May. 30 〜 June 5 2011

” Don't Take A Dirty Picture ”

今週のアメリカで大きなニュースになっていたのが、もっぱら政治家のスキャンダル。
そのうちの1つは、2008年の大統領選における民主党候補の1人で、2004年の選挙の際には副大統領候補でもあった ジョン・エドワーズが、その選挙資金を愛人スキャンダルを隠す用途で使い込んだというもの。 この愛人、リエル・ハンター(写真上左のNYポスト紙にフィーチャーされたブロンドの女性)は、エドワーズの子供を出産し、 彼の離婚の原因にもなったけれど、エドワーズは2人の裕福な支持者から寄せられた選挙資金 92万5000ドル(約7420万円)を 愛人の生活費、医療費、レント、高級ホテル代、及びチャータージェットの代金として支払ったとされており、 選挙資金法違反、偽証罪を含む6つの重犯罪で起訴されているのだった。
それぞれの重犯罪は、1つでも有罪になれば 約2000万円の罰金と最高で5年の懲役が科せられるとのことだけれど、 エドワーズ側は、愛人問題については彼の犯した過ちだとは認めているものの、法は犯していないとして、選挙資金の 使い込みを否定しているのだった。

ジョン・エドワーズの愛人問題は、乳がんと闘病中の故エリザベス・エドワーズ夫人を裏切っての行為だったことや、 それが発覚したのが、タイガー・ウッズの不倫スキャンダルが大きく取り沙汰されていた時期だったこともあり、 彼はタイガー・ウッズと共に、自分の社会的ポジションを省みずに、妻を裏切って、セックスの快楽を求めたセレブリティの 象徴として取り沙汰されていたのだった。
そのタイガー・ウッズと言えば、英語のスラングで 「sexting / セクスティング」と呼ばれる セクシャルな内容の携帯メッセージのやり取りを 愛人と行なっていたことが 大きく報じられていたけれど、 今週もう1人、一躍 不名誉な時の人となった ニューヨークの代議士、アンソニー・ウェイナーは、 彼のツイッターのアカウントがハッキングされ、彼の性器と思しき写真が複数の女性たちに送付されたことで、 ニュースとジョークの的になってしまったのだった。(写真上、NYポスト紙、右側)

アンソニー・ウェイナーは、写真を女性たちに送付したのは あくまでハッカーの仕業としているものの、 送付された写真が 「ハッキングされた自らのコンピューターに入っていた 彼の性器の写真であるかもしれない」という可能性を示唆しており、 彼の性器を写した写真が実在することを 事実上認める結果となっていたのだった。 でも、トークショーのホストなどからは 「男性であれば写真を見て自分の性器かどうか、識別できないはずは無い」 といった指摘がなされ、 彼のラスト・ネームが男性性器の俗語に近い響きであることも手伝って、 今週は アンソニー・ウェイナーをネタにした男性性器に関するジョークが ありとあらゆるメディアに飛び交っていたのだった。
一部では、次期NY市長候補とも言われたアンソニー・ウェイナーであるけれど、このスキャンダルのせいで、 彼の政治生命は致命的なダメージを受けたと言わざるを得ない状況になっているのだった。
(このコラムがアップされた翌日、6月6日にアンソニー・ウェイナーは記者会見を行い、写真が自分のもので、写真の送付はハッカーの仕業ではなく、彼が行なったこと、 及び、ツイッターやフェイスブックを通じて知り合った女性と数年に渡って、セクシャルな内容のEメールのやり取りをしていたことを認めています。)
ちなみに、昨今はコンピューターがハッキングされて ヌード写真が流出するセレブリティが多く、 ヴァネッサ・ハッジェンス、マイリー・サイルス、スカーレット・ジョハンソン、ブレーク・ライヴリーなどが その被害にあっているけれど、政治家の性器の写真というのは極めて異例なケース。
これらのハッキングの窓口になっていると言われるのがフェイス・ブックやツイッターなどのソーシャル・ネットワークのアカウントであるけれど、 ヌード写真の流失の度に指摘されるのが、どうしてセレブリティや政治家が自分のヌード写真を撮影して、 それをハッキングされるかもしれないコンピューターの中に入れておくのか?ということ。
これはもちろん、一般大衆に公開する意志はなくても、プライベートな関係の人間に その写真を送付するためと思われるけれど、自分のヌード写真を送付するというセクスティングは 今や ティーンエイジャーから大人まで、多くの人々があまり深く物事を考えずに 行なっていること。



ことに多いのが、ボーイフレンドに催促されて 自分のヌード写真を送付する女性、 女性を誘惑する目的で、自分のボディ、もしくは性器の写真を送付する男性で、 特にティーンエイジャーの間では、交際相手とこうした写真を送り合って、その携帯電話の中に入れておくことは、 相手との性関係がある証、もしくは愛情表現と見なされる傾向にあるのだった。
とは言っても、 写真を送られた側が 交際相手と別れた場合、もしくは自分の異性関係を自慢したい場合などに、 あっさり人に転送されてしまい、それ以降、ネット上のどこかに永遠に存在するのがそのヌード写真。 なので、インターネット・メディアの専門家は どんなに相手を信頼していても、たとえ相手が絶対に人に公開しないと誓ったとしても、 絶対に自分のヌード写真を送付するべきではないことを警告しているのだった。

