Apr. 23 〜 Apr. 29, 2012

” Beach Body & Mind Problem ”

今週金曜午前中に、ニューヨーカーが屋外に繰り出して、一斉に空を見上げて見守ったのが、スペース・シャトル エンタープライズのニューヨーク・デビュー。
エンタープライズは、つい最近までナショナル・エア&スペース・ミュージアムのヴァージニア州にある分館に展示されていたけれど、 その新しい展示場所の誘致をめぐっては、各都市が名乗りを上げて 競い合っており、 最終的に ニューヨークのイントレピット・シー・エア&スペース・ミュージアムが選ばれたことをNASAが発表したのは昨年のこと。
エンタープライズの輸送は、このところ悪天候が続いたために見送られてきたもので それがやっと実現したのが金曜日。NASAのロゴが入ったボーイング747のエアクラフトの上に ”おんぶ”の状態で運ばれてきたエンタープライズの様子は、ローカルTV局がこぞって通常の番組を遮って、 生中継しており、文字通りニューヨーク中から大歓迎で迎えられたのだった。


そのニューヨークの今週は、季節が逆戻りしたように気温が下がっていたけれど、 それでも確実に増えてきているのがセントラル・パークのランナーの数。
これは気温が暖かくなって、走り易い季節になってきたこともあるけれど、 5月4週目のメモリアル・デイを過ぎるとアメリカではビーチ・シーズン。 なので、それまでに マフィン・トップ(ウエストからはみ出た脂肪)を 人前にさらす事がないようにと、女性も男性も少しでもフィットしたボディになっておきたいと努力し始めるのが 今の季節なのだった。



そんな中、先週のニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載されたのが、個人が頭に描くボディ・イメージについての記事。 これによれば、誰の目から見ても標準体型の人ほど、自分の体型を正確なイメージで捉えているとのことで、 肥満な人ほど 自分を実際より痩せていると思い込みがちであるという。 記事に紹介されていたのは、メキシコで3622人の男女を対象に行なった調査で、 ノーマルな体重の人々は80%が自分のボディ・イメージを正確に把握していたとのこと。 ところが、これが肥満(=オーバーウェイト)の人々になると、その58%が自分をノーマルな体重だと思いこんでおり、 これがオーバーウェイトを超えて 英語でオビース(obese)と表現される 極度の肥満の人になると、 75%もの人々が自分を普通のオーバーウェイトだと考えていることが明らかになっているのだった。
このように、自分が太っていても それを認めない、認めたくないという傾向は、カナダ、アメリカ、ヨーロッパでも顕著で、 子供を対象にした調査でも その結果はほぼ同じとのこと。したがって肥満傾向の人々は、 年令に関係無く、自分を実際の体型より痩せていると思いこむ傾向があると言えるのだった。 特に、実際の体型と自分が抱くイメージのギャップが激しいのは、自分だけでなく、親や友人を含む、周囲も自分も肥満であるケース。
私も以前、どう見ても私より10キロは重たい女性に「私達って同じくらいのサイズよね」と言われてギョッとしたことがあるけれど、 女性の場合、3人に1人が 体重が2.5キロ増えても気付かない傾向にあるという。
ちなみに、服のサイズが1段階アップするのは、体重にして約3キロがアップした場合。 なので、女性のうち3人に1人は それまで着ていた服がパンパンになっても自分の体型は変わっていないと思い込んでいることになるけれど、、 さらに驚くべきは、約10%の女性、すなわち10人に1人の女性は 体重が5キロ以上増えても気付かない、もしくは 体重が増えたとは思っていないことも 調査の結果で明らかになっているのだった。

でも自分のボディ・イメージを正確に捉えている、いないは別として、「痩せたい」という願望は常に女性にはつきまとうもの。 だからこそ、アメリカのダイエット産業は年間10兆円規模のビジネスになっている訳だけれど、 かく言う私は、出生時の体重が3900グラム。幼稚園の頃から「体格が良い」と言われながら育って、 小学校6年生の時には 健康優良児に選ばれたほどなので、自分を「健康」だと思って生きてきたものの、 生まれてから 一度たりとて、自分を「痩せている」と思ったことが無いのだった。
なので、このコラムで何度も書いてきたように、ダイエットを趣味のようにしていて、 ダイエット産業を 随分儲けさせてきた歴史があるのだった。 そのプロセスで、ダイエット・フードやエクササイズ器具の購入でどれだけお金を無駄にしたかは 計り知れないけれど、どうしてそんな無駄を繰り返してしまったかといえば、 答えはたった1つ、「何故太るのか?、どうしたら痩せるのか?ということを理解せずに、楽をして簡単に、そして短時間に痩せようと考えていたため」。


