May. 4 〜 May. 10 2009




” ブレーン & イミューン・システム ”


先週のこのコラムで、ホワイト・ハウスが大統領専用機、エアフォース・ワンのPR写真を自由の女神を背景に撮影するために、 マンハッタンのダウンタウンとジャージー・シティのオフィス街で超低空飛行を行い、 これをテロかと思った人々が大パニックに陥ったことをお伝えしたけれど、 今週金曜に公開されたのがその時撮影された写真。 同写真は左の5月9日付けのNYポスト紙が表紙にフィーチャーしているけれど、 金曜には この撮影騒ぎの責任を取って、ホワイト・ハウスのミリタリー・オフィスのディレクター、ルイス・カルデラが 辞任に追い込まれたことも報じられているのだった。
でもあれだけ迷惑を掛けた割りには、肝心の写真の方は自由の女神があるリバティ・アイランドが貧相に写った何とも冴えない出来で、 しかもこの撮影費は日本円にして3500万円という巨額なもの。 この馬鹿馬鹿しいお値段を聞いた人々からは、「ホワイト・ハウスにはフォトショップを使える人間は居ないのか?」という非難が 殺到していたけれど、実際フォトショップを使った合成写真を製作した場合、 もっと迫力のあるショットが350ドル以下で仕上がると言われているのだった。

その一方で、今週はインフルエンザのニュースも一段落したせいか、オバマ大統領とジョー・バイデン副大統領が 揃って ヴァージニアのレイズ・ヘル・バーガーに出掛けて、ランチをした様子が大々的に報じられていたけれど、 ここでオバマ大統領がオーダーしたのがチェダー・チーズ・バーガー+レタス+トマト+ディジョン・マスタード、 ノー・ケチャップで、 焼き方はミディアム・ウェル。チップは5ドルを支払ったという。
こんな どうでも良い事が大きく報じられてしまうのは、オバマ大統領が今も支持率が高い人気大統領であるからだけれど、 これに対して共和党支持メディアでは、「ケチャップを使わず、マスタードだけでバーガーを食べるなんておかしい」といった批判や、 大統領が 特に名指しで選んだ ”ディジョン・マスタード” についてのジョークが飛び交っているような 程度の悪さ。
でもケチャップ無しのマスタードだけのハンバーガーは、オバマ大統領のお気に入りであることは確かのようで、 大統領はエアフォース・ワンの最初のフライトで、やはりマスタードだけのバーガーを機内食としてオーダーしていたという。

さて、株価が持ち直してきたことで 景気の先行きが明るくなってきたと一部では言われているアメリカであるけれど、 今週金曜に発表された雇用統計によれば、4月の失業者数は53万9000人。 失業率は8.9%にアップしており、過去25年で最高の水準となっているのだった。
でも週間の統計ではレイオフの数が減ってきているそうで、それを景気が回復に向かう兆しと捉える声も聞かれているけれど、 レイオフをされた失業者は、徐々にそれまで支払えてきたレントや住宅ローンが焦げ付きだしていることが指摘されているので、 雇用が増え始めたというニュースが聞かれるまでは、リセッションが悪化し続けていると受け取るのが適切という感じである。
その一方で、豚インフルエンザ騒動で 旅行者が激減したメキシコでは、 観光業界が必死の宿泊客獲得戦略に乗り出していることが伝えらられているけれど、 中でもメキシコに11のホテルを構えるAMリゾートでは、今週金曜から 「Fru Free Guarantee / フルー・フリー・ギャランティー」という キャンペーンをスタート。 これは「もうH1N1インフルエンザにかかる危険はないと保証します」というキャンペーンであるけれど、 万一ゲストが 滞在中にH1N1インフルエンザに感染した場合、向こう3年間に3回のヴァケーションを ホテル側がゲストにプレゼントするというもの。それだけでなく、ホテル側は宿泊費やフード、スパ・サービスなども 37〜55%オフの ディスカウントで提供するとのこと。
メキシコでは観光収入が国の経済の重要な部分を占めるだけに、メキシコ政府も日本円にして約2000億円の免税措置や ローンで 観光業界を全面的にサポートする姿勢を見せているという。

