May. 18 〜 May. 24 2009




” 今年の「アメリカン・アイドル」 と現在のアメリカ ”


今週末はアメリカは、メモリアル・デイを月曜に控えて3連休。
メモリアル・デイとはそもそもは戦没者とその家族に敬意を示すためのホリデイで、 ワシントンのアーリントン墓地では、墓石1つ1つの前にアメリカ国旗が飾られる様子がニュースの映像で映し出されていたけれど、 多くのアメリカ人にとっては、夏の始まりを意味するホリデイ。
なので、通常だったらこの休みを利用して遠出をする人が多いものだけれど、昨年からは リセッションを受けて 旅行者が減っており、特に減少傾向が続いているのが飛行機による空の旅。 この時期の飛行機運賃は昨年の同時期に比べて15%ダウンしていると言われているものの、 利用者の数は7%減っているという。
その反面、昨年より2.5%増えているのが車で近場の旅行をしようという人々で、その最大の理由として挙げられているのは ガソリン代が昨年同時期に比べて39%も値を下げていること。 なので、今年のメモリアル・デイは車の混み合いと、300人以上の交通事故死傷者が予想されているのだった。

その一方で、今週ニューヨークで比較的大きく報じられていたのが、 引き続きスワイン・フルー(豚インフルエンザ)の ため 休校になる学校が増えているというニュースであるけれど、今のところ休校している学校でスワイン・フルーの感染が確認されているのは僅かで、 休校の原因は もっぱら親達がスワイン・フルー感染を恐れて子供を学校に行かせないために 欠席者が多く、 そのために休校せざるを得ないためだと伝えられているのだった。
子供の風邪の症状に過敏に反応する親達のせいで、相変わらず病院の救急医療室は大混雑であることが伝えられているけれど、 一度ネガティブ(陰性)と診断されると、子供達はたとえ風邪を引いていても、学校が休校になったのを良いことに 元気にショッピング・モールなどに繰り出していることがニューヨーク・タイムズ紙で報じられているのだった。
親達の間では、「ニューヨーク市全体の学校を休校にするべきだ」という声も多いというけれど、各学校ベースに休校を検討すべきというのが ブルームバーグ市長の強い意見。 この理由は アメリカでは12歳以下の子供を保護者無しで自宅に居させてはいけないという法律があるためで、 子供が休みになれば 仕事を休まなければならなくなる親が出ることを考慮してのこと。 また、休校に反対する学校関係者や父母の間では、これ以上の授業の遅れは 卒業式の日程調整や、 夏休みに補修を行わなければならないといった不都合をもたらすことが訴えられているという。
昨今の相次ぐ学校閉鎖のニュースのせいで、ニューヨークではスワイン・フルーの感染というと もっぱらメキシコ旅行をした小学生と その周囲の小学校が掛かるインフルエンザというイメージが定着してしまっているけれど、 一部では 「大人は皆レイオフされてオフィスに行かないから、スワイン・フルーに感染するチャンスが少ない」 というジョーク交じりの指摘も聞かれているのだった。
でも実際、スワイン・フルーがアメリカで騒がれだした時点で、ガロップ・ポールのアンケートでは25%のアメリカ人が 「感染を心配している」 と答えていたというけれど、今ではその数は約半分の13%にまでダウンしているのだった。
正直なところ、一連のスワイン・フルーによる学校閉鎖の報道を見ていると 今どきのアメリカの親達の過保護さと、 程度の悪さに呆れてしまう思いだけれど、そもそもアメリカには 「5秒ルール」なるものがあって、これは 5秒以内だったら、床や地面に落ちたものを食べても ばい菌が付着していないと考える というもの。 ニュースの報道によれば、スワイン・フルーが騒がれだしてからも 親達は この 「5秒ルール」を実践して、 床や地面に落ちた食べ物を平気で子供の口に入れていたりするのが実情。 そんな親達、それも肥満体で子供にもろくなものを食べさせていないと思しき親達が、「学校閉鎖をして学校全体を消毒するまで、 子供を通学させない」 などとTVカメラを意識しながら メディア受けを狙って 怒鳴っている姿を見ていると、 この国の将来も暗いと思えてしまうのである。

