May 18 〜 May 24 2015

”American Campus Rape Culture ”


今週のアメリカは、月曜にメモリアル・デイのホリデイを控えて3連休。
アメリカはこのホリデイを境に、事実上 サマー・シーズンに突入するとあって 先週から今週にかけては TV番組のシーズン・フィナーレ・ラッシュ。 人気番組の数々が、秋以降の次シーズンの放映までオフ・エアになっているのだった。

そんな中、今週水曜日、5月20日に”シーズン・フィナーレ”ではなく、”シリーズ・フィナーレ”、すなわち最終回を迎えたのが 3大ネットワークの1つ、CBSで放映されてきた「レイト・ショー」。
アメリカのカルチャーに 夜のトークショーが与える影響は、日本人が想像できないほど多大なもので、 大統領選挙の行方や、スキャンダルに対する世論などを左右してしまうのがこうした番組。 中でも「レイト・ショー」は過去20年以上に渡って、 大きな影響力を誇ってきた番組であると同時に、ホストのデヴィッド・レターマンは TV界で 最も敬愛されてきたキャラクターの1人。その彼の引退に伴って、番組も最終回を迎えることになったのだった。

最終エピソードでは現役のオバマ大統領を含む、歴代の4人の大統領がビデオ出演しただけでなく、 彼と個人的に親しいセレブリティが何人もスタジオに姿を見せていたけれど、驚くべきは他局のトークショー・ホスト達のリアクション。
ABCで同じ時間帯にトークショーをホストしているジミー・キンベルは、「レイト・ショー」の 最終エピソードとの視聴率競争を避けて、この日は過去の番組を再放送。 TBSでトークショーをホストするコナン・オブライアンも、「レイト・ショー」の時間になった途端に、 視聴者に 自分の番組をDVRで録画して、「レイト・ショー」にチャンネルを合わせるように呼びかけるなど、 他局のトークショー・ホスト達が こぞって敬意を表していたのが 「レイト・ショー」 およびデヴィッド・レターマン。
アメリカのTV視聴者にとっては、1つの時代の終焉を感じさせるエピソードになっていたのだった。




さて今日、5月24日付けのニューヨーク・タイムズ紙を読んでいた時に目に留まったのが、 アメリカのカレッジ・キャンパスにおけるレイプについての記事で、その中で引用されていたのが、 2015年4月に出版されたばかりのジョン・クラカウワーの最新著書「Missoula / ミズーラ」の内容。
ミズーラとはモンタナ州で2番目に大きな都市で、人口はわずか6万4000人程度。 この街で最も多くの職を提供しているのが”UM”ことユニヴァーシティ・モンタナ(モンタナ大学)。 すなわち、典型的なアメリカの学園都市で、治安は良いと言われるものの、 数年前からメディアでは 「アメリカのレイプ・キャピタル(レイプの首都)」と呼ばれている街。
それというのも、UMのキャンパスでレイプが多発していたためで、 にも関わらず、特にその容疑者がUMのフットボール・チームの選手である場合、 学校ぐるみどころか、警察と街ぐるみでそれを揉み消してきたのがミズーラ。 ただでさえ被害者が泣き寝入りするケースが多いレイプが、この街においては、 被害者が責められたり、疑われたりするシステムになっているのだった。
とは言っても、アメリカの大学においてフットボールは 名門チームになると年収で50億は稼ぐドル箱ビジネス。 また地元コミュニティにとって カレッジ・フットボールは、メジャー・リーグを遥かにしのぐ人気スポーツであるだけに、 レイプ容疑者のスター・フットボール・プレーヤーを擁護するというのは、モンタナ大学だけに見られることでは無いのだった。

アメリカのキャンパスにおけるレイプや性的虐待は、このところかなり深刻な社会問題になりつつあって、 2014年に発表された調査結果によれば、女子学生の5人に1人が在学中に性的虐待の被害を受けているとのこと。 でもキャンパスでのレイプは、その95%がレポートされずにいるという。
そもそもキャンパスに限らず、レイプという犯罪は見ず知らずの他人よる犯行は全体の僅か16.7%。 最も多いのが”インティメート・パートナー”による61.9%で、 インティメート・パートナーとは伴侶、離婚した伴侶、交際中の相手や元交際相手など。 次いで多いのが知人で21.3%、そして伴侶以外の家族が6.5%となっているのだった。 ちなみに、この数字の合計は100%を超えるけれど、その理由は調査対象となった被害者が 複数の相手に レイプされているため。