そのH1N1インフルエンザ騒ぎで、クローズアップされたのが イミューン・システム、すなわち個人に備わった免疫力が これから自分の身を守るために いかに大切であるか、ということ。
医療の専門家によれば、今後も動物に関わる新型のインフルエンザが広まる可能性は非常に高いとのことだけれど、 やはり現時点で最も強力なのは英語で言うアヴィエーション・フルー、すなわち鳥インフルエンザ。 この危険度は今回騒がれたH1N1の約800倍と言われているのだった。
そこで、今週 私がCUBE New York の記事にしようとしていたのがそのイミューン・システムを高めるライフ・スタイルであったけれど、 リサーチをするうちにイミューン・システムを高めることはアンチ・エイジングにも繋がることを確認し、 すっかりイミューン・システムを高める意欲に燃え始めてしまったのだった。
その一方で、先週スプレー・タンで肌を小麦色にした私は、気分的にとっても薄化粧にしたくなり、 特に リップスティックやリップ・グロスが ヘビーに付着した唇に抵抗を感じるようになったので、 久々にベネフィットのべネティントをリップに付けてみたのだった。 このべネティントとは、殆ど液状で グロスでも口紅でもない ”ステイン”と呼ばれるもの。 なので、唇のテクスチャーはそのままで、赤い果実をかじったような透明なルージュに染まるもの。 ところが これを使ってビックリしたのが、べネティントが唇のエッジの縦じわに沿ってにじんでしまい、 その状態を10倍の鏡で見た私は、自分の唇の小じわの多さに唖然としてしまったのだった。
幸い、 慌ててリップ・スクラブをしたら、それほど にじまなくなったので、 この小じわはリバース出来るかも!という希望が持て始めたけれど、 そもそも唇のシワというのは喫煙者に出来易いものだと 高をくくっていただけに、自分では気をつけているつもりでいても 身体のありとあらゆるところが知らないうちにどんどんエンジングを始めていることに かなりショックを受けてしまったのだった。

そのショックをきっかけに考えたのが、こんな風にエイジング・サインや 健康問題 を出て来た時に何とかするような状態だと、モグラ叩きのようになって 振り回されるだけ。 もっと根本的なところでアンチ・エイジング対策をして、老化をスローダウンさせなければということ。
その結果、辿り着いたのが 「脳の健康の追求」で、今私が斜め読みしているのが 心理学者、ダニエル・エイメンのベストセラー本、 「Change Your Brain, Change Your Life」である。 ダニエル・エイメンは脳の活動状況のスキャン映像で分析を行うことで知られている人物。 彼のクリニックのデータによれば 脳が健康な状態と言える人々は成人3000人中、僅か90人。 すなわち3%しか居ないという。
その90人の中には80歳過ぎの女性なども含まれており、 逆に若いからといって脳が健康という訳ではないことも指摘されているのだった。

人間の脳には1千億の細胞が備わっているというけれど、ライフスタイルによっては 1日に8万5000、すなわち約1秒に1つの脳細胞を失う結果になるという。 そして脳細胞の減少は老化を促進する最も大きな要因になると言われているのだった。
でも逆に人間は何歳でも、脳のコンディションをライフスタイルによって修復することが可能であるとのことで、 奨励されるのはエクササイズ、正しい食生活、十分な睡眠、きちんと水分を取ること。 特にエクササイズは有酸素運動と共に、ダンスや卓球などのコーディネーション・エクササイズ(反射神経を使うエクササイズ) をすることが奨励されているのだった。
更に脳にとって大切なのが、そして新しいことを学ぶこと。 脳は新しい知識を取り入れることによって記憶や予知能力など様々な部分とのコネクションを結ぼうとするため、 脳が活性化されることになるという。 この「新しいことを学ぶ」というのは、堅苦しい本を読むことではなく、新しい料理のレシピを試してみるのでも、新しいダンス・ステップを学ぶのでも、 カラオケ用に新しい歌を練習するのでも構わないとのことである。
逆に 控えるべきものは タバコ、ドラッグ、アルコール、カフェインなどで、いずれも脳に歪みをもたらし、機能を低下させることが指摘されているのだった。 なのでタバコを吸ってコーヒーを飲みながら 脳トレをしたところで、さほど効果は無いようである。

