Apr. 5 〜 Apr. 11 2010




” Does Hard To Get Game Work?”


今週のアメリカで最も大きく報じられていたニュースとしては、ウェストバージニア州ナオマの炭鉱の地下坑で4月5日に起きた爆発事故があるけれど、 週末になって確認された死者の数は29人。この数は 1972年のアイダホ州、ケロッグで起こった アメリカ史上最悪の炭鉱事故での91人に次ぐ 犠牲者数となっているのだった。
安全管理問題が野放しになっていた同炭鉱については、これから事件の詳細の調査が行われることになっているけれど、 それと同時に週末に世界中に衝撃を与えた惨事が、ポーランドの大統領専用機がロシア西部に墜落し、 レフ・カチンスキ大統領夫妻、政府高官、軍事関係者などの要人を含む 97人が死亡したというニュース。(写真左)
大統領専用機のパイロットは 事故当時の深い霧のため、ロシアのコントローラーからモスクワか ミンスクへの着陸をアドバイスされたものの、 これを拒否してスモレンスク空港への着陸を強行しようとしており、現時点ではそれが事故原因と見られているのだった。
人種の坩堝であるニューヨークでは、様々な国の事故や災害が起こる度に、ニューヨークにあるその国々のコミュニティが メディアにクローズアップされるけれど、今回の事故でも然りで、ニューヨークのポーリッシュ(ポーランド人)・コミュニティが協会のミサで 大統領の死を悼む様子や、国旗に黒いリボンをつけて喪に服す様子はTVやペーパー・メディアで大きく報じられているのだった。

スポーツの話題では、開幕したばかりのメジャーリーグよりも 今週 大きく報じられていたのが、タイガー・ウッズのカムバック・トーナメントとなった マスターズ。でも蓋を開けてみれば タイガーに集まった注目と関心を見事にさらっていったのが、決勝ラウンド2日間に 目覚しいプレーを見せたフィル・ミケルソン。通算16アンダーで4年ぶり3回目のマスターズでの勝利を飾った彼は、 妻と母親が共に乳がんと戦っているという状況で、彼は乳がんチャリティのシンボルであるピンクのリボンをフィーチャーしたゴルフ・キャップで トーナメントをプレーしていたのだった。
ゴルフをしない人々の間では、ゴルファーと言えば タイガー・ウッズの知名度が圧倒的であるけれど、 実際にゴルフをプレーして、PGAツアーに関心があるアメリカ人の中では 恐らく最も人気が高いプレーヤーと言えるのがフィル・ミケルソン。
タイガー・ウッズの不倫問題からのカムバックが大きな話題と物議をかもした今回のマスターズであったけれど、 彼が4打差の4位タイに甘んじた一方で、 名実共に家族思いで知られるフィル・ミケルソンが、 がんと戦う妻と母親のために勝利を勝ち取り、体調の都合で 最終日にやっと夫のプレーを見守ることが出来た夫人と喜びを分かち合っていた姿は、 タイガー・ウッズ・スキャンダルとは180度異なる 美しい夫婦愛の光景となっていたのだった。

そのタイガー・ウッズは、ギャラリーには至って暖かく迎えられていたけれど、彼が雇ったボディ・ガード達は 不倫相手の愛人達がギャラリーに混じってトーナメントに現れないようにと、過敏なまでに目を光らせていたことが伝えられていたのだった。
あるブロンドの若い女性などは、 いきなりタイガーのボディ・ガードに 「Are you a stripper? / ストリッパーですか?」と不躾な質問をされた上に、 ボディガードが持ち歩いていた愛人の顔写真との照らし合わせをされて、当然のことながら気分を害したとコメントしていたのだった。


ところで今週のニューヨークは初夏のような気候で、私もセントラル・パークでテニスをしたら、早速日に焼けてしまったけれど、 人間心理というのは不思議なもので、冬の寒い季節は 自然に出不精になるけれど、暖かくなると途端に外に出るのが楽しくてたまらなくなるし、 日が長くなるのを感じるのは 夜遊び願望を強くするもの。
それと同時に、コートを脱いで薄着のファッションが楽しめる季節になるので、気分がオープンになる人も多いけれど、 多くの”シングル・シングル”、すなわち 独身で特定の交際相手が居ない人々が最も活発にデートをするようになると言われるのが、 今の季節から夏にかけて。
そのせいか、ここへ来て途端にデートの回数が増えてきている女友達も居たりするけれど、 先日、その女友達とのディナーで話題になったのが、「 Hard To Get Gameをプレーするべきか?」という問題。

