクリアしていないというのは 逆におかしいとさえ思うのだった。

私はドミニク・アンセル・ベーカリーについては、オープン時からフェイバリットのセクションでご紹介してきたこともあって、 個人的には”ひいき”にしてきた存在であるけれど、 今回の営業停止処分が 別の意味でもショックだったのは、実は ディナー・クラブのイベントの一環として、 ”クロナッツ・ティー・パーティー” を企画していたため。
とは言っても企画しているのは、まだまだ先の6月のこと。 なので、それまでに 今回問題となったネズミの映像が脳裏から 消えてくれることを祈るばかりなのだった。

Update / アップデート: ドミニク・アンセル・ベーカリーは、4月8日火曜日から営業を再開しました。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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