Apr. 14 〜 Apr. 20 2008
” Are You Toxic? ”
今週のニューヨークはで最も大きく報じられていたのは 言うまでも無く 4月18日から 今日、20日の日曜までニューヨーク入りし、
ロックスターのような歓迎を受けていたローマ法皇、ベネディクト16世のニュース。
その今回のローマ法皇の訪米で 最も意義があったと言われたことの1つが、
ベネディクト16世が、カソリック神父に性的虐待を受けた被害者達に対面したことで、
アメリカでは 子供への性的虐待を行ったカソリック神父の数は分かっているだけで4000人以上、被害者数は1万人を越えていることが報じられているのだった。
この被害者による訴訟で アメリカのカソリック教会は何億円もの慰謝料を支払っているだけでなく、
信者を減らす結果となっており、今回の訪米で ベネディクト16世がこの問題と向き合ったことは、
高く評価されていたのだった。
私が個人的にローマ法皇訪米の報道で面白いと思ったのは、TVに コメンテーターとして登場したカソリック教会の人間が
「ベネディクト16世がローマ法皇に選ばれた直後は、多くの関係者が失望したものだった」などと オープンに語っていたことで、
きれい事だけ並べる教会のイメージとは異なっていたことだった。
それと同時に、私はローマ法皇というのは諸外国を訪問する度に、その国を祝福する意味で 降り立った直後に地面に接吻するのが
習わしなのかと思っていたけれど、これはベネディクト16世の前のヨハネ・パウロ2世のみが行っていた
独特の”パフォーマンス” であったのだそうで、ベネディクト16世の到着は 法皇が飛行機のタラップを降りる足取り同様、
かなり坦々としたものであった。
でも法皇がニューヨークに到着してからの マンハッタン内の交通規制と渋滞はかなりのもので、
友人のカソリック信者でさえ 「ポープ(ローマ法皇)の滞在は2日が限度」と こぼしていたのだった。
それ以外で報じられていたのが、現在建設中の新ヤンキー・スタジアムに、ボストン・レッドソックス・ファンの
建設現場作業員がレッドソックスのユニフォームをコンクリートに混ぜてスタジアムに埋め込んだことが発覚し、
それを掘り起こしたというニュース。
これはユニフォームを埋めた作業員が、得意気に「ヤンキー・スタジアムにレッドソックスの”呪い”を埋めた」 と語っていたことを
ニューヨーク・ポスト紙が報じたことから発覚した事件で、作業員は「あくまで 冗談でやった」と全く罪の意識は無いという。
まだ彼を刑事起訴するかどうかは明らかにはなっていないものの、コンクリートを掘り起こしたダメージを請求する民事訴訟が
起こされることは確実視されているという。その一方で、埋められていたレッドソックスのデヴィッド・オーティスのユニフォームは
Eベイでオークションに掛けられ、売り上げがチャリティに寄付されることになっているという。
さて、4月22日にアースデイを控えて、オーガーニック・コットン製のアパレルや、環境フレンドリーな洗剤やクレンザーなどが
大きくプロモートされているアメリカであるけれど、環境問題を意識するしないに関わらず 気をつけなければならないのが、
日常生活のありとあらゆるものから身体に入ってくるケミカル(化学物質)。
今週に入ってからもエンバイロメンタル・ワーキング・グループが 缶ミルクや哺乳瓶、おしゃぶりなどに含まれるケミカルBPA(ビスフェノールA)の
危険性を遅ればせながら指摘しているけれど、
このBPAとは哺乳瓶やおしゃぶりだけでなく、子供用のオモチャや人形などに多く含まれている薬品。
さらにスポーツ・ドリンクなどを入れるウォーター・ボトル、タッパーウェア等のフード用コンテナにも含まれているもの。
この摂取が人体にどのような影響を及ぼすかと言えば、糖尿病、男性の場合の精子の減少、女性の場合は乳がん等で、
BPAは現在 最も危険視される化学物質となっている。
したがって 缶入りミルクを哺乳瓶で飲み、おしゃぶりを四六時中 口に入れている乳幼児は 特にこの物質の危険にさらされている訳で、
カナダでは早くもBPA入りの乳幼児グッズの輸入と販売が禁止されることになっているという。
もちろん乳幼児の母親の中には 「母乳を与えているからBPAは大丈夫!」と思う人も居るかも知れないけれど、
その母乳とて決して安全とは言い切れないようで、アメリカの18州で調査した母乳から 通常ジェット燃料等に使われるケミカルが検出されているという。
更に言えば、新生児のバース・コード(へその緒)からはほぼ100% PFOAという化学物質が検出されるそうで、
この物質はテフロンの鍋やノン・スティック・クックウェアに使われるもの。
このレベルが高いと、生まれてくる子供のホルモンに影響を与えたり、奇形の原因になりうることが指摘されていたりする。
そもそも現代人の身体には700種類以上のケミカルが存在していると言われているけれど、
このうち危険視される物質は、ADD(注意血管障害)、うつ病、アレルギー症、アトピー、ぜんそく等の原因になるのに加えて、
発がんの危険性も高いと指摘されるもの。
