May 20 〜 May 26, 2013

” Looks Discrimination? ”


今週のアメリカで最大の報道となったのが、月曜にオクラホマ州を襲った巨大な竜巻のニュース。
24人の死者を出し、1万2,000世帯の家屋が崩壊する大被害をもたらした竜巻は、 広島の原爆のパワーを上回るという歴史的な規模。 週末にはオバマ大統領も現地を視察して、被害者を見舞っていたけれど、 この竜巻で全てを失った人々のために、全米から寄付が寄せられているのはもちろん、 全米各地から復旧作業を手伝うボランティアも集まってきていることが伝えられているのだった。
今週のアメリカは、この竜巻以外にも テキサス州サンアントニオが大雨と洪水に見舞われ、2人の死者が出た他、 ヴァーモント州では5月末にして季節はずれの大雪が降るなど、各地で異常気象が相次いでおり、 今年は70%の確率でハリケーンの当たり年になることも予測されているのだった。

ビジネスの世界で大きな話題になっていたのが、ソーシャル・ブログ・サイト、Tumblr / タンブラーが、 ヤフーによって 11億ドルで買収されることになったニュース。 タンブラーは 10代〜30代に最もアピールするソーシャル・メディアとして知られており、 その影響力は フェイスブックより遥かに大きいといわれる存在。
事実、今週発表された調査では ティーンエイジャーのが70%がフェイスブックを利用しているものの、 フェイスブック離れが顕著になっていることが明らかになっており、その理由として挙げられていたのが、 「友達が何をやっているか逐一知りたくない」、「フェイスブックは年寄りが使うメディア」というもの。
これに対して タンブラーは、そんなティーンエイジャーが「クール」と見なして使うメディアで、 かねてから「クールさが欠落している」と指摘され続けてきたヤフーにとっては、 若くヒップな層へのアクセスを可能にしてくれるメディアなのだった。
タンブラーのCEO、David Karp/デヴィッド・カープ(27歳,、写真上右)は、買収後も同社のCEOに居座ることになっているけれど、 高校中退でビジネスをスタートした彼は、同買収によって2億2000万ドル(約220億円)の 資産を手にしているのだった。



その一方で、今週 第1四半期のアメリカ国内の売り上げが17%落ち込んだニュースを受けて、株価が8%下落したのが アバクロンビー&フィッチ。
企業側では、この突然の売り上げ不振を「在庫が足りなかったため」と説明しているけれど、 今 アメリカで、ティーンエイジャーを中心に起こっているのが、アバクロンビー&フィッチに対する抗議活動。 何に対する抗議かといえば、同ブランドのルックス・ディスクリミネーション、すなわちルックス差別に対するもの。
アバクロンビー・フィッチといえば、2000年代前半に ルックスが良いスタッフでないと雇用しない、 ルックスが良くないと時給もポジションも上がらないという 雇用上のルックス差別で元スタッフが訴訟を起こし、 大きな報道になったことがあるけれど、それ以外にも、同社のゲイCEO、マイク・ジェフリーズが自分のアシスタントに モデルのような美男しか雇わず、彼らに対して非常に細かいルールを設けて従わせることも メディアで報じられていたような状況。
現在 起こっている抗議活動は、そのマイク・ジェフリーズの言動が一端になっていて、その彼は 「アバクロンビー&フィッチはクール・キッズしか相手にしない。 殆どの人間はそれに含まれない。差別的なポリシーではないかって? そんなのは当たり前だ!」 と大胆に言い切って、メディアからも消費者団体からも 大批難を浴びたのだった。

加えて、アバクロンビー・フィッチはウーマンズのサイズ10以上を製作しておらず、 通常、最低でもサイズ14まで製作する アメリカのアパレル業界において、これは極めて異例なこと。
こうした いかにも「太った人間は着るな!」という、同社のルックス差別のポリシーに抗議する人々が ネット上で繰り広げているのが。写真上のようなアバクロの広告のパロディ。 それ以外にも、抗議活動参加者が手持ちの同社のロゴ入り製品を 持ち寄り、それをストリートで物乞いをしているホームレスに配り、彼らに着用してもらうことによって、 お高くとまったブランド・イメージを崩壊させようというムーブメントが 全米各地で起こっているのだった。



