May 17 〜 May 23 2010




” Run For Youth ”


今週も株価の変動やヨーロッパの経済不安、そしてオイル流出事故が大きなニュースになっていたアメリカであるけれど、 個人的に興味をそそられたのは、2009年度に生まれた新生児につけられた名前の人気ランキングのニュース。
アメリカはリセッションに入ってから、ちょっとしたベビー・ブーム。 出費を減らすために、カップルが外食やナイトアウトを控えた結果、都市部を中心に妊娠件数が大幅に増えたことが 伝えられていたけれど、そんなリセッション・ベイビーの間で人気No.1の名前というのが、男児がJacob / ジェイコブ、女児が Isabella / イザベラ。 奇しくも、どちらも大人気映画シリーズ 「トワイライト」のメイン・キャラクターの名前。
これに続く男児のトップ5は 2位が Ethan / イーサン、 3位が Michael / マイケル、 4位が Alexander / アレクザンダー、 そして5位が William / ウィリアム。 女児の2位以降は 2位が Emma / エマ、 3位が Olivia / オリヴィア、 4位が Sophia / ソフィア、 5位が Ava / エヴァ というラインナップ。
やはり変動が激しいのは女児の名前で、かつてトップだった Abigail / アビゲールは今年は8位、 アビゲールの前に人気No.1 だった Ashley / アシュレー は映画「風と共に去りぬ」の中では男性名であったけれど、 こちらも2009年度は20位に転落。
その一方で、男児名はそれほど変動がなく、マイケルが常に上位にランクされているのは20年以上続いている状態であったりする。
2009年度にNo.1のジェイコブ、イザベラは 共にヘブライ語が起源の名前。 果たして親たちが映画、「トワイライト」を意識してこの名前をつけたかは定かではないけれど、時代を象徴するようなセレブリティの名前 がベビー・ネームとして好まれるのはアメリカも諸外国と同様。
全体的な傾向としては、男児のウィリアム、女児のオリヴィアなど かつてオールド・ファッションとみなされたような トラディショナルな名前が 再び新鮮に捉えられてカムバックを果たしているといった印象を与えているのだった。


ところで、私は3月2週目のコラムで 1週間最低10マイル(16キロ)を走るのがノルマと書いていたけれど、 今ではこのノルマが増えて 1週間に走っている総距離は 18〜20マイル(29〜32キロ)。
走る距離を増やした理由の1つは、季節が暖かくなってセントラル・パークを走るようになってから、 どんどん走るのが楽しくなってきたということもあるけれど、もう1つは今年1月30日付けのニューヨーク・タイムズ・マガジンに掲載された記事を 読んだことがきっかけなのだった。
この記事では ドイツで行われた 細胞のライフスパンを測る実験が紹介されていたけれど、そこに集められたのが4つのグループの男女。
1つ目のグループは20代で、あまり運動をしていない男女。 2つ目のグループは40代、50代のミドル・エイジで、やはりあまりエクササイズをしていない男女。 3つのグループは 20代のランナーで、その殆どはナショナル・トラック&フィールド・チームのメンバー。 1週間に45マイル(72キロ)を走るのがノルマであるという。 そして 最後の4つ目のグループが ミドル・エイジのベテラン・ランナー。 平均年齢は51歳で、1週間に走っている距離は何と50マイル(80キロ)で、先述の20代のランナー達も驚くトレーニング量。

この4つのグループを集めて、まずサイエンティストが驚いたのが、 20代では運動をしているグループと していないグループのルックスが殆ど変わらないのに対して、 ミドル・エイジはランナーのグループが、エクササイズをしていないグループに比べて 格段に若く見えるという事実。
そして その血液細胞を摂取して調べたところ、20代ではエクササイズをしていないグループと ランナー・グループとでは 染色体の端についているテロメアの長さが殆ど変わらなかったのに対して、 ミドル・エイジで比較すると、エクササイズをしていないグループのテロメアの長さが2 0代に比べて40%以上短くなっていたにも関わらず、 長距離を走り続けているランナー達は、そのテロメアが10%程度しか短くなっていなかったという。

