May 31 〜 June 6 2010




” Perfection in Imperfection ”


今週のアメリカで最も驚きを伴って報道されていたニュースと言えば、40年間連れ添ったアル&ティッパー・ゴア元副大統領夫妻が、 離婚を発表したというニュース。
夫妻の間には4人の子供が居るけれど、この離婚は極めて友好的な離婚と説明されており、 不倫など第三者が一切関わらないもの。それだけに、 メディアのコメンテーターやトークショーのホストなどは、「どうして40年連れ添って、60代になって別れる必要があるのか?」、 「ビル&ヒラリー・クリントンでさえ まだ結婚しているのに・・・」など、離婚の原因を疑問視するリアクションを示していたのだった。
、 でも、週末になる頃には この離婚に理解を示す声がメディアに徐々に登場するようになってきていて、 お互いが それぞれに異なる分野で サクセスを収めている夫妻であるだけに、「余生を楽しむための離婚」 といった 解釈がされるようになってきているのだった。
この「余生を楽しむための離婚」というのは、やがてお互いがお互いの重荷になって、嫌悪し合うような仲になる前に 友好的な離婚をして、それぞれに残りの人生を好きなように使おう という解釈であるけれど、 これに踏み切れるのは、やはり夫妻に財産があるから。すなわちお互いにお互いの面倒を見なくても、 お金でケア・テイカーを雇える立場であるから という見解も聞かれていたのだった。
さらに一部のメディアには、2人が「理想的なおしどり夫婦の役割を演じるのに疲れてしまった」という見方もあったけれど 、 今日、6月6日付けのニューヨーク・タイムズ紙では、「結婚生活というのは外から見るのと 中から見るのでは大違い。当事者のみが実態を知っているとも言えるけれど、 当事者さえ実態が分かっていない場合もある」といった記述と共に、ゴア夫妻の世代が アメリカで最も離婚が多いジェネレーションであることも指摘しているのだった。
この記事では、生活の中で同じルーティーンばかり繰り返している夫婦は、その関係が退屈になって離婚に至る一方で、 「結婚生活を続けていられる夫婦は その関係に何らかの満足感を抱いている」と説明していたけれど、 私の個人的な意見では、結婚生活を長く続けている夫婦というのは お互いに結婚に何らかのニーズを見出しているカップル。
実際、アメリカのハウスワイフ(専業主婦)の30%は離婚願望を抱きながらも、自分に生活力が無いために離婚せずに居るというし、 先述のビル&ヒラリー・クリントン夫妻にしても、結婚生活を続けていた方がそれぞれの立場が数倍パワフルであることは ワシントンの政治関係者ならずとも認めるところ。金銭面、精神面、社会的対面など理由は様々であっても、 「夫婦双方が相手にニーズを見出しているうちは 結婚生活は続く」というのが私の見解なのである。


さて、メキシコ湾岸での石油流出の報道も引き続きであるけれど、今週末になって 流失食い止め作業が 部分的に成功を収め、流出量が軽減されたというニュースが報道されたのだった。
でも、今や流出したオイルはフロリダの海岸にも流れ着き、ヴァケーション・シーズンを迎えたフロリダの観光産業に大打撃を与えていると同時に、 ペリカンを始めとするオイルまみれになった野鳥類の映像がアメリカ国民のフラストレーションと怒りをかき立てており、石油掘削施設を操業していた イギリスの石油会社、BPには非難が集中。BPのガソリン・スタンドでは抗議デモやボイコットの呼びかけが起こっている一方で、 何万人もの人々が同社に対する被害請求を訴えているのだった。
でも、私が火曜にNBCを見ていた際に キャスターのブライアン・ウィリアムスが語ったところによれば、 今回の事故でこれまでに流出した原油の総量は、何とアメリカが消費しているオイルの1時間分以下。 なのでブライアン・ウィリアムスは、これだけの被害をもたらす原油の量が、アメリカ人の生活の1時間に満たないという事実を 「恐ろしい」とも語っていたけれど、実際、アメリカが1日に消費している石油の量は2009年の時点で、20,680,000バーレル。
BPが途中で流出量を訂正した通り、1日に5000バーレルの原油が 事故が起こった4月20日から流出していたとしても、 単純計算では、今日現在の時点でも アメリカの石油消費量の1時間分に達していないことになるのだった。