さて、今週末のアメリカはメモリアル・デイのホリデイ・ウィークエンド。
この週末からビーチが解禁になって、サマー・シーズンがスタートすることになているけれど、ニューヨークで 毎年この季節に必ず報じられるのが、サマー・シーズンのハンプトン事情。
ハンプトンはニューヨーク郊外にある高級リゾート地で、メガ・リッチがベッドルームが6つも7つもある ビーチハウスを所有していることで知られるエリア。 先週にはジェニファー・ロペスもハンプトンに10億円のビーチハウスを購入したことが報じられたばかりであるけれど、 それ以外にもスティーブン・スピルバーグ監督、ビリー・ジョエル、マーサ・スチュワート、 サラー・ジェシカ・パーカー&マシュー・ブロデリック夫妻、デザイナーのドナ・キャラン、マイケル・コース等、 名前を挙げ出したらきりが無いほど多くのセレブリティが サマー・シーズンの レギュラーとして知られているのだった。

ハンプトンが、セレブが好むエクスクルーシヴなリゾート地であり続ける理由の1つは、ホテルの数が極めて少なく、 あっても不便な三等地にしかないこと。そして公共の交通機関でのアクセスがし難いこと。 加えてビーチのパーキングが コミュニティのメンバーしか駐車出来ないシステムで、 ビジターのビーチへのアクセスが非常に不便になっているのだった。
その結果、これまで守られてきたのが インディアン・ウェルズ(写真上左)等の美しいビーチと、 限られた富裕層しか滞在できないエクスクルーシヴな雰囲気。

したがって、ハンプトンで週末を過ごそうと思ったら、ビーチ・ハウスを所有する人々のゲストとして滞在するか、 サマー・レンタル(夏の間だけ、ビーチハウスをレンタルすること)をするかのどちらか。 レンタルとは言っても、最高級の物件になれば、2ヶ月の家賃が1千万円以上。 田舎の一軒家が買えるお値段なのだった。
交通機関は、高級自家用車が無い人は、ハンプトン・ジットニーというバスを利用するのが一般的で、 安いレンタカーで訪れた場合、レストランの前に駐車するなど「論外!」というのがハンプトン。 レンジ・ローヴァーやメルセデスのSクラス程度の車でないと、乗っているのを見られるだけで恥ずかしいという人さえ 居るのだった。

でも、そんなエクスクルーシヴなハンプトンで 昨今増えてきたのが、ビーチで酔っ払ってパーティーをするために 同地を訪れる若い層。今では、ビジター駐車禁止のビーチに送迎バスが出るようになってしまい、 ソーシャル・メディアを通じてハンプトンに憧れていたような若い世代が どんどんやってくるようになったのだった。
特に今年はハリケーン・サンディの影響で、ニュージャージーのビーチが 未だ部分的に復旧中であることから、 これまでジャージー・ショアで飲んだくれていたようなマナーの悪い 低所得者層が、ハンプトンにやってくることを懸念する 地元の人々は非常に多いという。
加えて、この夏からは ロングアイランド・レイルロードがハンプトンとマンハッタンを結ぶノンストップ列車の運行を スタートすることになっており、これによって更に多くの人々がハンプトンを訪れることが見込まれているのだった。

とは言っても、一般人がいきなりハンプトンを訪れたところで、セレブと一緒に日光浴やパーティーが出来る訳ではないのは 当たり前。昨今、ソーシャル・メディアの影響を受けてハンプトンにやってくる若い層は、 2ベッドルームの小さなビーチ・ハウスに、10人以上が寝泊りしているケースも珍しくなく、 ハンプトンに行った様子をフェイスブックやインスタグラムでアップするために 同地を訪れているケースが多いとも指摘されているのだった。



