May 11 〜 May 17 2015

”Sam Smith's Diet Really Works For Me? ”
サム・スミスを14日で7キロ痩せさせたダイエットは、本当に効果があるか?


今週のニューヨークで最も報道時間が割かれていたのは、5月12日火曜日の午後9時半前後に、 ワシントンからニューヨークに向かうアムトラック(全米鉄道旅客公社)の列車が、 ペンシルベニア州フィラデルフィアで起した脱線事故のニュース。
8人の死亡者を出したこの事故は、制限速度50マイルの急カーブを曲がろうとしていた時点で、 列車の速度が106マイルに達していたことから、当初は「事故のことは何も覚えていない」と 語っていた運転手が、今年3月に起こったジャーマンウィングの9525便の墜落事故同様に、 何らかの意図で乗客を道連れにした”自殺行為=殺人行為”という疑惑が浮上していたのだった。
ところが週末に入ってから、事故の直前にフロント・ガラスに何かの物体が激突した様子があることが伝えられた一方で、 事件の列車以外のアムトラックの窓にも、何らかの物体が激突して ガラスが破損している状況が同じ日にレポートされており、 同事件は謎を帯びた様相を呈して来ているのだった。

そんな今週のニューヨークのスポーツ欄で、ヤンキーズよりもメッツよりも、連日のように見出しのトップを飾っているのは、 現在NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)のスタンレー・カップを目指してプレイオフを戦っている真っ最中のニューヨーク・レンジャース。 ファンをハラハラさせる1点差の大接戦で勝ち続けているレンジャースは、現在決勝の1つ手前の イースタン・カンファレンス・ファイナルを戦っており、今ニューヨークで最もホットなスポーツ・チームになっているのだった。

その一方で、5月15日には2013年4月に起こったボストン・マラソン爆破テロで今年4月に有罪評決を受けた ジョハル・ツァルナエフに対し、死刑の判決が言い渡されたけれど、これについてアメリカ国内で見られているのが賛否両論のリアクション。
3人が死亡し、200人以上が負傷したこの爆破テロが卑劣な犯罪であることについては 誰もが異論は無いものの、 アメリカ国内で年々高まっているのが死刑廃止論。 加えて死刑判決が下ったとしても、被告人であるジョハル・ツァルナエフには国民の税金を使って上告する権利があるので、 少なくとも、あと数年は生き続けるのが実情。 したがって、事件で家族を失った遺族の一部でさえ、「終身刑になって上告されない方が、これ以上裁判の行方を 案じることが無い分、心の安らぎが得られる」として、 死刑反対の立場をとっていたのだった。
ちなみに、オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の主犯、ティモシー・マクベイのケースにしても、1995年8月に起訴され、同年10月に 死刑判決が下されているけれど、その後の上告プロセス等が長引いた結果、実際に死刑となったのは2001年6月のことなのだった。




さて、夏のビーチ・シーズンが近づいてきた今は、アメリカでは新年に次いでダイエットがメディアで特集される時期。 それほどアメリカ人にとって、スイムウェアをスリムに着こなしたいという願望が強いと言えるけれど、 セレブリティの中で、昨今最も目覚しいダイエットの効果で話題になったのは、 何と言ってもシンガーのサム・スミス。
グラミー賞の受賞スピーチで、「人々に自分の音楽を聴いてもらうために、痩せようとしたり、ありとあらゆることをしてきたけれど、 そんな時は酷い音楽しか作れなかった。でも自分自身であろうと試みた途端に、音楽もそれに伴って向上してきた」と語り、 事実上 ダイエットを否定するようなコメントをしたサム・スミスであるけれど、 その彼が授賞式直後に訪れたのは、キム・カダーシアンも妊娠中に通いつめたといわれるイン&アウト・バーガー。
すなわち、彼はグラミー賞のためにかなりの食事制限をしており、授賞式を終えたダイエット解禁ディナーで、 イン&アウトのマルチ・レイヤーのバーガーにかぶりついたのだった。

そんな状態であったので、程なく彼が14日間に7キロを落としたというニュースで驚いたファンは多かったけれど、 彼がインスタグラムで、そのダイエットの功労者として讃えたのが、 ニュートリショナル・セラピストのアメリア・フリアーとその著書「Eat. Nourish. Glow / イート・ノーリッシュ・グロウ」。
私は、サム スミスの音楽がとても好きなこともあって、彼のミュージック・ビデオをよく見るけれど、 彼は時期によって体型が膨らんだり、萎んだりを繰り返していて、その事からも彼が”ウェイト・バトル”、すなわち体重との格闘を続けて来たのは明らか。 サム スミスいわく、彼は幼い頃、太っていることが原因でいじめを受けたそうで、辛い時、思うような音楽がクリエイト出来ない時などに、 食べ物によって心を癒してきたとのこと。 その頃を振り返って彼は、「食べ物が自分をコントロールしていた」と語っているのだった。

その彼は、アメリア・フリアーに出会って 食べ物に向き合う姿勢を学び、 生まれて初めて 食べ物をポジティブに捉えることが出来たとのこと。 以来、彼はヘルシーな食事をする一方で、ウェイト・トレーニングに勤しみ、14日で7キロの減量を達成。 スリムなボディと引き締まった顔立ちを手に入れているのだった。




ということでダイエットを趣味とする私が、当然のことながら興味を抱いたのが、アメリア・フリアーの著書「イート・ノーリッシュ・グロウ」。 早速、Eブックをダウンロードをして斜め読みをしたけれど、 正直なところ、あまりにまともでダウン・トゥ・アースなダイエット本だったので、驚くと同時に、ちょっとガッカリしてしまったのだった。
というのは、14日で7キロというのは尋常では無いダイエットのペース。 なので、てっきり何かドラスティックなトリックがあるに違い無いと期待していたためであるけれど、 その期待に反して、アメリア・フリアーのダイエット・セオリーは、本当に現実的な10ステップから構成されるもの。
その10ステップとは以下のようなものなのだった。

