May 2 〜 May 8 2016

”Truth Behind The Biggest Loser ”
減量リアリティTV「ビッゲスト・ルーザー」が立証した ”落としたウェイトを保てない科学的根拠”



今週はインディアナ州の共和党予備選挙での敗北を受けて、テッド・クルーズ、ジョン・ケイシックが次々と 選挙キャンペーンの中止を宣言したことから、事実上、共和党大統領候補として擁立される見込みとなったのが 誰もが「まさか!」と思ったドナルド・トランプ。
しかしながら、このニュースを受けて共和党員が失望のあまり党員カードを燃やしている映像がソーシャル・メディアにポストされた一方で、 第41代、43代大統領であるジョージ・ブッシュ親子が共にドナルド・トランプを支持する意向が無いことを明らかにしたのを皮切りに、 ミット・ロムニー、ジェブ・ブッシュ、リンジー・グラハムといった共和党上層部が彼を支持しないと宣言。 中でも最も大きく報じられたのが、現時点で共和党のトップ・ポジションにある下院議長、ポール・ライアンが 「少なくとも現時点ではトランプを支持しない」と語ったことで、 それだけでなく、ジョン・ケイシックを含む数人の政治家も 彼のランニング・メイト(副大統領候補)を断るとコメント。
トランプ側は 「共和党上層部の支持が無くても大統領選挙で勝てる」と強気の発言をしているものの、現時点で選挙が行われた場合は 彼がヒラリー・クリントンに2桁の大差をつけられて敗北する というのが世論調査の結果になっているのだった。
今週、ドナルド・トランプに朗報と言えたのは、現在 詐欺罪で訴訟が起こされている「トランプ・ユニヴァーシティ」の 彼の法廷証言の日程が大統領選挙後の今年11月に見送られたこと。 このトランプ・ユニヴァーシティは、不動産ビジネスのノウハウを教えると称して 多額の学費を請求しながら、 講師は不動産ビジネスのライセンスはおろか、大学さえ卒業しておらず、「ユニヴァーシティ」 とは名ばかりのビジネス。こうしたビジネス上の問題も手伝って、共和党上層部の中には彼をオープンに「詐欺師」と批判する声も聞かれているのだった。

それ以外に今週話題になっていたのが、父親であるオバマ大統領同様に ハーバード大学進学が決まった マリア・オバマが1年のギャップ・イヤーを取るというニュース。 このギャップ・イヤーというのは、高校から大学に進学する前、もしくは大学在学中に1年間のブレークを取ることで、 毎年約5%の学生がギャップ・イヤーを選択しているそうで、その間を海外旅行やボランティアなどに費やすのが一般的。
ちなみにマリア・オバマはハーバードと並ぶ名門、コロンビア大学への進学が有力視されていたけれど、 それ以外に彼女が候補にしていたと言われるのは イエール、プリンストン、ブラウン、ユニヴァーシティ・オブ・ペンシルヴァニアといった アイヴィー・リーグの大学に加えて、 NYU(ニューヨーク大学)、タフツ・ユニヴァーシティなど。 現時点で彼女は映画監督を目指していることが伝えられているのだった。




ところで、アメリカには”Freshman's 15”という言葉があるけれど、これは大学のフレッシュマン(1年生)が親元を離れて 寮生活をスタートして増える体重のことで、15とは15パウンド=6.8キロのこと。
この背景にあるのは、不規則な食生活、ジャンク・フードとアルコール摂取の増加、寝不足、そしてストレス等と 指摘されるけれど、それらはそのままアメリカの肥満社会の要因とも言われるもの。

そんなアメリカの超肥満の人々の減量をサバイバル・コンテスト・スタイルで競うリアリティTVとして 長寿番組となっているのが 「The Biggest Loser / ザ・ビッゲスト・ルーザー」。 この番組では、コンテスタントを3つのチームに分けて、エクササイズと食事療法によって 減らした体重を競い、最後には最も体重を減らしたコンテスタントが そのシーズンのザ・ビッゲスト・ルーザーとして 勝者に輝くという番組。
毎週のように、コンテスタントが厳しいエクササイズや食事療法に取り組む様子がフィーチャーされ、 特にエクササイズについては トレーナーがコンテスタントを怒鳴りつけてまで続けさせるスパルタぶりが 番組のウリになっているけれど、「誤ったダイエット&エクササイズの知識を視聴者に埋め込んでいる」と医療関係者から危険視される一方で、 実際にコンテスタントが脱水症状を含む様々な健康障害を訴えて 問題となってきたプログラムでもあるのだった。

