May 19 〜 May 25,  2014

”What is YUMMIES?”
高額ブランドと独身女性がターゲットにする
”ヤング・アーバン・メール・ウィズ・マネー”


今週末のアメリカは、メモリアル・デイを月曜に控えたホリデイ・ウィークエンドであったけれど、 その週末の最大の報道になっていたのが、 カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校の近隣エリアで起こった銃乱射事件のニュース。
3人のルームメイト男性を刺殺した後、合法的に入手した複数の拳銃で 3人を射殺し、13人を負傷させた後、自ら自殺を図った容疑者は、 映画「ハンガー・ゲームズ」のアシスタント・ディレクターの息子で、 22歳のエリオット・ロジャー。(写真上)
彼は、1億円以上の4ベッドルームの邸宅で育ち、母親は女優。 約400万円のBMW 328i を乗り回し、ファースト・クラスのフライトでロンドンで行われたケイティ・ペリーの プライベート・コンサートに出かけ、300ドルのアルマーニのサングラスを掛け、自らファッションに気を使っていることを 自負するなど、何の不自由もない生活をしていたかのように見うけられる大学生。
そんな彼が今回の犯行に及んだ理由は、自分とデートをせず、他のくだらない男と付き合っている ゴージャスなブロンド女子学生と自分を仲間に入れてくれないクール・キッズへの復讐、 そして自分を相手にしないソサエティへの報復。 彼は、「自分はルックスも良く、ファッションにも気を使って、 ガールフレンドが欲しいとずっと思ってきたのに、22歳にして未だヴァージンであること」、 そして 「自分がゴージャスな女子学生とデート出来ないのなら、誰も彼女らとデートするべきではない」 という ビデオ・メッセージをYouTubeにアップさせて、今回の犯行をほのめかしていたのだった。

彼はそれ以外に140ページにも及ぶ犯行のマニフェストを書いていたというけれど、 その中には、いい加減なデート・アドバイスをモテナイ男性にして稼いでいるビジネスに対する 怒りのメッセージも含まれていたことが明らかになっているのだった。




そうかと思えば、世の中にはルックスや財産に関係無く 女性にモテまくる男性も存在するけれど、 このところ 華やかな女性遍歴でニューヨークのメディアをにぎわせているのが、ヴィトー・シュナベル。 彼はアーティスト兼、映画監督でもあるジュリアン・シュナベルの息子で、現在27歳。
ヴィトー・シュナベルが昨今メディアを賑わせている理由は、彼が現在 17歳年上の40歳のスーパーモデル、 ハイディ・クルムと交際しているためで(写真上左側)、 彼女と交際が報じられてから メディアが着眼したのが、ティーンエイジャーの頃から ずっと年上の美女と交際し続けてきた彼の女性遍歴。
父親のコネクションを生かしてアート・ディーラーを営む傍ら、マンハッタンで最も予約を取るのが難しいイタリアン・レストラン、"Carbon / カーボン"のパートナーでもあるヴィトー・シュナベルは、 16歳の時点で 既にアート・エキジビジョンのキュレーターを務め、当時から12歳年上だったスイムウェア・モデル、フランキー・ライダーと交際。 やがて20歳になると、今度はスーパーモデル、エル・マクファーソンと交際(写真上右側は当時の2人)。 2010年、彼が23歳の時点では、リヴ・タイラーとの交際が伝えられ、2012年のアート・バゼル・マイアミ・ビーチの際には 彼を追いかけてマイアミ入りしたデミー・ムーアをあっさりあしらったことが報じられているのだった。
彼はゴルフ、バスケットボール、サーフィンを愛好するスポーツマンであると同時に、ティーンエイジャーの頃から 大人の会話が出来るほどに話題が豊富。しかも若くして女性の扱いを心得ていたというのが彼の周囲のコメント。
もちろん 父親がジュリアン・シュナベルで、若くしてミリオネアであれば、女性が彼を好むのは容易に納得が行くけれど、 彼の場合、ことごとく年上の美女を射止めているのはレオナルド・ディカプリオとは異なる点。 今週行われていたカンヌ映画祭でも、彼はハイディ・クルムと共に様々なイベントに出席し、メディアの注目を集めていたのだった。


ところで昨今、ファイナンスやIT関連のビジネスで増えているのが、ヴィトー・シュナベルのように 若くしてミリオネアになる男性。 過去2年ほどの間に、アメリカで誕生したマルチ・ビリオネアにしても ことごとくフェイスブックやグーグルによって買収された企業の 20代の創設者達なのだった。
そんな若くリッチな男性達の総称として 昨今もてはやされているのが、”YUMMIES/ヤミーズ(単数形はYUMMY/ヤミー)”。 英語で”Yummy”いうと、通常は”美味しい”の赤ちゃん言葉で、日本語だったら”おいちい”みたいなニュアンスであるけれど、 ここで言うYummy、Yummiesは、Young Urban Male (With Money)/ ヤング・アーバン・メール(ウィズ・マネー)の略。 かつて、80年代から90年代に掛けて、Young Urban Professionals / ヤング・アーバン・プロフェッショナルズを ”Yuppies / ヤッピーズ (単数形はYuppiy/ヤッピー)”と呼んでいたのと同様のネーミングで、 このヤミーズは ハイエンドの高額プロダクトやサービスに惜しげもなくお金を払うため、 現在一流ブランドがターゲットにしている客層なのだった。

