May. 2 〜 May. 8 2005




米国男女関係事情



4月 第2週目のこのコラムの「Man & Date」で、現在マンハッタンではシングル男性1人に対して シングル女性5人の割合と書いたところ、この数字に関しては NYと日本に住むシングル女性から何通ものリアクションを頂いたけれど、 何故かアメリカという国は、この「1:5」の男女比に限らず、恋愛状況がまるで 国民総生産のように数字になって現れたり、 トレンドとして分析されて、メディアを通じて発表される社会である。

例えば、保健衛生局の調べによれば、「今、アメリカ国内で、最も急速にエイズが増えている年齢層は50代」というデータがあるけれど、 これは女性側は閉経によって避妊の必要がなくなり、男女とも 50代にもなって、 まさかパートナーがエイズに感染しているなどとは思っていないために、 プロテクションの無いセックスをしてエイズに感染する例が増えているからだという。

その一方で、ABCニュースの報道番組、「プライム・タイム」によれば、現在アメリカに住む40歳〜70歳の女性の3分の1が、 自分よりも8歳以上年下の男性と交際をしているというデータが得られているという。
この 年上の女性が自分よりずっと若い男性と交際するトレンドの走りと言えるのは、デミー・ムーア (42歳) と アシュトン・クッチャー (27歳) の 15歳年が離れたカップル(写真右)であるけれど、この背景にあるのは 以下のような事実であると言われる。

・ 女性の収入が増えてきたため、経済力を目当てに同年代や年上の男性から相手を選ぶ必要がなくなった。
・ 若い男性と付き合うことによって、自分に未だ魅力があると自覚することができる。
・ 若い男性に対しての方が、純粋な恋愛感情が湧く。


一方の若い男性側にとって、年上の女性と交際するメリットとしては・・・

・ デートが割り勘、もしくは女性側の払いになる。
・ 悩みを聞いてもらうなど、精神的なサポートや安らぎが得られる。
・ 見栄を張らずに付き合える。

などが挙げられるというけれど、女性側がデミー・ムーアのようにボトックスやライポサクション (脂肪吸引) で、年齢を感じさせない外観であっても、 なくても、年上女性と年下男性の交際のキーワードになっているのは、男性が基本的に女性の中にに求めている「母性」である という指摘も聞かれている。
とは言っても 見方を変えれば、40歳以上のシングル男性は、往々にして 自分より遥かに若い女性との交際を望んでいる例も少なくない訳で、 40歳アップの女性は、同年代の男性からは、時に恋愛対象として年を取り過ぎていると見なされる場合も多いようである。

考えてみれば、「40歳以上が、自分よりも8歳以上年下と付き合い始めた」というのは、女性であるからニュースになる話であって、 男性の側にしてみればこんなことは決して珍しい現象でも何でも無い訳で、女性が経済的な安定や社会的地位を求めて、自分よりも ずっと年上の男性を求める傾向は、男女間の歴史に長く刻まれているものである。
でもこの傾向も、少なくとも都市部では 昨今の社会状況を反映して変化が起こりつつあり、 マンハッタンのプリナップ (プリナプチャル・アグリーメントの略称、結婚前に夫婦が取り交わす協約のこと) を専門に扱うロイヤーによれば、 40代後半〜60代の経済的に非常にリッチな男性が再婚する場合、以前は若さと美しさ、扱いやすさ求めて20代の女性を選ぶケースが顕著であったというけれど、 現在はキャリアを持った30代アップの女性の方が結婚の対象として選ばれる傾向が強く、しかも結婚生活自体も長続きするのだという。
これは、40代後半以上の男性になると、既に1〜2回の離婚経験者で、以前の結婚で 既に何人かの子供を儲けている場合が殆どであるため、たとえ 再婚をしても、 今更、相手の女性に子供を産まれて、また1から子育てをするのは、彼らが最も避けたい事であるという。 これが20代の女性を妻にした場合、プリナップで「子供は作らない」という協約にサインをしておきながら、やがて子供を欲しがるようになったり、 妊娠がきっかけで、夫婦間がこじれる場合が多いのだそうで、逆にこれが30代アップのキャリア・ウーマンであると、 妻本人が子供を産む気持ちなど さらさら持っていない場合が多く、夫に子供をせがまれないことが、子供の居る離婚経験者と結婚する メリットであるとさえ考えていたりするので、夫婦間の問題が起こり難いのであるという。

