Apr. 24 〜 Apr. 30 2017

Why "13 Reasons Why" Causes Controversy?
今、全米で大物議を醸すドラマ、ネットフリックスの
”サーティーン・リーズンズ・ホワイ”は何故危険なのか?



今週のアメリカは、土曜日でトランプ政権誕生から100日目を迎えるとあって、 過去100日の新大統領の政策にフォーカスが当たっていたけれど、 その”First 100 Days”の節目にロイターのインタビューに対してトランプ氏が語ったのが、 「米国大統領が思っていたよりずっと難しい職務であった」、「もっと簡単だと思っていた」という本音。
同様の本音は、オバマケアこと健康保険改正法案の廃案を試みた際にも 「こんなに健康保険のシステムが複雑だったなんて誰が知っていたか?」というコメントや、 北朝鮮情勢について中国主席の習近平と会談した際の 「話始めた10分後に、この問題がそう簡単に解決しないことを悟った」というトランプ氏のコメントにも 表れていたけれど、アンチ・トランプ派がこうしたコメントに唖然とする一方で、 2016年の選挙時にトランプ氏に投票した人々の90%は、 今も彼を支持していることが伝えられているのだった。




さて先週あたりから全米で大きな波紋を投げかけ始めたのが、ネットフリックスが3月31日に世界同時公開した ドラマ「サーティーン・リーズンズ・ホワイ」。 ネットフリックスでは、同社が製作するオリジナル・ドラマについては1シーズンの全エピソードを一気に公開しており、 話題のドラマを”ビンジ・ウォッチング”(立て続けに観ることを意味するスラング)するユーザーが非常に多いのは周知の事実。

「サーティーン・リーズンズ・ホワイ」のストーリーは ティーンエイジの少女の自殺までのプロセスを描いたもの。 公開以来、このドラマをビンジ・ウォッチングする人々が増え続け、 ソーシャル・メディア上でもバズを生み出した結果、各方面からこのドラマを危険視する声が徐々に上がり始めたのが現在の社会的波紋の発端。
というのも同ドラマ内では、「ティーンエイジャーの性的虐待や虐めの実態を軽視して欲しくない」というクリエーターの意図から、 あえてそれらが生々しく描かれており、ドラマの前にそれについての視聴者への警告が流れるものの、 それでは不十分とネットフリックスに抗議を申し立てているのが全米の教育関係者。
児童心理学者の間では、番組に触発されたティーンエイジャーが自殺を図ることを危惧して、 ネットフリックスに対して放映中止を要請する声が上がっている一方で、 全米の学校関係者はその親達に対して、「子供たちがこのドラマを観ているかをチェックするべき」という警告と共に、 番組を観る場合は親子で一緒に観るようにすることや、エピソードについて子供達とオープンに話し合うことを奨励。 また実際に虐めにあっている子供、自殺願望がある子供には番組を見せないようにとの通達をしており、 カナダの学校ではこの番組の視聴自体が禁止されているのだった。

とは言っても「サーティーン・リーズンズ・ホワイ」の原作(写真上左)が出版されたのは2007年のこと。著者は自ら虐めと自殺未遂を経験した ジェイ・アッシャーで、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーに ランクインしたのは2011年のこと。 その原作をティーン・アイドルのシンガー、セリーナ・ゴメス(写真上右、中央)を主演に映画化する目的で ユニヴァーサル・ピクチャーズが版権を手に入れたものの、その後TVドラマとしてのシリーズ化に方向転換。 セリーナ・ゴメスはエグゼクティブ・プロデューサーに回っているのだった。
したがって、原作のストーリー自体は決して新しい訳ではないけれど、 アメリカの教育関係者や親たちが、このドラマに対して過剰反応する理由は、 年々虐めや虐待が増え続けた結果、 現在のアメリカにおいて、自殺が事故に次いでティーンエイジャーの死因の第2位になっているため。 アメリカ国内では、毎日5000人のティーンエイジャーが自殺未遂をしていることが伝えられており、同ドラマが自殺をグラマライズして描くことにより、 虐めや性的虐待に悩むティーンに対して「自殺が問題の解決策」というアイデアを与えることを懸念する声が高まっているのだった。




ではこのドラマがどんなものであるかと言えば、メイン・キャラクターとなるのはごく普通の高校生、クレイ・ジェンセン(写真上)。 ある日彼が学校から戻ると、彼宛てに荷物が送付されており、その中に入っていたのが7本のカセット・テープ。 そのテープには、つい最近自殺を遂げたクラスメート、ハナ・ベーカーによるメッセージが録音されているのだった。
7本のテープのA面、B面には、ハナを自殺に追いやった13人の人物が彼女にしたことが それぞれテープの片面ずつに語られており、 テープはクレイだけでなく、様々な人物に送付されているのだった。