その「ザ・ビッゲスト・ルーザー」が 現在シーズンオフにもかかわらず、今週 様々なメディアで報じられることになったのが、 2009年に放映された同番組のシーズン8のコンテスタントを その後6年間に渡って 医療機関が追跡調査・分析をした結果が発表されたため。
その結果、改めて立証されることになったのが 「ザ・ビッゲスト・ルーザー」 という番組で行われているダイエットが いかに間違っているかに加えて、同番組がコンテスタントを 逆に太り易く、食欲が抑えられない体質にしているという状況なのだった。

このレポートの中で、最もフォーカスを浴びていたのが 写真上のシーズン8の勝者、ダニー・カヒル(45歳)。 写真上左の番組スタート前には430パウンド(195キロ)だった彼の体重は、番組終了時には191パウンド(86.6キロ)となり、 同番組史上、最もドラマティックな減量を達成した勝者となったのが彼。 それに加えて、放映局であるNBC側が行ったメイクオーバーが効を奏して、減量後の彼(写真上右)の彼は全く別人に 生まれ変わっていたのだった。

その後、ダニー・カヒルは多くのリアリティTVのコンテスタント同様、モチベーショナル・スピーカーや本の著者として活躍し、 同番組が放映されている諸外国にもスピーカー、ベストセラー著書としてプロモーションに出掛けるなど 多忙な日々を送っていたというけれど、多くのダイエット成功者同様、徐々に戻り始めたのが彼の体重。
彼がモチベーショナル・スピーカーとしての仕事を続けるには、痩せた体型を保つことが不可欠であるため、 彼はエクササイズやダイエットをきちんと続けて来たというけれど、 その体重は100パウンド以上のリバウンドを見せて、現在 彼の体重は295パウンド(133.8キロ)まで 戻しているのだった。





この現象は、ダニー・カヒルに限ったことではなく、シーズン8の16人のコンテスタントのうち、6年後の現在、番組終了時より体重を減らしているのはわずか1人。 ほぼ同じ程度の体重を保っているのは3人。それ以外は全員 体重を増やしており、そのうちの2人は 番組開始前よりも体重が増えているのだった。
でもリアリティTVの撮影が終わって、トレーナーや栄養士がエクササイズやダイエットの監視とアドバイスをしなくなれば 誰でも体重が増えるのは仕方がないこと。しかも過去6年間でエイジングが進んでいることを思えば 彼らの体重が増えるのはむしろ当たり前と考える方が妥当であるけれど、 医療チームが着眼したと同時に 問題視したのが彼らのメタボリズム。

シーズン8のコンテスタント、及び同番組への参加者は 収録前に全員健康診断を受けることになっているけれど、 その時点で彼らは皆、肥満ではあったものの その体重に見合ったメタボリズムであったとのこと。 すなわち、メタボリズムという点では 彼らに特に異常が見られなかった訳だけれど、 現在の彼らは 同じ体重の人に比べて 身体が消費するカロリーが平均で500カロリー少ない状況。 すなわち、同じ体重を維持するために通常よりも500カロリー少ない食事をしなければならないほどに メタボリズムがダウンしているのだった。
中でもダニー・カヒルに至っては、同じ体重の人よりも800カロリー少ない食事をしなければ現在の体重が保てないとのことで、 彼自身、「友人が羽目を外してビールを飲んでも一向に体重が増えないのに、自分は直ぐに20パウンドも増えてしまった」とコメントしているのだった。

では、このダニー・カヒルがどうやって430パウンドから191パウンドへの減量を達成したかと言えば、 まず「ザ・ビッゲスト・ルーザー」の番組撮影施設では、1日7時間のエクササイズで8000〜9000カロリーを燃やし、 汗で失う塩分を食事ではなく タブレットで補いながら、厳しいカロリー制限をしていたとのこと。 そして その後4ヶ月間、コンテスタントは自宅に戻り、自分自身でダイエットやエクササイズの習慣を維持できるかの チャレンジを強いられ、その4ヵ月後の計測で決定したのがシーズン8の勝者。
その間 ダニー・カヒルは 仕事を辞め、朝5時に起きてまず45分のランニング。 その後の朝食の典型的なメニューは 卵1つ、卵白2つを使ったオムレツ、グレープフルーツ半分、マルチグレーン・トースト1枚。 食後には、再び45分のランニング。その後 40分休んでから、ジムまでの15キロの道のりを自転車で走り、ジムでは2時間半のワークアウト。 再び自転車で自宅に戻り、ランチを取るけれど、 そのメニューは皮無しの鳥の胸肉のグリルと、ブロッコリ1カップ、アスパラガス10本といったもの。 その後1時間休息をとってから、再びジムに出向くというのが彼の生活で、 カロリー・トラッキングをして消費カロリーが少ない時は、夕食後もジムに戻ってワークアウトをしていたとのこと。 この時に彼が目指していたは 1日1パウンドの減量で、摂取カロリーよりも 3500カロリー余分に燃やすのがゴールであったという。