一度、誰かに送付してしまった写真というのは、事前に書面で非公開の協約でも結んでおかない限りは、相手がその後、誰に転送したところで 罪に問うこともできなければ、訴えることも出来ないもの。
でもこれには例外があって、写真の被写体がティーンエイジャーなど未成年者であった場合は、セクスティングで送付された写真の転送は 「青少年ポルノの流通」という犯罪に当たるのだった。 実際、今年の春先にはその逮捕者も出ているけれど、この事件の場合、3ヶ月ほど交際していたティーンエイジャーの男女が、交際中にお互いのヌード写真を セクスティングし合い、別れた後、男子学生がそのガールフレンドのことを嫌っている彼の女友達に彼女のヌード写真を、 「誰にも見せない」という口約束で転送してしまったのが事の発端。
もちろん女友達はそんな約束を守る気など毛頭なく、ヌード写真が添付されたEメールは 転送に次ぐ転送を経て その地域の3つハイスクールのほぼ全学生の 携帯電話に転送されることになったという。元ガールフレンドは当然のことながら、不登校になり、学校のみならず 警察までもが捜査に動いた結果、 ボーイフレンドと、その女友達、及びその写真の流通に加担した学生1人が逮捕されるに至ったのだった。
その直後から現地の警察には、「自分の子供の携帯電話にそのヌード写真が入っていた場合、逮捕されるのか?」といった 親達からの問い合わせが殺到したことが伝えられているけれど、この事件の場合、逮捕はヌード写真の直接の流通に関わった3人のみに絞られていたのだった。


同事件に対する多くのティーンエイジャーのリアクションは、「皆やっていることだから、まさか犯罪だとは思わなかった」という声が 多かったというけれど、逆に ひとたび成人年齢に達してしまうと、これを罰する法律が現時点では存在してい訳で、 もっぱら「ヌード写真を人に送付するのが悪い」、「見られたくなければヌード写真など撮影しなければ良い」という 自業自得の扱い。
もちろん写真が盗撮されたものであった場合は 話は別。でも明らかに自主的にポーズを取っているような写真の場合、 訴えようとしても、裁判にすらならないのが実情なのだった。

人々が自分のヌード写真を撮影して、あまり先のことを深く考えずにあっさり送付してしまう要因の1つは、 携帯電話やデジタル・カメラで簡単に自分のヌード写真が撮影できてしまうこと。 デジタル・カメラが存在しなかった時代には、アメリカの写真店の多くが 「ポルノ性のある写真は一切現像しない」というストア・ポリシーを掲げていた上に、 誰かに撮影してもらわなければ、自分の写真が撮れなかったけれど、今や自分で自分を撮影して、それをEメールで送付するというのは極めて簡単な作業。
これに、「皆がやっていること」というタブー意識の無さ、自分のボディを見せたいというナルシズムや人の関心を得たいという意識などが 絡み合って、自分のヌード写真を送付するという行為に至ってしまうようである。 その結果、数ヶ月経っても「何も問題は起こらなかった」と安心するのは気が早いというもの。
以前、このコラムにも書いたけれど、昨年のアメリカの中間選挙では、若い政治家の数人が自分でも覚えていないような、何年も前の 写真がネット上から出現して、選挙戦に破れるという結果をもたらしており、 これらの写真は往々にして本人にとって最悪のタイミングで多くの人目に触れることになるのだった。

今週メディアに大きく報じられたアンソニー・ウェイナーにしても、 その目的は定かではないとしても、まさか自分の政治生命が脅かされるなどとは考えずに自分の性器の写真を撮影していた訳である。
中にはパリス・ヒルトンやキム・カダーシアンのように、セックス・ビデオが流出したことによって 有名になったセレブリティも居るけれど、 こうしたケースは例外と考えられるべきもの。
1つ言えるのは、男性がその裸体や性器の写真を その気が無い女性に送付した場合は、セクハラと見なされてしまうけれど、 女性が自分のヌード写真を送付した場合は、その写真が不特定多数に転送されることはあっても、 アンソニー・ウェイナーのように 受け取った相手がメディアに出てきて抗議をするような事態には まずならないということ。
NFLの名クォーターバック、ブレット・ファーブもニューヨーク・ジェッツ時代に女性レポーターに 自分の性器の写真を送付し、女性側が不快感を訴えて スキャンダルになっていたけれど セクスティングの事件やスキャンダルにおける男女の違いは、自分の身体や性器の写真を送付するという同じ行為を行なっても、 男性は往々にした加害者になり、 女性は往々にして被害者として扱われる結末になるということ。
どちらになったとしても、人生に利点をもたらすことは無いけれど、残念ながらそこまで深く考えて 写真を撮影したり、送付したりする人は 居ないのが実際のところなのである。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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