これらの物質は、フリースやウィンドブレーカーなどシンセティック・ファイバーの衣類着用や、壁紙やカーペット、塗料、調理なべ、
医療薬、コスメティック、TVやコンピューターの画面、ファスト・フードやテイクアウト・フードのコンテナ、
子供のおもちゃやビーチ・グッズ、洗剤や芳香剤、プラスティック・タイル、ダイエット・フードやドリンクなど、
生活の中のありとあらゆるものの中から体内に入ってくるもので、
オーガニックの野菜や果物を食べていれば防げるような生易しい状況ではないのである。
例えばドライ・クリーニング1つをとっても、そのプロセスに使用されるコースティック・ソルヴェンツは衣類に残留が付着することが多く、
この物質は発がん性があると同時に、神経や記憶力にダメージを与え、うつ病や不整脈の原因になりうると指摘されるもの。
なので、この危険性が指摘されてからは、値段が高くても人体と環境にフレンドリーなドライ・クリーナーを好む人々が増えているという。
またデオドラントやヘア・プロダクトの多くにも、使い続けることによって肝臓、腎臓、精子の数、ホルモン・プロセスに影響を及ぼす
物質が含まれているというし、ダイエット・コーラやソフト・ドリンクに含まれている人口甘味料、アスパータムは
かつてペンタゴンがバイオケミカル・ウェポン(生物化学兵器)としてリストしていたもの。
このアスパータムは40度以上の高温で1週間放置すると、フォーマルデハイドを始めとする複数の化学物質に変化し、
脳腫瘍の原因になるという。
また芳香剤に含まれるベンジンは、白血病の原因になりうることが指摘されているし、プラスティック・ラップ(俗に言うサランラップ)で包んだ食べ物や
プラスティックのコンテナに入ったフードを電子レンジに掛けたり、電子レンジポップ・コーンを頻繁に食べることは、現代人が
化学物質を体内に取り込む最も一般的な手段になっているという。
ではケミカルだけに気をつけていれば良いかというとそうでもないようで、フライド・ポテトのようにでんぷんを高温でフライにした場合、
タバコ等に含まれる カルシノジェンが作り出されてしまうという。
加えて健康に良かれと思って 摂取するフードも決して安全とは言えないもの。その最たる例が シリアルだそうで、フード・ライター、
マイケル・ポーランは、シリアルが 「ヴィタミンやミネラル、ファイバーがバランス良く取れるヘルシー・フード」という
ふれこみとは正反対に、保存料を含む ケミカルと安価なグレインのコンビネーションであることを指摘し、ケロッグ、クラフトなどの
大手食料品会社が 連邦食品医薬品局の規定を上手く かいくぐって シリアルをヘルシー・フードに仕立て上げていると
その著書「イン・ディフェンス・オブ・フード」で語っている。
更に紛らわしいのは、「ナチュラル」、「オール・ナチュラル」という表現。 これらが表示された食品はオーガニックより若干価格が安いので、
そちらに手が伸びてしまう消費者は少なくないようだけれど、これらは決してケミカル・フリー(化学物質ゼロ)
という訳ではなく、ナチュラル・ソースを使って作られた薬品を使用しているという意味であるという。
その一方で、気をつけなければならないのは空気。健康のためにエクササイズを!と考える人は多いし、実際
健康と長生きのためには、正しい食生活と適度の運動は不可欠な訳だけれど、
空気のコンディションによっては有酸素運動が裏目に出る場合が少なくないという。
少し前のニューヨーク・タイムズ紙には、ニューヨークよりずっと車による排気ガスのレベルが高い
カリフォルニアのベーカーズフィールドに住む50歳の女性が、何年もジョギングを続けていた結果、肺の病気をわずらってしまったという記事が
掲載されていたけれど、ベーカーズフィールドと言えば、アメリカン・ラング・アソシエーション(アメリカ肺協会)が、
全米でロサンジェルス、ピッツバーグに次いで 大気汚染が激しいと指摘する街。
ここで、毎日のようにジョギングのような有酸素運動を続けていれば、肺が大気汚染のフィルター代わりになってしまうのも無理は無いのである。
このため、ニューヨークでもハドソン・リバー沿いのウエストサイド・ハイウェイを走る車の排ガスを吸いながら
サイクリングやジョギングをするニューヨーカーに対して、専門家が肺や心臓へのダメージを警告しているけれど、
それより もっと心配されているのが 8月のオリンピックで世界一大気汚染が激しい北京を走るマラソンランナー達。
これまでの北京での大気汚染の調査は、スポーツやエクササイズなどの有酸素運動を対象として行われて来なかったため
普通に生活する人間の10倍〜20倍の酸素を必要とする オリンピック選手、特に2時間以上を走り続けるマラソン・ランナーの肺や心臓に
北京の大気汚染がどのような影響を及ぼすかは未知の状態であるという。
ウーマンズ・ヘルス・イニシアティブの調べに寄れば、大気汚染のある都市部の女性の方が、郊外や地方に暮らす女性に比べて
心臓発作で死亡する確率が高いとのことで、大気汚染が人間の健康に及ぼす影響は決して小さいものではないようである。
そうなってくると 現代社会で健康を維持しようとした場合、生活のありとあらゆるものに気をつけて、
