Apr. 27 〜 May. 3 2009




” メディア・インフルエンザ ”


今週のアメリカでは最も大きく報道されていたのが、スワイン・インフルエンザ A (H1N1) こと、豚インフルエンザのニュースであったけれど、 ニューヨーカーを最も恐れさせたのは、月曜に起こったエアフォース・ワンのジャージー・シティ〜マンハッタンのグラウンド・ゼロへの 超低空飛行。
このため 9・11のテロの再来を恐れた人々が、オフィス・ビルから大挙して避難し、現場は言うまでも無くパニック状態になったけれど、 蓋を開けてみれば、これはホワイト・ハウスがエアフォース・ワンのPR写真を自由の女神をバックグラウンドに撮影していただけということが 後になって明らかになり、ニューヨーカーもニューヨークのメディアも 事前の告知も無しに、 このような馬鹿げた撮影が行われたことに 非常に腹を立てていたのだった。
この撮影についてはブルームバーグNY市長も知らされておらず、唯一情報が通達されていたNYPD(ニューヨーク市警察)に対しては、 同撮影についての情報公開を硬く禁じる指示が行われていたとのことで、 NYPD側は 「今後は同様の通達がホワイトハウスから来ても、無視して市民に警告する」とコメントしていたのだった。

一方の豚インフルエンザについては、週の前半は感染を恐れた一部の人々のオーバーリアクションが目立っており、 タイムズ・スクエアのオフィス・ビルでは、そこに勤務する女性の1人が風邪の症状を訴えて帰宅したことが、ビル全体にEメールで通達されたという。 でも翌日になって、その女性はインフルエンザではあったものの、豚インフルエンザではなかったという Eメールが配信され、 それ以降はビル側も、正式に感染が確認されるまでは リアクションを起こさないことにしたという。
でもこれに代表されるように、多くの病院や医療クリニックには、「自分は豚インフルエンザではないか?」という人々が殺到し、 「病院に行く方が、感染の危険が高いのでは?」 と冗談交じりに言われていたほど。 でも実際には 豚インフルエンザどころか、全くウィルスに関係無い 単なる風邪の症状と診断される人も多く、 週半ばには 「本当にインフルエンザの症状が無い人は、救急病院に行かないように」という呼びかけが行われていたような状態。
その一方で、豚インフルエンザのことを さほど気にかけて居ないニューヨーカーも多く、 とあるメディアに雇われたフォトグラファーは、街中でマスクをしている人を見つけて写真を撮影するのに、40分も掛かったといわれているのだった。 すなわち、それほどまでにマスクをしている人が少なかったのがニューヨークという訳だけれど、 それでもドラッグ・ストアは子供が居る人々を中心に、マスクを買い求める人々が多かったそうで、 実際、豚インフルエンザは 子供やティーンエイジャーの感染者が圧倒的に多いと言われているのだった。

アメリカの疾病予防管理センター(CDC)の発表によれば、アメリカで現在確認されているスワイン・インフルエンザ A (H1N1) のケースは 153。そのうち死亡は乳幼児1人とのことで、この数字は通常のインフルエンザに比べると全く恐れるに足りないものであったりする。
というのもアメリカでは2009年に入ってから、現在までの4ヶ月間で、通常のインフルエンザで死亡した人々の数は既に1万5000人。 これは今年に限った数字ではなく、アメリカでは毎年3万6000人がインフルエンザで命を落としているという。 でも、もちろんこの中には既に病を患っていて、インフルエンザが引き金になって死亡する人々の数も含まれているとのこと。
したがって、週の半ばには医療の専門家が スワイン・インフルエンザよりも通常のインフルエンザの方が危険度が高いと それまでのCDCやWHOとは異なる見解をメディアを通じて述べるようになっており、 多くのアメリカ人は、 通常のインフルエンザが いかに恐ろしい病気であったかを、この機会に学んだような 状態だったのである。

それと同時に、豚インフルエンザの感染を恐れたアメリカ人が、やっと着眼し始めたのが日頃何気なく触れている場所がいかに 汚く、バクテリアだらけであるか ということ。
豚インフルエンザ報道がスタートしてから、一部の過剰反応を示した人々がエレベーターのボタンやバスの手すりに触れることが出来ない といった状況が報じられていたけれど、実際、私が 豚インフルエンザが騒がれる前のニュース報道で知ったのが、 トイレのドアノブより バクテリアが多いのが、エレベーターのボタンや日頃使っている コンピューターのキーボード であるということ。私はこの報道を観て、慌ててキーボードを掃除したのを覚えているけれど、 それによれば 職場のデスクでランチを取るのは トイレでランチを食べるよりバクテリアが混入するチャンスが多いという。 この報道で 最もバクテリアが多かったと言われていたのは、銀行のATMマシーン。 そもそもお金というものは それほど清潔なものではないと言われるけれど、それを引き出すATMのタッチスクリーンは、 機械が暖かいことも手伝って、ダントツでバクテリアが多いと報じられていたのだった。

