May 5 〜 May 11,  2014

”Art Rules In NYC! ”
セレブリティ、パーティー & 高額オークション
年々規模を拡大する ニューヨークのアート・ウィーク


今日、5月11日は 母の日。 アメリカでは、母の日は グリーティング・カードの売り上げだけで1億8000万ドル(約180億円)、ギフトの総額にして30億ドル(約3000億円)の コマーシャル・インパクトをもたらしているけれど、アメリカで顕著なのが 女性の第一子出産の高齢化。 2000年から2012年の間に、40〜44歳で第一子を産んだ女性の数は35%アップ。 また1970年と2012年を比較すると、35歳以上で最初の子供を産む女性の数は900%増加。すなわち9倍になっているのだった。
そんな女性たちの間で増えているのが卵子凍結で、今や卵子凍結は試験的な技術ではなく、 女性達にとっては何歳になっても自分の子供が作れるチョイスになって久しい状況。 でもそのお値段は決して安くはなくて、卵子の採取にかかる費用だけで 日本円で約130万円。 殆どのケースは保険でカバーされないのに加えて、保存費用が毎年のように掛かるのは言うまでもないこと。
それでも卵子凍結は、キャリアを築いてから子供を産みたい女性にとっては、非常にありがたいチョイスとあって、 この費用を娘のために負担する親が増えているのに加えて、今では業者が分割払いをオファーし始めているのだった。

さらにアメリカで増えているのがサロゲート、すなわち代理母。
かつてサロゲート・マザーを使う女性と言えば、健康上の理由で自ら子供を身篭ることが出来ない女性であったけれど、 今では、妊娠期間を キャリアにとってのダウンタイムと考える女性や、 妊娠によって崩れるホルモン・バランスの影響、身体に出来るストレッチ・マーク、 バスト・シェイプの崩れ、体重増加を恐れるあまり、サロゲート出産を望む女性が増えているとのこと。
ニューヨークの場合、お金を支払ってサロゲート・マザーを雇うことが禁じられているけれど、 他州のサロゲート・マザーに依頼した場合、妊娠中の生活費や出産費用に加えて、日本円で1500〜2500万円の 礼金を支払うのが通常と言われているのだった。




さて、数年前だったらニューヨークに最もセレブが集まる時期と言えたのは、春と秋のファッション・ウィーク。 でも、昨今では最も数多くのセレブリティがニューヨークに集まるのがアート・ウィーク。
アート・ウィークは正式名称ではない上に、期間も1週間以上続くけれど、5月1週目の月曜日、 メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティチュートのエキジビジョンの幕開けに行われる ガラからスタートするのが通常。

そのコスチューム・インスティテュートのガラは、今年は今週月曜に行われたけれど、 毎年ヴォーグ誌が協賛し、ヴォーグの編集長、 アナ・ウィンターがチェア・ウーマンを務める メガ・パーティー。 かつては ファッション・デザイナー達が自らの作品をセレブリティやモデルに着用させて集うブラック・タイ・パーティーであったけれど、 昨今ではミュージシャン、俳優はもちろんのこと、政治家、実業家、スポーツ選手など、 ありとあらゆる世界のセレブリティを一堂に集めた大イベントに拡大。 このパーティーに招待されるだけでも大変なことであるけれど、 寄付金集めのパーティーとあって、出席者1人がパーティー・チケットに支払う金額は日本円にして250万円。 すなわち低所得者の年収が、一晩のパーティー代になっているのだった。

同イベントのために セレブリティが大勢集まるのを利用して、今週ニューヨークで行われたのが、 ホイットニー・コンテンポラリーのパーティー、クリスチャン・ディオールのファッション・ショー&パーティー、 ソーホーでは コンテンポラリー・アーティスト、ダミアン・ハーストのアート・ブティックのオープニングが行われ、 その他にも様々なアート関係のガラや、パーティー、プライベート・ビューイング・パーティーがあちらこちらで開催。 それと同時に、複数のアートフェア、デザイン・エキジビジョンもスタートして、 バゼル開催時のマイアミのような、アート・イベント三昧の週になっていたのだった。
私自身、今週ほど様々なアートを見た1週間は生涯に無かったと言えるほど。 そんな中で最大規模のイベントになっていたのは、今年で3回目を数える Frieze Art Fair / フリーズ・アート・フェア (写真下)




