May 26 〜 June 1,  2014

”No More Privacy!”
一般国民に対するプライバシー侵害はここまで来ている!
エドワード・スノーデンが明かした国防省のスパイ活動


今週のアメリカのメディアで最大の話題になっていたのが、3大ネットワーク、NBCのトップ・ニュース・キャスター、 ブライアン・ウィリアムスがモスクワに出向いて、独占で行ったエドワード・スノーデンのインタビュー。
エドワード・スノーデンと言えば、2013年6月にNSA(National Security Agency=国防省)による、 一般国民に対するスパイ行為をメディアに暴露し、逃亡中の身となっている元NSAの職員。 現在モスクワに足止め状態になっている彼が、初めてアメリカのメディアのインタビューに応じたということで、 NBCの特番は今週最も注目を集めていたのだった。

エドワード・スノーデンは、NSAがテロ防止対策と称して 国民の電話記録、Eメール、インターネットの履歴や検索内容、 さらにはクレジットカード決済情報までもを 収集していたことを イギリスのガーディアン紙に明かし、 オバマ政権に対する若い有権者層の支持率を大きく低下させたのは周知の事実。 さらに、アメリカの友好国であるドイツのアンゲラ・メルケル首相、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領らの携帯電話の 会話をNSAが盗聴していたことも明かにし、オバマ政権の外交面にもダメージを与えた存在。 実際、ブラジルのルセフ大統領は、この報道がきっかけで2013年夏の訪米をキャンセルしているのだった。

アメリカ国内では、エドワード・スノーデンを国家機密を漏洩した裏切り者と見なす意見と、 国民の権利を守るために貢献した愛国者と見なす意見に分かれており、 年齢層がアップすればするほど、彼を裏切り者と見なす声が多く、 インターネット上のプライバシーを重んじる若い世代ほど、彼を愛国者と見なす傾向が強いと言われていたのだった。
NBCでは、ツイッター上に 「#Traitor(裏切り者、売国奴)」、 「#Patriot(愛国者)」という2つのハッシュタグを設けて、 放映中の視聴者のリアクションを見守っていたけれど、 均衡状態だった放映開始時から インタビューが進むに連れて、彼を「#Patriot(愛国者)」と見なすツイートが急増したことが 伝えられているのだった。




このインタビューの中で彼が明かしたのが、まず彼のポジションがNSAが当初明かした「契約スタッフ」ではなく、 トレーニングされたスパイであったこと。彼は偽のIDを与えられて、外国でスパイ活動をしたと語っており、 それと同時に、昨今のNSAによるスパイ活動は インターネット上がメインになってきていることも明らかにしているのだった。
アメリカ国民の多くは、彼がロシアを逃亡先にしたことで、アメリカの国防秘密を引き換えに プーチンの保護下に滞在しているというイメージを持っているけれど、スノーデンによれば 逃亡中の彼のパスポートを モスクワで無効にしたのはアメリカ政府。 彼自身は、ロシアに居座る意図など全く無く、彼はプーチン大統領にも会った事が無いという。

9・11のテロが起こった時点で 既にNSAで働いていたというエドワード・スノーデンは、9・11以降、 「テロ防止」という名の下で、 NSAによる国民のプライバシー侵害が どんどん進む様子を 目の当たりにしてきた職員。彼自身、「こんなことまで出来るのか?」と驚くスパイ行為が沢山あったという。
その例として挙げていたのが、電源が切ってあるスマートフォンでも、遠隔操作でスイッチをオンにして、 NSAがそれを盗聴用のマイクロフォンとして使用したり、盗撮用のカメラとしても使用できるということ。 また今となっては、グーグルがGメールの内容をチェックしていることは周知の事実であるけれど、 NSAの場合、そのコンピューターの中に入り込んで、Eメールや書類をタイプしている段階から 内容を見守っており、そのプロセスをチェックすることによって、 どういう考えで その文章を打っているかが、手に取るように分かるという。 例えば、センシティブな内容だと思う部分は 何度も表現を書き換えたり、タイプのスピードが遅くなるもの。 校正の段階で 書き直した部分にしても、その前と後を比較することによって、 仕上がりだけを読むよりも、文章を書く側の意図や、精神状態が驚くほど正確に把握できたりするのだった。

