May. 22 〜 May. 28




Seeking Wellness




私の場合、「旅行に出掛ける」というと 常に仕事絡みの旅になってしまって、ヴァケーションとしてリラックスするような思いをすることは あまりないけれど、 それでも旅行に出るのが良い事だと思うのは、気分転換になるだけでなく、戻ってきた時に自分の生活のペースを変える良いきっかけになるから。
前回のコラムで書かせていただいたように、今週月曜にナパとサンフランシスコの旅から戻った私は、 自分の身体、特に胃がすっかり弱くなっていることを自覚して、ショックを受けてしまったけれど、ふと思い返せば、昨今では 身体がSOSを発しているような症状を幾つも自覚していたものの、忙しくて 放置し続けて来た状態なのだった。
私が気付いていたのは以下のような症状である。

・ 疲れているのに、寝入るまでに時間が掛かるようになった。
・ 以前より風邪を引き易くなっている。
・ いつも目が疲れている。
・ 食べ物の消化に時間が掛かるようになった。
・ 肩こりが深刻になった。
・ 肌に細かいシミが出始めた。
・ 身体が硬くなり始めた。

私がこうした身体の問題について話すと、多くの人が「ストレス」という問題を指摘してくるけれど、現代人であれば誰でもストレスは溜まるものだし、 溜めるな という方が無理というもの。私の場合、仕事を含めて 考えるだけでイヤになるような問題や、やりたくないけれど、しなければいけない事は 常に山のように抱えているけれど、そんなものをいくら抱えていても 以前はもっと健康だった訳である。
長年のストレスが 溜まりに 溜まった状態が現在という見方もあるけれど、自分で思い当たる体調不良の直接的な原因は、やはり寝不足、 運動不足、コンピューターの使い過ぎ、そして気分転換不足で、食べ物には常に注意しているので、食べ物が原因とは思っていないけれど、 最近は以前より野菜の摂取量が減っていることは自覚している変化だった。
上記の症状の中で特に深刻なのは目の疲れと、肩こりで、人によってはこの2つの問題は連動しているとも指摘するけれど、 いずれにしても、旅行から戻った私は、「このままこんな生活をしていたら、やがて病気になるか、老化がずっと早まるか、最悪の場合その両方が 我が身に降りかかるかもしれない・・・」と真剣に考えるようになってしまったのだった。

そこで、ニューヨークに帰ってからは、大好きなワインも飲まず、食事は軽めにし、8時間睡眠の習慣を復活させることにして、 少し元気を取り戻したような気になったものの、それでもどうにもならなかったのが深刻な肩こりと目の疲れである。
今週は、私が仕事中に何度となく、「肩が痛い」とボヤき続けていたため、マッサージの上手のCUBE New Yorkのスタッフ3人が 代わる代わる私の肩のこり具合をチェックしてくれたけれど、それぞれが、 「慢性的な肩こり」、「肩こりが酷すぎて、何処がこっているのか分からない」、「マッサージよりも針治療に行くべき」 などと 分析をしてくれるような有様で、 私の危機感にさらに拍車を掛けてくれたのだった。

さて、今週末のアメリカはメモリアル・デイを月曜に控え、3連休のウィークエンド。 旅行の疲れをこの週末に一気に払拭しようと以前から予定していた私は、友人からのバーベキューのお誘いも断り、 今週末を ”デトックス” のために捧げる決心をしていたのだった。 そこで、先ず土曜日に私が出掛けることにしたのは、かねてからトライしてみようと思っていたコリアン・タウンのスパ。
このスパは、エステティシャンとして働いているのは韓国人女性であるけれど、受付を始め運営はコケイジャン(白人)女性によって行われており、 来店客も、殆どがコケイジャンという、コリアン・タウンにあっては珍しい客層のサロン。
同サロンでは様々なパッケージをオファーしているけれど、ビギナーとして私が選んだのはベーシック・ピュアリフィケーションというコースで、 これは3種類のバスに浸かって肌を柔らかくしてから、 韓国式垢すりスタイルの全身スクラブを行い、軽いフェイシャルとキューカンバ・マスク、頭皮マッサージ・シャンプー&コンディショニングという、 頭の先から足の先までのクレンジングを行ってくれるプログラム。全行程が約90分で、お値段は115ドル(タックス、チップ別)であったけれど、 私の場合、深刻な肩こりをほぐすために、これに1時間のマッサージをプラスして195ドルというプログラムを試すことにした。