「Hard To Get Game」というのは、主に女性が自分にアプローチしてきた男性に対して行う行為で、 その名の通り 「簡単に手に入らない女性」であることを演出して、相手の男性のチャレンジ精神を煽って、 男性の欲望・願望を高めてから 女性側に有利に交際を進めようとする プロセスのこと。
このHard To Get Gameの典型的な手法としては 以下のようなものが挙げられているのだった。


Hard To Get Gameは、出会いが恋愛に発展する前の、精神的駆け引きの段階で行われるもの。
どんなに相手の事が気に入っていても、直ぐに飛びつかず、相手をじらして、翻弄して、自分に夢中にさせようとするもので、 こうすることによって、女性側は男性に追い求められる存在になろうとしている訳であるけれど、 男性側にしてみれば こうした行為は 自分に 気が無いのか?、それとも その気があってHard To Get Gameをプレーしているのか?、 見分けがつき難いものであったりする。
アメリカのシングル女性が Hard To Get Gameをプレーするようになったのは、恋愛専門家のアドバイスや、 恋愛のハウツー本の影響だと言われており、こうした恋愛アドバイスやハウツー本によれば、古代から狩猟が役割だった男性にとって、 恋愛の醍醐味はハンティングの部分。すなわち獲物を見つけてそれを追いかけて捕まえるスリルが最もエキサイティングであると考えているという。 このため、「簡単に手に入る女性のことは直ぐに飽きてしまう」、「一度手に入った女性に対してはスリルを感じない」傾向にあると分析しているのだった。
なので、女性達は Hard To Get Gameをプレーして、なかなか手に入らない獲物としての自分を装うのが、 男性に捕まえてもらえる 最善の方法というのが こうした説。。
でも、Hard To Get Gameは あまりやりすぎると、せっかくの男性との出会いを台無しにしてしまう場合があることも指摘されており、 どこかの時点で自分も相手に興味がある意思表示をしなければならないことは、紛れも無い事実なのだった。

さて、女友達との会話で どうしてHard To Get Gameが話題になったかと言えば、 そのうちの1人の長身美女が 最近、パリからNYに来たばかりの フランス人男性とデートを始めたものの、 フランス人男性が レストランでのディナーに連れて行ってくれないことをぼやいたのがきっかけ。
彼女と彼は、3回ほどデートをしていて、最初がカフェでのコーヒー、ワインバーで チーズ・プレートをオーダーして、 ワインを飲みながら、長時間 語り合ったのが2度目のデート、そして3度目は彼が彼女のアパートにシャンパン2本を持って やってきたというけれど、私の女友達が この時点で次のデートでは「絶対にレストランに行きたい!」と言ったところ、 男性は困り果ててしまったという。

というのも、まず彼はニューヨークに来たばかり。しかも彼女とも出会ったばかりで、彼女をどんなレストランに連れて行って良いかが分からないということ。 次に、パリではカップルでも友達同士でも レストランに行くよりも、家を訪ねるのが典型的なハングアウト(一緒に時間を過ごすこと)であるということ。
これについては私も 思うところがあって、以前パリで知り合った日本人女性や、パリに移住した以前のフランス語のクラスメートなどが、 パリジャン&パリジェンヌはレストランではあまりディナーをしないことを話していて、 ナイト・ライフはレストラン・ダイニング 1つをとってもニューヨークの方がパリよりずっとリッチで、派手であると聞いていたのだった。
なので、2月までパリジャンだった その男性にしてみれば、ニューヨークのライフスタイルを デート相手にいきなり押し付けられて 対応に困ってしまうのは よく理解できることなのだった。

一方の 私の女友達は長身美女とあって 、男性にディナーに連れて行ってもらうなんて当たり前。
アメリカ人男性というのは、ここへ来てリセッションで若干ケチになってきているとは言え、「デートは男性が支払うべき」 という 概念はヨーロッパの男性より遥かに強い上に、 ” デート ” をするのならばディナーに連れて行くというのも通常の概念。 これがヨーロピアンになると、まるでオンラインのデート・サービスで出会った者同士のように、 まずコーヒーを飲みながら語り合うのがファースト・デート。このことは、時にアメリカ人女性からはケチに思われがちな習慣なのだった。
彼女によれば、彼に そんな要求をつきつけたのは 「本当に私と付き合いたいのだったら、デートでディナーに連れて行ってくれるのは 常識以前のこと。それを相手に対して教育しなければ・・・」ということだったけれど、 「次のデートは絶対にレストラン!」と言われて困った男性側のリアクションというのは、 「これって、アメリカ女性が好むHard To Get Gameなの? それともレストランに行くことがそんなに大切なの?」という 疑問であったという。

