Apr 22 〜 Apr. 28, 2013

” How Is More Important Than Why ”

今週のアメリカも、引き続きボストン爆弾テロの容疑者である、タメルラン& ジョハル・ツァルナエフに関する報道に 最も時間が割かれていたけれど、被害者のための寄付金はハイピッチで集まっており、 事件から2週間を待たずして、既に集まった金額は約27億円。
同事件がきっかけで、来年のボストン・マラソンに参加を希望するランナーが増えるとことも見込まれているけれど、 実はボストン・マラソンは最も参加資格を得るのが難しい大会。 しかも下り坂が続き、エリート・ランナーでも 終盤では膝がガクガクしてくるという難コースで、 簡単な思いつきで走れるマラソンではないのは明らかなのだった。

その一方で、私がこのコラムを書いている4月28日、日曜日はアップルのアイチューンがスタートした十周年記念の日。
2003年のこの日に、20万曲の音楽のダウンロードを 1曲99セントで提供するアイチューンのビジネスを 世界に紹介したのは、今は亡き スティーブ・ジョブス。その後、アイチューンが世界中の人々の音楽の聴き方、買い方を大きく 変えたのは歴史が証明する通り。
そのアイチューンは、2005年からTV番組、2006年から映画のダウンロードをそれぞれスタート。2007年にはアイフォンが登場して、 携帯電話でエンターテイメントを楽しむ時代が到来したけれど、昨年2012年のアイチューンの売り上げは、40億ドル(約4000億円)。 今や350万曲の音楽と、200万冊のEブック、そして6万本のムービーをそのラインナップに揃えているのだった。

アップル社については、先週のこのコラムで株価不振をお伝えした通り、アイフォン、アイパッドの需要が減ってきていることが伝えられる存在。 特に、「アイフォン離れ」はかなり顕著なトレンドで、若い世代を中心にアイフォン・ユーザーが切り替えているのが、サムスンのギャラクシー。
このため今週はギャラクシーが 需要に追いつかず、暫くの間、部品不足で手に入らないといったニュースも報じられていたのだった


今週のウォールストリートでは、月曜にAP通信のツイッター・アカウントがハッキングされ、「ホワイト・ハウスが爆破され、オバマ大統領負傷」の ニュースが午後1時にツイートされた途端、7分間で株価が140ポイント以上下がるという事態が生じていたけれど、 その一方で、笑いが止まらない株価上昇を見せたのがDVDレンタルとオンライン・ダウンロードの Netflix / ネットフリックス。 第1四半期の好業績が今週発表された同社は、株価を30%上げて、久々に一株200ドル台にカムバックしたのだった。
ネットフリックスと言えば、2年前にレンタルとダウンロードのビジネスを分けようと試みた事、それと時を同じくして料金値上げを実施したことが 利用者の反感を買って、2011年7月には295ドルをつけた株価が、その3ヶ月後には 63ドルで取引されるという急降下を見せたのは 記憶に新しいところ。
その後、大きく返り咲いた同社ビジネスの一因を担っているのが、人々がTVを見るパターンが大きく変わったということ。
今や若い世代を中心に、TVを所有しない人々が増えているのは周知の事実であるけれど、 そんな若い世代に多いのが、TVの人気番組を1シーズン分一気にダウンロードして観るというパターン。
すなわち、毎週1エピソードずつダウンロードするのではなく、TVで放映されているシーズンが終了してから 全エピソードをダウンロードして、それを1日〜2日で観てしまうというもの。 今年の冬はインフルエンザが大流行したけれど、風邪で仕事を休んでいる間に、 ケーブル局、ショータイムの超人気番組「ホームランド」の1シーズン目をダウンロードして観るというのは、 インフルエンザと同じくらいに流行っていたこと。
このトレンドを受けて ネットフリックスでは、ケヴィン・スペーシー主演のドラマ「ハウス・オブ・カーズ」を自ら製作するという 同社にとって全く新しい試みをスタートさせており、その1シーズン目の全エピソードを ネット上で同時公開するという 画期的な試みも行なっているのだった。

