Apr. 18 〜 Apr. 24 2016

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”Can We Chose Matches Via Smell? ”
匂いから自分のベスト・マッチを探し当てることが出来る?



今週は火曜日に行われたニューヨーク州大統領予備選挙で、予想通り民主党はヒラリー・クリントン、 共和党はドナルド・トランプが勝利を収めたのは、既に大きく報じられている通り。
その結果、ヒラリー・クリントンは民主党候補指名をほぼ手中に収めたと言われる一方で、 共和党側は 7月にクリーブランドで行われる党大会まで指名候補選びが長引くことがほぼ確実視されていたのが今週。

でも週末に入って それよりも遥かに大きな報道になっていたのが4月21日木曜午前にミネソタ州の自宅で死去したシンガー、プリンス(57歳)のニュース。 生前にはマドンナ、キム・ベイシガー、シーナ・イーストン、カーメン・エレクトラ、シーラ E.、映画「パープル・レイン」で共演したアポロニア・コテロを始めとする、 数多くの女性とのロマンスが報じられた一方で、私生活をオープンにしないミステリアスな存在として知られてきたのがプリンス。 当初、パブリシストはその死がインフルエンザが原因とほのめかしながらも、死因について言及を避けていたことが報じられていたけれど、 その後「ドラッグのオーバードースが原因」との説が浮上。 現時点では死亡解剖の結果が待たれる状態なのだった。





話は変わって、3月に100人のニューヨーカーが参加して行われたのが ”Smell Dating / スメル・デーティング”。
これは匂いで 自分のデート相手&ベスト・マッチを探すというもので、ブルックリンのスタートアップ企業による パイロット・プログラム。 当初は風変わりなアート・プロジェクトとしてプランされたものと言われるけれど、 今では 人気のアプリ、”ティンダー”に対抗するデート・サービス、及び マッチメーキングのデータベースになることが期待されているのだった。
そのスメル・デーティングのプロセスは以下のようなもの。

1. スメル・デーティングからTシャツが送付されてくる
2. そのTシャツを3日3晩、デオドラントを使用せずに着用し続ける
3. その後Tシャツを所定の封筒に入れて送り返す
4. スメル・デーティングから 他の参加者が着用したTシャツのスウォッチが10枚送付されてくる
5. そのスウォッチの匂いをかいで、自分が気に入った匂いを登録する
6. もし自分が気に入った匂いの主が、自分の匂いを気に入った場合は、お互いの情報がお互いに送付される
7. 相手に連絡してアプローチするかは本人のチョイスとのこと

スメル・デーティングの参加費は25ドル。現時点では利益を上げることが目的ではなく、 マッチ・メーキングの実績を上げることに重きが置かれているのだった。




このスメル・デーティングのプロセスでは、Tシャツを着用する参加者はコロンやデオドラントの使用は禁止されているものの、 バーベキューや喫煙など、自分のライフスタイルを象徴するような匂いがつくアクティビティは特に控える必要はないとのこと。 また、参加者に送付されてくる10枚のスウォッチは、ランダムに10枚が選ばれる訳ではなく、マッチを考慮した10枚が セレクトされると説明されているのだった。
スメル・デーティングでは、事前に性別、年齢、ヘテロ・セクシャルかホモ・セクシャルかを問わずに、匂いのマッチだけで カップリングを行うというユニークなコンセプト。したがって、カップリングが成立した相手と驚くほど年齢が離れていたり、 ホモ・セクシャル&ヘテロ・セクシャルがカップリングされる可能性が無きにしもあらず。 でもスメル・デーティング側では、「人間の体臭には年齢や持病、DNAを含めた身体のケミストリーが現れるので、 外観で相手を判断するよりも確実にカップリングが出来るはず」というセオリーを説明しているのだった。

このセオリーは、人間は外観よりむしろDNAレベルで惹かれあうというというセオリーと同等と言われるもの。 DNAレベルのマッチは、自分自身のDNAに欠けているものを相手に求めて、自分の子孫のDNAをより完璧なものにしようとする 本能によるものと言われており、このケースでは自分と正反対のタイプに惹かれるのが通常。 逆にバランスが取れたDNAの持ち主の場合は、特定のDNAを強くするために 似たもの同士が惹かれあう場合があることが 指摘されているのだった。

とは言っても、人間の匂いの原因になるのはDNAよりもむしろバクテリア。 人間の身体の2〜3%を構成するのがバクテリアで、これは大体 脳と同じ重さとのこと。
体臭は、個々の人間のイミューン・システム(抵抗力)で抑えられないバクテリアが発するものであり、 俗に老醜と呼ばれるものは エイジングを重ねてイミューン・システムが弱る結果、抑えられないバクテリアが増えて 身体から発する匂いが高まる状況。 もちろん持病があれば、その病に絡むバクテリアをイミューン・システムが抑えることが出来て居ないので、 ”健康状態が体臭に現れる”というスメル・デーティングのセオリーは医学的に立証されているのだった。



したがって、相手の匂いが好きだということは、相手のバクテリアと上手く付き合っていけるということを 意味するけれど、バクテリアというのは単なる ”バイ菌”とは限らなくて、他のバクテリアと戦って 身体を守ってくれたり、消化や新陳代謝を高める善玉バクテリアも存在するのは周知の事実。 相手の匂いを好むということが、相手のバクテリアが自分の身体の中で善玉として働くことを意味するか?は まだまだ解明されていないものの、”人と触れ合う”、”交際する” ということは まさにバクテリアの交換に他ならないのだった。

そもそも人間の片側の手のひらに存在するバクテリアの数は70億。 誰もが右手と左手で異なる種類のバクテリアを持っているとのこと。 また口の中には約200種類の異なるバクテリアが何百億と存在しているけれど、 10秒間のディープ・キスにより、お互いに交換するバクテリアの数は 5,000万と言われるのだった。
もちろん、バクテリアは直接のコンタクトでなくても、物を通じてもトランスファーされるもの。 バクテリアの数が特に多いのは携帯電話や銀行のATMマシーン。 またジムのダンベルや、ランニング・マシーンの手すり、コンピューターのキーボードやマウスには トイレの便座よりも多くのバクテリアが存在しているのは良く指摘されること。
またペット、特に犬を飼っている人は、当然のことながら犬とも多数のバクテリアをシェアしているのだった。

バクテリアをすべて除去するのは不可能でも、フレグランスを使って自分の匂いをコントロールすることは可能であるけれど、 フレグランスとて、その香りには 自分の体臭、体温が反映されるもの。 フレグランスに含まれる原料やアルコールが 肌の表面のバクテリアとミックスされて匂いを放つので、 同じフレグランスをつけても、人によって香りの印象が異なるだけでなく、 その好き嫌いも分かれるのだった。

目下アメリカでは、バックグラウンドなど一切関係なく、ルックスのみで相手を選ぶデート・アプリ ”Tinder / ティンダー” が大人気になっているけれど、 ティンダーが ”フックアップ・アプリ”、すなわち単なるセックス・パートナーを探す用途で頻繁に用いられるのに対して、 スメル・デーティングは、結婚を考えるようなシリアスな関係を求める人に向いていると言われるもの。 それほど人間の体臭は、ベスト・マッチを探し当てる際の目安になると言われるけれど、 スメル・デーティングの被験者100人の中に DNAレベルのベストマッチが含まれているとは限らないどころか、 含まれている可能性の方が低いのが実際のところ。
したがって 匂いで相手を探し当てるよりも、出会った人の匂いを相手選びの基準に加える方が当座は現実的なアイデアと言えそうなのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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