Apr. 14 〜 Apr. 20,  2014

” Clutter In Your Life ”
部屋の乱れは、生活の乱れ?
部屋のオーガナイズは、精神のオーガナイズから


今週日曜はイースター・サンデーであったけれど、とっくに春になっている筈の今週水曜にニューヨークで降ったのが雪。
それでも徐々にセントラル・パークでは 春の花が咲き始めていて、毎春、最も早く開花する木蓮は既に満開。 週末にはグレート・ローンでピクニックをする人々が数多く見られ、 気温の上昇に連れて、セントラル・パークを走るランナーの数もどんどん増えてきているのだった。

さて、春と言えばキリスト教のイースター、ユダヤ教のパスオーバーといったホリデーもさることながら、 アメリカでは ”スプリング・クリーニング”、すなわち大掃除の季節。
一年の終わりに それまでの汚れやゴミ、要らなくなったものを全て捨てて、 新しい一年を迎えようとする日本とは異なり、 外が暖かくなって、窓が全開に出来る季節を迎えて、 家の中の埃や汚れを一掃し、部屋の中をオーガナイズしようというのが アメリカの”スプリング・クリーニング”。
その中には、冬のコートをドライ・クリーニングに出して、クローゼットの奥にしまう作業や、 ファー・コートを高級店のストアレージに預ける作業なども含まれているのだった。

そのスプリング・クリーニングの必要性を強く感じてしまったのが、先週、女友達と一緒に 友人宅を訪れた際。
訪問の目的は 女友達が友人のアパートの ルーフトップでパーティーをしようと考えていたためで、その下見のために一緒に出掛けたのだった。

友人のアパートが位置するのは、タイムズ・スクエア西側のハドソン川沿いで、 まだまだ周囲は閑散としているけれど、新しいビルが増えてきているエリア。 彼女のアパートのビルは築2〜3年ほどなので、建物自体はとてもモダンでスタイリッシュ。 ルーフトップからは、エンパイア・ステートビルディングが真正面に見えて、反対側にはハドソン川を隔てて ニュージャージーが見えるというビュー。
なので、ルーフトップからのビューは申し分無かったけれど、 私と女友達が絶句することになったのが、 友人が住むストゥディオ・アパートメントに足を踏み入れた際なのだった。





まずビックリしたのが、玄関の扉が90度も開かないこと。 理由は扉の裏側に物が山積しているため。
その玄関の左手にあるクローゼットは、全てドアが開いていて、衣類がドアノブにレイヤーで掛かけられている上に、 クローゼットの中は空き巣が物色した後のようなゴチャゴチャぶり。 部屋に入っていくまでの通路も 物だらけなので、 通路の幅が半分以下になっていて、1人が歩くのがやっと。
ベッドの上にも服がレイヤーで脱ぎ捨ててあって、ドレッサーの上は化粧品とヘア・ケアグッズが所狭しと”並んでいる”というより”放置されている”あり様。 ベッドの下の床には雑誌が重ねてあるのではなく、敷き詰めてあって、そればバスルームの床も同様なのだった。

アパートの住人である友人は「Don't judge me by these」と言って、 「部屋が散らかっていることで 偏見を持たないで欲しい」と言い訳していたけれど、 帰り道に ルーフトップでパーティーをしようとしている女友達が言ったのが、 「彼女、あまり生活が上手く行っていないみたいね」というコメント。
それを聞いた私は、同じジェネレーションYでも、部屋の乱雑さを平気で見せるアメリカ人も居れば、 それを見て オーガナイズ度ではなく、生活ぶりをジャッジするアメリカ人が居ることを、 内心興味深く思ったのだった。

実際、そのアパートの住人である友人の生活ぶりは 昨今、決して芳しいとは言えない状況。
彼女は昨年レイオフされて、現在は以前より安い給与で、格下げの仕事に就いていて、 しかもオフィスがコネチカットにあるため、毎朝6時起き。 以前の職場は マンハッタンのミッドタウンで、歩いて15分程度だったのに、現在の職場はドア・トゥ・ドアで 片道1時間15分の通勤時間。 今の仕事を始めてからというもの、彼女は「マンハッタンで高いレントを払って暮らしているメリットが無い」とボヤいているのだった。
そんな往復の通勤に時間を取られるせいで、エクササイズをしている時間が無いという彼女は、 体重が増えており、早起きをしなければならないプレッシャーから、 夜眠れないと、直ぐにお酒を飲む習慣がついて、酒量も増えたという。 そのせいで「朝起きると疲れている」、「カフェインと砂糖の量が増える」という 悪循環に陥り、それに仕事のストレスが重なっているのは本人も認めていることなのだった。