今やネットフリックスを利用していても、いなくても、週末に纏めてTVを観る時間を設けるというのは、 現代のアメリカ人にありがちな傾向。
ネットフリックスを利用していない人は、もっぱら自宅のデジタル録画システムで 観たい番組を全て録画しておいて、 週末にCMをカットしながら それを観た方が、効率良く番組が観られるだけでなく、ウィークデイの予定が立て易いと言われているのだった。
したがって、もはや自分の好きなTV番組の時間に合わせて家に帰る人は居なくなってきているけれど、 週末に纏めてTVを観る人、ネットフリックスで1シーズン分を纏めて観る人にとって 気をつけなければならないのが、オフィスやジムでの会話で 番組のハイライトや、どんでん返しのシナリオを知らされること。
このため、自分が録画している番組を観ている人間には予め警告する、もしくは番組を観た人がそのエピソードについて話す時には、 事前に「Spoiler Alert / スポイラー・アラート」、すなわち日本語で言う「ネタバレ」を警告しなければならないのは、 今やアメリカ社会では暗黙の了解事項。これを受けて「Spoiler Alert / スポイラー・アラート」は、 昨年の流行語の1つになっていたのだった。




でも、そんな時代が訪れる前に、日曜午後9時にアメリカ中の女性達をTVの前で待機させていたのが、 ケーブル局、HBOが放映していた「セックス・アンド・ザ・シティ 」(以下「SATC」)。
「セックス・アンド・ザ・シティ」のエピソードは、番組が終了して10年近くが経過した今も 男女関係や、女性のセックス観の指針として 引用されることが多いけれど、その中で有名なエピソードの1つが、 サラー・ジェシカ・パーカー扮するキャリーが、彼女と同じくライターをしているボーイフレンド、バーガー(ジョン・リヴィングストン)に、 ポストイットに書かれたメッセージでフラレたというもの。
キャリーが朝、目を覚ますと 「I'm sorry I can't Don't hate me」と書かれた別れのメッセージがポストイットに書いて 貼りつけてあったというのは 当時、電話でも、ファックスでも、Eメールでも、留守電メッセージでもない、 新しい手段、それも 相手を見下すかのような 別れの言い渡し方として 話題になっていたのだった。
そもそも、ポストイットは 目に付く場所に張っておくためのメモ用紙として作られたプロダクト。 なので番組の中でも、そんなポストイットで 伝達事項のように別れを告げられるという、 前代未聞の フラレ方に頭に来たキャリーが、 そのポストイットを持ち歩いては、愚痴り続けていた様子は 「SATC」ファンならば覚えているもの。

でも、別れの言い渡し方にこだわるのは「SATC」のキャリーだけではないようで、 特にソーシャル・メディアが発達して以来、アメリカの若い世代の女性の間では、 友人にボーイフレンドとの別れについて語る際、「誰と」、「何故」別れたかよりも、 「どんな手段によって別れを告げた」もしくは「告げられた」の方が、ずっと大切であることが、調査によって明らかになっているのだった。

この一見 どうでも良いようなソーシャル・スタディを行なったのは、インディアナ大学のアソシエート・プロフェッサー、 イラーナ・ガーション氏。
ガーション氏は、大学、大学院の女子学生が 友人や家族と、ソーシャル・メディアを使ってどのようにコミュニケートをしているか をリサーチするうちに、彼女らがボーイフレンドとの別れを説明する際に、真っ先に どのメディアで別れを告げた、告げられたかを 詳しく説明する一方で、何故別れたかについては、 さほど触れない傾向にあることに気付いたという。 特に、別れのプロセスに、携帯メール、フェイスブックなど、2つ以上のメディアが絡む場合、 どのメディアで 何処まで別れ話が進み、どのメディアで完全に終止符が打たれたといった 経過を詳細に友人にレポートしているとのこと。
これに対して、日本、ブラジル、イギリスなど、ガーション氏が調査した他の国では、 友達に別れを説明する際に、話のポイントになるのは「何故別れたか?」ということ。 「どういう手段で別れを告げた、告げられた」にこだわるのはアメリカだけの傾向であるという。

そのアメリカで、2010年に 30歳以下の2万人の男女を対象に行なった調査によれば、「携帯メールで 相手に別れを言い渡したことがある」と答えた人々は57%。「別れを言い渡されたことがある」と回答した人は47%にも上っていたという。
これがイギリスになると、「Eメール もしくは携帯メールで フラレたことがある」 と回答したのは 僅か15%なのだった。




ガーション氏は、携帯電話とソーシャル・メディアが男女関係に影響を与えたというスタンスであるけれど、 前述の「SATC」のエピソードが放映されるまで、アメリカで最悪の別れの言い渡し方と言われたのが、 1990年代半ばに、俳優のシルヴェスター・スタローンが 彼の現在の夫人で元モデルのジェニファー・フラヴィン(写真左、右側)に 別れの手紙を FedExで送りつけたというもの。
その後 2人はよりを戻して、1997年に結婚しているけれど、当時ジェニファーと別れた直後に、シルヴェスター・スタローンが 交際をスタートしたのが、 その頃 モデルから女優に転身を図っていたアンジー・エヴァーハート(写真右)。 なので、芸能メディアでは 「FedExのオーバーナイトで別れの手紙を送るほど、急いで別れたかったのか?」、 それとも「FedExは、通常の手紙より送料が掛かって、封筒が大きい分、特別待遇だと思うべきなのか?」で、 意見が分かれていたけれど、大半は 「Fed Exで別れを告げるのは残酷、かつ手抜きの行為」と見ていたのだった。

