Apr. 21 〜 Apr. 27 2008




” ポリガミー・クライシス ”

今週のアメリカで突如報道されたのが、 世界の主要な米輸出国である タイが、 その輸出を制限することによる ライス不足の危機。
これを受けて 今週はコストコ、サムズといった大手の量販店が 輸入米に”1人につき2袋”という販売制限をつけたことが 報じられ、一時 先物市場で ライスが記録的な高値をつけるに至ったのだった。 でも、その翌日にはタイを始め、ブラジル、パキスタンといった ライスの生産国が、輸出制限をしないことを明らかにしたため 今度はライスの価格が転落しており、 それに振り回されて 今週はライスを買い込んだ人々が少なくないようだった。
昨今のアメリカでは、株式市場よりも先物市場に活気があると言われて久しい状況で、 小麦粉、とうもろこし 等が投資対象としてもてはやされているけれど、 これらに投資したくなる人の気持ちも十分理解できるのが、昨今のフード価格の値上がりぶりである。
少し前にもこのコラムで、アメリカでの食材の価格が急激にアップしたことに触れたけれど、 写真上のニューヨーク・ポスト紙の記事によれば、2007年1月と2008年1月でフード価格を比較すると、 牛の挽肉が5.58%、チキンが7.22%、りんごが7.76%の価格のアップとなっている他、 2桁%の上昇を見せているのがポテト・チップスの15.24%、トマトの18.88%、ミルクの26.05%、小麦粉1パウンドの32.43%、 種無しブドウも35.42% それぞれアップしており、卵に関しては前年比で 何と 40.65%という猛烈な値上がりを見せているのだった。
特に価格上昇が激しいと言われるのが シリアル、乳製品、小麦粉で、食材そのものの価格に加えて、ガソリン代の高騰による 輸送費の値上げが 現在の物価高騰に拍車を掛けている状況である。
アメリカでは予定より3週間早く、来週にも 国民に対して景気刺激策の小切手の支給がスタートすることになっているけれど、 当初この使い道になるであろう と言われたのが 住宅ローンや、クレジット・カードの支払い。 しかしながら このところの食費の値上がりのため、低所得者家庭では 支給された小切手の使い道が ローンの支払いどころか食費で消えてしまうとさえ言われているほど。
それほど、食費に困っていない人々の間でも 食材が値上がりした分、食べる量を減らすことが 「リセッション・ダイエット」 などと冗談半分に言われ始めていたりする。

ところで先物市場の活況を引っ張ってきた存在と言えば、原油とゴールドであるけれど、 特に地方に暮らして 車が無ければ生活出来ない人々にとっては、ゴールドよりも大切なのが石油。
このため、地方都市を中心に現在増えているのが、現在の金の高値を利用して 手持ちのゴールド・ジュエリーを売って それをガソリン代や生活費に回す人々であるという。 でも金塊とゴールド・ジュエリーの違いは、いくらゴールドが値上がりしているとは言え、払った金額ほどでは売れないことで、 あまり売値に納得しないままジュエリーを手放す人も多いようである。
そのゴールドの価格は3月始めの 1オンスが1000ドルを超える史上最高額に比べると、現在は900ドル前後に落ち着いているけれど、 時々カストマー・サービスにお客様から寄せられるのが、これを受けてCJの商品価格も下がらないか?ということ。 でも残念ながら 先物市場での金価格が下がっても、ゴールドの製品価格は今も上がり続けているのが実情で、 その理由は、ゴールド・ジュエリーは 先物価格ほどに急激に値段をアップさせることは出来なかったため、製品価格は未だ ゴールドの先物価格のレベルに追いついていないのに加えて、これまで利益を削って価格を保ってきた業者にとっては、 多少ゴールドの価格が下がったところで、製品価格を下げるほどの利益は上げていないこと。 加えて、ゴールドの価格が900ドルに達する前にも、過去には700ドルまで上がった価格が 一度500ドル台に転落したことがあったそうで、 現在の900ドル前後の価格は、ジュエリー業界にとっては 更なる値上がり前の小休止としか捉えられていないようなのである。
なので、一流宝飾店のジュエリーを始めとする、ありとあらゆるプラチナやゴールドのジュエリーの価格は これからもアップすることは確実のようであるけれど、 リセッションが深刻になった場合、高額のジュエリーほど交渉次第で値切れるようになるのも事実で、 これは一流宝飾店も然り。 なので リセッションで高額品が売れない時代というのは、お金がある人にとっては 高額ジュエリーの買い時でもあるのである。


