Apr. 13 〜 Apr. 19 2015

”Viral Videos Go Viral ” ”
バイラル・ビデオがアメリカのニュース・コンテンツを書き換える?


今週のアメリカのメディアで 最大の話題になっていたのは、かねてから2016年の大統領選挙への出馬が噂されていた ヒラリー・クリントン元国務長官が、正式にその立候補を発表したニュース。
ヒラリー・クリントンの出馬は織り込み済みの事実であったことや、他に与党民主党から強力な対抗馬が出ていないこともあり、 ウォーレン・バフェット、スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクスといったセレブリティは、 ヒラリー・クリントン出馬が正式発表される以前から支持を表明していたような状況。
対する共和党側からは、約20名の立候補が見込まれており、こちらは特に有力候補と思しき存在が居ないため、 候補者選びの選挙戦の行方が混沌としているのが実情。 でも、全ての候補者に共通しているのは、現時点では 予備選挙で戦う共和党候補者よりも、 ヒラリー・クリントンへの批判を展開しながら 選挙戦をスタートしていることで、 早くも2016年の大統領選挙は、ヒラリー・クリントンの対抗馬が誰になるか?に焦点が絞られている印象なのだった。




さて、昨今のアメリカでは、「Viral Video/バイラル・ビデオ」、「Video Gone Viral / ビデオ・ゴーン・バイラル」という言葉を ニュース番組で聞かない日は無いとさえ言えるけれど、 バイラル・ビデオとは、主にソーシャル・メディアを通じて あっという間に人々の間に広まり、 話題や物議をかもし出すビデオのこと。
バイラル・ビデオは、一般の人々がスマートフォン等で撮影したビデオであったり、防犯カメラや、 ダッシュ・カムと呼ばれるパトカーのダッシュボードに設置されたカメラで捉えた映像であったり、 TV局が映画会社がプロモーション用に制作したビデオであったりするけれど、 今や、アメリカのニュース番組では、主にYouTube上にアップされるこうしたビデオの映像を用いて 報道が行われるケースが非常に増えているのだった。
特に昨年からアメリカ各州で問題になっている、警官による黒人層をターゲットにした 人種差別的な暴力行為や発砲事件は、ほぼ全てが通行人や目撃者によって撮影された映像によって その実態が明らかになっているもの。 また、その他の事故や事件にしても、メディアの取材陣が訪れる前に、 その場に居合わせた人々が撮影した、時に生々しい映像の数々は、 「現在のニュース・メディアのあり方を変えた」とまで言われているのだった。

今週は、非常に大きな事件が無かったこともあり、そんなバイラル・ビデオのうちの2つが 写真上のニューヨーク・ポスト紙の表紙を飾っていたけれど、 左側は見ての通り、今週公開された、「スター・ウォーズ エピソード7」の最新トレーラー。
公開から僅か数時間で1700万人がダウンロードしたこのビデオは、 最後にハリソン・フォード扮するハン・ソロが「チューイー・ウィアー・ホーム!」と最後に言う以外、 全く台詞が無い2分足らずのもの。 でも最新作を待ちわびる「スター・ウォーズ」ファンにとっては たまらないトレーラーで、 瞬く間に今週のバイラル・ビデオになっているのだった。

一方、写真上右側のニューヨーク・ポスト紙の表紙にフィーチャーされているブロンドの女性は、ケーブル・スポーツ局、 ESPNのレポーター。今週は 彼女がレッカーされた自分の車を取りに行った際に、 ガレージの女性スタッフに罰金を払う様子を捉えたセキュリティ・カメラの映像も バイラル・ビデオになっていたのだった。
それというのも、この女性レポーターが不必要なまでに女性スタッフをなじり続けていたためで、 その内容は、「自分は高学歴のエリートでTVに出演する身、それに引き替え貴方は低学歴で、こんなガレージで人の お金を奪い取るような仕事をしているだけ」というようなもの。 女性スタッフは ブロンド・レポーターに対して セキュリティ・カメラで撮影されていることを警告したものの、 彼女はその後もスタッフをなじり続けていたのだった。 そして、女性レポーターの最後の捨て台詞が 「Lose some weight / 少し痩せなさい」というもの。
このビデオは、レッカー会社がセキュリティ・カメラの映像を編集してソーシャル・メディア上にアップしたことにより バイラル・ビデオとなったけれど、 これを観た人々からのクレームが ESPNに殺到したことから、同社はブロンド・レポーターを一週間の謹慎処分にしているのだった。