ところで、アメリカではインフルエンザという言葉の替わりに、その省略語である「フルー」という言葉が一般的に使われるけれど、 これは インフルエンザ の 真ん中の部分で、英語で最も強く発音する部分から来た言葉。 語源は 「Infruence / インフルーエンス(影響)」であるという。
4月29日水曜には CDCが 現在アメリカで流行しているインフルエンザは スワイン・フルー(豚インフルエンザ)では無いとして、 その名称を ウィルスの型を示す ”H1N1” に変更しており、 ちょうど この日 大統領在任100日目を迎え プレス・カンファレンスの模様がTV中継されたオバマ大統領は、 早速 スワイン・フルーを ”H1N1” という訂正後の名称で呼んでいたのだった。
でも他のメディアの多くは、週末になっても 「スワイン・フルー」 という言葉を用いており、この名称についての メディアの足並みは全く揃って居ないのが実情。 CDCの発表によれば 、 ”H1N1” は鳥インフルエンザと人間のインフルエンザ、豚インフルエンザのミックスだそうで、 このためスワイン・フルーという言葉を使わないことにしたというけれど、 実際には これがきっかけで豚肉の売上が下がることを懸念した 養豚業者からの圧力も強かったようである。
メディアが訂正を無視して 「スワイン・フルー」という言葉を使い続ける一方で、 今週私が話した友人を含むニューヨーカーは、同インフルエンザのことを 「ピッグ・フルー」、「ポーク・フルー」などと 小馬鹿にしたネーミングで呼んでおり、 感染についても それほど心配はして居ない様子なのだった。
それどころか、「これはメキシコ潰しの世界的陰謀だ」とか、 「ワクチンで儲けようとする製薬会社と、それに乗じて儲けようとするウォールストリートの陰謀だ」 という説を唱える人も居たけれど、 確かに これだけ数字的に大したことの無いインフルエンザに、世界中が大騒ぎになったのはメディアが 「パニックにはならないで下さい」と 言いながらも危機感を大いに煽っていたため。 しかしながら、その危機感も木曜にはかなり冷めてきて、この日にギャラップ・ポールが行ったアンケート調査では、 「豚インフルエンザに掛かることを危惧している」と答えたのは25%、感染を恐れて、人ゴミや地下鉄に乗るのを避けていると 答えたのは僅か4%になっていたのだった。
またメキシコで、多数の死者が出たことについても、ウィルスの毒性よりも 「メキシコの医療体制や衛生問題が原因」と指摘する専門家も多いのが実情で、 私がこれを書いている5月3日、日曜には メキシコ、及びアメリカ国内での 豚インフルエンザが終焉に向かっていることがメディアで報じられているところである。

今回の豚インフルエンザ報道で、個人的に面白いと思ったのは イスラエルが 豚インフルエンザのネーミングを宗教上の理由から変更したというニュース。 イスラエルと言えばユダヤ教国家であるけれど、ユダヤ教には Kosher / コーシェル という食事規定があって、豚は食べてはいけない 動物に指定されているのだった。 なので敬虔なユダヤ教徒は豚肉を食べないものだけれど、豚インフルエンザに掛かることも ユダヤ教の教えに背くと見なされるようで、名称をメキシカン・インフルエンザに変更したというのがその報道だったのである。