現地にビーチ・ハウスを所有するリッチ層は、地元のコミュニティに属して、冬でもハンプトンとマンハッタンを行き来する人が多いけれど、 こうした Hamptonite/ハンプトナイト と呼べる人々が、ハンプトンでどんな時間を過ごしているかと言えば、 ビーチで過ごす以外は、マンハッタンの生活とさして変わらないこと。 日頃から通う ヨガ・センターやスピニングのジムが夏の間ハンプトンにオープンするブランチのクラスで エクササイズをして、 マンハッタンで日頃から食材を調達している シタレラ、イライといった高級食材店で買い物をして、 高級ブランドが夏の間オープンするポップアップ・ブティックでショッピングをするというのがそのライフスタイル。
レストランやクラブも リッチな客層を狙って、夏の間だけハンプトンにブランチアウトする例は非常に多いのだった。 また映画のプレミアや様々なパーティーも、夏の間はハンプトンで行なわれるのは今や当たり前。
ハンプトナイトは、男性ならプレッピー系、女性はカリプソやスクープといったブティックが 提供するサマー・カジュアルを着用するのが一般的で、女性に関しては 肌を露出しすぎないのがルールになっているのだった。

その一方で、ビーチ・ハウスをレンタルしてハンプトンで夏を過ごそうという人たちは、 4月前からハウス・ハンティングをしていたことが伝えられているけれど、 シングルであれば、友人等とレントをシェアするのが一般的。 自分の交友関係でサマー・シェアリングのパートナーが探せない場合、ソーシャル・メディアを通じて 探すケースも多いのだった。
でも、ここでも出てくるのがアバクロンビー&フィッチ同様のルックス差別。 先日友達が話していたのが、イーストハンプトンのビーチ・ハウスを8人でシェアするグループのルール。 レントは1ヶ月2万4000ドル、1人当たり3000ドルというから、悪くない物件。
その美しいビーチ・ハウスをシェアするに相応しいメンバーを探すために、ソーシャル・メディア上で 「ルックスの良い30歳以下」という条件付きで募集がされていたという。
審査に当たっては、フェイスブックの写真でルックスがチェックされ、スカイプで面接が行なわれるという念の入れよう。 どうしてサマー・ハウスのレンタルで そこまでルックスに拘るかといえば、 ルックスが良い人間で固まっていると、ビーチで寝転んでいるだけで、 パーティーに招待されたり、レストランでも良いテーブルに座れたりと、 ハンプトン・ライフのエゴを満たす恩恵を沢山受けるとのこと。
レンタルのホスト曰く、8人中 3人がオーバーウェイトや、アグリーだった場合、残りの5人が どんなにルックスが良くても、最高の待遇は望めないというのだった。

そのホストは、メンバーがオーバーウェイトや、アグリーな友人をビーチハウスに招待しなければならない ケースを考慮して、”アグリー・ピープルズ・ウィークエンド”、すなわち肥満やアグリーな人々だけを 纏めて招待する週末というのをシーズン中、2回設けるとのこと。 その週末以外は、メンバーがゲストを連れてくる際には、そのルックスを吟味するように指示しているのだった。

とは言っても、どんなにグッドルッキングな人々が、どんなに美しいビーチ・ハウスに滞在して、どんな高級車で現れても、 そう簡単に破れないのがハンプトンの壁。
今日、5月26日付けのニューヨーク・タイムズ誌のスタイル・セクションには、ハンプトンで最も有名なレストラン、 ニック&トニーのメイトルディーに関する記事が掲載されていたけれど、 同レストランにセレブやビジネス・エグゼクティブが出掛ける場合、 ダイニング・ルームのフロント・エリアにある テーブルNo.20〜No.27の8つのテーブル 以外に座るのは、恥ずべきこと。 逆にここに座ることはステータス・シンボルであると同時に、ハンプトンにおけるパワーの証とも言われるのだった。
でも、同店常連のマーサ・スチュワートでさえ メートルディに電話をして断られる場合があるとのことで、 お金とパワーが密集しているエリアでは、セレブリティでさえ一般人同様にターンダウンされるのだった。 すなわち、ハンプトンにおいて ルックスだけで優遇される場所というのは、オープンしたてのビジネスなど、 リッチでパワフルなクライアントが居ない、もしくは少ないスポット。 通常は お金、パワー、知名度、長年の常連といったステータスがまず優先されるので、 若さやルックスは その残りをあてがって貰うのに役立つのがせいぜいなのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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