テロメアと、テロメアを修復する機能を持つテロメラーゼ による染色体(DNA)保護機構は 2009年のノーベル医学生理学賞を受賞した発見。 以来、テロメア、テロメラーゼは メディアにも徐々に登場するようになってきた言葉なのだった。
染色体の末端には、染色体を保護する役目を持つキャップのような構造の ” テロメア” というものが存在していて、 このテロメアは 細胞分裂のたびに長さが短くなるもの。限度を超えて短くなると 染色体が不安定になり、最後には細胞が死んでしまうというシナリオ。
一方、酵素 ”テロメラーゼ ”には 短くなったテロメアの修復を行う機能があるというのが このノーベル医学生理学賞受賞の発見なのだった。
これだけ言われてもあまりピンと来ない人は多いけれど、要するに細胞分裂というのは老化のプロセス。老化が早い人ほど細胞分裂も早く、 テロメアも短いということ。 すなわち 人間は年齢を重ねるにしたがって、テロメアが短くなるということ。
でも 酵素、テロメラーゼの働きが活発であれば、テロメアのダメージが修復されるので、細胞の老化を遅らせることが出来ることになり、 その結果 若さと健康を長く保つことが出来るという事なのだった。

この記事では エクササイズがDNAにどう働きかけるかは未解明であるとしながらも、 ランナーのテロメラーゼが エクササイズをしていないグループのテロメラーゼと比較して 遥かに働きが活発であったことも述べられていたのだった。
すなわち この結果から言えるのは 若い頃はエクササイズをしていても、していなくても、一定の長さが保てるのがテロメア。 テロメアは 老化と共に短くなってくるけれど 、 エクササイズを続けることによって、20年、30年とエイジングを重ねても その短縮を10%に食い止めることが出来るということ。 さらにエクササイズをしていない人々と比較した場合、テロメアの短縮に75%もの違いが確認され、その違いが外観の若さにも現れるということ。
したがって、エクササイズがテロメラーゼを活発にすることは明らかであり、「健康と若さを保つにはエクササイズをすること」 というセオリーは DNAのレベルでも科学的に立証されたと言えるのだった。

とは言っても、ドイツの実験に登場したミドル・エイジのランナーは 1週間に80キロを走っているエリート・アスリート。 1日平均に直して11.4キロを走り、週に2日 休息日を入れたとすれば 1日平均16キロのランニング。 これを50歳になっても続けるというのは、誰にとっても 考えただけで気が遠くなるような話。
このニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事でも、果たして どの程度のエクササイズがテロメラーゼの働きを活発にすることが出来るのか?が 疑問として残されていたけれど、その疑問に希望を与えるような記事が登場したのが、4月13日付けのNYポスト紙。(右下)

ヘッドラインにもあるように、ここに紹介されているマンハッタン在住のエグゼクティブ・リクルーター、アンドレア・ワーニックという女性は63歳。 でもそのボディ・ライン、肌、髪の毛など、どれをとっても、彼女は40代にしか見えないのだった。 サラー・ジェシカ・パーカーのような”サイズ・ゼロ”のボディを誇っている彼女は、自分自身、彼女のボディが殆どの30代の女性よりベターだと 語っているけれど、その若さとスリムなボディを保つ秘訣はエクササイズ。 彼女は週に8時間のワークアウトを欠かしたことが無いと語っているのだった。
それを裏付けるように、アメリカ医学ジャーナル・アソシエーションが40代、50代の女性、 3万4000人を 15年に渡ってモニターし続けた結果 得られたのが、”1日60分間、毎日ワークアウトする女性”、”週に最低7時間ワークアウトする女性”は、 年齢と共にメタボリズムが下がっても 体型を保ち続けることが出来るというデータ。
なので、ドイツのミドルエイジ・エリート・ランナーと同じテロメアへの効果は期待できないかもしれないけれど、1日1時間のエクササイズと、 ボトックス注射で、63歳が45歳に見える程度には老化を改善できるかもしれないのだった。
でも、63歳にして45歳に見えるようにするためには、45歳になる以前からエクササイズを続けていなければならないのは 容易に想像がつくこと。要するに テオメアの短縮を最小限に食い止めるには、テオメアが短くなり始める前からエクササイズや 正しい食生活をしなければならないのも また事実なのである。