かく言う私は、今週、豚インフルエンザに掛かることなど、殆ど心配せずに普通に生活していたけれど、 たった1つ、豚インフルエンザの影響で延期したのが ボディ・クレンジングである。
3月末に日本への一時帰国から戻った私は、日本で増えた体重を減らそうとダイエット&エクササイズを再開したけれど、 日本行き前の体重に戻ってからというもの、それ以上はなかなか体重が減らないのである。 これはもちろんエイジングによる新陳代謝の低下もあるかも知れないけれど、 これから薄着の季節を迎えるにあたって、やはり もうちょっと痩せていた方が気分が良いということで、 ダイエットに弾みをつけるための2日間のボディ・クレンジングを試みようと思っていたのである。
ボディ・クレンジングは通常は季節の変わり目に、それまで体内にたまった毒素を除去するための デトックス目的で 行われる場合が多いけれど、ダイエットをする場合にもボディ・クレンジングが有効なのは、 消化器官に休息を与え、その機能を高めることによって、体重が落としやすい身体になると言われているため。
でも、2日間に摂取できるのはレモネードやハーブ・ティーだけ。 そうなると栄養が取れない分、身体の抵抗力が低下することは目に見えている訳で、何も好き好んで 豚インフルエンザが騒がれている時に 身体の抵抗力が下がることをする必要も無いのでは?と思って 延期してしまったのだった。
クレンジングについては、実行したらこのコラムにも書こうと思っているけれど、 以前実行した10日間のクレンジングは とにかく苦しくて、更にクレンジングが終わって食べ物の量を増やしていく際に 食欲がコントロールできなくなって、逆に体重が増えるという苦い経験をしているのだった。
なので 10日間といった長いクレンジングはやりたくないと思っていたけれど、 幸い、今度CUBE New York でも取り扱うことにした、デヴィッド・カーシュのクレンジングは2日間のコースや、 食事は通常通りにして 錠剤を飲みながら行う5日間のコースなど 仕事をしながらでも出来る ストレスにならないプログラムが組まれており、ダイエットのためにもに 是非ともトライしてみようと思っているのだった。

その一方で、豚インフルエンザに関係なく実行したトライアルが、サンレス・タンニングのスプレーである。
先週末のニューヨークが夏のような陽気だったので、ストラップレスのドレスとサンダルで出かけようと思った私は、 先ず先週土曜日に第1回目のスプレーをしたのだった。
使用したのはCUBE New York でも扱っている リンジー・ローハンとロリット・サイモンがコラボレーションでクリエイトしたナイン・セブンで、 これはインスタント・ブロンザーとサンレス・タンニングがミックスされたスプレー。 私は本来あまりセレブリティがらみのプロダクトは信用しないタイプだけれど、ロリット・サイモンという人は サンレス・タンニングの世界ではかなり有名な人で、その実績を信頼してトライすることにしたのだった。 このプロダクトの利点は、インスタント・ブロンザーが入っているお陰で、出かける前にスプレーして直ぐ日焼けが実現されること。 すなわち、「サンダルを履いて出かけようとしたら、脚が白すぎる」といった時に、直ぐに肌が小麦色になって、しかも スプレーが付着した肌はサンレス・タンナーで徐々にカラーが出てくるので、 シャワーを浴びるとインスタント・ブロンザーは流れ落ちても、その後の肌も小麦色になっているというプロダクトなのである。
でもスプレーをしすぎると、インスタント・ブロンザーが汗で流れたりして、白い服を着用するとシミになることもあるようなので、 出かける前のスプレーは、日焼けを補う程度にして、自宅で4時間くらい過ごす際にスプレーをして、寝る前に洗い流すというのが 良いようである。
もう1種類、今週に入ってから 私が トライしたのは、別のブランドのサンレス・タンニング・スプレーで、こちらはインスタント・ブロンザーが入っていない無色。 リンジー・ローハンのプロダクトよりも日焼けの色が出てくるまでの時間が長く、スプレーをしてから6時間はシャワーを浴びてはいけないプロダクトである。
大体、小麦色の肌は6〜12時間かけてデベロップされるとのことだったけれど、 無色な分、どの程度肌にスプレーが付着したかが良く分からず、10時間くらいが経過すると、身体がホルスタイン状態のまだらの日焼けになっていたので 唖然としてしまったのだった。 なので、インスタント・ブロンザーが入っていて、どの程度肌にスプレーされたかが分かるリンジー・ローハンのプロダクトの方が、 セルフ・スプレーをする場合には失敗が少ないように思ったのだった。
しかも、リンジー・ローハンのセブン・ナインにしても某ブランドの無色のプロダクトにしても、驚いたのはスクラブを何回やっても 簡単に色落ちしないこと。なので、1回スプレーすれば軽く5日〜1週間は日焼けが持続するけれど、その反面、 私のようにホルスタイン状態のまだらの日焼けになってしまった場合、毎日スクラブをしても1週間はその状態が続くことにもなるのだった。 でもこの失敗を通じて、 昨今のサンレス・タンニング・スプレーの進化にはチョッピリ驚いてしまったのが正直なところである。
どちらのプロダクトも使いこなしのポイントは50cmくらい離して スプレーすること。 また1回で理想の小麦カラーにスプレーしようとすると、本物の日焼けのように肌が痒くなる場合があるようで、 1日1回、薄っすらスプレーするセッションを、理想のカラーになるまで続けて、その後は週に1回のメンテナンス・スプレーを続けていくのが 美しく、長持ちする日焼けの秘訣のようである。