1本目のテープのA面に録音されていた人物はジャスティン。ジャスティンに好感を持っていたハナは、ある日ジャスティンはキスをしたけれど、 彼が友達に彼女とそれ以上の関係になったというウソを言いふらしたために、学校で瞬く間に広まったのがハナが ”Slut(スラット/誰とでもOKの尻軽という意味のスラング)”だという評判。

1本目のテープのB面に録音されていたのはハナのクラスメートで警官の息子、アレックス。アレックスはクラスの女子生徒の ”ホット&ノット・リスト”を作り、自分をふった元ガールフレンドのジェシカには その腹いせに”Worst Ass(アス/お尻の下品な表現)”というタイトルを、 ハナには ”Best Ass”のタイトルを与え、そのせいでハナが ”Slut”だという校内の評判が益々エスカレートするのだった。

2本目のテープのA面、すなわちハナを自殺に追いやった3人目の人物として録音されたのはジェシカ。アレックスの”ホット&ノット・リスト”で ハナと比較され、”Worst Ass”の評価を受けたジェシカは、 八つ当たりでハナを引っぱたき、ハナの顔に傷を残しただけでなく、それまでの2人の友情関係に一方的に終止符を打ったのだった。

その裏のB面に録音されたのは、ハナのクラスのイヤーブック(写真集)のフォトグラファーをしていたタイラー。 タイラーが自宅のベッドルームの窓から自分を盗撮しようとしていたことに気付いたハナは、クラスメートのコートニーと共に タイラーの盗撮現場を押さえようとプラン。 しかしそのコートニーは実はレズビアンで、 ハナのベッドルームで彼女にキスをしてきて、その様子がタイラーによって盗撮されてしまう。 そしてタイラーはスクープとばかりにそれを学校中に公表するのだった。

3本目のテープのA面に録音されていたのは、タイラーの盗撮現場を捕らえるためにハナが頼りにしたコートニー。学校では ハナのキスの相手がレズビアンであることをオープンにしているローラであるという噂が流れており、 それが自分であることがバレるのを恐れたコートニーは、自分を守るためにハナとジャスティンに関する あらぬ噂をでっち上げ、ハナの校内での評判をさらに悪化させるのだった。

そのB面に、ハナを6番目に自殺に追いやったとして録音されていたのは、校内で流れたハナが”Slut”だと言う噂を信じて彼女にアプローチしたマーカス。 簡単に自分と寝てくれると思っていたハナとヴァレンタイン・デイにデートをしたマーカスは、 ダイナーのブースでハナに言い寄るものの拒まれ、公にハナのことを「ヴァレンタインのたった1ドルのデート相手」と侮辱するのだった。


4本目のテープのA面、7番目の人物として録音されたのは、マーカスがハナを中傷した直後に彼女を慰めるふりをして近寄ったザック。 しかし彼はハナをデートに誘って断られたため、その復讐にハナのクラス・プロジェクトである ”ポジティブ・ノート(ハナがクラス全員に ポジティブなメッセージと感謝を書いたカードを封筒に入れて渡すというプロジェクトで、ハナが彼女にとってのハイライト・イベントだと思っていたもの)” の封筒を盗み、プロジェクトを台無しにしたのだった。

そのB面に8番目の人物としてテープにフィーチャーされたのは、自らが書いたポエムでハナの心を開き、彼女の信頼を獲得したライアン。 彼はハナにもポエムを書くようにと促し、ハナが自分の問題や心情を赤裸々に表したポエムを書くと、 それを「誰にも公表したくない」という彼女の意思を無視してハナから盗み、無記名でスクール・マガジンに掲載するのだった。 やがてクラスメートによってそのポエムを書いたのがハナであることを突き止められてしまい、 ハナはさらに校内でからかわれ、辱めを受けることになってしまう。

5本目のテープのA面で9番目に登場したのがクレイ本人。ハナに惹かれていたクレイは、ハウス・パーティーで彼女とキスをして 親密になりかけるものの、ハナは突然落ち込んで1人なりたいと言い出し、クレイはその場を去り、ハナはその後1人で泣き始めるのだった。 ハナはテープの中で、クレイがテープを受け取るに値しないこと、彼が自分を自殺に走らせた訳ではないこと、 クレイが彼女にとても良くしてくれて、もっとお互いを知る時間があれば良かったことなどを語りながらも、 その後彼女に起こったことを語る上で、彼をテープを受け取る人物のリストに加えることが大切だと説明するのだった。

そのB面で10番目の人物となったのは 再びジャスティン。パーティーでクレイがハナを残して部屋を出た後、ハナは部屋のクローゼットに隠れているうちに そこでクラスメートのブライスがアルコールで気を失ったジェシカを、彼女のボーイフレンドであるジャスティンの許可を得て、 レイプする様子を目撃してしまうのだった。

