May 27 〜 June 2, 2013

” Women As Breadwinners ”


今週のアメリカも 引き続き異常気象が続いていて、金曜にはオクラホマ、カンサス等で25の竜巻が多大な被害をもたらした一方で、 日曜には大型ストームがもたらした大雨で、アメリカ中部を中心とした 16の州で洪水警報が出され、その洪水による地盤沈下が起こったエリアもあるほど。
そうかと思えばカリフォルニアとニューメキシコでは、大規模な山火事で 約2万エーカーが焼き尽くされており、 アメリカは火攻め、水攻めの状態。ニューヨーク・エリアでは 木曜から突如 真夏日が続いており、 お隣コネチカット州では 週末のマラソンに参加していた男性が熱中症で倒れる暑さ。
日曜から月曜にかけては、各地で洪水の大被害をもたらしたストームがニューヨーク・エリアを通過することになっており、 特に郊外を中心に警戒が促されているけれど、今年に入ってからのアメリカは 異常気象のニュースが ほぼ日常化しつつあるといっても過言ではない状況になっているのだった。

そのアメリカは 5月27日、月曜がメモリアル・デイのホリデイだったけれど、この日からニューヨークでスタートしたのが、 ”Citi Bike / シティ・バイク” とネーミングされた ニューヨーク市の自転車シェア・プログラム。
ネーミングからも分かる通り、シティ・バンクがスポンサーになってスタートしたこのプログラムは、 6千台の自転車をマンハッタンとブルックリン内に設けれた330箇所のキヨスクでレンタルするというもの。 開始から1週間は、年間メンバーシップ・フィー 95ドル+タックスを支払った人々のみの利用となっていたけれど、 木曜の時点で 1日の自転車使用回数が1万回を数え、年間メンバーの数も2万3,749人に膨れ上がったことが伝えられたのだった。
そして、今週からは24時間アンリミテッドの使用パス(9.95ドル+タックス)、1週間アンリミテッドの使用パス(25ドル+タックス)が スタートするけれど、年間メンバーが45分間 自転車を使用できるのに対して、1日または、1週間のパスで使用できるのは30分間で、 時間内に自転車をキヨスクのドックに戻さなければならないというシステム。 一度ドックに戻せば、再びタイマーがリセットされるので、そのまま自転車を使い続けることが出来るけれど、 時間内にドックに戻さなかった場合は、年間メンバーも1日&1週間の利用者もオーバータイム・フィーが チャージされることになっているのだった。

このオーバータイム・フィーは決して馬鹿にならないお値段で、年間メンバーの場合は 30分以内のオーバータイムなら2.5ドルのフィーであるものの、 次の30分に入ると それが6.5ドルにアップ。それを超過すると30分ごとに9ドルをチャージされるとのこと。 1日&1週間の利用の場合、最初の30分の超過料金は 4ドル。次の30分が9ドル、その後30分ごとに12ドル。 したがって、宣伝文句の「アンリミテッド 30ミニッツ・ライド」を鵜呑みにして、30分置きにキオスクのドックに戻すルールを知らずに2時間使い続けた場合、 オーバータイム・フィーだけで25ドルになってしまうのだった。
もし自転車を紛失、もしくは破損した場合はメンバーシップやパスの種類に関わらず、1200ドル(約12万円)を支払うのが規約。 「こんなシンプルな自転車が12万円もするはずが無い」と思う人もいるかも知れないけれど、 頑強に作られた自転車であるのに加えて、タイマーなどの特殊な機能のワイヤリングがしてあるとのことで、 この12万円は決してボッタクリのお値段ではないと言われているのだった。
でも頑強に作られた丈夫な自転車のデメリットと言えるのが その重量。 自転車に慣れていない か弱い女性だったら、その重さに なぎ倒されてしまうほどの重量で、 先週行なわれた シティ・バイクのお披露目イベントで デモンストレーションをしようとしたブルームバーグ市長でさえ、 グラグラして自転車がこげない様子を披露していたのだった。 したがって上り坂が かなりキツイことは覚悟が必要。