今年は、会場であるランダール・アイランドに設置されたテントの長さが4分の1マイル、すなわち400メートルにも達して、 そこに世界中から出展しているギャラリーの数は190。 昨年よりも、華やかで、派手な作品が多く、 会場に足を踏み入れただけで 「イベントとして進化した」という印象を受けたのが今年のフリーズ。
私はプレス・パスで入ったので、入場料を支払っていないけれど、 今年のフリーズの1日パスは 昨年の35ドルから8ドルアップして43ドル。 しかもランダール・アイランドはアクセスが不便なエリアなので、交通費も余分に掛かるけれど、 にも関わらず週末のフリーズは 目を見張る集客ぶりになっていたのだった。

今回は、スカルプチャーと超大判サイズの作品が目立っていて、 お値段は100万円前後のものから、億円単位まで様々。 各界のセレブリティを含むコレクターが集まるプレビュー・パーティーでは、 華やかな雰囲気の中で、シリアスな商談が進むのが常であるけれど、 一般の人々にオープンになると、ミュージアム感覚で アートを眺めるために やってくる人々が圧倒的に多いので、 ギャラリー関係者は人出が多い週末の方がリラックスしていたりするのだった。



こうしたアート&デザイン・フェアで実際にどんな人が出展されているアイテムを購入しているかと言えば、 コレクター、クライアントのために購入するデコレーター以外では、構えた新居にマッチするアートを探している、 もしくは昨今のアート・ブームを受けて、自分の家に格を持たせるためのアートを探している人々、 投資目的で購入する人に加えて、意外に少なくないのがアートが好きで、自分に手が届く価格帯でアートを買っているという人。
私は今週水曜 5月7日、Cube New Yorkのディナー・クラブに出かける前に、コレクティブズというデザイン・フェアのオープニングに 立ち寄ったけれど、そこでどう見ても30代くらいの若い女性と カクテルのサービングを待っていた際、 まるでデザイナー・ブランドのサンプルセールに来ているかのように 彼女が尋ねてきたのが 「何か買った?」という質問。 「まだ若そうなのに、こんなイベントで まるでショッピング感覚!」と、内心ちょっと驚いたけれど、 「いいえ、貴方は?」と尋ね返したところ、「たった今、1つ買ったから、祝杯をあげるところ」と言って微笑んでいたのだった。

幾らの物を買ったかまでは訊かなかったけれど、特に大金持ちという訳ではなくても, 部屋のインテリアにマッチして、これから値が上がりそうなものを探している人は少なくないのが実情。 そうした人々のバジェットは100万〜1500万程度といわれているのだった。





でも、どんなにお金があってもそう簡単には手が出ないのが、サザビーズ、クリスティーズといった 一流オークション・ハウスで競売に掛けられるアート。
今週末から、大手オークション・ハウスでスタートしているのが、来週のコンテンポラリー・オークションに出展されるアートの プレビュー。今週はいろいろなアートを観過ぎて、アートのオーバードース状態になっていた私は、 あまり気乗りがしなかったけれど、それでも もうすぐ破格値をつけるアートをこの目で眺められるチャンスなので、 身体に鞭を打って出かけたのが今日の日曜日。
さすがにサザビーズや、クリスティーズというオークション・ハウスだと 敷居が高いこともあって、 無料で見られるプレビューにも関わらず、フリーズ・アート・フェアとは比べ物にならないくらい、ゆったりとアートが眺められるのだった。

写真上は、今回のサザビーズ・オークションの超目玉であるジェフ・クーンズのポパイ。
198cm、 907キロのポパイ像は、購入意思のあるバイヤーにしか落札予想価格を出していないけれど、 明らかに数十億円の落札が見込まれる作品。
昨年、同じくジェフ・クーンズの代表作、バルーン・ドッグで約58億円の落札価格を記録したクリスティーズも、 数日後に控えたオークションで、ジェフ・クーンズの作品を出品することになっているけれど、 こちらは、長さ約270cmのレールの上を走る蒸気機関車(写真下、上段右側)。 同作品も事前の見積もりが出ない超高額が見込まれるもの。

