May. 16 〜 May. 22 2011

” Men Behave Badly ”

今週のアメリカのメディアからは、ビン・ラディンのニュースが消え失せて、 その報道の中心はもっぱら、IMF(国際通貨基金)のトップで、ニューヨークのホテルでメイドに性的暴行を加えた容疑で 逮捕されたドミニク・ストラウス・カーンのニュースと、先週の離婚に続いて、今週は隠し子のスキャンダルが発覚した アーノルド・シュワルツネッガーのニュースで占められていたのだった。

ドミニク・ストラウス・カーンは、当初、保釈が認められずライカーズ・アイランドの刑務所に拘留されていたけれど、 これは 少女に対する性的虐待の罪で指名手配され、その後フランスに30年以上に渡って滞在して、逮捕を逃れていた ロマン・ポランスキー監督の前例の影響と言われていたのだった。
その後、水曜にストラウス・カーンは、 「自らの無実を立証するのに、全力を注ぐため」という理由で、IMFのマネージング・ディレクターのポジションを辞任。 その2日後には$1ミリオンのキャッシュと$5ミリオンのボンドというニューヨーク州で史上最高額の保釈金を支払って、 ダウンタウンのハイライズのアパートに自宅軟禁となっているのだった。

本国フランスでは、ドミニク・ストラウス・カーンが一般の犯罪者同様に手錠をはめられ、 取材陣の前を歩かなければならなかった様子を、批判する声が強かったというけれど、 ブルームバーグ市長を始め、ニューヨークのメディアは 「逮捕されるような事をしたのが悪い」というスタンス。
またフランスでは60%の人々が、今回の事件は 2012年の大統領選挙で有力な対抗馬となるストラウス・カーンを 落とし入れるためのサルコジ仏大統領の策略だと考えていることがアンケート調査で明らかになっているけれど、 これに対しても、ニューヨークのメディアは「フランス人はハリウッド映画を観過ぎだ」という リアクションを示しているのだった。


事件の被害者のメイドは、32歳になる西アフリカからの移民で、15歳になる娘を養っている身。 そして彼女は HIV感染者のみが入居できる住宅に暮らしており、ニューヨーク・ポスト紙では ストラウス・カーンがエイズに感染している可能性を危惧すべきだと報じているのだった。
ストラウス・カーンはDNAの動かぬ証拠があるだけに、裁判ではメイドと性的に関係したことは認めると言われているけれど、 現時点では メイドが彼の誘惑に応じたという供述を展開しているという。
今日22日、日曜付けのニューヨーク・ポスト紙によれば、ストラウス・カーンはメイドを襲う前日には、 ホテルのVIP受付係の女性、2人に対しても 彼女の仕事が引けてから彼の部屋でシャンパンを飲もうと誘っており、 エール・フランスの機内で逮捕される直前には、フライト・アテンダントの女性の ヒップについてコメントするなど、歯止めの利かない好色ぶりであったという。でも、いずれも女性側は 彼の不適切なアプローチに 不愉快な思いをしていたことが報じられているのだった。

62歳になるストラウス・カーンはバイアグラとは異なり、飲み続けることによって効果が持続する シアリスというED用処方箋薬を服用していることが噂されており、一説には 「メイドのことを 彼が雇った娼婦だと勘違いした」という言い訳で、裁判で戦うとも言われているのだった。
ちなみに、買春はアメリカでも犯罪ではあるものの、殆どの場合、娼婦は逮捕されてもクライアントは無罪放免となるのが通常。 もしストラウス・カーンがロバート・パティンソンのようなルックスであれば、メイドが誘惑に応じたいう供述も まかり通るかもしれないけれど、どう考えても62歳の彼が 32歳のメイドを短時間で口説けるとは思えないだけに、 娼婦説の方が信憑性があるのは事実なのだった。