一方、ニューヨークのバス&地下鉄を運営するMTA(メトロポリタン・トランジット)が、新たな運賃の値上げを決定する 以前から、ニューヨークで増え始めていたのがサイクリスト、すなわち自転車に乗る人口であるけれど、 昨今、問われ始めたのがそのマナーの悪さや危険度。
ハンター・カレッジが 5,275人のサイクリストを対象に行った調査によれば、37%が赤信号を無視し、13.2%が一方通行を無視。29.3%が 自転車用に設けられたレーンを使わず、何と75%がヘッドライトもテールライトも使っていないという。 さらに走行中に アイポッドを始めとするエレクトリック・ディバイスを使用しているサイクリストは8.3%も居たと言われているのだった。
でも今週ニューヨークで行われた通勤手段コンテストでは、自転車が 地下鉄やタクシーを抑えて、No.1 に早い通勤手段となっており、 しかもエクササイズにもなるということで、その人気には歯止めが掛からないようである。
これを受けて、今では自転車ショップが大繁盛しているそうで、特にパンクを始めとする修理については 今時珍しい人手不足が伝えられているのだった。

話は全く変わって、今週私が約1年ぶりくらいに店に入ったのが5番街55丁目のヘンリ・ベンデル。
突然同店に出掛けた理由は、新聞の記事で 「同店が売上不振のため、衣類の販売をストップして アクセサリーとコスメティックの 専門店にする」ことが報じられていたためで、一体どういう状況なのか興味があったために久々に同店に足を踏み入れたのだった。
私が個人的にヘンリ・ベンデルが好きでない理由は、建物自体が買い物がし難い作りになっていることに加えて、 ファッション・ストアなのにシューズ・セクションが手抜きであること、 さらにアパレルが非常にニッチな品揃えに走りすぎていて、欲しいと思うものに巡り会うことがまずないためである。 久々に出掛けた同店は やはり私が嫌いな状態のままで、 アクセサリーに若干面白いものがあったのを除いては、 5番街の一等地に構えているにも関わらず売上不振になっても仕方が無いと思えるような品揃えになっていたのだった。
しかも3階まで上がっていくと 買い物客とすれ違うことが 無いほどのゴースト・タウン状態で、このフロアでは もとの値段を支払う価値が無いような高額アパレルの数々が40%オフになっていたけれど、 買い物客が居ないのであるから、当然全く売れていないのだった。
同店をヴィクトリアズ・シークレットやアバクロンビー&フィッチの親会社であるリミテッド社が買い取って、 華々しくオープンした90年代初頭には、私は当時勤めていた雑誌のエディターとして同店のクリエーターで、ヴィクトリアズ・シークレットのストアも 多数手掛けているジェームス・マンソワー氏とインタビューしたのを覚えているけれど、 その時のオープニング・パーティーには今は亡きジャッキー・Oことジャクリーヌ・ケネディ・オナシス夫人がゲスト・オブ・オナーで 姿を見せていたのだった。 なのでその頃の同店を覚えている人間としては、今の同店の状態はかなり寂しいと感じるものがあるけれど、 小売業の不振は 今ではヘンリ・ベンデルに始まったことではないもの。 先週発表されたアメリカの小売ビジネスの4月の成績を見ても、 やはりマイナス傾向は続いており、株価が回復に向かい、 消費者の心理が楽観的になりつつあると言われていても、 それがまだ消費に結びついていない現状が露呈されているのだった。

ところで、今回のリセッションの隠れた犠牲者と言われるのがペット達。 ペットの餌代や世話代が賄いきれなくなったオーナーがペットを置き去りするケースが激増し、 それらをボランティアで引き取ってきた人々も 施設がオーバー・キャパシティになってしまい、 ペット達が市政府によって処分されないようにするために、TVでサポートを訴えるような状況になっているのである。
でも今週ニューヨーク・タイムズに掲載された興味深いデータが ペットが家計を苦しくするだけでなく、 飼い主の怪我の原因になっているという事実。 怪我が最も多いのは年齢にして35〜54歳で、怪我を負う性別は69%が女性、残りの31%が男性であるという。 怪我の原因は、「ペットに躓く(つまずく)」 が第1位で、ネコを飼っている人々の70%以上が これが原因で怪我をしているという。 次いで ペットに押されたり、引っ張られたりするというもので、こちらの原因が犬の飼い主に多いのは容易に想像が付くというもの。 さらにペットのオモチャを始めとするペットアイテムのせいで転ぶというものが第3位になっている。 怪我の箇所で最も多いのが、腕で27%、次いで、足、首と頭 が24%であるという。
このデータはアメリカの66軒の病院で行われた調査結果であるけれど、年間にペット関連の怪我で 病院を訪れた人々の数は その66軒だけでも8万6000人。 アメリカではホワイト・ハウスを含む4300万世帯が犬を飼い、3750万世帯がネコを飼っていることが伝えられており、 この数はアメリカ全土で調査した場合、これを遥かに上回ると言われるのだった。