スプレー・タンの良いところは、肌にダメージを与えずに日焼けを実現できることだけれど、 もう1つは小麦色の肌の方が痩せて見えること。
私は、ジムのプールで週に4回程度泳いでいるけれど、スプレー・タンをしてからというもの、 ライフ・ガードやウォーター・エアロビックスのインストラクターから 「痩せたね」 と立て続けに言われて、 すっかり気分が良くなってしまったのだった。
今週会った友達も、直ぐに私の肌が焼けているのに気付いて 「メキシコに行ってたんだったら、正直に教えてね」 などと言われてしまったけれど、彼女は本物の日焼けだと思ったそうで、 「フェイク・タンでもこんなナチュラルなカラーになるのね」と妙に感心してくれたのだった。

さて、話をインフルエンザに戻すと、先述のようにアメリカ国内では通常のインフルエンザで毎年3万6000人が命を落としているけれど、 それよりも遥かに多い、年間5万人の命をアメリカ国内で奪っているのがセカンドハンド・スモークである。
すなわちノンスモーカーが喫煙者の煙を吸うだけで、毎年5万人が命を落としている訳で、その多くが心臓病、 約3500件が肺がんであるという。
またアメリカ国内ではセカンドハンド・スモークが原因の18歳以下の青少年の喘息や呼吸器障害は年間15〜30万件報告されているとのことで、 毎年430人の乳児がセカンドハンド・スモークが原因のSIDS(乳幼児突然死症候群)で命を落としているという。

そんな中、最近アメリカで問題視され始めているのが、”サードハンド・スモーク”。 これは、直接煙を吸い込まなくても、タバコの煙に含まれるトキシックな粒子が髪の毛や服、カーテン、カーペットやクッション等に付着し、 人体、特に幼い子供の健康に悪影響を与えることを指す言葉である。
具体的にどんな毒素が含まれているかと言えば、カルシノジェン(2006年にロシアの元スパイ、アレクサンダー・V・リトヴィネンコ殺害に 使われた毒薬)、微量ながらも放射性物質、そして鉛等が、タバコの煙に混じって衣類や髪の毛、インテリア・ファブリックに付着すると言われているのだった。
したがって、子供が生まれてから 家の中でタバコを吸わないようにしたところで、壁紙、カーテン、カーペットまで全て張り替えない限りは防げないのがサードハンド・スモークである。 セカンドハンド・スモークのバロメーターが煙であるのに対して、サードハンド・スモークのバロメーターとなるのは匂いで、 例え 誰もタバコを吸っていなくても、その匂いがするところに居る状態はサードハンド・スモークであるという。 すなわち、外でタバコを吸って戻ってきたオフィスの同僚とエレベーターに乗り合わせて、タバコの匂いを感じたら、それも サードハンド・スモークということになる。
私は以前、母と旅行をした際、 誤ってホテルの喫煙者用の部屋に通されて、あまりのタバコ臭さに そこに5分と居られず、直ぐに 部屋を替えてもらったことがあったけれど、タバコを吸う、吸わないに限らず、人間の脳はタバコに含まれる毒物の匂いを 嗅ぎ取ると本能的に危機感や不快感を覚えるという。 なので、喫煙者でも 時にタバコの煙や、その匂いを嫌う人が居るのは、人間が自分を守ろうとする本能のようである。

そう考えると、現時点でアメリカ国内でたった1人の死者しか出て居ない 豚インフルエンザ で大騒ぎするならば、 それよりもずっと多くの死者や、喘息などの病をもたらしているセカンドハンド・スモークやサードハンド・スモークに それ以上の危機感を抱くべきだと思えるけれど、 病気や健康障害も 言ってみればセレブリティと同じ。
その時々のメディアで騒がれているものの方が 実力(=実際の被害)に関わらず 人々の関心を集めるのである。





Catch of the Week No. 4 Apr. : 4 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Apr. : 4 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Apr. : 4 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Apr. : 4 月 第 1 週







執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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