空気を吸うのにも注意しなければならない生活を強いられることになるけれど、「そう神経質になる必要はないのでは?」
と思うきっかけになったのが、3大ネットワークの1つ NBCの報道番組
「デイトライン」が行った、エコ・コンシャス&ケミカル・コンシャスのファミリーと、ごく普通の生活をしているファミリーの
体内に含まれるケミカルの比較調査。
これによれば、”グリーン・ファミリー” と名付けたエコ・コンシャス&ケミカル・コンシャスのファミリーは 夫人がヴェガン、夫がヴェジタリアンで、
子供2人もヴェジタリアンとして育てているという。家はソーラー・パワーのケミカル・フリーで建てられ、
食べ物の80%がオーガニックで、洗剤なども全てオーガニックを使用しているという徹底ぶり。
これに対してアベレージなアメリカ家庭である”ブラウン・ファミリー”と名付けられた側は、同じ4人家族であるものの
両親が仕事で忙しいため、ファスト・フードのドライブ・スルーで夕食を済ませることもしばしば。
環境やケミカルの危険よりも コストや手間を優先させるファミリーである。
「デイトライン」では、この2つのファミリーの血液と尿に含まれる化学物質を76の項目で検査し、比較しているけれど、
予想に反して この2つのファミリーには数字で見る分にはそれほど大きな違いは無かったのである。
検査対象となった76の化学物質のうち、ブラウン・ファミリーの血液と尿から発見されたのは43品目、
グリーン・ファミリーは僅かに1品目だけ少ない42品目。
しかも驚いたことには、先述の最も危険視されるBPAに関しては、
ブラウン・ファミリーが両親と、子供の1人が検知数値以下、もう1人の子供が「モデレート/中くらい」だったのに対して、
グリーン・ファミリーは母親のみが検知数値以下で、父と子供の1人が「Moderate / 中くらい」、
もう1人の子供に至っては「High / 数値が高い」という結果が得られており、
想像するのとは全く逆の結果が得られていたのだった。
オーガニック・プロダクトを信仰するグリーン・ファミリーから このような数値が得られたことを考えると、
果たしてどの程度オーガニックを信用したら良いのかもわからなくなって来るけれど、
化粧品など肌に触れるプロダクトについては、極力安全性を重んじるべきというのは紛れも無い事実。
先日も、日本から何通もお問い合わせを頂いていた 睫毛の育毛促進プロダクトの中に 目に悪影響を及ぼす物質が含まれている
という記事を業界紙で読んで、「取り扱いをしないで良かった!」と胸を撫で下ろしてしまったけれど、
CUBE New York では今後も、身体に安全なビューティー・プロダクトを増やしていく予定です。
ところで、人体に取り込まれてしまった化学物質のことは、英語でボディー・バーデン(直訳すれば ”身体の重荷”)と呼ばれているけれど、
もし英語が分かる方だったら、以下のサイトで 自分の身体のボディー・バーデンをチェックすることが可能です。
http://extras.insidebayarea.com/bodyburden/bodyburden.html
ちなみに私がやってみた結果では、794ポイント中の307。数字だけ見るとギョッとしてしまうけれど、
ボディー・バーデンは低いとのことで、4つのカテゴリー全てで、「平均値以下」、もしくは「低い」という結果が得られたので
ちょっと安心したところだった。
私が一番危惧するのは、コンピューターの前で仕事をしている時間が長いことと、日本人なので仕方が無いけれど
魚を食べる頻度が多いということ。アメリカの魚に限ったことではなく、マグロやサーモンなど、主に巨大魚の
水銀のレベルが高いことは以前から指摘されているけれど、特にニューヨークでは裕福な人々ほど魚を食べるので、
体内の水銀レベルが全米の平均値よりも30%も高いという。
少し前のニューヨーク・タイムズ紙の調査によれば、安っぽいデリで売られているツナ・ロールの方が、
高額なスシ店のツナよりも水銀レベルが低かったことがレポートされているから、裕福な人ほど水銀レベルが高いというのは
納得の結果。でも専門家によれば、水銀を危惧して魚を摂取しないとオメガCファッティ・アシッドなど、
身体にメリットをもたらす栄養素が取れないので、週2〜3回程度魚を食べる方が健康にはベターであると指摘していたりする。
同じくケミカルを心配せずに摂取するを奨励されているのが、ヴィタミンやミネラルのサプリメント。
一部には、製造過程で含まれるケミカルを危惧してサプリメントの摂取を拒む人も居るようだけれど、
食事からだけでは 十分なヴィタミンやミネラルは摂取しきれないため、
サプリメントの摂取も健康のためには奨励されるものなのである。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に
ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。
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