さて、私にとっては 毎年夏の到来を感じるのが、人気No.1 のリアリティTV 「アメリカン・アイドル」がシーズン・フィナーレを迎えて、 その年のアメリカン・アイドルが決定した時である。
私は 「アメリカン・アイドル」だけは シーズンNo.1から欠かさずに見続けてきており、 同番組については かなり詳しいことを自負していたりする。 今では番組を見逃しても、インターネット上で コンテスタントのパフォーマンスやその週は誰が投票で落とされたかを 簡単にチェックできるようになったけれど、かつては日本に一時帰国した際に その結果をアシスタントにメールで報告してもらったりしていたもの。
なので毎年 1月にシーズンがスタートすると 「もうこんな時期になった!」 と感じ、5月に番組が終了すると 「もう夏だなぁ・・・」 と感じる季節のバロメータのような存在になってしまっているのである。
その「アメリカン・アイドル」のファイナルが行われたのが今週火曜日、そしてその結果が発表されて番組がシーズン・フィナーレを迎えたのが 今週水曜日。
もう日本でもCNNなどのサイトが結果を報じている上に、日本語のブログでもファイナルの結果に触れたものが沢山あるようなので、 ここで あえて同結果についての アメリカのメディア分析をお伝えしようと思うけれど、もし番組を毎週楽しみに観ている方がいらしたら、 この先は、番組の結果を観てから読むことをお薦めします。

ありとあらゆるメディアが 「大番狂わせ!」 と報じたのが今年のアメリカン・アイドルのファイナル。
そもそも下馬評では ファイナルに進むのは グラム・ロッカー、アダム・ランバートと、アメリカン・アイドルのオーディションが始まる直前に 妻を亡くしたソウルフルなシンガー、ダニー・ゴーキーという声が圧倒的に多かったのである。 ところが、ファイナルに進んだのはそのアダム(27歳)と、アーカンソー州出身の学生、クリス・アレン(23歳)。
ファイナルの下馬評も、シーズン中からフロント・ランナーだと思われていたアダムの圧倒的優勢が伝えられ、 彼を今年の アメリカン・アイドルと決め付けたメディア報道さえ行われていたけれど、 実際に蓋を開けてみれば、勝利したのがダークホースと言われ続けたクリス。 生放送で同番組を観ていた私も ビックリした この結果を巡って、 今週のアメリカは、「何故アダムが アメリカン・アイドルに選ばれなかったのか?」、「何故クリスが選ばれたのか?」 という様々な分析が、 ニューヨーク・タイムズ紙のような一流メディアでも行われるほどのセンセーションになっていたのだった。
私は過去8年間の「アメリカン・アイドル」を観続けてきたけれど、シーズン・フィナーレが終了してニューヨーク・タイムズが 同番組関連の記事や論評を4回も掲載したのはかつて無かったこと。 それほどまでに、今回のアメリカン・アイドルのファイナルは、政治、宗教、ゲイ論争、現在のアメリカが求める価値観など を巻き込んだ 物議を醸していたのだった。

ここでファイナルに残った2人のコンテスタントについて簡単に触れておくと、 ファイナルに勝利し、第8代目のアメリカン・アイドルとなったクリス・アレン(写真右、右側)は、アーカンソー州のコンウェイという小さな町の出身。 南部の小さな町では決して珍しくないけれど、彼は敬虔なキリスト教信者であり、若いながらもチャーチー・ゴーワー(毎週教会に通う人のこと)。 23歳にして新婚の彼は、毎週のパフォーマンスをブロンドのキュートなワイフが客席から見守る様子が必ず映し出されていたのだった。
ギターとキーボードを巧みに弾きこなし、 ”タイミング良く 絶妙のパフォーマンスを見せる” と数々のメディアが指摘する彼は、 常ににジーンズ&Tシャツといったシンプルな服装で、礼儀正しく、謙虚で、 好感が持てる態度や言動で知られる存在。 ルックスもこれまでのコンテスタントの中でベストの呼び声が高かったりする。