それ以外のクリスティーズの目玉といえるのは、「スリー・スタディーズ・オブ・ジョン・エドワーズ(写真下、上段左)」。 昨年11月にフランシス・ベーコンの「スリー・スタディーズ・オブ・ルシアン・フロード」が、 過去の絵画オークションでの最高価格記録を塗り替える 1億4240万ドル(約142億円)で落札されたことは世界中で大きく報じられたけれど、これも同様の三部作で、記録を塗り替えないまでも、再び超高額の落札が見込まれているのだった。



昨年11月に行われたサザビーズのコンテンポラリー・アートのオークションでは、アンディ・ウォーホールの「Silver Car Crash (Double Disaster) / シルバー・カー・クラッシュ(ダブル・ディズアスター)」が、過去のウォーホール作品としては史上最高額の1億500万ドル(約150億円)で 落札されて話題になったけれど、 その落札価格に刺激を受けてウォーホール作品の売却を決めたオーナーが多かったのか、今回はサザビーズもクリスティーズもアンディー・ウォーホールの作品が目立っていて、写真上、下段右側のサザビーズのオークションの目玉になっているセルフ・ポートレート・シリーズは、落札見積もり価格、25〜35億円を付けているのだった。

写真下、3枚はいずれも 今回のクリスティーズのコンテンポラリー・アート・オークションで、いずれも二桁億円で落札が見込まれる作品。 左からクリフォード・スティルの「PH-1033」、落札見込みは15〜20億円。 中央は、ベネット・ニューマンの「ブラック・ファイヤーT」、右はアンディ・ウォーホールの「レース・ライオット」で、 この2枚は落札見込み価格をバイヤーにのみ明らかにするという超高額作品。ウォーホールの「レース・ライオット」は、 100億円を超える落札額を見積もる関係者も少なくない状況。
写真だとサイズが分かりにくいけれど、これらはいずれも2〜3メートルはある巨大なキャンバスに描かれているのだった。


私は、前述のように今日は身体に鞭を打ってサザビーズとクリスティーズのプレビューに出かけたけれど、 やはり億円単位のアートというのは、物凄いオーラやパワーがあって、それを見ているうちに 私は逆に元気になって帰ってきたのだった。
写真で見ていると、「こんな絵画に20億円?」みたいな作品は沢山あるけれど、 実際に肉眼で見ると 好き嫌いは別として、大金を支払う人が居ても不思議ではない迫力や存在感を放っているもの。 風水の世界でも パワーのあるアートは幸運を運んでくるキー・アイテムだけれど、 そんなパワーに満ち溢れたアートを部屋に飾ることが出来るリッチ・ピープルが益々リッチになっても不思議ではないと、 真剣に感じたのが今日の私。
100万円〜1000万円くらいのアートの中には、「これくらい自分で作れそう・・・」という作品は少なくないけれど、 億円単位のアートになると 「どうしてこんなに簡単な構図をここまでの作品に出来るんだろう」と 疑問に思ったり、感心するのも束の間、そのアートの世界に入り込んでしまうことも少なくないのだった。
そんなパワーがあって、自分にポジティブな効果をもたらす作品を、手が届く価格で 探し出すことが出来たら、たとえその作品価値がさほど上がることは無くても、 お金に見合う以上の投資と言えるもの。


話をフリーズ・アート・フェアに戻せば、前回にも増してグレードアップしていたのが、同フェアのフード。
写真上左は、私のお気に入りのロベルタのピザであるけれど、今回はあまりにトライしたいものが多くて、 そのロベルタのピザが食べられずに終わってしまったのだった。
私が今回気に入ってしまったのは、ミッション・カンティーナのブリトー(写真右)。 レストランでは、ランチタイムのテイクアウトでのみ販売されているというブリトーであるけれど、 今回のフリーズ・アート・フェアでサーブされていたのは、それとは若干異なるバージョン。 これがとんでもなく美味しかったのに加えて、ローワー・イーストサイドのヘルシー・レストラン、 ファット・ラディッシュのサラダが また美味! それだけでなくコーヒーや、デザートまで充実していたのがフリーズ。
アート界は、ギャラリー関係者からコレクターまで、グルメが多いだけに オープニング・パーティーのフィンガー・フードから、エキジビジョンのカフェテリアのメニューに至るまで、 かなりレベルが高いと言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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