私は 失敗経験が豊富なだけに、時に友達がトライしているダイエットの話を聞いていて、「これでは 痩せないだろうなぁ・・・」とジャッジしてしまう ケースが沢山あるけれど、 ダイエットに一生懸命取り組んでいる人に、水を差すようなことを言うのは非常に失礼なこと。なので、 「ダイエットを続けているけれど痩せない」理由についてのアドバイスを求められた時だけ、 私の経験から悟ったことと、 信頼できる専門家のアドバイスの 共通の見解点をいくつか説明することにしているのだった。
私がよくアドバイスするダイエットの一般知識が以下7点。

  1. 消費カロリー以上に食べていれば、誰でも太る

  2. 同じカロリーを摂取していても、食べ方と 食べる物で体重が増えたり、減ったりする

  3. 体重を落とすために有効なのは、エクササイズよりもダイエット(食事療法)である

  4. 食事療法とエクササイズを組み合わせた方が、体重が早く落とせる

  5. 体重を落とすより、落とした体重を維持する方が遥かに難しく、そのためにはエクササイズが不可欠である。

  6. 全てのエクササイズが減量や体重維持に有効な訳ではない。

  7. 食欲が沸いて、食べ過ぎてしまう人は、ストレスや退屈を食欲と勘違いしているケースが多い


1はあまりに当たり前であるけれど、逆に沢山食べても、運動量を増やして、消費カロリーが増えれば太らないというのは 意外に忘れがちなこと。 水泳でオリンピックの最多メダル獲得記録を持つマイケル・フェルプスは、トレーニング中は 1日1万2000カロリーを摂取するというけれど、 それでも彼の体脂肪は8%。
食べ過ぎた後に昼寝の替わりに、早歩きの散歩をするだけでも体重の増加はかなり防げると言われているのだった。

2については、人間の身体は消化のキャパシティ以上のカロリーを摂取すれば、それが脂肪として体内に蓄積されることは周知の事実。
この消化のキャパシティの目安と言われるのが約600カロリー。なので、同じ1800カロリーを摂取する場合でも、朝食 300カロリー、ランチ 500カロリー、 ディナー 1000カロリーの食生活よりも、朝食 400カロリー、ランチ 500カロリー、午後のスナック 200カロリー、ディナー600カロリー、夜のスナック 100カロリー のように、1800カロリーを5回に分けて、全てを600カロリー以下に抑える方が、食べたカロリーが全てエネルギーとして消費されて、 脂肪として身体に蓄積されることが無いのだった。
実際、シンガーのマライア・キャリーも出産後に、ウェイト・ウォッチャーズのプログラムで 食事を小分けにすることによって体重を落としているのだった。
でも このやり方は、満腹感が得られないので 頭で描くほど簡単ではないのと、カロリーをしっかりコントロールしないと、 食べる度にオーバーカロリーになって、逆に太ってしまうというリスクもあるのだった。

また同じ1800カロリーの食事でも、それを構成しているのが プロセス・フードだったり、人口甘味料などケミカルを含む食品の場合、 それらを含まない1800カロリーより太り易いのは専門家が指摘すること。その理由は、消化機能が食物に含まれている ケミカルの分解に忙しく、肝心の栄養分の消化にまで 手が回らず、その結果、摂取したカロリーが体内に脂肪として蓄積されてしまうため。 なので、これらのフードはカロリーの割りに腹持ちが悪く、太り易いという問題をもたらすのだった。

3と4については、エクササイズだけをして、普通に食べていたら決して痩せないのは私 自らが生き証人。
私はランニング、ヨガ、ウェイトトレーニング、テニスなどで、1週間に8〜10時間のエクササイズをして、 食事は普通に食べているけれど、これだけ運動しても 太りはしないものの、決して痩せもしないのである。
これはもちろん、私が体重の割りに 食べる量が多いためだけれど、 外食が続くなどして、体重が増えかかった時は 運動量は同じでも、食べ物さえ減らせば体重が落ちてくるのである。
ダイエットをせず、エクササイズだけで体重を落とせるのは、以前と同じ食生活を続けながら。 1日1時間走って500カロリーを消費するようなケース。 でも多くの人は、エクササイズをすれば そだけお腹が空くのと、「運動をしている」という安心感で、日頃より多目に食べ物を摂取するので、 痩せないというのが通常なのだった。
ダイエットをしながら、エクササイズもしている場合は、激しいエクササイズは出来ないかも知れないけれど、 身体が 体脂肪を燃焼させることによってエクササイズのエネルギーを捻出しようとするので、脂肪が早めに落とせるのは当然のセオリーなのだった。