かつては、リッチで年上の男性が、若く、美しい女性と結婚すると、男性にとって女性は「トロフィー・ワイフ」などと見なされ、 女性は社会的には「ゴールド・ディッガー」(直訳すれば「金鉱掘り」であるけれど、これはお金目当てでリッチな男性と結婚する若い女性のこと) と見なされてきた訳であるけれど、これがまかり通ったのは ミレニアム以前の話。 昨今では、リッチな男性の間でも、女性がどんなに若く、美しくても 「ゴールド・ディッガーに捕まった」というのは、ある種の恥と見なされる時代になってきたと言われている。
それを立証するかのように、今年1月にモデルのメラニア・クナウス嬢 (31歳)と結婚したニューヨークの不動産王、ドナルド・トランプ (58歳)も、 メラニアが彼と出会った時は、既にモデルとして様々な雑誌や広告に登場して、かなりの収入を上げていたことを説明し、 「彼女はゴールドディッがーではない」と強調していたのだった。
すなわち、リッチで年上の男性達も、お金とパワーに物を言わせて女性を勝ち取ったのではなく、「自分の魅力で女性を惚れさせた」、 要するに、女性が打算ではなく恋愛感情で結婚したことをアピールしたがる時代になってきているのである。

とは言っても、実際のところは こうしたハイソサエティでも、一般庶民の間でも「自分に都合の良い打算的な付き合い」というのが、 男女関係のメインストリームと存在しているようである。
私は数週間前に、風邪をこじらせて、自宅で「ピープルズ・コート」という、民事ケースをスタジオ内の法廷で裁く番組を見ていたけれど、 そのケースの殆どが、年齢が20歳前後 年下の女性と付き合って、捨てられた男性が、交際中に彼女のために支払った家賃や、生活補助等の 返金を求めたものだった。これらに対する判事の共通した見解は、「自分の年齢に不相応なほど若い女性と付き合うから、 彼女を金銭的にサポートしなければという状況になる」 というものだったけれど、 女性側からは「若い自分と付き合えるのだから、これくらい支払って当然」という態度が見え見えであったし、 男性側も見た目にもパッとしない年老いたルックスで、法廷で「お金を返せ!」とは訴えているものの、 「金銭的なサポートをしなかったら、若い女の子が自分について来ない」ことを自覚しているのは明らかであった。

一方、男性側にとって「自分に都合の良い打算的な付き合い」の代表格と言えるのは、昨今の「ハウスワイフ・ブーム」と呼ばれるものである。
これは昨年からスタートしたABCテレビの超視聴率番組、「デスパレート・ハウスワイブス」の影響が大と見られるトレンド。 この「デスパレート・ハウスワイブス」は、「セックス・アンド・ザ・シティ」が都市部のシングル・キャリアウーマンのリアリティを描いたストーリーであったのに対して、 舞台は郊外の住宅地、メインキャラクターはシングル・マザーを含むハウスワイフ達で、あり得そうなエピソードと、あり得ないような事件を 織り交ぜたストーリーになっている。
このメインキャラクターの5人は、今年のゴールデン・グローブ賞の際も別格のスター扱いがされていたけれど、この番組の 大人気のせいで、昨年からのアメリカでは ハウスワイフが 男性にもてはやされるようになっているのである。 理由は、シングルの男性にとって ハウスワイフはデートに連れて行かなくて良い、まめに電話を掛けたり、花をプレゼントしたりといったメンテナンスが必要無い、 簡単に別れられるというメリットがあり、既婚男性にとっては、 お互い浮気なので、罪悪感が無く、割り切った付き合いが出来るというメリットがある と言われているけれど、結局のところ恋愛の面倒な部分をカットして、セックスだけの関係が持てるところが、 ハウスワイフ人気の背景というのである。
このブームを裏付けるように、出会い系サイトに「ハウスワイフがセックス・パートナーを探している」というメッセージを載せると、 1日80通ペースでレスポンスがあるのだそうで、メールをしてくる男性側は既婚、未婚のミックスであるという。


こんな、ロマンス不毛地帯のような話を書いてしまうと、またシングル女性達からの絶望のメールを頂戴してしまうかもしれないけれど、 そもそも希望というのは現実を直視することから見出されるべきものである。 だから現実を直視することによって 希望が持てなくなる、希望を捨ててしまうというのは、人生上の大きな間違いなのである。


Catch of the Week No.1 May : 5月 第1週


Catch of the Week No.4 Apr. : 4月 第4週


Catch of the Week No.3 Apr. : 4月 第3週


Catch of the Week No.2 Apr. : 4月 第2週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。