いずれにしても、私はこのテオメアに関する記事を読んでからというもの、機会があれば極力身体を動かすようにしているけれど、 特にランニングを始めるに当たっては、周到な準備をしてから取り組んでいたのだった。
というのも、アメリカではランニング人口が多いこともあって、ランニング/ジョギングは最も怪我が多いエクササイズ。 正しい走り方をしていないと、逆に関節や筋肉を傷めることにもなりかねない上に、 私が走り始めたのは 足の親指の爪が全て剥がれ落ちるという テニスによる怪我がようやく回復してきた時期。
なので、走ることによって怪我をするのを恐れていた私はフィジカル・セラピストにフォームをチェックしてもらって、 走る距離やスピードについてのアドバイスを受けてからランニングをスタートしたのだった。

このフィジカル・セラピストは 値段も高かったけれど 非常にユニークで、シューズを履いて走っている時と 裸足で走っている時の足の動きやフォームを HDビデオに収めて、それをスローモーションで再生しながら走り方を分析するというやり方をしていて、 彼はそのビデオを見ながら、「子供の頃から足が速かったでしょう?」とか、「スニーカーを緩く履くのが好きでしょう?」などと ドンピシャのことを次々と指摘するので、私はすっかり驚いてしまったと同時に 彼を全面的に信頼することにしたのだった。


彼によれば、多くのランナーは 踵から地面に足を着けるのが正しい走り方だと思っているけれど、これは間違いとのこと。 歩行だったら踵から地面に着いても別に構わないけれど、ランニングから、テニス、バスケケットボールなど、ありとあらゆるスポーツのフットワークは、 止まる時以外は踵を殆ど使わないもの。 ランニングに関しては、 踵とミッドソールの間から軽く着地して、つま先に向かって足の甲をロールアップして行き、最後に足の指先のグリップを 軽く弾むようなモーションで 地面からリリースするのが正しい足の動き。 そしてこれが膝の柔軟性やふくらはぎの筋肉による 身体全体を前に押し出すムーブメントとシンクロナイズした状態が正しい走り方。 生まれつき運動神経の良い人や、足が速い人は 多少 フォームに個人差はあっても、全く意識せずに これを完璧に行っているケースが殆どであるという。

セラピストによれば、スニーカーの踵が減っているランナーに、形の良い足の筋肉がついている人は居ないとのことだったけれど、 これは、私もセントラル・パークを走っている 何千人ものランナーを見ていて常に感じること。 実際、フォームの良いランナーは 殆ど踵が地面に着くか、着かないかの状態で走っていて、スニーカーのかかとは全く減っていないのである。
そして そういうランナーほど、女性でも男性でも 足のシェイプが美しくて、膝下で一度細くなってから ふくらはぎの筋肉が盛り上がり、そこから細く 引き締まった足首に向かって なだらかなフォルムを描くという 形の良さ。その足と上下動や無駄な動きが無いフォームで颯爽と走っているのだった。
中には、よくこんなフォームで速く走れるなぁ・・・と思うランナーも居るけれど、往々にしてそういうランナーは、 途中でスピードが落ちるので、1〜2マイル(3.2キロ〜4.8キロ)も走ればスローダウンをするか、さもなくば歩いていたりするのだった。


さて、「スポーツを真剣に始めたいと思ったら、ギアに投資を惜しまない」というのは、ランニングにも当てはまること。
私は走り出した当初は、ジムのランニング・マシーンを使っていたので、ワークアウトの時に履いている MBTのスポーツ用スニーカーで走っていたけれど、 このスニーカーは靴底の素材が柔らかいとあって、 つま先があっという間に擦り切れてしまった上に、やはり10キロ走ろうとすると靴底が厚い分、重た過ぎる印象。 しかもクッション効果が無いので、屋外のアスファルト道を6キロ以上走ると膝や関節にかなりの負担が 掛かるのだった。
なので、私が長距離を心地良く走れて、膝や関節の負担が少ないスニーカーとして選んだのが、アディダスの ラヴァ・マイクロバウンス・シューズ。(写真左) 軽い上に、履き心地もクッション効果も抜群なので、このシューズに替えてからというもの 走るのが益々楽しくなってしまったけれど、 一度、間違ってこのシューズでウェイト・トレーニングをしようとしたところ、クッション効果があり過ぎて、レッグ・プレスのようなエクササイズが とてもやり難かったので、シューズはエクササイズの用途に合わせて使い分けなければならないことを実感してしまったのだった。