そもそも体重というのは3キロ程度なら、誰にでも簡単に落とせるもの。それを5キロ落とそうすれば、遥かに難しくなってくるけれど、 さらに難しいのが 上のリストの5で挙げた体重の維持。
体重の維持で大切なポイントになってくるのがメタボリズム。25歳を過ぎたあたりから、1年に1%ずつ下がっていくのがメタボリズムであるけれど、 エイジング以外で メタボリズムが下がる要因の1つは体重の減少。 例えば40キロの女性と60キロの女性が 全く同じ運動を1時間した場合、沢山カロリーが燃やせるのは60キロの女性。 60キロの身体を動かすために使うエネルギーの方が、40キロの身体を動かすために使うエネルギーより多いのは誰にでも簡単に想像が付くもの。 したがって、60キロから50キロへの減量に成功した女性が居た場合、当然 彼女のメタボリズムは下がっている訳で、 言い方を変えれば、消費カロリーが減っているということ。
なので50キロになって 「減量に成功!」と大喜びをして、以前の食生活に戻ってしまえば、また60キロに戻るのは時間の問題。 だったら、「50キロに減量した際の食生活を続ければ良い」と思うかも知れないけれど、本人がそれを続けているつもりでも 防げないのが体重のリバウンド。
というのも、厳しく禁欲的なダイエットを続けるのには限度があるのに加えて、体重が減っているうちはそれが、精神的な支えになって 厳しいダイエットも我慢できるけれど、それが一段落して、体重が減らなくなった場合、ダイエットに真剣に取り組む気持が失せてきて、 ダイエット中はご法度だった高カロリー、高脂肪、高糖分の食べ物を 味わうようになるのはごくごく自然のシナリオ。
でもエクササイズをすれば、 たまに過食をしても、大きなケーキを平らげても、 過剰に摂取したカロリーを、燃焼することが出来るので、 体重増加を防ぐことが出来るのだった。 加えて、エクササイズは脳のストレス・ホルモンの分泌を妨げるので、食欲をコントロールし、過食をし難い精神状態を実現するもの。 さらに、エクササイズによって筋肉をデベロップすれば、メタボリズムがアップするので、座っていても、眠っていても、筋肉が無い身体より 多くのカロリーを燃やすことが出来るのだった。


しかしながら、上記の6番目で指摘したように、全ての運動に同じ効果がある訳ではなくて、体重を落とす&維持するという目的において効果を発揮するのは、 有酸素運動と、筋力トレーニング。残念ながら、ストレッチ、ヨガ、マシーンを使わないピラテス(マットで行なう初心者用のピラテス)、 ウェイトを使わない体操などは、身体にポジティブな効果をもたらすことはあっても、ウェイトを落とすという効果は望めないもの。
もちろん同じヨガでも、マドンナやスティングが行なっているというアシュタンガのようなハードコアなヨガになれば話は別。 基本的に心臓の心拍数がアップして、筋肉疲労を伴う運動をある一定時間行なわない限りは、体重に効果が現れることが無いのだった。
時に、「10分のランニングは 家事XX分に値する」といったカロリー換算が ダイエット特集に見られるけれど、 エクササイズと家事を消費カロリーで比べるのはかなり無理がある発想。というのも、 エクササイズというのは、家事よりも遥かに筋肉や心臓を酷使するアクティビティなので、エクササイズが終われば 身体は酷使された状態から 回復しようとするけれど、そのリカバリーに使われるのが、運動に使われたのとほぼ同等のカロリー。
したがって、有酸素運動や筋力トレーニングを行なうことは、 実際に運動で燃やしている以上のカロリーを 体内で消費することが出来るのだった。
でもストレッチやヨガは そもそも燃やしているカロリーが少ないのに加えて、 筋肉の疲労や心拍数のアップをさほど伴わないので、 同じように時間を掛けても、体重を落とす&維持するという目的においては効果が望めないもの。
もちろん、ヨガやストレッチには別の効果が沢山あって、だからこそ私も週に2回ヨガに通っているけれど、 痩せようした場合、食事療法を併用しない限りは無理だと思うし、体重を維持するするだけの目的でも役不足。 その証拠に、アメリカでは 多くのヨガの愛好家が ウエストが太くなってきたことを理由に、ランニングをスタートしていることが伝えられているのだった。