彼女はこの疑問に かなり頭に来たそうで、「自分がやりたい、したいと思っていることをさせてくれる程度の 愛情が相手にあるかをチェックしているだけで、Hard To Get Gameをしている訳じゃない!」と言っていたけれど、 私に言わせれば、彼女の要求というのは相手にとってはHard To Get Game以上のものとして受け取られているように思えるのだった。
というのも、男性は女性より習慣性の強い生き物。なので、新しい環境に馴染む順応力は女性より遥かに劣る上に、 自分のライフスタイルを変えるのも苦手な生き物。したがって、「ここはニューヨークなんだから、ニューヨークの男性と同じように 女性とデートするべき」と言ったところで、そんなセオリーは通用しないもの。
しかも、2人は未だ知り合ったばかりで お互いの間に絆も愛情も育っていない状態。 ある程度 長く付き合っている者同士が、「これだけはどうしてもやって欲しい」とリクエストするのとは訳が違うのである。
もし私がその男性だったら、自分を曲げて、やりたくないことを やらないと付き合って行けない女性とは 早いうちに別れて、自分のライフスタイルで付き合える女性を 探すことにエネルギーを注ぐように思えるのだった。

しかも、訊いてみれば この男性は既に36歳。20代の未だ恋愛に夢や希望を抱いているうちであれば、 好きになった女性のために自分を変えてみようかと思い立って、結局はダメになっても、 とりあえずそれをトライするだけのエネルギーや楽観的な部分が残されているけれど、 30代になる頃には男性側も 自分にはそんな ハイメンテナンスな女性に合わせていくだけのエネルギーや 時間、時に財力が無いことをわきまえるものなので、利口な男性であればあるほど あっさり彼女を諦めるように思えるのだった。

結局この2人は、彼女のアパートでの3度目のデートの際に、翌週の木曜にディナーに行くという約束をしたというけれど、 私達がこの話をしていた水曜の夜、すなわちディナー・デートの前夜になっても、彼からは 彼女のところに一切の連絡が来ていなかったのだった。
その場に居た別の女友達は「今度は彼の方がHard To Get Gameをプレーし始めたんじゃない?」と 笑えない冗談を言っていたけれど、実際その後、相手から電話が来なくなって、彼のことをばかりを考え始めたのは私の女友達の方。
そもそも、フランス語を習い続けている彼女にとってはフランス人のボーイフレンドというのは願ったり叶ったりの存在。 しかも、彼はルックスも 彼女にとってかなり好みだったとのことで、散々ディナーに固執した彼女だったけれど 今週末には逃がした魚は大きいかも・・・と後悔をし始めている状態なのだった。

でも、私が今日このコラムにHard To Get Game について 書くことにしたのは、今日になって女友達から舞い上がったような携帯メールが ディナーに居合わせた3人宛てにCCで届いて、彼が遂に電話をしてきて、レストランではないけれど、彼女のアパートで デートすることになったと知らせて来たため。
結局のところ、Hard To Get Gameで上手だったのは彼の方で、私の友達はじらされて、心配させれられた挙句、 相手の要求を呑むことになってしまった訳なのである。

一部の恋愛専門家によれば、Hard To Get Game は 全く役に立たない恋愛のストラトジーで、 忙しいふりをしたり、電話を無視して相手の出方を伺っている方が、女性の相手に対する気持ちが必要以上に高まってしまうことが 指摘されているのだった。
なので自分がコールバックを控えているにも関わらず、男性が再び電話を掛けてきてくれようものなら、 女性の方が 自分を追いかけてくれている男性よりもずっと胸が高鳴る状態になっているのは非常にありがちなこと。
また恋愛のウェブサイトでは、Hard To Get Game をプレーしたがる女性ほど 一度男性を好きになってしまうと周囲が見えなくなってしまうほど、その男性との恋愛が中心で生活が回ってしまうことも 指摘されていたのだった。
その一方で、複数のウェブサイトがふれていたのが 多くの男性は自分の世界や価値観を持って、 それを追い求めている女性に魅力を見出すもので、自分に愛情が一心に注がれている状態は息苦しく感じるだけでなく、 そういう女性には 直ぐに飽きてしまうということ。
したがって女性が Hard To Get Game をサクセスフルに演じる方法と言えるのは、沢山のことに興味を持って、沢山の友達を持って 自分を忙しくしていること。 そんな風に忙しい女性の時間をどうやって自分のために割いてもらえるようにするか?を男性側に 考えさせるのが、女性にとっての 正しい Hard To Get Gameのプレーのようである。





Catch of the Week No. 1 Apr. : 4月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Mar. : 3月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Mar. : 3月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Mar. : 3月 第 2 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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