さて 現在アメリカで大きく報じられているのが テキサス州エルドラドの YFZ(Yearn for Zion) と呼ばれる宗教団体の 施設に テキサス州のファミリー&プロテクティブ・サービスの捜査のメスが入り、 そこから416人の子供と139人の女性が保護されたニュース。 実際にはこの保護が行われたのは4月上旬であったけれど、この宗教施設では未成年の少女に対する性的虐待が 行われていると同時に、1人の男性が複数の妻を持ついう 「ポリガミー(一夫多妻制)」 が当たり前となっており、 現在はテキサス州と、保護された416人の子供の親たちが その親権を巡って裁判を繰り広げようとしているところなのである。
この宗教団体はかつて 一夫多妻制を認めていたモルモン教の流れを引くようだけれど、 報道によれば、この集落では少女が13歳、14歳になると 「子孫を増やす」 目的で、 自分より遥かに年上の 40代、50代の男性とのセックスを強要されるとのことで、 実際に保護された子供の中には、妊娠中の少女が何人か居たことが報じられている。
この施設から16歳で逃げ出した女性のコメントによれば、その実態は更に恐ろしいもので 女性は感情を出すと体罰が与えられ、ヴィタミンと称して精神安定剤を与えられ、すっかりマインド・コントロールをされているとのことで、 その女性は8歳にして父親から性的虐待を受けたというけれど、その集落では父親に虐待を受けた場合は 未だヴァージンだと見なされるとのことだった。 そして彼女が13歳になると、まず従兄弟との性関係を強要されたという。

この宗教施設の女性達は、揃いも揃って 写真左のような 色気もファッション性のかけらもない服装で、髪も同じようにアップにし、 下着も西部劇に出てくる女性のような 足首まであるようなパンツを付けているとのことで、 皆表情が無く、青白い顔をしていて、型に入れて量産したかのように 全員が同じように見えるルックス。 自己主張、自立心、経済力 といった言葉とは全く無縁の女性達である。
彼女らは 少女時代に自分より遥かに年上の男性の6番目、7番目の妻になることを強要されてきた訳だけれど、 幼い頃からブレイン・ウォッシュされていることもあり、全くそれに対しては疑問を抱いて居らず、 「外の世界に出て行くと、髪を切られ、化粧をさせられ、淫らな服装をさせられて、 沢山の男性とセックスをさせられる」と脅されながら育てられているという。
でも彼女らの生活と比較すれば 現代女性のライフスタイルは 、「髪を切られ」の部分を除いては 自分の意思で それ以外のことを やっていると言えるのも また事実であったりする。

宗教団体側は、「13歳で少女に対する性的虐待は事実無根」と反論しており、 私がこれを書いている4月27日、日曜にNBCの報道番組、「デイトライン」が この宗教団体について報じたセグメントの中でも、 団体の男性が子供を州政府に突如連れて行かれた、怒りや悲しみを語っていたのだった。 しかし、そんな一見まともにインタビューに応えていた男性も、ひと度 「あなたには何人妻が居るんですか?」と いう質問を受けた途端に、怪しい微笑みを浮かべたまま 「そんな質問には答える必要はない」 と回答を拒否していたので、 私はすっかり不信感を募らせてしまったのだった。
ではこのポリガミー(一夫多妻制)の団体が、どうやって生計を立てているかと言えば、 夫は建設現場の仕事をして 外界から金銭を稼いでくるとのことで、あとは宗教への寄付金、食べ物の 自給自足で賄われているようで、その生活は質素そのものである。
私はこの宗教施設の様子を見て、2004年に公開された 二コル・キッドマン主演の映画、「The Stepford Wives / ザ・ステップフォード・ワイヴス」 を思い出してしまったけれど、この映画では テクノロジーで 街に住む女性を 夫が理想とする妻、夫の言いなりになる妻に 変えてしまうというストーリー。 でも同映画では、妻達が皆 男性誌のグラビアから飛び出してきたみたいな ルックスになっていたのに対して、今回のポリガミー団体は 普通の男性が魅力を感じられない ルックスに女性像が統一されていたのは明らかに異なる部分。
それでも映画のストーリーのように現実とはかけ離れた世界が、この21世紀のアメリカに存在しているというのは 非常にショッキングな事実なのである。

これとは別に私は先日、アフリカのスーダンで起こっている女性に対するレイプの実態のドキュメンタリーを見て、 すっかり気分が悪くなって 途中で見るのを止めてしまったけれど、 こういった女性蔑視や虐待が未だに世界中で行われて、女性が世界人口の半分以上を占めるているにも関わらず マイノリティ扱いを受けている事実を思うと、 「ヒラリー・クリントンがアメリカ大統領になるのも悪くないかも知れない」 という気持ちになってしまうのだった。
そのヒラリー・クリントンは、今週火曜日に行われたペンシルヴァニア州の予備選挙で、バラック・オバマに 10ポイントの差を付けて勝利し、九死に一生を得た感じであったけれど、 そんなヒラリー・クリントンを救った投票者の多くは 意外にも白人男性であったという。

ところで、テキサス州のポリガミー(一夫多妻制)集団のことは、今週食事をした友人の間でも フランス語のクラスでも話題になっていたけれど、フランス語の先生が 20代の独身男性のアメリカ人生徒に対して 「もし自分がポリガミー(一夫多妻制)集団に属していたら、何人奥さんが欲しい?」とふざけて尋ねたところ、 彼の答えは 「1人」。 その理由は 「モア・ウーマン、モア・プロブレム (女性が多いほど、問題も多い)」というもので、 私はそれを聞いて 「20代にして、もうそんなことを悟ってるんだ〜」 と妙に感心してしまったのだった。
でも結局のところ、それがまともな男性の思考なのだと思う。






Catch of the Week No. 3 Apr. : 4 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Apr. : 4 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Apr. : 4 月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Mar. : 3 月 第 5 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。