最後の7番目、「ストレスや退屈を食欲と勘違いしている」ことについては、”コルティゾン” と呼ばれるストレス・ホルモンが、 食欲を刺激し、脂肪を蓄積する役割を果たすことを思えば、ストレスが食欲を増幅させることが理解できるかと思うけれど、 食欲というのは、原因がストレスであれ、退屈であれ、欲望の一種である限りは人間が自らコントロール可能なもの。
人間にとって、食欲というのは最も頻繁に感じて、最も簡単に満たせる欲望であるけれど、 他にも物欲、性欲など、自然に感じるの欲望が存在するのは周知の事実。
そしてそれらは、何処からともなく沸いてくるけれど、簡単なきっかけで あっさり萎えてしまうものでもあるのだった。 例えば、私の友達はずっと欲しかったクリスチャン・ルブタンのサンダルを買おうと盛り上がっている時に、 銀行から残高が少なくなっているという警告の携帯メールが入り、その途端に すっかり物欲が萎えてしまって、 結局そのサンダルを買わずに終わってしまったという。
食欲にしても「水を一杯飲んで15分待ってから食べる」というルールを設定しただけで、 かなりその欲望が抑えられるのだった。

でも基本的に、身体に必要なカロリー以上の食欲を 感じる場合、精神が退屈している、 もしくは生活が倦怠期に入っているケースは非常に多いと言えるのだった。
例えば、もし 生活が忙しくて、充実している場合、食べることを忘れて打ち込む人は多いし、 熱烈に恋愛をしている人が、体重を落とし易い と言われるのも、食欲よりも 相手への思いで 精神が満たされているから。
したがって、食欲という最も単純で、身近な欲求を 身体のエネルギーのニーズとは別に、精神的に頻繁に感じるという場合は、 情熱を注ぐ対象や、充実感、エキサイトメントが無い生活をしているケースが多いと言えるもの。 食欲抑制剤が、うつ病治療薬に近い成分であるのも、納得がいくことなのだった。
これを、知人に指摘した時に「最近、何も楽しい事が無い」というリアクションが返ってきたことがあるけれど、 私から見れば、彼女は週に5回も友人と外食する時間があって、週末も2日丸々休めるという 夢のような生活。 仕事の給与も悪くないので、いくらでも楽しい思いが出来そうなライフスタイルなのだった。

でも、話せば話すほど彼女の問題点が分かってきたのが、彼女は「エクササイズは嫌いだからしたくない、苦しいダイエットもしたくないけれど、 苦労せずに痩せられるなら 痩せたい」という 努力をしないタイプ。 このため簡単に痩せられるダイエット・ピルを探していて、それがダメなら ライポサクション(脂肪吸引)を真剣に考えると言っていたのだった。
とはいっても、簡単に痩せられるダイエット・ピルなどは存在していないし、 例え ライポクションで脂肪を除去しても、それが決して解決策にならないことは、以前このセクションでもふれたこと。
この手のタイプは 「出来るだけ楽をして人生を乗り切る」という根本的な考えの誤りを解消しない限り、 何かする度に別の問題が浮上する ”もぐら叩き”状態になるのは目に見えていると思うのだった。

私は以前、心理学者の誰かが「最も簡単に幸福感を得たければ、尿意をこらえることだ」と言ったのを読んで、 「なるほど」と思ったことがあるけれど、確かに我慢してからトイレに駆け込んだ時の安堵感は、最も手近に味わえる幸福感。 それと同じことは、全てに言えることで 人間は苦しい思いや大変な思いをするから その後に 幸福感や達成感、充実感を味わえるわけで、 努力をせずに、成果や達成感だけを 良い所取りしようというのは所詮は無理な話。
そうやって、自分を甘やかして退屈な人生を送って、やがては食欲だけが旺盛な人間になっていくのでは、 あまりに悲しすぎると思うのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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