サロンは昼間は女性専用で、まずシャワーを浴びてから 向うのがサウナ。実は私は大のサウナ好きで、全身から汗と共に身体の老廃物が出てくる感覚に 酔いしれてしまう時もあるくらいだけれど、ここのサウナはかなり温度が高く、サロンの女性が持ってきてくれたレモン・ウォーターを飲みながら、 必死で暑さを我慢しなければならない状態。
全身の毛穴という毛穴から玉のような汗がこぼれ出るのを確認して、外に出た時には、 新たにもらったレモン・ウォーターを一気飲みしてしまうほどに喉が渇いていた。 でも、サロンの女性によれば「これによってかなりのトキシックが身体から排除された」とのことだった。
そして次は、レモン風呂、ジンセン風呂、好みで冷水の浴槽に浸かり、その後がスティーム・バスという順番。 同サロンのスティーム・バスで驚くべき点は、自分の前20センチ以上が真っ白で見えないほど、スティームがムンムンしていること。 身体に巻いているタオルが、どんどん水っぽくなってくるのが感じられるほどの蒸気であったけれど、サウナに比べれば遥かに快適なので長居をしていたら、 サロンの女性が心配してチェックしに来たので、仕方なく出ることにした。
次はいよいよスクラブで、マッサージ・ベッドに横になったまま身体を背中、腹側、身体の両側面という順番で、磨いていってもらうもの。 確かに自宅で行うボディ・スクラブよりも ずっとハードで、ミトンのようなスクラブ・グローブをつけたコリアンの女性が、 何度もゴシゴシ磨いてくれるので、お金を払っている甲斐を感じさせるものだったけれど、ちょっと荒っぽくてビックリしたのが、シャンプー。 頭皮を刺激しながらのシャンプーであるものの、気持ち良いというよりは、髪の毛が引っ張られて痛い思いをさせられて、後で髪をとかしたら、 かなりヘアが抜けていた。なのでビューティー・サロンのシャンプーを想像していたら、これは全くの別物である。

その後はマッサージ・ルームに通されて、キューカンバ・マスクをしながら、1時間のマッサージとなったけれど、 マッサージのスタイルはコリアン式の揉みほぐしタイプ。背中をマッサージする時は、担当者がマッサージ・ベッドに乗っかって、体重を掛けて押してくれるので、 かなり強く揉まれているという感触はあるけれど、それ以外は全身を万遍なく揉みほぐしてくれるスタイル。 肩こりが酷いことを、マッサージの担当者に伝えておいたので、肩から背中に掛けてをかなり重点的にやってくれたのと、 途中からオイルを使ってマッサージしてくれたので、スクラブ後の肌が乾燥することもなく、全行程が2時間半ほどで終了した。

終わった時にはかなりお腹が空いていたけれど、身体がピュアになったのが感じられて、「甘いものや、辛いもの、脂物は食べたくない・・・」と思っていたら、 サロン側がパイナップルとメロン、そして温かいお茶をサーブしてくれて、それらをゆっくり味わってからサロンを後にすることになったのだった。
サロンから出た時は、身体が軽くなったようで快適であったけれど、その後、早めのディナーを終えて帰宅すると、 疲れがドッと出てきて、ソファーで崩れるように眠ってしまうことになった。


でも、現在の私の症状というのは、2時間半のデトックス・コースで解消されるような生やさしい状況ではないことは十分自覚していること。 また、こうしたマッサージやデトックスは、ある程度集中的に行わないと、状況が若干改善されただけで、 直ぐに元通りになってしまうもの。 そこで、私は今日、日曜も デトックスではないもののマッサージに向うことになったのだった。
このマッサージというのは、かつてプロとしてサロンでマッサージをしていた経験を持つCUBEのスタッフが師と仰いでいた人物のサロン。 とは言っても、スタッフが覚えていたのは大体のロケーションと、「オーシャンとかアクアとか、水をイメージする名前のすごく小さなサロン」ということだけ。 あとは、「眉が太めの中国人のデイビッド」という情報だけを与えられて、手探り状態で出掛けたのが今日のマッサージだった。

でも実際出掛けてみると、言われたロケーションにはサロンはなく、仕方なくもう2ブロックほど歩いてみたものの、あったのは小さなネール・サロンだけで、 そこのウィンドウには中国語のネーミングが書かれていたので、あっさり通り過ぎてしまった。
もう1度戻って探してみようと、道の反対側に渡ってみると、通り過ぎたネール・サロンのカノピー(店のテント)に「Sea」という言葉が書かれていたので、 「ひょっとして・・・」と思って入って行き、「ここにデイビッドって居ます?」と訊いたところ、尋ねた相手が彼自身だった。
予想していたほど眉は太くはなかったけれど、CUBEのスタッフの名前も覚えており、早速彼の1時間マッサージを受けることになったけれど、 マッサージの方は予想を遥かに上回る超強烈なもので、滅多なことでは驚かない私もビックリするほどの絶大な効果を実感することになってしまったのだった。
何が凄いかと言えば、彼が私の肩に触れると、他のマッサージ師が触った感触とは全く異なる、石の塊のような ”こり” を皮膚の下に感じることになり、 彼がそれを指でつぶすようにマッサージする度に 目から火花が出るような激痛が走るのである。 その痛みといったら強烈で、声も出ないし、息も吸えない思いをするけれど、「止めて欲しい」というよりは「続けて欲しい」という痛みで、 とにかく、ピンポイントで こりを集中的にほぐす その手法は、「目からウロコ」どころか、魚が泳ぎ出てきそうな勢いだったのである。