6本目のテープのA面でハナが録音したのは、そのハウス・パーティーから車でハナを家まで送ってくれたチアリーダーのシェリについて。 その道中 2人は軽い交通事故に遭い、シェリは”Stop”の標識を倒してしまうものの 警察に通報せず、それが原因で クレイの親しい友人であるクラスメートが交通事故で死亡することになってしまう。

その裏のB面で12番目の人物として語られていたのはブライス。親から預かったキャッシュを失くしてしまったハナは、 ブライスの家で行われていたハウス・パーティーに出掛けることになり、運悪く彼と2人きりになってしまう。 そしてその場でブライスはハナをレイプするのだった。

最後7本目のテープのA面で、13番目にして、ハナの自殺の最後の責任者としての事実が明かされたのは、 スクール・カウンセラーのポーター。 ハナはポーターに、ブライスの名前を明かさずレイプの犠牲者になったことを 彼に相談し、「死んでしまいたい」 という危機的な心情を明かすものの、 彼女の校内での評判から「レイプを信じてもらえるはずはない」、 「何も起こらなかったと思って、そのまま過ごすべき」として取り合わなかったのがポーター。 だがハナはこの会話を密かにテープに収めていたのだった。

ネットフリックスのシリーズでは、1本のテープの片面にフィーチャーされた1人のキャラクターにまつわるストーリーが1エピソードとなり、 全13エピソードのシリーズ構成。 各エピソードの中では、ハナの語りと共にそれを聞いたクレイが起こすアクション、それに反発したり、無関心を装ったり、追い詰められたりする クラスメート達のリアクション等が描かれ、クレイは7本目のテープのB面にハナをレイプしたブライスの自白を録音することに成功。 シリーズの終盤では、アレックスが自らの頭部に銃弾を浴びせて自殺を図り、ジャスティンが罪悪感から 街を出る決心をする一方で、この13人のリストがハナの母親、オリヴィア・ベーカーの手に渡り、 ベーカー家が学校を相手取って起こした訴訟にそのリストの全員が証人として喚問されることが明らかになるのだった。

そして同シリーズは、クレイがハナ同様に自殺願望があると思しきクラスメート、スカイに歩み寄るところで終わりを迎えているのだった。




上はネットフリックスのシリーズのトレーラーであるけれど、「サーティーン・リーズンズ・ホワイ」はフィクションとは言え、 これほどまでにハイスクールが裏切り、虐め、レイプなど非道徳な行為と、それをする学生で溢れているのか?と 疑ってしまうけれど、 子供がハイスクールで虐めに遭っていて その実態を知る親たちや、実際に虐めの犠牲者になっているティーンエイジャーにとっては、 このシリーズはかなりのリアリティ。 実際、自らがティーンエイジャーとして虐めに遭い、自殺未遂をした経験があるマイケル・ジャクソンの娘、 パリス・ジャクソンも、同シリーズを観て 彼女の暗い過去に引きずり戻される思いをしたことをコメントしているのだった。
ネットフリック側は、親たちや教育関係者から寄せられる批判に対して「虐めに苦しむティーンに、それが自分だけではないことを 感じてほしい」こと、そして「死を選択する前に周囲に助けを求めるべき、虐めや虐待についてもっとオープンに話し合うべき」という 製作側の意図とメッセージを打ち出して、それ以上の対応やコメントを避けているのだった。

私自身も、同ドラマが虐めを受けているティーンエイジャーに与える影響を危惧する声は理解できるけれど、 それは自殺をグラマライズしているからというよりも、このドラマによって ティーンエイジャーが自殺を周囲への復讐やその実態を暴くための手段と考えてしまうリスクがあると思うため。 事実アメリカでは、過去に何度も自殺したティーンエイジャーが 自分を追いつめた人間たちをその遺書で告発するケースが起こっており、 こうしたティーンにとっては自殺というものが 自分を苦しみから解き放つと同時に、自分を苦しめた人間たちに報復するための 解決策として捉えられているのだった。

それとは別に、今週はネットフリックス自体が事件の犠牲者になる事態が起こっているけれど、 それはネットフリックスの人気オリジナル・シリーズ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」の未公開の最新シーズンの10エピソードが、 ハッカーによりインターネット上で無料で違法公開されてしまったという事件。 ハッカーは事前にネットフリックス側に”身代金”を要求していたものの、同社が期限までにそれを支払わなかったことから 違法公開に踏み切ったもので、このハッキング・チームは今後Fox等、TV局もターゲットにすることを犯行声明で宣言しているのだった。
ネットフリックス側は、このハッキングが番組制作に絡むスタジオ側に対して行われた行為であると説明し、 現在FBIが捜査中であるとコメントしているけれど、 サイバー・クライムもティーンエイジャーの虐め同様、どんどん悪質なものになってきているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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