プログラム開始から1週間のニューヨーカーのリアクションは賛否両論で、自転車のドックが救急車やゴミの収集車の邪魔になるというクレーム、 パブリック・アートの展示スペースがシティ・バイクのドックになってしまったという抗議が聞かれているのだった。 さらにシティ・バイクのドックが個人の自転車の駐輪スペースに使われたり、使用者がきちんとロックしなかった自転車が盗まれるなどのトラブルも起こっており、 週半ばには、無理に赤信号を通過しようとした女性が車に轢かれて、シティ・バイク初の交通事故も起こっているのだった。
また今週から1日&1週間のパスがスタートして危惧されるのが旅行者の使用。 アメリカでは、自転車では歩道を走ることが出来ないけれど、それを知らない旅行者が決して少なくないことに加えて、 路上には一部バイク・レーンが設けられているものの、ニューヨークのドライバーは非常に荒っぽいだけでなく、自転車が大嫌い。
加えてニューヨークは バイク・メッセンジャーやデリバリー・マンなど、猛スピードで交通違反は当たり前の走行をする 自転車が多いため、エリアによっては 非常に危険なのが実際のところ。
万一、歩行者のニューヨーカーにぶつかって 怪我でもさせようものなら、旅行者であろうと訴えられるのは当然のこと。 例えば1時間800ドルをチャージする弁護士を跳ねてしまった場合、怪我の治療費だけでなく、その怪我のせいで働けない時間の給与を 賠償金として支払うことになるのは必至。
したがって、個人的には よほど自転車に慣れていて、土地勘があるニューヨーカーと一緒の場合を除いては、旅行者にはあまり利用を勧めないのがシティ・バイクなのだった。



それとは別に、今週ちょっとした物議を醸していたのが、J.C.ペニーが売り出したマイケル・グレーブスのデザインによる ティー・ケトル(やかん)。
このティー・ケトルをフィーチャーしたJ.C.ペニーの屋外広告を見たカリフォルニアの人々から、 同プロダクトが「ヒットラーを連想させる」というクレームが寄せられ、J.C.ペニーは急遽 この広告を撤去したのだった。 同社のスポークスマンは 「ケトルのデザインがヒットラーに似ていたのは単なる偶然」と釈明していたけれど、 この40ドルの同ケトルは J.C.ペニーのウェブサイトであっという間に完売。 その後 Eベイで199ドルで販売されるプレミアム・プロダクトになってしまったのだった。
アメリカでは、過去にもポテトチップやトーストの焦げ目がフィデル・カストロや、聖母マリアの顔に見えるという理由で、Eベイのオークションに出品され、 高額で落札されてニュースになってきたけれど、人々がトーストの焦げ方に聖母マリアの顔を見たり、ケトルを見てヒットラーを連想するのは、 人間が日常生活の中で 常に沢山の顔を見ながら生活していることに加えて、人間の脳には 顔を認識する細胞というものがあって、 それが顔以外のものを見た場合でも 活発に活動しているためと説明されているのだった。



さて、英語では一家の稼ぎ頭のことを ”Breadwinner / ブレッドウィナー”、”Primery Earner / プライマリー・アーナー” と表現するけれど、 今週水曜に ピュー・リサーチ・センターが発表したのが、今やアメリカの18歳未満の子供が居る家庭の10軒中4軒の割合で、 妻=母親が ブレッドウィナーになっているというニュース。
このデータには、夫がハウスハズバンド(主夫)になって 妻のみが働いているケース、共働きで 妻の収入が夫を上回るケース。 シングル・マザーの世帯が含まれているとのことだけれど、その数は1960年代の4倍、言うまでもなく過去最高になっているのだった。

この傾向が今後も アメリカで益々高まることが見込まれているのは、高額給与の職を得るには 高学歴が必要条件になっているのに加えて、 現在のアメリカでは 女性の大卒者数が男性を上回っているため。
2011年の時点で、アメリカの子供が居る既婚カップルのうち、夫が妻より高学歴な家庭が17%なのに対して、妻が夫より高学歴な家庭は23%。 残りの60%は 夫婦が同等の学歴、すなわち高卒同士、4年制大卒同士といったカップル。 特に世代が若くなればなるほど、女性の高学歴が顕著になっており、その結果、女性の収入が男性を上回る傾向に さらなる拍車が掛ることは必至と見込まれているのだった。

その一方で、シカゴ大学のブース・スクール・オブ・ビジネスの調べによれば、 ランダムな男女間においては、女性の収入が男性より多い場合、カップルが結ばれるケースが かなり少ないとのことが明らかになっているのだった。
これは、男性が自分より稼ぎが多い女性に対して引け目を感じる一方で、女性が自分より収入が少ない男性に魅力を感じないためで、 男性が能力面での脅威を抱かずに済む、扱い易い女性を好み、 女性がビジネス意欲が旺盛な男性に惹かれるという 昔ながらの価値観が 今も根強いことが 指摘されているのだった。
にも関わらず、女性が一家のブレッドウィナーになる傾向が 急速に高まったのは リセッションがきっかけと言われているけれど、 事実、リセッションで多くの男性が解雇された中、女性はレイオフが少ない医療、サービス業、公共セクターに従事しており、 夫が再就職した場合でも、妻の方が給与が高いケースは少なくないという。
したがって現時点で 妻がブレッドウィナーの世帯が急増した理由は、男性が好んで自分より高収入の女性と結婚しているのではなく、 リセッションと国の経済がもたらした状況とも言えるのだった。