ダニー・カヒル以外のコンテスタントも、厳しいダイエットとエクササイズをしていたため、 全員がメタボリズム、特にレスティング・メタボリズム(何もせずにじっとしていて燃やせるカロリー)が低下していたというけれど、 これはダイエットをしている人ならば、誰もが経験すること。 通常は ダイエットを終えればメタボリズムも戻るというのがシナリオであるけれど、 「ザ・ビッゲスト・ルーザー」のコンテスタントの場合、番組収録が終了し 6年が経過した今も、 そのメタボリズムは半分程度しか快復していないことが明らかになっているのだった。




更に今回のレポートの医療チームが指摘したのが、コンテスタントのレプティンのレベル。
レプティンとは、食欲をコントロールするホルモンのことで、これに医学界が初めて着眼したのは1990年代で、 比較的新しい発見。 それだけに同じく体重を左右するホルモンである インシュリンほどは知名度は無いものの、 これまでは甲状腺ホルモンの役割と思われてきた メタボリズムの調整を行うと同時に、インシュリンとも深く関わっているのがレプティンなのだった。

レプティンのレベルが正常である場合には、人間は食欲のコントロールができる一方で、摂取したカロリーをエネルギーとして使い、 その不足分を身体に蓄積された脂肪で補おうとするけれど、 飢餓状態やダイエットをしている状態では レプティンのレベルが低下。するとレプティンが何をするかと言えば、 食欲をあおり、エネルギーを燃焼せずに、体内に脂肪として蓄えるようにと脳にシグナルを送るのだった。 すなわちレプティンのレベルが低下すると、食欲との戦いを強いられる一方で、 どんなに摂取カロリーを制限しても 身体はその栄養をエネルギーとして燃やそうとせず、脂肪として蓄積することになるけれど、 驚くべきは「ザ・ビッゲスト・ルーザー」のコンテスタント達のレプティン・レベルが、 番組収録終了時に ほぼゼロであったという事実。
すなわち、番組の過酷なエクササイズと食事制限によって、食欲とメタボリズムを掌るホルモンのバランスが 破壊されてしまった訳で、事実 コンテスタント達は 今も抑えられない食欲と戦い続けていることを語っているのだった。

肥満を克服しようとして参加したリアリティTVのダイエットによって、更に肥満に拍車がかかる体質にされてしまったというのは 気の毒でさえあるけれど、現在 ダイエット・ドクターが取り組み始めているのがレプティンと上手く付き合って、ダイエットを成功させるだけでなく、 それを持続させる減量法。 「レプティンのレベルを上げれば良いのだから、サプリメントで摂取すれば…」と考えがちであるけれど、 レプティンが発見された90年代以降、数多くの企業がそれにトライした結果、 人工的に与えたレプティンによって生み出されたのはレプティン・レジスタンス。すなわちレプティンのシグナルを脳が拒絶するという状態。 すると食欲に歯止めが掛からず、身体は脂肪を蓄積したがる という肥満のシナリオが更に悪化したとのことで、 レプティンが非常に複雑かつ繊細なバランスを保っているホルモンであることが指摘されているのだった。
レプティンのレベル低下=体重の増加を招くのは、睡眠不足、アルコール、食べすぎ、ストレス、小麦粉とそれを使用したフード(パン、パスタ)、 そしてコーン・フルクトス・シロップ。特にコーン・フルクトス・シロップは、ケチャップ、ドレッシング、シリアル、クッキー等、 ありとあらゆる工場生産の食品に含まれているもので、これを取り過ぎるとレプティン・レジスタンス=肥満にまっしぐらと言われているのだった。

今週の「ザ・ビッゲスト・ルーザー」のコンテスタントに関するレポートを報じた記事の中には、こうしたメタボリズムやレプティンについての 説明と共に、「カロリー制限だけに頼ったダイエットでは痩せられない」と結論付けるものもあったけれど、 実際のところは、カロリー制限で痩せる人も居れば、カロリーが増えても たんぱく質を増やす一方で 炭水化物をカットして痩せる人も居る訳で どのダイエットが効果的かは人によって異なるのが実情。
でも「ザ・ビッゲスト・ルーザー」のコンテスタントのような過剰なエクササイズと食事制限を続けて、 苦しい思いに耐えながら、たとえ一時的に体重が落とせたとしても、その後もっと太り易い体質になる というのでは本末転倒。 そう考えると、強靭な意思の強さというのは 状況によっては必ずしもダイエットの味方とは限らないと言えるのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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