ところで昨日、21日土曜日付けのニューヨーク・タイムズ紙によれば、ホテルの客室で、その掃除に入ったメイドが男性滞在客に 性的なコメントを言われたり、身体を触られたり、売春をオファーされる、もしくはレイプ未遂、 さらにはストラウス・カーンのように裸で飛び出して来るという例は 決して珍しくないとのこと。同記事でインタビューされたシカゴのホテルに勤めるメイドは、 ホテル側にレポートしたものの、ホテルは警察に通報しなかったと語っていたのだった。
そう考えると、ホテルのメイドというのは、かなり危険な仕事に思えてくるけれど、 そうしたメイド達を守るために、ホテル側でも事件が起こった際の対応をマニュアル化しているところも 少なくないとのことなのだった。

一方のシュワルツネッガーについては、その隠し子の母親というのが、 彼の自宅に20年以上務めたハウス・キーパー、ミルドレッド・バエナ。 隠し子が生まれたのは1997年10月2日で、妻、マリア・シュライバーがシュワルツネッガーとの4人目の子供を出産した5日後のこと。
息子は既に14歳になっており、シュワルツネッガーは昨年10月に、2人のために家を購入しており、 近隣の人々は その家が シュワルツネッガーがミルドレッドの長年の奉公に感謝するギフトだと思っていたという。
中には、ハリウッド・スターからカリフォルニア州知事というメディアからのスポットライトが当たり続ける中で、 シュワルツネッガーの隠し子のスキャンダルが明るみに出なかったことを不思議がる声も聞かれていたけれど、 実はシュワルツネッガーは 2つの有力なタブロイド誌のトップと非常に親しい関係であったとのこと。
とは言っても州知事選挙に彼が立候補した際には、当時の現職知事、グレイ・デイヴィスの選挙参謀がこのスキャンダルを 掴んでいたという。 ところがその時点で、浮上したのが 映画撮影のセットで、シュワルツネッガーに身体を触られたという 複数の女性からの訴えで、報道のフォーカスがもっぱらそちらに行ってしまい、 グレイ・デイヴィス側が隠し子のスキャンダルを持ち出そうとしても、「人々は聞く耳を持たなかった」と 当時の選挙参謀はコメントしているのだった。
この複数の女性被害者からの訴えに対して、「彼の人間性を知り尽くしている私の言葉を信じてください」と シュワルツネッガーを擁護するスピーチを行ったのがマリア・シュライバー夫人。 しかしながら彼女は、シュワルツネッガーの浮気相手であるハウスキーパーに、彼の浮気の悩みを打ち明けていたことも 報じられており、結局はシュワルツネッガーに長年に渡って上手く騙されていたことが明らかになっているのだった。

この2つの事件は、共にパワフルなポジションにある男性が、性欲で身を滅ぼしたケースとして 今週アメリカで大きな話題となっていたけれど、 ストラウス・カーンもシュワルツネッガーも、 妻は裕福なジャーナリスト(ストラウス・カーンの妻は3人目、マリア・シュライバーは元ジャーナリスト)。 相手の女性は共に移民で、ホテルのメイド、ハウスキーパーというブルー・カラーの仕事。
女性の立場からすると、どちらがマシか?と訊かれても答えられないくらい両方とも程度が悪いけれど、 過去にもシエナ・ミラーという婚約者が居ながら、ナニー(子供の世話役)と関係したジュード・ロウや、 やはりエリザベス・ハーレーという婚約者が居ながら、黒人娼婦、ディヴァイン・ブラウンを買おうとして 逮捕されたヒュー・グラント、妻子ある立場でエスコート・サーヴィスを利用していたことが明らかになって、 NY州知事の座を追われたエリオット・スピッツァーなど、性欲のはけ口を手近なところに求めて、 スキャンダルになった男性セレブリティや政治家は多いもの。メディアに登場するコメンテーターも、 顔ぶれが変わるだけで、ネタとしては定番で、新しい要素がある事件では無いと指摘していたのだった。
もちろん、近年でその最大のスキャンダルとなったのはタイガー・ウッズであったけれど、 タイガー・ウッズにしても、アーノルド・シュワルツネッガーにしても、ドミニク・ストラウス・カーンにしても、 男性が女性によって破滅に追い込まれる時、必ずその男性の妻やフィアンセなど、一緒に居る女性が 事件の犠牲になるのは、女性としての無力感を感じるところ。
自分のしたことで、男性が世間に罰せられるのは当然と言えるけれど、一緒に居る女性も周囲に”裏切られた被害者”として 同情混じりの好奇心の対象となる一方で、世の中には 必ず男性の浮気の原因が女性側にもあると指摘する人間が居る訳で、 例え自分は何も悪いことはしていなくても、精神的に打ちのめされることになってしまうのである。