では、妻がブレッドウィナーになった家庭がどうなるかといえば、「離婚が増える」というのがその結果論。
少々データが古いものの、80年代後半から90年代前半までの5年間で行なわれた調査によれば、対象となったカップルのその5年間の離婚率は12%。 ところが、妻が夫より稼いでいるカップルになると離婚率が18%。すなわち50%多かったという。
ハリウッドでも ”Oscar Curse / オスカー・カース (オスカーの呪い)” というものが存在していて、 それは オスカーを受賞した女優が、ことごとくその直後に離婚や別離に追い込まれるというもの。 リース・ウィザースプーン、ヒラリー・スワンク、ジュリア・ロバーツなど、オスカー受賞後に夫やボーイフレンドと破局を迎える例は非常に多く、 その原因として 必ず指摘されてきたのが、女性側がハリウッド・キャリアの最高峰であるオスカー受賞し、ギャラが跳ね上がると、 男性側がそのサクセスに対して引け目を感じたり、ジェラシーを抱いたりするということ。

ごくごく一般的なカップルにおいても、妻がバリバリのビジネス・ウーマンとして稼いでいて、 夫が明らかにそれより収入が劣る仕事をしている場合、本人同士がどんなに仲良く振舞っていても、その友人達がカップルの居ないところで、 必ずといって良いほど囁いているのが、「あの2人は やがては危ない」という説。
でも夫がハウス・ハズバンドで 家事や育児を全て請け負う体制になると、トラディショナルな男女間の役割が入れ替わっているものの、 チームワークという点では、夫婦間が上手く行くケースは多いことも指摘されているのだった。
これに対して 共働きで、妻の収入が夫より多いという場合、妻が家事を夫に押し付けるようになるかと思いきや、 往々にして家事や育児の殆どをこなすのは妻。それだけでなく、夫の面倒までみなければならないのが実情。
そんな状態では、夫婦仲が悪くなっても不思議ではないけれど、そもそもアメリカの既婚女性の35%が離婚をしたくても、結婚生活を続けている理由は 経済的自立が出来ないため。見方を変えれば 経済的自立が出来るだけの収入を得ている女性には、離婚というオプションがある訳で、 夫に愛情を感じなくなった時点で、それを選ぶケースが少なくないことが調査結果に現れているのだった。

夫より高額の収入を得る女性のプロフィールは白人で、高学歴、加えてルックスが良い女性。
でもこれまでは、こうした女性達の多くは「自分のペースで働きたい」と称してパートタイム勤務になったり、 家庭を守るため、子供と時間を過ごすために途中でキャリアを ギブアップすることが多かったという。 しかしながら、昨今では子供が生まれてからも経済的な理由や、キャリアにおける上昇志向から、 フルタイム勤務を続けることを希望する女性が急増しており、若い世代ほど この傾向は顕著であるという。
一方の若い世代の男性、特に現在の20代〜30代前半のジェネレーションYについては、大学時代から女子学生の優位を見せ付けられてきた世代とあって、 「どちらが多く稼いだとしても、共働きで世帯収入が多ければ多いほど良い」と考える傾向が強いとのこと。 この世代は結婚するカップルのうちの約30%が、妻の方が高収入を得ているという。

こうした女性がブレッドウィナーになるトレンドを受けて、オバマ政権が推し進めてきたのが 男女給与格差の撤廃法案。
「女性が一家を支えるようになってきた現在のアメリカにおいて、男女給与格差の撤廃は、 男女平等の問題ではなく、経済問題だ」と、施政方針演説でも語っていたオバマ大統領であるけれど、 現時点のアメリカにおいて、女性の給与は同じ職業の男性の77〜80%。
これは白人女性のケースで、黒人女性になると白人男性の給与の69%、ヒスパニックの女性になると、 その給与は白人男性の59%にまで落ち込むのだった。
デモクラティック・ポリシー&コミュニケーション・センターの調べによれば、 男性との給与格差が最も少ない白人女性でさえ、平均的な年収の仕事で45年間働き続けた場合、 同じ仕事をこなしていても 女性は男性より 43万4,000(約4,340万円)も給与が少ない計算になるという。

したがって 男女給与格差の撤廃法案は女性にとってはもちろん、ブレッドウィナーを妻に持つ男性にとっても重要と言えるけれど、 2009年、2012年に議会で浮上した同案は、共に共和党の反対多数で否決されているのだった。
その反対票を投じた共和党議員の中には 女性議員も含まれていたけれど、その女性議員達はといえば、 男性議員と全く同額の給与を支払われ、全く同等の待遇を受けているのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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