ランニング・アパレルは汗をすぐに飛ばしてくれる素材、アディダスだったらクリマ・クール、ナイキだったらドライフィットのような素材であれば大丈夫だけれど、 私は走る距離が増えた直後は、タンクトップと腕との摩擦で 二の腕の内側の肌が真っ赤になってしまった経験をしたのだった。
ニューヨーク・マラソンを走る男性ランナーの中には、Tシャツとの摩擦で乳首が擦り切れてしまう人も居るとのことで、 マラソン・ランナーは、摩擦が起こる部分に ヴァセリンを予め塗っておく、もしくはヴァセリンを少量持参して走ることが大切だといわれるのは まさに納得といったところなのである。

個人的に、シューズと同じくらいにお金を出した甲斐があったと実感したのは、スポーツ用のイヤフォン。
屋外を走っている時は、汗が風で乾くけれど、室内のランニング・マシンで走っている時は汗をたっぷりかくので、時に髪の毛をつたって 耳の中に汗が入って、アイポッドのイヤフォンが全く聞こえなくなってしまうことがしばしばあったのだった。 加えて 屋外でも、室内でも、ただでさえ耳にフィットしないアイポッドのイヤフォンは、しょっちゅうズレるので、 走っている最中何度も イヤフォンを直さなければならなかったけれど、これをソニーのスポーツ用のイヤフォンに変えた途端、 一度もズレなくなっただけでなく、汗で音が聞こえなくなる問題も解消され、音質も格段に向上したので、その性能を再認識してしまったのだった。
でも、スポーツ用のイヤフォンの全てが同じようなパフォーマンスをするわけではないようで、某スポーツメーカーのイヤフォンを購入した私の友人は 「5メートル走ったらズレた上に、音が悪い」 と言ってボヤいていたのだった。

ところで、ランナーやアスリートの間でも意外に軽視されているのが、走り終わった後、エクササイズの後のアフター・ケア。 筋肉に疲れや炎症が残ったまま、ランニングやエクササイズを続けると、 それが原因で怪我や関節炎などの問題に発展するのは多々あること。
これを防ぐために大切と言われるのは、エクササイズやランニングが終わった後のストレッチや軽い水泳と言われるけれど、 筋肉の疲れやダメージを確実に改善するために欧米で用いられているのがマッスル(筋肉)・リカバリーの栄養剤。 これは、欧米のスポーツ・ドリンクの中ではリカバリー・ドリンクというカテゴリーで、体力のリカバリーではなく 疲れた筋肉のリカバリーを意味するもの。

その中で、アメリカで最も定評があると同時に、ベスト・リカバリー・ドリンクにも選ばれているのが Fluid / フルイド(写真左) というドリンク。これに含まれているLグルタミンは、エクササイズやランニングで疲れた筋肉を回復させる効果に優れているといわれていて、 最大の効果を得るためには エクササイズ終了後30分以内に飲むことになっている。 私自身も試してみたけれど、確かにこれを飲むと飲まないとでは、 長距離を走った翌日の筋肉の疲れ具合が格段と違うのには正直なところビックリしてしまったのだった。 ただ このドリンク、味がとっても人工的で 時に飲むのがストレスになるのが玉にキズ。
そこで、同じLグルタミンが入ったドリンクを探していたところ、CUBE New Yorkでも扱っているデヴィッド・カーシュに 「マッスル・リストア」(写真右) というドリンクがあったので、それを飲みだしたけれど こちらはオレンジ味で非常に飲みやすいので、 今ではワークアウトの最中、ランニングやテニスの後に必ず飲むようにしているのだった。

最後に、ランニングやエクササイズに欠かせないのがアイポッドを始めとするMP3プレーヤーであるけれど、 私はランニングをしている友達やジムで会う人に機会があればどんな音楽を聴いているのかを尋ねることにしているのだった。 その結果、女性はダンス・ミュージック、男性は80年代、90年代のロックというのが一般的なリアクション。 私自身も、走る時はリズムが掴み易いのでレディ・ガガのような軽いダンス・ミュージックを好んでいるのだった。
一般的に ランニングやエクササイズをする人々は、それに飽きないようにするために アイチューンから新しい音楽をダウンロードして、 音楽を変えることによって気分転換を図る例は非常に多いという。 なので、これらの人口がミュージック・ダウンロード・ビジネスの売り上げに非常に大きく貢献しているのは紛れもない事実のようである。






Catch of the Week No. 3 May : 5月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 May : 5月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 May : 5月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Apr. : 4月 第 4 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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