Apr. 7 〜 Apr. 13,  2014

” Power of Eye Marketing ”
目で物が売れる、自分が売り込める!?
アイ・コンタクトのマーケティング・パワー


今週のアメリカで かなりの報道時間が割かれていたのが、現在南アフリカで行われているオスカー・ピストリウスの殺人容疑裁判のニュース。
ブレード・ランナーの異名を持つ元オリンピック陸上選手の彼が、ガールフレンドでモデルのリーヴァ・スティーンキャンプを 自宅のバスルームで射殺したニュースは、世界中で大きく報じられたけれど、 今週証言台に立った彼は、あくまでリーヴァを不審侵入者と勘違いしたために起こった事故だと 涙ながらに証言。 しかし、アメリカのメディアでは 彼の証言に矛盾点が多いことから、 精神的に起伏の激しい彼が、ガールフレンドを故意に射殺したという見方が大半を占めているのが実情。

その一方で、4月15日の確定申告締め切りを控えて、週末には公開されたのが オバマ大統領夫妻の申告内容。 それによればオバマ家の2013年の年収は、48万1,098ドルで、日本円で約4800万円。 そのうち税額は 9万8,169ドルで、税率は20.4%。また大統領夫妻は年収の12.3%に当たる5万9,251ドルを 32のチャリティ団体に寄付していることが明らかになっているのだった。
ちなみに、オバマ夫妻の年収は2012年の60万8,611ドルに比べて26.5%ダウン。これは2012年には 夫妻に出版した児童書の著作権収入があったためで、それが2013年には入っていないことが年収ダウンの要因と説明されているのだった。


さて、今週報じられたニュースで 私が個人的に最も面白いと思ったのは、メジャー・ブランドのシリアルの箱に フィーチャーされるキャラクターの目線に関する調査結果。
この調査を行ったのは、コーネル・フードアンド・ブランド研究所で、同機関が86のシリアル・ボックスにフィーチャーされている キャラクターについて調べた結果、子供用のシリアル・ボックスにフィーチャーされているカートゥーンのキャラクターは 約9.6度目線が下がっているのに対して、大人用のシリアルにフィーチャーされるキャラクター、主にスポーツ選手は、平均で0.43度上がった目線、 すなわちほぼ真っ直ぐ前を向いていることが 明らかになっているのだった。

その理由は、メジャー・ブランドの子供用のシリアルが置かれているスーパーマーケットの棚の高さは、通常床から58cmの位置。 そして大人用のシリアルが置かれているシリアルの棚の高さは、床から122cm程度の位置。
デパートの売り場でもエスカレーターの傍のように、トラフィックが多いところに 人気ブランドやメジャー・ブランドの売り場が位置するのと同様で、 スーパー・マーケットの棚でも、最も買い物客の手が届き易い高さの棚に商品を納めてもらえるのは やはりメジャー・ブランド。 シリアルの場合ならば、ケロッグやジェネラル・ミルズといったブランド。 このため、ブランド側では自社製品が納められる棚の高さを把握しているため、それぞれのターゲットとする客層と アイ・コンタクトをするように シリアル・ボックスにフィーチャーするキャラクターの目線をデザインしているのだった。
すなわち、それほどまでに物を売るのに威力を発揮するのがアイ・コンタクト。

アイ・コンタクトというものは、自分が相手に関心を注いでいることを示す行為であり、 セールス・パーソンにとっては最も大切と言われる販売行為のファースト・ステップ。
マクドナルドのマニュアルでも、接客のファースト・ステップはまずアイ・コンタクト。 チップやコミッションで収入が決まる職業でも、非常に大切と言われるのが客とのアイ・コンタクトなのだった。
例えば、私は以前ストリッパーのドキュメンタリーを観たことがあるけれど、 彼女らが高額のチップを受け取るために最も大切と語っていたのがアイ・コンタクト。 男性客にとって、女性の目なんてストリップ・クラブまで足を運ばなくても いくらでも眺められるけれど、 ”トップレスの美女が自分を見つめている=自分に関心を注いでいる” というのが、 男性客にとって高額チップに値する満足感であり、ファンタジーをそそる部分であるようなのだった。

実際のところ、人間というのはアイ・コンタクトをしただけで心拍数がアップするケースが多いとのことで、 それは恋愛感情で時めいている場合もあれば、相手の威圧感を感じて ストレスがそうさせている場合もあるのだった。