写真右はエイメン・クリニックによるブレーン・スキャンのイメージであるけれど、 ここで正常な脳とされているのは 健康な脳のこと。 最もダメージが激しいのはアルツハイマー患者の脳であるけれど、脳いっ血患者や 頭蓋骨骨折のような頭部に怪我を負った場合も 同様の状態になり、この状態は再生不可能であるという。 従って、自転車に乗ったり、ローラー・ブレードをする際に 面倒がらずにヘルメットを被ることをエイメン博士は強く勧めているのだった。
一般の人々がこのイメージを見て最も驚くのがカフェイン依存症がいかに脳にダメージを与えているかということ。 カフェインは脳の脱水症状を招くのに加えて、「コーヒーを飲まないと目が覚めない」といった 心理的な依存症を招くことも指摘されているのだった。もちろん1日1〜2杯程度のコーヒーで脳がこのような状態になることは無いと言われているけれど、 つい最近になって発表された、コーヒーを10杯以上飲むと幻覚を見たり、被害妄想になるといった症状の医学レポートは このスキャン・イメージを裏付けるものであったりする。
これ以外にも、トキシック・ガスを吸い続けるような仕事をしていると、コカイン常用者と同じような脳のコンディションになり、 その結果、集中力が無くなったり、記憶が衰えるといった生産性を失うだけでなく、怒りっぽくなったり、 物事に執拗にこだわるなど、性格や人付き合いまで変わってきてしまうという。
エイメン博士はこのスキャンを利用して、マリッジ・コンサルテーションも行っているというけれど、 脳のスキャン結果からライフ・スタイルを分析し、脳のコンディションを高めることによって、結婚生活だけでなく キャリアや人間関係が大きく向上すると謳っているのだった。
ちなみに、エイメン博士が脳の活性化のために奨励すること、しないことのリストは、 私がリサーチしたイミューン・システム(免疫力)を高めるライフ・スタイルと大半が一致しているので、 脳の健康はイミューン・システムを高めることによっても得られると思しきもの。 実際、イミューン・システムを高めることはうつ病などの精神病にもかかり難くなることが医学的に立証されているという。

ところで、健康な脳のためにもイミューン・システムのためにも奨励されるのが睡眠であるけれど、 先進29カ国で最も睡眠時間がたりているという調査結果がでたのが フランスで、平均で毎日9時間も眠っているという。 逆に最も成人の平均睡眠時間が短かったのが韓国で、7時間。 アメリカはその真ん中の8時間とされているけれど、実際には寝ようと試みている時間が8時間であって、 成人人口の3分の1が不眠症を訴え、寝入るまでに1時間、一度眠っても夜中に目を覚ましてしまうといった人々が 少なくないのが実情。
更にフランスは、アメリカ人の週間平均労働時間である、41時間より4時間少ない 37時間の週間労働時間であるけれど、 その分の時間で優雅な食事をエンジョイしているようで、平均的なフランス人が 1日の食事に割く時間は2時間。 これも先進29カ国中最も長かったという。
すなわち、フランス人は1日24時間のうちの約半分に当たる11時間を食事と睡眠に費やしていることになるけれど、 これは皮肉抜きで羨ましい限りの数字。
毎日9時間眠って、2時間も食事に時間が割ければ、 多くの人々がインフルエンザなんて恐れずに済むイミューン・システムが身に付くと思うのである。






Catch of the Week No. 1 May : 5 月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Apr. : 4 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Apr. : 4 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Apr. : 4 月 第 2 週







執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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