でも、歴史を遡れば、テューダー朝のイングランド王、ヘンリー8世 (左) などは、6人の妻と結婚をしたけれど、 新しい恋愛対象が現れると、邪魔になった妻を処刑したり、理由をつけて婚姻を解消したりしていた訳で、 それに反対した人々まで一緒に処刑してきたのは歴史が語る事実。
「英雄、色を好む」とは言うけれど、ヘンリー8世だけでなく、権力者が女性を自らの快楽に利用しては 乗り換えるというのは、 国や宗教を問わず、歴史的に行なわれてきたことなのだった。
時代が変わった今も、権力がある男性や成功者というのは、自分が特別であるという意識が強く、他人には許されないことも 自分には許されると考えがちであるという。 こうした男性は、周囲の気持ちに無関心であったり、人の気持ちが分からないケースが多いというけれど、 見方を変えれば、その鈍感とも言える図々しさと、押しの強さで、企業や社会の中でのし上がってきた訳である。 なので社会的に高いポジションについているからといって、決して人間性が高潔である訳ではなく、 人から敬意を持って扱われるようになっても、その人間性が向上する訳ではないことは 社会分析の専門家が指摘するところなのである。

女性にとって明るいニュースと言えるのは、ヘンリー8世の時代から約500年を経た今では、 サクセスフルな夫に裏切られた妻は 処刑や追放などされることなどなく、一生贅沢に暮らせるだけの慰謝料を請求できること。
タイガー・ウッズの元夫人、イレン・ノルデグレンは$100ミリオン(約82億円)を受け取っており、 マリア・シュライバーもアーノルド・シュワルツネッガーから$100〜200ミリオン(約82〜164億円)の 慰謝料を受け取ることが見込まれているのだった。


ところで、5月21日土曜日は、クリスチャン系ラジオ・ステーションの設立者、 ハロルド・キャンピングが黙示録の世界最後日と宣言していた日。
バイブルの数字のコードを分析したキャンピングは、英語でドゥームス・デイと呼ばれる 世界の終焉が21日土曜日の午後6時であるとして ラジオを通じて呼びかけ、 信者の中には全財産を叩いて、そのメッセージを伝えるための活動をした人々も居たのだった。
ニューヨークでもメディアが大きく取り上げるニュースになっていたけれど、 ニューヨーカーのリアクションは冷めたもので、 「5月21日に世界が滅びたら、今年のアメリカン・アイドルが決まらない」 などと言って、全く取り合っていなかったのだった。
実際、 21日土曜日の午後6時になっても、何も起こらなかったけれど、ハロルド・キャンピングが この世の終焉を警告したのは、これが2度目。 今回の警告は、前回の警告の際にバイブルの数字のコードの計算を間違えたとする訂正版なのだった。
ニューヨークのブルームバーグ市長は、「世界の終焉を信じて、駐車禁止の罰金を払わない なんてことの無いように」と 冗談交じりにコメントしていたけれど、 ハロルド・キャンピングの予言では、5月21日に人類の殆どが滅びるものの、 キリスト教の敬虔な一部の信者のみは生き残るとされていたのだった。
そんな宗教差別をする世界の終焉があるはずが無いというのは、深く考えなくても分かりそうなものだけれど、 それを信じて全財産を叩く人が居るということの方に、私は世紀末現象を感じてしまうのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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