これがキャンパスになると、友人やボーイフレンド、顔見知りがレイピストとなる可能性は77%。 実際にキャンパスで非常に多いのが所謂 ”デート・レイプ”。 お互いにデートする程度には惹かれ合っている仲ではあるものの、 男性がその気になっているのに対して、女性側が拒むことから セックスがレイプになってしまうというケース。
しかしながら、ジョン・クラカウワーの「ミズーラ」の中に登場するレイプ被害者の女子学生達は、 レイプの当日には 「セックスをする気が無い」と相手にはっきり言ったと証言しているものの、 その前日には、「あなたとなら何時でもOK」などと挑発的な言動をしていたり、 レイプ容疑者とベッドに寝転びながら映画を観て、キスをしていたり、 少々理解に苦しむ例も含まれているのだった。




この本に登場するレイプも、また一般的なデータで見られるレイプも、 非常に多いのがアルコールが絡むケース。
カレッジ・キャンパスにおける性的虐待やレイプでは、その70%以上において 被害者とレイピストのどちらか、もしくは双方がアルコールを摂取しており、 レポートされている性的虐待の55%が 学生達が羽目を外してアルコールを飲む傾向にあるパーティーで起こっているとのこと。
「ミズーラ」の中では、ハウス・パーティーで友達と楽しく飲んでいるうちに飲み過ぎてしまい、 運転して帰るには危険な状態になった女子学生が カウチで眠っていたところ、 気付いた時には男友達にレイプされていたというケースや、 やはりパーティーで酔いつぶれて眠っていたところ、フットボール部の複数のプレーヤーに ギャング・レイプされたストーリーなどがフィーチャーされていたけれど、 それよりも読者にとってショッキングな部分が、男子学生が自分がしていることがレイプとは思わずに、 レイプに走っているという事実。

男子学生は性的虐待をしたことは無いという意識を持ちながら、 「セックスを望んでいなかった相手とセックスをしたことがある」と同書のリサーチャーに答えるケースは少なくないとのこと。
その例として登場した男子学生曰く、 パーティーで 彼やその友人が 常に狙いを定めているのが 若く、グッドルッキングな女子学生、 特にフレッシュマン(1年生)。若い方がキャンパスでの経験が浅いので、 簡単に多量のアルコールを飲ませることが出来るとのこと。
そしてある程度酔っ払ったところで、別室に連れて行って彼にとってのセックス、 事実上のレイプ行為に及ぶけれど、この時 女子学生が行為を拒む言動をしても、 ひたすら無視をして、淡々とレイプし、終わったら服を着て 何食わぬ顔でパーティーに戻る様子が 説明されており、彼にとってそれはレイプでも犯罪でもなく、合意の上のセックスになっているのだった。

こうしたレイプの被害者は、大学や警察にレポートした場合でも、しなかった場合でも、 往々にして うつ病や、アルコール依存症などになって、大学生活を棒に振ってしまうのがありがちなシナリオ。
したがって、娘が大学に通う親達にとっては、多額の学費を支払って 娘がそんなキャンパスのレイプ・カルチャーの 犠牲者になるかもしれないというのは、考えたくも無いことであるけれど、レイプの被害者になるのは、 割合は少ないとは言え、男子学生も同様なのだった。

レイプというと、未だに スキーマスクを被った犯人にいきなり襲われるような イメージが強い犯罪であるけれど、 実際のところは、2時間前までは一緒にアルコールを飲んで、喋っていた相手によって 犯される犯罪。 それだけに立証が難しく、被害者が自分を責める傾向も強いけれど、「ミズーラ」の著者によれば、 レイプは常習犯になればなるほど 演技力に長けた巧妙な嘘つき。誰もがまともと信じて疑わない人物が、 繰り返しレイプをしては、無罪放免になっているとのことなのだった。


Will New York 宿泊施設滞在



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。




PAGE TOP