私が先週訪れる前に、同じアパートを訪ねたのは、昨年夏のこと。 この時の彼女のアパートは 完璧には程遠いものの、ずっとオーガナイズされていて、 彼女が自分でベッドの位置を動かして、部屋の模様替えをしたばかりの頃。
正直なところ、動かした後の方が 風水の見地からはベッドのポジションが悪くなっていたけれど、 本人がとても気に入っていたので、あえて余計な事は言わないようにしていたのだった。
でもその時点で、既に現在のディスオーガナイズ状態の兆候が現れていたのが、 部屋の中の 椅子という椅子に、着る物が掛かっていたこと。

英語では、こうした散らかりのことを ”Clutter / クラッター” と言うけれど、 私の観察では、クラッター状態に陥る第一の兆候と言えるのが、着る物やシューズを クローゼットに戻さず、それがどんどん部屋の中に増えて行くこと。
第二の兆候は、そうした ”しまわない物”、”捨てないけれど、必要無い物” がどんどんレイヤーになって 重なっていくこと。
そしてそれが酷くなると、第三の兆候として、棚の上と同じような感覚で 床の上に物を置くようになるのだった。 ちなみに、家の中で靴を履いている欧米人と、家の中で靴を脱ぐ日本人とでは、”床の上に物を置く”という 概念には若干の違いがあって、欧米人にとっての床の上は、たとえ家の中であっても ”靴で歩く地面の上”を意味するもの。 したがって、普通にオーガナイズされている家であれば ”着る物や雑誌が、床に落ちている ” ことはあっても、 ”着る物や雑誌が、床に 置いてある ”ことは まず無いのだった。

要するに私の分析では、友人宅のクラッターは 第三段階にまで達していた訳であるけれど、 私がこの状態が長引く予感を覚えたのは、乱雑な部屋ではあるものの、 ミニマムの時間と労力で生活できるようになっていること。
ベッドで目覚めて、シャワーを浴びて、ドレッサーでメークをして、クローゼットの外に出ている服とシューズを身につけて、 キッチンでコーヒーを飲んで出掛けるという朝のルーティーン、そして家に戻って コートやシューズを脱いで、テイクアウトしたディナーを ワインと一緒にサイド・テーブルで味わう、もしくは外食や夜遊びをしてから帰宅し、 ベッドで寝転びながらラップトップでTV番組を観たり、メールを打ったりしながら、 そのまま眠ってしまうという 彼女の夜のルーティーンが、最小限の歩行距離と手間で出来るようになっているのだった。
要するにクラッター状態であるものの、機能は果たしている訳で、 そういう状態だと、特に不便を感じないので 毎日の生活に追われているうちに、どんどん大掃除を後回しにしては、 物を溜め込んで、状況を悪化させて行くことになるのだった。



一緒にアパートを訪ねた女友達は、クローゼット・オーガナイザーを彼女に紹介 しようとしていたけれど、 私の考えでは、彼女が部屋の収納に見合う量まで 持ち物を減らして、脱いだ服をハンガーに掛けて、クローゼットに戻そう という気持ちや エネルギーを持たないうちは、他人がどんなに片付けたところで、時間が経過すれば今の状態に戻ることは目に見えていると思うのだった。

「物が捨てられない」、「片付けられない」、「元通りあった場所に物を戻せない」という状況は、 昨今のアメリカでは 習性というよりも、精神面の問題として捉えられる傾向があって、 こうしたことが、決断力や集中力の低下、精神的な落ちこみ、ひいては健康への悪影響に繋がるという見方が 医学的に行われるようになってきているのが実情。
もちろん、部屋の中が不衛生であればバクテリアや、ダニなどの影響で、 健康に悪影響を及ぼす場合もあるけれど、部屋がオーガナイズされていない状況は 食欲や睡眠時間等、ライフスタイルがコントロールできない状況と直結しているもの。 部屋をきれいにするだけでなく、生活もクリーンナップしようと決心しない限りは、 状況が改善出来ないと思うのだった。

そうかと思えば世の中には、ピンタレストやインスタグラム等のソーシャル・メディアで 収納アイデアを公開するのに躍起になっていたり、  ハンガー同士の幅が1インチでないと気が済まないというような ”オーガナイズ・フリーク” も存在するけれど、 こちらも度を越えると、”Obsessive-Compulsive Disorder (OCD) / オブセッシブ・コンパルシヴ・ディスオーダー”、 日本語で ”強迫性障害”と呼ばれる立派な精神障害。
結局のところ、普通の精神状態の人が無理が無い程度に きちんと掃除やオーガナイズをするのが、最も居心地が良い環境をクリエイトできると同時に、 生活にも好影響を与えると言えるもの。
卓越したオーガナイズ力や、収納の才能が無かったとしても、住む場所に対する持ち物の量さえ少なければ、 生活空間のオーガナイズは 誰にでも出来ることなのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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