一方のアダム・ランバート(写真右、左側)は、小さい頃からスポーツよりステージ・パフォーマンスに夢中になり、 オーディションの際には「シアトリカル(劇場的)過ぎる」ことをジャッジ(審査員)に指摘されていた存在。 ブラックのマニキュアに沢山のジュエリー、独特のヘアスタイル、タイトなパンツのグラム・ロック・ファッションを身に纏い、 その音域が広いヴォーカル・スタイルは、今は亡きクイーンのヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーとよく比較されていたのだった。
カリフォルニア州サンディエゴ出身で、オーディションを受けるまでの彼は週給700ドルのキャバレー・パフォーマーだったという。 毎週ユニークなアレンジで、バイスタンダードなパフォーマンスを見せてきた彼は、 ジャッジから時に ”褒め過ぎ ”と言える高い評価を得ており、早くから 「今年のアメリカン・アイドルは彼に決まり!」 という指摘がされてきたのだった。 でも、多くのメディアが彼のゲイ説を唱えていると同時に、インターネット上には彼のクロス・ドレッサー(女装)写真や ゲイ・キスシーンの写真も溢れており、本人もゲイか否かについては あえてコメントを避けている状態。 人当たりは良く、メディア慣れしているものの、トップ4に絞る 結果発表の際に自信満々な様子を見せて顰蹙を買ったエピソードがある。

今年のアメリカン・アイドルが発表されるまでの7分間には、アメリカの4100万人がチャンネルを合わせたと言われているけれど、 その投票数は1億を超えて、これまでの「アメリカン・アイドル」の投票記録を更新したことが報じられていたのだった。 ちなみに同番組の投票者数が過去数年で激増しているのは、AT&Tの携帯電話使用者が テキスト・メッセージ(携帯メール)で 投票できるようになったため。したがってファンは電話が掛かららないというジレンマを味わう必要は無い訳である。
メディアが今回のファイナルの結果に大きな影響を及ぼしたと指摘するのが、アダムがゲイであると思しき 反面、 クリスが敬虔なクリスチャンであるという事実。
この事実がファイナルにどう影響を及ぼすかといえば、今回の「アメリカン・アイドル」でNo.3に甘んじた ダニー・ゴーキーは 地元の教会のクワイアー(合唱団)のディレクターを務めており、 まず彼を支えていたクリスチャン層の票が全てクリスに移行したという説が1つ。 さらに、現在アメリカではゲイの婚姻を合法とする州が増えつつある状況を受けて、 敬虔なクリスチャンは、これまでになくアンチ・ゲイ色を強めているご時世。 さらにゲイの結婚に反対し、中絶に反対するというキリスト教右派=共和党支持層は、昨年の大統領選挙以来、 その地盤が弱まってきたことが指摘されるだけに、「アメリカが選ぶアイドルが ゲイ(と思しき人間)であるべきではない」 という宗教と政治思想が絡まった投票を行っていたとまで指摘されているのである。

さらに 「アメリカン・アイドル」を放映するFOXは、そのキリスト教右派のメディアでもあり、 ジョージ・ブッシュを熱烈に指示し、イラク戦争を後押しし、リベラル派に対して非常に厳しい見解を持つ コンサバ・メディア。ファイナルの前日には、FOXと親会社が一緒のニューヨーク・ポスト紙に 「アダムが勝つべきではない」という 記事が掲載されただけでなく、他のメディアでも 「もし アダムが今年のアメリカン・アイドルに選ばれてから、 ゲイだということを明らかにしたら、彼自身だけでなく 「アメリカン・アイドル」という番組のマーケティング価値も下がるだろう」といった 論調も聞かれていたのだった。
こうした指摘がされるのは、シーズンNo.2 のファイナルで破れ、その後レコード・デビューをした クレイ・エイキンが昨年ゲイであることを公表した途端、「ファンを欺いた」という怒りの声が寄せられ、 ファンが訴訟を起こすといった騒ぎも起こり、以来 彼がすっかりメジャー・メディアから姿を消してしまったため。
そして、クリスが勝利した後のニューヨーク・ポスト紙は、この投票結果は2人のアイドルに対するだけの投票ではなく、 「レッド・ステートVS.ブルー・ステート」、すなわち共和党支持者VS.民主党支持者の対決だった、と政治問題に 結びつける記事が登場していたのだった。
その一方で、今日5月24日付けのニューヨーク・タイムズ紙では、クリス・アレンの勝利は 「現在のアメリカが フレンドリーでナイスな存在を求めている社会現象の現れ」 として、 フレンドリー外交を進めるオバマ政権や、フォルクス・ワーゲンの新しいフレンドリー・イメージのCMなどを例に挙げて、 今のアメリカをスマイル・マークが一世を風靡した1971年のアメリカと比較していたのだった。