彼のマッサージは、とても時間を有効に使うもので、1時間の間に肩だけでなく、腰から背骨、首、リフレクソロジー並みのフット・マッサージに加え、 顔、特に頬や目のツボも刺激してくれるもので、頬は痛かったけれど、全く痛くなかった目のツボの刺激のお陰で、 あとで視力が改善されていたのにはうならされてしまった。
デイビッドによれば、私の肩こりはそれほど深刻なものではないそうで、「コンピューターを長時間使っている典型的なニューヨーカーというこり具合」 だと説明してくれて、「針治療をする必要はない」とも言ってくれたけれど、私の問題は肩だけでなく、腰にもあるとのことで、 今は肩に痛みの神経が集中しているだけに、腰の問題が感じられないのだろうと分析してくれた。 今の肩こりは、あと4回程度のマッサージで解消されるとのことで、私は早速来週木曜日にもデイビッドに予約を入れてしまうことになった。
マッサージが終わって外に出ると、既に揉み返しに似た軽い痛みが肩全体を被っていて、手で触れてみると、驚くほど温かくなっていた。
アメリカ人の多くは、リラクセーションを目的にしたスウィディッシュ(スウェーデン式)・マッサージを好むので、時に指圧のような強烈なマッサージを受けて 揉み返しがあると、訴える客も居るというけれど、デイビッドのマッサージはそんなアメリカ人にとっては、かなりの荒療治であるのは事実。 でも、私のように問題を自覚していて、改善したいという治療目的の人間にとっては、効果・効用を1時間後に実感できるスーパー・トリートメントなのである。


私は この2日間は、とにかく水を沢山飲んで、フルーツと野菜を沢山食べて、良く眠るように心掛けたけれど、 少なくとも現時点では、肩は揉み返しの痛みがあるものの、「こり」の痛みとは異なる 筋肉痛のような痛みで、不快感はなくなっているし、 首の座りが良くなったのは実感すること。 垢すりスクラブのお陰で、肌はスベスベしているし、視野もクッキリしているので、何とも言えずに爽快な気分であるし、 これで明日ジムで汗を流せば、久々に「ウェルネス」が実感できると思える状態ですらある。

アメリカでは、心身ともに健康で充実した状態をウェルネス(Wellness)と呼んでいて、その追求は、今や多くのヘルス&フィットネス・マガジンの テーマにもなっているけれど、人間がDNAの存在を意識して、自分の身体に後天的に望める体質や その限界を自覚すると、 求めるのは自分の持つDNAで可能な最上のコンディション、すなわちウェルネスである。 人間はそのDNA で、理想体重や身体につけることが出来る筋肉などが定められている訳で、80〜90年代のフィットネス・ブームのように 必要以上、もしくは不必要な努力を強いて、身体を作り上げようとするのは、時代遅れと見なされるのものである。
ウェルネスの観点ではエクササイズやダイエットだけでなく、リラクセーションを初めとする精神的なゆとりや、日常の活動や仕事の効率、 身体や内臓の機能など、総合的な健康、生活の充実が問われるものであるけれど、 ナパで沢山の緑に触れて、ワイナリーでゆったりと働いている人々に会って、ニューヨークに戻ってくると、 ウェルネスの大切さ、ニューヨークでそれを追求することの難しさを痛感してしまうのである。
ニューヨークのような都会で、ストレスフルな生活をしている人々の多くは「病気にならないこと」が健康だと思い込んでいるところがあるけれど、 それがウェルネスではないのは言うまでもないこと。 ウェルネスを追求するには、自分の健康や生活の充実感に対するレベルをしっかり持って、そのレベルがクリア出来なければ、 病気になっていなくても、デトックスなり、ヨガなり、食生活の改善なりの努力をしなければならない訳で、 私にとって、今回の旅行は、そのウェルネス追及のきっかけが得られたという点で、とても意義あるものだったと思っているのである。



Catch of the Week No.3 May : 5月 第3週


Catch of the Week No.2 May : 5月 第2週


Catch of the Week No.1 May : 5月 第1週


Catch of the Week No.5 Apr. : 4月 第5週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。