それより 今週、メディアも大騒ぎしたと同時に、オフィスの会議室から 学校のクラスに至るまでで大きな話題になったのが、 水曜のメジャーリーグ、デトロイト・タイガースVS.クリーブランド・インディアンズの試合での、ピッチャー、アルマンド・ガララガの ”インパーフェクト・ゲーム”。
この日、ガララガが あと1つのアウトで完全試合達成という段階で、バッターが打ったのはセカンド・ゴロ。 スタジアム内やTV中継で試合を観戦している人々、彼のチームメイト等、誰もが 27個目のアウトを取ったと思った瞬間に 1塁の塁審、ジム・ジョイスが 明らかに アウトのランナーをセーフと誤審。 ありとあらゆる角度のビデオ・リプレイが間違いなくアウトを立証しているにも関わらず、ジョイスが塁審として ランナーのセーフを主張したため、 ガララガのパーフェクト・ゲームが最後の瞬間に達成されずに終わってしまったのだった。
翌日メディアがこぞって、「メジャーリーグ史上最悪のミス・コール」と評したこの塁審の判断に対して、タイガース側は猛烈に抗議を行ったけれど、 誰もの目に焼きついたのが 当人、ガララガの非常にサバサバした苦笑い。 一生に一度あるか、無いかの大記録達成を台無しにされたとは思えないほどの ガララガの信じられないほど穏やかな態度は、 ファンやメディアの賞賛の対象になったと同時に、誤審を行ったジム・ジョイスへの怒りをかき立てたのだった。
でも、タイガースの監督、ジム・レイランドが ファンに対して 「ジム・ジョイスは彼の仕事を行っただけで、彼を敵視するべきではない」と呼びかけたのが功を奏したことと、 ジム・ジョイスが謝罪と反省のコメントを発表したこともあり、翌日の試合でホームベースのアンパイアを務めたジョイスに対して、 タイガーズ・ファンは非常に暖かいリアクションを見せ、これに対してジョイスが涙ぐむシーンが見られたのだった。 それと同時に、レイランド監督の心遣いで、アルマンド・ガララガがこの日の選手のラインナップ・カードをジョイスに手渡す役割を 担当したため、ホームベース上で2人が握手する姿がファンが見守る中で実現。
この日、フォード社は ガララガに対して そのピッチングの功績と 彼が見せたスポーツマンシップを称えて 最新のコルベットをプレゼント。 またメジャーリーグのコミッショナー、バド・シーリーはジョイスの誤審を覆してガララガの完全試合を認めるコメントをすると同時に、 今後、こうした誤審を防ぐために ”インスタント・リプレイ”のシステム導入を積極的に検討することを約束したのだった。

インスタント・リプレイは、審判のコールにクレームが付いた場合に ビデオ映像でプレーを確認するシステムで、 NFLには既に導入されているけれど、これが最も大きなインパクトを与えたスポーツと言えば何と言ってもテニス。
そしてテニスの世界でも、プレーヤーがジャッジ(審判)のコールに対して、チャレンジが出来るシステムが導入された経緯には、やはり プレーヤーの犠牲が伴っているのだった。
この問題の試合は 2004年の全米オープンの女子準々決勝、セリーナ・ウィリアムスVS.ジェニファー・カプリアティのゲームで、 この時、審判の暴挙とも言えるコールの犠牲になったのはセリーナ・ウィリアムス。 途中まで順調な試合展開を見せていたセリーナであるけれど、 主審がライン・ジャッジのコールを覆してまで カプリアティに対して 何度も有利なコールをしたために、 敗れてしまったのがこのゲーム。ここで行われたのは誤審というよりは、明らかにセリーナ側を敵視したアンフェアなもので、 とてもスポーツのジャッジとは思えないものなのだった。
昨年の全米オープンではライン・ジャッジに食って掛かって、大金のペナルティを科せられたセリーナ・ウィリアムスであったけれど、 この時は ジャッジに抗議はしたものの、潔く振舞い、スタジアムの観客はスタンディング・オーベーションで彼女の態度を称えると同時に、同情したのだった。
解説者から、観客までもが唖然とするようなコールを繰り返した女性ジャッジは、試合後、すぐにUSTA(全米テニス・アソシエーション)の 関係者に取り囲まれ、審判の職を追われることになり、USTAはセリーナに対して謝罪。
そしてこれがきっかけで、プレーヤーがジャッジに対して1セット中3回まで(ジャッジのコールが間違っていた場合は、チャレンジの数が 減らされないのがルール)、タイ・ブレイクになった場合はさらに追加でもう1回のチャレンジを行う権利がプレーヤーに 与えられ、ボールがバウンドした位置が1ミリ以下まで正確に捉えられるインスタント・リプレイがスタジアムのラージ・スクリーンに 映し出されるようになったのだった。

このシステムが導入されてからは、プレーヤーが主審に八つ当たりする光景は全くと言ってよいほど見られなくなったと同時に、 プレーヤーがミス・コールで 精神の安定をそがれることもなくなり、テニスの世界では 試合を運が左右する確率が激減したのだった。
でも今日、6月6日に男子決勝が行われたフレンチ・オープンなど、クレー・コートのトーナメントでは、 ボールがバウンドした跡がコートに残るので、プレーヤーがコールに対してチャレンジをした場合、 土の上のボール跡を審判がチェックするという原始的な方法が取られおり、ビデオによるインスタント・リプレーは行われていないのが実情である。


今回のガララガの”インパーフェクト・ゲーム”のお陰で、遂にメジャーリーグにもレーザーとビデオによるインスタント・リプレー・システムが 導入される可能性が出てきたけれど、確実に言えるのは、 メジャーリーグの歴史において アルマンド・ガララガという投手が 過去に完全試合を成し遂げた21人のピッチャーの中で、最も長く人々の記憶に残る存在になったということ。
彼の記録には 但し書きを意味する「*」マークが付くことになるけれど、それでもステロイドを使用していたかも知れないという 理由で 最多ホームラン記録に 「*」マークが付いている マーク・マグワイアなどよりも、 遥かに正当性がある記録であることは 間違いないのである。






Catch of the Week No. 5 May : 5月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 May : 5月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 May : 5月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 May : 5月 第 2 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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