そのアイ・コンタクトについては、国やカルチャーによって心地好い長さがあるようで、 最もアイ・コンタクトの時間が長いといわれるのはアラブ諸国の人々。 逆に最も短いと言われる国の1つが日本で、アジア諸国も同様に短め。
アメリカ人は、会話をしている時間の65%のアイ・コンタクトが理想的と見なされることが調査の結果、明らかになっているのだった。 もちろんこれは 日本人よりも長い時間で、私が日本に一時帰国をする度に感じることの1つが、 やはり日本人はあまりアイ・コンタクトをしないということ。

私はアメリカに長く暮らして、アイ・コンタクトの時間がアメリカ人並みに長くなっているせいで、 時々起こるのが、アジア人とばかり付き合っている男性、所謂 ”アジ専(アジア専門の略)”の 男性に 気があるのでは?と思われてしまうこと。 これは彼らが日ごろ相手をしている女性より、私のアイ・コンタクトの時間が長いために 起こると思われるけれど、確かに相手を見つめるという行為は恋愛感情の表現には非常に有効。
スピード・デーティングのように短時間に自分の印象をアピールするオケージョンでは、 何を話したかよりも、どれだけアイ・コンタクトが長かったかで、相手が自分を覚えているかが決まると言われているのだった。

そのアイ・コンタクトは、人間の印象に強い影響を及ぼすことから、 さまざまな機関が研究を重ねているもので、昨年明らかになったのが アイ・コンタクトでは 最初から意見が違う人間の考えを変えさせることが出来ないだけでなく、 やり方によっては敵意を掻き立ててしまうということ。
さらに、意見が異なる者同士が相手を説得にかかる場合、 正面から見据えるよりも、斜めの目線で会話をした方が 会話がスムーズに続き易いことも明らかになっているのだった。


要するに、人間は目線の使い方によってはコミュニケーションでイニシアティブを握ることも出来る訳であるけれど、 やはり大切なのが、オケージョンによる使い分け。 上は その視線の動かし方の基本的なトレーニング・マニュアルなのだった。

ビジネス・ミーティングの場合、両目を見て、目をそらす場合に相手の額を見る、 すなわち視線を落とさないのが大切なポイント。
でもそれが社交のオケージョンの場合は、視線を若干落とすのが普通。 とは言っても男性でも、女性でも、相手の唇を凝視することは、欧米では相手にキスしたいと思っているメッセージだと思われるので、 勘違いされたくない相手に対して、唇を見つめる行為はご法度。

逆に相手に対して 性的に惹かれているシグナルを送りたいと思う場合は、視線をさらに落としてボディに注ぐのが一般的。 女性の場合、男性の首元や肩、腕など、男性の場合は女性の胸元に視線を落とすのがそのシグナル。 会話中に相手の身体や手に触れる行為よりも、目線によるシグナルの方が 自分が相手に性的に惹かれていることを窺わせるための 遥かに有効な手段として、専門家の間では認識されているのだった


私の意見では、世の中には比較的長い時間アイ・コンタクトをしていても心地好いと感じる人が存在するもの。 そして、そういう人は やはり人間的に魅力がある人が多いというのが私の感想。
また短いアイ・コンタクトでも、人の心に深く入ってくる視線を注ぐ人というのも存在していて、 そうした目のパワーを持つ人というのは、やはり人気があったり、成功している人が多いと思うのだった。

昨今では、目の色もコンタクト・レンズで変えられる時代ではあるけれど、 アメリカ社会におけるアンケート結果では、青やグリーンの目よりもブラウンの目の方が、信頼され易いことも 明らかになっているのだった。

ところで 今週裁判で証言したオスカー・ピストリウスは、その証言の初日に 傍聴席に座っていた 被害者 リーヴァ・スティーンキャンプの家族を真っ直ぐ見据えながら、 語り始めたことが伝えられているけれど、 アイコンタクトというのは、自分の言うことに信憑性を持たせるカモフラージュとして頻繁に用いられる手段でもあるのだった。
実際に ウソをついている人間、それもウソの常習犯の方が、ウソをついていない人間よりも アイコンタクトの時間が長いことは、既に研究結果として発表されていること。 この理由については、ウソをついている人間が後ろめたさを隠そうとしているのに加えて、 相手が自分のウソを信用しているかを分析しているためと説明されているのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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