  1. 身体に悪い食習慣やジャンク・フードを、1つずつ減らしていく
  2. キッチンのデトックスをする (不健康な食べものをキッチンから取り除く)
  3. 食べ物への接し方を学ぶ(感情や退屈を紛らすための過食を止めて、食べ物や食事を楽しむ習慣をつける)
  4. スナック(間食)を止める
  5. (ダイエットの)完璧よりも 継続を目指す
  6. 脂肪では太ることは無く、砂糖で太ることを認識する (”低脂肪”をウリにした食品は糖分が高いので、食べると逆に太る)
  7. ヘルシー・フードは ハッピー・フードである
  8. アルコールとカフェインをカットして、水を沢山飲む
  9. サプリメントの必要性を学ぶ
  10. ムーブメント(=エクササイズの大切さ)


このアメリア・フリアーという人は、ダイエッティシャンはなく 前述のように、ニュートリショナル・セラピスト。 痩せるための食事療法をデザインするのがダイエティッシャンなのに対して、ニュートリショナル・セラピストは ダイエット・メニューだけでなく、食べ方や食べ物に対する姿勢など、食に対する精神的な取り組みについてもアドバイスをするスペシャリスト。
アメリア・フリアー自身も大学を出て仕事を始めたばかりの頃は、食事を便利さからチョイスする食生活で、 朝食は職場に近いカフェでクロワッサンやトーストを食べ、ランチもオフィスの傍でサンドウィッチを調達、そして夕食は友達とレストランに出かけて、 パスタとワイン、デザートというような食生活をして、常に身体が疲れていたものの、 それが決して食生活のせいだとは思ってもみなかったとのこと。

でもやがて毎日の疲れが酷くなり、肌が荒れて、胃の調子が悪くなり、食後に腹部が膨れ上がるようになったのに加えて、 抵抗力が落ちて、風邪を引き易くなり、 若いながらも どんどん弱い身体になっていく危機感を覚えたという。 そこで、針治療から、催眠療法、マッサージなど、ありとあらゆることをトライした彼女が悟ったのは、 食べ物に全ての身体の問題の諸悪の根源があったということ。 その後、28歳にしてカレッジに戻った彼女は、栄養学を学び始め、二つのデュプロマ(学位)を取得。 以降、自分に必要な栄養素を補給し、ヘルシーな身体を作り上げながらも、 美味しく味わえるシンプルな食事療法の開発に努めてきたとのことなのだった。




アメリア・フリアーがダイエットを成功させたセレブリティには、他にボーイ・ジョージが居るけれど、 サム・スミスにしても、ボーイ・ジョージにしても、一般に言われる”エモーショナル・イーター”。 すなわち、感情に任せて食べてしまうタイプで、食べると決めたらとことん食べては、自己嫌悪に陥るのがこのタイプ。
私の意見では、こうしたタイプは 一度思い込むと恋愛でも目標達成でも 突っ走る傾向が強いので、 ダイエット・モードに上手く入った場合は、一時的でも 体重が大きく落とせる場合が多いと思うのだった。
アメリア・フリアーは、その著書の中で「”食べる”ということを生活のプライオリティ(優先事項)にする」と書いていたけれど、 様々なダイエットをトライしてきた私の意見では、ダイエットをして痩せられる時というのは、むしろ「食べることがプライオリティになっていない時」。 そういう時は、ランチなど食べることさえ忘れているので、1日1食でも全く苦にならないし、 その上にエクササイズをしていたら、気付いた時には かなり体重が落とせているもの。
したがって私が自らの経験から断言すると同時に、医学的にも立証されている痩せるための近道は、エクササイズでも 健康な食生活でもなく、 食べない事なのだった。

逆に時間が掛かると同時に、難しいのは 食べながら痩せることで、食べることがプライオリティになっていたら、正直なところ私自身はアメリア・フリアーが レシピにフィーチャーしているような食事では、人生の楽しみが食に見出せないので、彼女が10ステップの7番目に掲げる ”ヘルシー・フード=ハッピー・フード”という訳には行かないと思うのだった。
それでも朝食にシリアル、昼食に 一見ヘルシーでも高カロリーのサラダや その他のテイクアウト・フード、3時にコーヒーとクッキーやチョコレート、 そしてディナーにパスタ&野菜のサイド・ディッシュというような、一見無害で ごくごく一般的な食生活をしていることが、 決してヘルシーでは無いことを悟らせてくれる効果があるのがアメリア・フリアーの著書。
要するに普通の食生活をしていたら、普通に年を取って、普通に病気になったりする訳で、 だからこそ、今もてはやされているのが老化を防ぎ、病気にならない強い身体を構築するスーパーフードなのだった。

ダイエット本について言えば、それを読む人が求めるのは従来のダイエットに無かった何らかのミラクル効果や、 ダイエットによって身体だけでなく、人生が変わる相乗効果であるけれど、 どんなダイエットでも効果が出るか、出ないかは、ダイエットをする人が どれだけ精神的に打ち込めるかの問題。
ダイエット本に洗脳されて、一時的にでも食べることが2の次、3の次になれば痩せられるし、そんなプラシーボー効果が無い、 もしくは続かないダイエットであれば、体重を落とすことが出来ないまま 止めてしまうことになるのは 誰もが経験していること。
したがって、私がアメリア・フリアーのダイエット・アプローチで最も賛同する部分は、彼女がクライアントのライフスタイルだけでなく、 精神状態と向き合ってダイエットをデザインしているという点なのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。




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