私がこうした一連の「アメリカン・アイドル」についての分析を興味深いと思う反面、不服に思うのは、 私自身がクリス・アレンのファンで、トップ10に絞られた頃からずっと彼を応援して、彼の魅力や実力を評価してきたためである。
彼は音域こそはアダムほど広くないけれど、とても才能のあるミュージシャンだと思うし、 目がキラキラした笑顔がとてもチャーミングで、何より母性本能をくすぐる存在。 なので、彼に勝たせてあげたいと思うばかりに、過去に1度も「アメリカン・アイドル」に投票したことのないこの私が、 思わず電話をしてしまいそうになったけれど、私はアメリカン・カルチャーの傍観者となることを心に決めているので そのボーダーラインは破らないことにしたのだった。
個人的にはアダムやダニー・ゴーキーも良いシンガーだと思うし、特にアダムのパフォーマンスは 毎週注目してきたけれど、彼らのスタイルには途中で飽きてしまって、 これについてはいくつかのメディアも、「彼らはファイナルを迎える前にピークを付けてしまった」 といった指摘をしていたのだった。

今回の「アメリカン・アイドル」の番狂わせを受けて、多くの人々はかなりの接戦だったに違いないという印象を持っているようだけれど、 FOX側は今年に限っては 何%の差であったか?といった数字は一切発表してないのが実情。
でも ニューヨーク・ポスト紙に掲載された19エンターテイメント(アメリカン・アイドルの番組制作会社)のエグゼクティブのコメントでは、 公表できないくらいに、クリスとアダムの差が大きく開いており、実際にはクリスの圧勝だったことが伝えられているのだった。
そもそも、「アメリカン・アイドル」は毎週の投票総数を発表しても、各コンテスタントが何票獲得したかは決して明かさないもの。 この理由は票の内訳を明かすと、人々の興味が薄れ、投票者や視聴者が減ってしまうからであるという。 例えば、シーズンNo.4でアメリカン・アイドルに選ばれたキャリー・アンダーウッド(写真左)の場合、 シーズンを通じて毎週 圧勝に次ぐ圧勝だったそうで、彼女がアイドルに選ばれるのは番組関係者なら誰でも予測できたこと。 これを 同シーズンのNo.2に甘んじたボー・バイスとの接戦のように見せかけて、視聴率を取ろうとするのはTV局側としては 当然のことなのである。
そのキャリー・アンダーウッドは 昨年1年間だけで14億円を稼ぎ出す、「アメリカン・アイドル」出身シンガーの 稼ぎ頭になっているけれど、 奇しくも 彼女は、共和党支持者=キリスト教右派が好むカントリー・ミュージックの世界で 大成功を収めているのである。

ニューヨーク・ポスト紙によればアメリカン・アイドルに選ばれるということは、「今年1年で2億円を稼ぎ出す」 ことを意味するのだそうで、 その内訳は レコード・デビューの契約金だけで1億円。加えて トップ10に選ばれたコンテスタントによる全米50都市を回るツアーで、 1回のショーにつき約50万円のギャラが支払われるけれど、このギャラに関しては、トップ10に選ばれたシンガー全員が同額になっているという。
それ以外にも、多数のパフォーマンスをこなすことによって最低でも2億円は軽く稼ぎ出せるのが「アメリカン・アイドル」のマーケティング・パワーであるという。
もちろんその後、売れるシンガーになれるかは個人の実力と、マーケッタビリティに掛かっているけれど ゲイであるという事実は、先述のクレイ・エイキンのように ナショナル・アピールが弱まるのは紛れも無い事実。
私がアメリカのゲイ・フォビアが根強いことを痛感したエピソードが、数年前のアメリカの何処かの州の卒業式で、学生が クィーンの「We Are The Champions」を合唱しようとしたところ、クィーンのヴォーカリスト、フレディー・マーキュリーが ゲイで、エイズが原因で死亡したことを理由にPTAから抗議が寄せられたことがニュースになっていたというもの。
既に述べた通り、アメリカの親達というのはあまり程度が良くないものなので こんなエピソードが出てきても仕方が無いけれど、 アメリカというのは本当に信仰を重んじる国なのである。
なので、同じ2人の有能なシンガーが居たとしても、1人がゲイで、もう1人が礼儀正しい敬虔なクリスチャン &チャーチ・ゴーワーだとしたら、多くのアメリカ人が好感を持ち、親達が子供に聴いて欲しいと思うのが 後者であるのは言うまでも無い訳で、 アダムが勝てなかったことで 不服に思うファンは そう考えて諦めるしかないのである。






Catch of the Week No. 3 May : 5 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 May : 5 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 May : 5 月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Apr. : 4 月 第 4 週







執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





© Cube New York Inc. 2009