May 23 〜 May 29 2016

”Simple Joy With 150 Million Viewers”
記録破りのヴァイラル・ビデオが立証した、 チューバッカ・マスク・マムの笑いのパワー



今週末のアメリカは、月曜日にメモリアル・デイの休日を控えて3連休。
サンクスギヴィング休暇前に次いで 旅行をする人々が多い時期であるだけに、 例年この時期は政治・経済絡みの大きな出来事が起こらないけれど、 大統領予備選では、民主党のヒラリー・クリントンが減速中なのに対して、ドナルド・トランプが全米の世論調査での数値を上げた結果、 現時点では両者ほぼ互角の戦いで、共和党寄りメディアの世論調査ではトランプがリードしているものもあるほど。 でもこれが民主党のバーニー・サンダースVS.トランプの戦いになると、 サンダース候補が2桁パーセンテージでトランプを引き離していることが伝えられたのが今週。
こんな数値が出るのは、ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプが共に大統領選挙史上、最も好感度が低い候補者であるためで、 アンケートに答えた人々の60%が「どちらの候補も支持したくない」という意見を持っていることが明らかになっているのだった。

また今週は、オバマ大統領が現役米国大統領として初めて広島を訪問したけれど、 この歴史的な訪問はニューヨーク・タイムズ紙の1面トップ、及びワシントン・ポスト紙の1面左端は飾ったものの、 TVのニュースでは10分程度が経過してから報道。その内容は原爆被害の悲惨さに加えて、 核廃止を進めようとしたオバマ政権が さほど成果を上げずにいる状況に触れたものが目立っていたのだった。

その一方で今週、ビジネスの世界でちょっとした話題になっていたのが、ヴィクトリアズ・シークレットが過去40年間に渡って続いたカタログの 送付を止めて、ストア&オンラインのみのセールスに切り替えるというニュース。 ペーパーレス時代に入ってカタログは時代遅れのイメージがあるけれど、実際にヴィクトリアズ・シークレットの カタログによる売上げは 全体の15%程度に落ち込んでいたとのことで、 カタログを中止することによって 同社はカタログの印刷費、送料などを含めて約160億円のコスト削減が図れることが伝えられているのだった。




さて今週、ソーシャル・メディアとメディアで一躍大センセーションを巻き起こしたのが、”チューバッカ・マスク・マム”こと、 キャンディス・ペイン(写真上)。
彼女はテキサス州ダラスに住むホームメーカー(主婦)で2児の母親。 その彼女が大衆デパート、コールズに出かけて 自分へのバースデー・プレゼントとして購入したのが、映画「スターウォーズ」の人気キャラクター、 チューバッカのマスク(写真上、左側)。 このマスク、ただのプラスティック製のマスクではなく、口を動かすとチューバッカの鳴き声が聞こえてくるというもの。

”デススター”がプリントされているTシャツを着用していることから分かる通り、 大の「スターウォーズ」ファンのキャンディスは、このマスクをかなり気に入ったようで コールズのパーキング・ロットに駐車した車の中で、携帯電話で撮影したのが、先週末からヴァイラルになった以下のビデオ。
キャンディス曰く、ビデオを撮影した理由は 「チューバッカのマスクを子供達のためでなく、自分の所有物として購入したことを フェイスブックを通じて友達や親戚家族に見せようと思った」とのことで、 彼女が 同ビデオをフェイスブックにアップしたのは木曜のこと。
そして彼女が次にチェックしてみると、その再生回数が1000に達していたので 友達にショートメールでそれを知らせて、大喜びしていたという。 その後の木曜夜、彼女が寝る前にチェックすると その数は100万に達しており、 翌朝起きてチェックした時点では、何と2,000万。 やがて公開から僅か3日で、そのビューワー数は1億4000万にも膨れ上がり、現時点では1億5000万以上。 史上最速で、最多ビューワーを獲得し、ありとあらゆる記録を塗り替えることになったのだった。

その内容はと言えば、キャンディスがチューバッカのマスクを買った理由を説明した後、 マスクをつけて大笑いしているだけであるけれど、これが世界中の「スターウォーズ」ファンに アピールしたのはもちろん、その他愛なさと、彼女のキャラクター、 一緒に笑わずにはいられない豪快な笑いっぷりで、メディア&ソーシャル・メディアに 大センセーションを巻き起こすことになったのだった。







このヴァイラル・ビデオには、一般の人々だけでなく、 ジェシカ・アルバなどのセレブリティからもコメントが寄せられ、 一躍 ”時の人” となったキャンディス・ペインは、複数のバラエティ番組のインタビューを受けただけでなく、 CBSの夜のトークショー”ザ・レイト・レイト・ショー ウィズ ジェームス・コーデン ”のコメディ・スケッチでは、 「スターウォーズ:フォースの覚醒」の監督、J.J.エイブラハムと共演 (写真上のビデオ)。
このビデオ自体も1億3000人以上のビューワーを獲得する結果になったけれど、 それだけでなく 「スターウォーズ」全作でチューバッカを演じたピーター・メイフューからは 「スターウォーズ」のファン・エキスポでのプライベート・ミーティングに招待され、 週明けには、彼女の笑い声が携帯電話のリングトーンになって 多くの人々がダウンロードするという センセーションぶり。
それだけでなく、YouTube上には このビデオを見てキャンディスと一緒に大笑いをしてしまうビューワーのリアクションを 捉えたビデオが何本も登場。 以下は最もビューワーが多いリアクション・ビデオの1本であるけれど、 「スターウォーズ」ファンの男性がキャンディスと一緒に涙を流して大爆笑をする様子は 20万人以上のビューワーを獲得しているのだった。 (長いビデオなので、特に英語が苦手な方は2分20秒前後から見始めることをお薦めします。)






他愛のない大笑いをフィーチャーしたビデオがヴァイラルになった例としては、2011年に公開され、 今年に入ってからは企業CMにも採用された 紙を破く音に大喜びするベイビーのビデオ(上のビデオ)があるけれど、 ピュアでキュートなリアクションの赤ん坊に対して、キャンディス・ペインのビデオは、単純ながらも誰もが理解するバックストーリーがある上に、 もっとダイナミックな笑いで、一緒に笑わずに居られないパワーを感じさせるもの。
したがって、このビデオが記録を塗り替えるヴァイラル・ビデオになるのは納得であるけれど、 同ビデオのセンセーションは キャンディスがこれをポストしたフェイスブックにとって非常に意味深いもの。 それというのも、フェイスブックは新たにスタートしたビデオ・サービス、「フェイスブック・ライブ」を何とか広めようと、 過去数週間、大金を投じており、ミレニアル世代に人気のウェブサイト、”BuzzFeed / バズフィード”が スイカが割れるまで輪ゴムを巻き付けるトライアルの生放送でやっとその知名度を獲得したのが少し前のこと。
でもフェイスブックが一銭も支払うことなく、 あっという間にバズフィードの10倍以上の ビューワーをフェイスブック・ライブにもたらしたのがキャンディスのビデオ。 これによってフェイスブック側は、一般のユーザーがヴァイラル・ビデオをクリエイトするのに フェイスブック・ライブがいかに有効な手段であるかをアピールしており、 スナップチャットやYouTubeと競合する存在になりうることを立証した意義深いビデオなのだった。

でも同ビデオのビューワーの多くが、「こんなに笑ったのは久しぶり!」というリアクションを示している通り、 社会的には 世の中の人々が単純かつ、心からの笑いに飢えていたか ということも立証しているように思えるのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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