例えば、コーチは2010年の時点で1億ドル(約100億円)だったメンズの売り上げが、今やその7倍。 マイケル・コースなどは、年間のメンズの売り上げが 今年中に1000億円に達すると見込まれるほどに メンズの売り上げが増えているけれど、この伸びの要因を担っているのがヤミーズによる購買パワー。 同じく、ヤミーズを相手に売り上げを伸ばしているブランドとしてはバーバリーの存在が挙げられるけれど、 そもそもメンズ・ウェア市場は、過去5年間に14%伸びて、2014年には40兆2000億円に達するといわれるもの。 既に飽和化しているウーマンズ・ウェア市場よりも遥かにターゲットにする価値があるのだった。

ワシントン・ポスト紙によれば、現在、エルメスなどのヨーロピアン・ラグジュアリー・ブランドを購入するアヴェレージな客層は 50〜70代。でも2020年までには、25〜30歳がそれに取って代わると予測されており、 実際、プラダの1000ドルのバックパックや、クリスチャン・ルブタンの1500ドルのスニーカーを購入しているのは、 そうした若い世代。
ファッションに止まらず、ヤミーズは親の世代が40代で手に入れたような こだわりのあるライフスタイルを 既に実践している世代。 高額のマルチメディア・システムや、コンテンポラリー・アートが飾られたコンドミニアムに始まって、 ハンプトンのビーチハウスに出掛けるにしても 3時間も掛けてドライブするよりも、マンハッタンから僅か35分で現地に到着する ヘリコプター・サービスをスマートフォンのアプリからチャーターするのがヤミーズなのだった。






マーケット・リサーチャーの分析によれば、ヤミーズがこうしたお金の使い方が出来るのは、 1つには前述のように若くしてミリオネアになる男性が増えているためであるけれど、 もう1つは彼らの婚期が遅れているため。
頭を冷やして考えるまでもなく、男性は20代で結婚するよりも30代後半以降で結婚する方が、 独身時代を謳歌出来るのは言うまでもないこと。 若くして結婚すれば、婚約指輪やウェディングの費用に始まって、その後子供が生まれれば、 週末を子供のサッカーの試合観戦に取られたり、生活費が子供の大学費用の積み立てに取られ、 家族のライフスタイルを考えて郊外に移り住んで、長い通勤時間を強いられるなど、 夫や父親としての様々な責務を、限られた時間や財力でこなす苦しみを味わうことになるのだった。
これに対して結婚を急がないということは、ビジネス面で守りに入る必要も無く、財力を築いてから結婚&子供が生まれれば、 積み立てなどせずに都市部にある高額の私立学校で子供に教育を受けさせることが可能。 自分のライフスタイルを変える事無く、結婚&子供という人生のターニング・ポイントを無理なく迎えることが出来るのだった。 そもそも男性はお金さえあれば、何歳になっても若い女性と結婚できることは彼らの父親の世代が立証済み。 したがってヤミーズの婚期が遅れるのには、それなりの理由が存在しているのだった。

ヤミーズは 高額ブランドにとってだけでなく 独身女性にとっても狙いを定めるターゲットになっているけれど、 女性達がヤミーズを見分ける指針と言われているのが、 高いシューズ、バッグ、そしてグルーミングされてピカピカの爪や肌、お金が掛かったヘア・カット。 したがってリッチな女性を見分ける指針と大差が無いのだった。
シューズは、女性の高額ブランド(クリスチャン・ルブタン、ジュゼッペ・ザノッティ、ジミー・チュー等)と同じブランドを履いているのが目安。 また、かつてはバッグを持ち歩く男性と言えば 圧倒的にゲイ男性が多かったけれど、ヤミーズはゲイでもストレートでも バッグを持ち歩くもの。男性が履くサンダルをかつて ”Mandal/マンダル”と呼んだ時代があったけれど、 昨今では、男性が持ち歩くバッグの新語として ”Murse / マース (Man's Purseの略、Purseはバッグのこと)” という言葉まで登場しているのだった。
グルーミングについては、いかにも手を入れたというグルーミングは時代遅れ。 ブラッド・ピットのヒゲ面&バサバサのロング・ヘアにお金と時間が掛かっていたのと同様、 よく観察すると、そのナチュラルさに手が掛かっているというのが今時の高額グルーミングなのだった。

でも、残念ながらヤミーズは自分にはお金を掛けても、少なくとも若いうちは結婚願望が希薄な分、 あまり女性との交際にはお金を掛けないと言われる世代。 攻略法は、「長く友達付き合いを続けるのが最も有効」と言われるので、女性にとっては長期戦が強いられる相手なのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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