この時も、シルヴェスター・スタローンがFedExで、別れを宣告したことは あまりに有名であったものの、 誰も話題にしなかったのが 彼がジェニファーと別れた理由。 したがって、ソーシャル・メディアが登場する以前から、アメリカ社会では ”別れた理由” より ”別れ方” にフォーカスする 傾向が強かったと言えるのだった。

ちなみに、20代と30代前半の女友達に どうしてアメリカでは別れた方法にフォーカスする傾向が強いのかについて尋ねてみたところ、 20代嬢の回答は、別れ方を聞けば、2人の仲がどうだったかを根掘り葉掘り 訊かなくても、大体どういう付き合いをしていたかが 分かるとのこと。
30代嬢によれば、友達が別れを言い渡す側だった場合は 別れた理由を語るけれど、一方的に別れを言い渡された側だった場合、 相手が別れの理由を説明しない場合が殆どなので、当事者であってもどうして別れるのか、はっきり分からないケースが少なくないとのこと。 また「別れの理由なんて聞かされても、落ち込むだけ」なのだそうで、 よほど長い付き合いで、相手のことが本当に好きだった場合以外は、別れる理由を知ったところで 役に立たないとも 語っていたのだった。



携帯メールで、別れを言い渡す、言い渡されることについては、通常の使っている コミュニケーション手段が、携帯メールならば それが妥当というのが、大方の意見。 日頃、携帯メールで連絡を取っているのに、別れる時だけ Eメールや、電話にするというのは、逆におかしいと 考える傾向が強いという。
とは言っても、携帯メールは短いセンテンスが多いだけに、紛らわしいメッセージを誤解してしまうケースも多いようで、 私が20代嬢から聞いたのが、ある男性が「テストが終わったから、これから会おう!」という意味で、「It's Over!」と ガールフレンドに携帯メールを送ったところ、彼女は 終わったと告げられたのが 自分達の関係だと勘違いして、 「あれだけ貴方に尽くしてきたのに、こんなに簡単に別れを言い渡すの? 」と返信し、 怒りにまかせて、ボーイフレンドの親友と関係していたことを暴露した途端、 彼からのメールで、自分の誤解に気付いたというエピソード。 でも女性側が気付いた時点では、時既に遅しで、彼女はその場でフラレてしまったというのだった。

話は全く違うけれど、先月、ブロンド美女の友人が話していたのが、自分に自信をつける道具として インターネットのデート・サイトを使ったという話。
彼女は、体調を崩して 暫くデート・シーンから遠ざかっていたので、久々にパーティーに出掛けたところ、 以前よりずっと社交性が無くなっていて、以前ほどの自信が無い自分に気付いたとのこと。 そこで 大切な仕事の面接を控えていた彼女が、自信を取り戻すために行なったのが、 某デート・サイトへの登録。 そして自分の写真とプロフィールをアップしたところ、何と3日間に112人からコンタクトがあったという。
彼女は、コンタクトしてきた男性には全く興味が無くて、「どうして君のような女性が、未だシングルなのか!」 等と 程度の悪いメールをしてくる男性ばかり・・・と、ブツブツ文句を言っていたけれど、 引く手数多のリアクションにはすっかり満足したようで、自信を取り戻すという目標を達成した彼女は、 男性から寄せられたメッセージに 1通たりとも返事をせず、直ぐにサイトからプロフィールを消去したと語っていたのだった。

私は、こういうソーシャル・メディアの使い方もあるのかと思って聞いていたけれど、 結局のところ、ソーシャル・メディアは 自分の使いたいように使うからこそ便利なもの。
私の友人は、「どうせ付き合うことが無いような男性に、返信メールをしたところで 時間の無駄」と割り切って、 届いたメールにも殆ど目を通していなかったけれど、そうかと思えば別の友人は、 ソーシャル・メディアに生活を蝕まれていて、そこで出会った男性と3回デートするために、 2ヶ月間、毎日1時間以上をサイトのチェックやメッセージのやり取りに費やしていたのだった。
その結果、友人がその男性と どんな別れ方をしたかといえば、相手が 彼女のメールに返信して来なくなっただけ。 その男性は別れの携帯メールさえ送信して来なかったのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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