ビデオを観た人の中には、彼女のなじり方があまりに意地悪く、しかも高慢な態度であったことから、 「謹慎処分では十分じゃない、クビにするべきだ」という声も少なくなかったけれど、 同時にESPNに対して寄せられていたのが、「仕事とは関係が無い プライベートな時間に、車をレッカーされて腹を立てただけで、 謹慎処分にするのはおかしい」という抗議。
しかもNYポスト紙のレポーターが調べてみると、レッカー会社は、違反していない車までレッカーするなど、苦情が殺到している悪質企業。 同ビデオにしても、やり取りの一部始終を捉えたものではなく、ブロンド・レポーターのなじる様子だけを ダイジェスト版に編集したもの。 わざわざ こんなビデオを編集してソーシャル・メディア上にアップさせること自体も悪質だ という声もあり、 女性レポーターは謝罪はしているものの、ビデオが一方的に編集されて、本来の内容を捻じ曲げられていると説明しているのだった。




でも今週最もショッキングだったのは、上のビデオ。
これはアリゾナ州のパトカーのダッシュ・カムの映像であるけれど、 パトカーが追いかけていたのは、銃を奪って逃走中の犯人。
犯人は発砲はしていなかったけれど、それを追いかけていたパトカーの警官が、逮捕目的で故意にこの犯人を 車で跳ねたというのが同映像。
ビデオには その様子を見守ったパトカーのダッシュ・カムの映像と、実際に犯人を跳ねたパトカーの映像の両方が フィーチャーされているけれど、これを観た人々の印象では、 警官に犯人を轢き殺そうという殺意があったように受け取れるもの。 でも、犯人のは命には別状は無く、病院に運ばれたものの、怪我の快復と共に起訴されるとのこと。 彼を跳ねた警官は、「職務を遂行しただけ」、「銃を持った犯人から一般市民を守ろうとした行為」であるとして、不起訴処分になっているのだった。

バイラル・ビデオになり易いのは、こうした犯罪と警察絡みのビデオ、赤ちゃん&動物(特に仔犬)をフィーチャーしたビデオ、 エクストリーム・スポーツや意外性のあるアクション、セレブリティが思わぬ形で登場したり、意外なことをするビデオ。
今週そんなセレブ絡みでバイラル・ビデオになっていたのは、以下のマドンナのステージを捉えた映像。 これは、ミュージック・フェスティバル、”コーチェラ”のパフォーマンス中に、 マドンナがステージの椅子に座っていたドレークに、いきなりディープ・キスをしたシーンであるけれど、 これがバイラル・ビデオになったのは、キスの後のドレークの吐き出すようなリアクションが 笑いを誘ったためなのだった。


またセレブのビデオで、ちょっと変わったところでは以下のライアン・ゴスリングの子供時代のダンス映像は、 アップされた途端にバイラルになったもの。
彼は、映画「ラブレター」で、一躍人気若手男優になったけれど、子供時代は ブリットニー・スピアーズ、ジャスティン・ティンバーレイク、 クリスティーナ・アギレラらと共に、ミッキーマウス・クラブに所属し、歌って踊っていた存在。 でも多くの人々は、俳優としての彼しか知らないので、果たしてどの程度彼がエンターテイナーとしての才能を持ち合わせているのか 知る由も無かったけれど、その才能の片鱗を垣間見せるのが以下のビデオ。
同ビデオは、ライアン本人さえその存在を知らなかったもので、これを観た彼は、ソーシャル・メディア上で これをアップした人に感謝すると同時に、「自分は明らかに早咲きタイプだったみたいだ」と 感想を述べているのだった。


You Tubeには、1ヶ月で60億時間分のビデオがアップされるけれど、その中でバイラル・ビデオになるものと ならないものが生まれるのは、 決して偶然ではなく、もちろんその仕掛け人が存在しているのは言うまでも無いこと。
もしビデオがこの仕掛け人となる企業の目に留まった場合、 ビデオを製作&アップした人とその企業の間で結ばれるのがライセンシングの協約。 一度この契約が結ばれると、3大ネットワークから、ケーブル局まで、ビデオを放映したありとあらゆるメディアが それに対して放映権を支払う義務が生じることになっていて、これだけでもビデオを製作した人は、 軽く数十万円〜数百万円を稼ぐことが出来るという。 それに加えてグーグルからも広告料が支払われ、 もし、ビデオが放映権以外のライセンスに発展した場合には、そのロイヤルティも入ってくるという仕組み。
このため 過去2〜3年で聞かれるようになった言葉に ”YouTubeミリオネア”というものがあるけれど、 ビデオが盛んにダウンロードされる数ヶ月間のライセンス料だけで数百万円を儲けるタイプもあれば、 ビデオをシリーズ化して、自らのチャンネルを製作し、広告費や 企業とのコラボレーションで儲けるという本格的なビジネスとして 展開されているケースもあるのだった。
ちなみにYouTubeで7億回のダウンロードがあったビデオは、ライセンス料だけで約1億8000万円の収益。 でもダウンロード数がこれだけの回数に達するのは、非常に難しいと同時に稀なのも また事実なのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。




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