インタビューの中では、NBCのブライアン・ウィリアムスが、モスクワに着いてから ニューヨーク・レンジャース(ニューヨークのプロ・ホッケー・チーム) の試合スコアをスマートフォンでチェックしたことを語り、それをNSAが把握したところで、どんなインパクトがあるのか?と尋ねていたけれど、 スノーデンによれば、彼がスポーツ・ファンであること、何時に何処からその情報をチェックしていた というような、ありとあらゆる些細な インフォメーションの積み重ねが、その人物の ライフスタイルから、人格、交友関係、価値観、食の好みなどのデータになるとのことで、 それは、何か事件が起こっても、起こらなくても、プロファイリングとして使われることになるという。

私自身 このインタビューには非常に興味があったので、最初から最後までしっかり観ていたけれど、 個人的な印象は、エドワード・スノーデンが非常にシャープで、頭が良いということ。 ジョン・ケリー国務長官を始め、彼を批判する政治家やオバマ政権関係者は多いけれど、 そんな彼を批判する人々よりも、遥かに的確で切れ味の良い語り口でIQの高さを感じさせていたのがスノーデン。 私の友達は このインタビューを見て、映画「ソーシャル・ネットワーク」の中に描かれていたマーク・ザッカーバーグと スノーデンのイメージをダブらせていたけれど、 それは 当たらずとも遠からず。
ケリー国務長官は、エドワード・スノーデンに対して、「もし愛国者ならば、国に戻って裁きを受けるべき」と挑発していたけれど、 スノーデン本人は、彼の罪状が最高機密に関わることから、オープンでフェアな裁判が受けられないことを熟知しており、 それについてはアメリカ国内の専門家も認めていることなのだった。





スノーデンのインタビューとは別に、今日6月1日、日曜日のニューヨーク・タイムズ紙第1面で報じられたのが、 NSAが インターネット上で、毎日何百万もの一般国民の顔写真を収集して、 フェイス・レコグニション(顔認識)システムのデータにしているというニュース。
この記事によれば、政府機関で最も膨大な顔写真のデータベースを持つのは、パスポート申請写真、 外国人ヴィザ申請写真のデータ・ベースを持つ国務省。 その一方で、国土安全保障省では大勢の群集の中から、特定の容疑者の顔を割り出すフェイス・レコグニション・システムの 開発を進めているというけれど、NSAのフェイス・レコグニション・システムは証明写真や犯罪容疑者写真等ではなく、 バケーション中に撮影して、フェイスブックにアップしたようなスナップの顔写真からでも 人物が認識できる点でユニークなもの。
警察やFBIがフェイスブックを始めとするソーシャル・メディアの写真を捜査で使うようになって久しい現在であるけれど、 NSAについては、Eメールや携帯メールに添付された写真も、簡単にデータにすることが出来るとのことで、 昨年の時点でNSAがヤフー・ユーザーのウェブ・カム映像を傍受してしたことも報じられているのだった。

既にNSAのテクノロジーは顔の判別、識別だけでなく、スパイ衛星から撮影された風景と、一般人のスナップのバックグラウンドを照合させて、 それが撮影されたローケーションを割り出すというところまで来ているというけれど、 フェイス・レコグニションのテクノロジーについては、それに大金を投じているのは政府機関だけでなく、プライベート・セクターも同様。
ちなみにNSAがフェイス・レコグニション・システムを強化したのは過去4年ほどのこと。 これに止まらず NSAの全てのスパイ行為は、オバマ政権下で最も強化されてきているのだった。

結局のところ、今の世の中では何処で何をしていても、誰かに見られたり、聞かれたり、読まれてたりしていると思って暮らさなければならないということ。
先日、ニューヨークでは、かつての人気TV「フレンズ」のロス役を演じていた デヴィッド・シュイマーの家の前で起こった犯罪を 彼の家の監視カメラが捉えており、その映像を彼がニューヨーク市警察に 提供したことで、犯人が逮捕されたニュースが報じられていたけれど、 こうした映像はNSAであれば監視カメラの持ち主に依頼するまでも無く、簡単に遠隔からのハッキングで手に入れられるもの。
昨今では、「Hey NSA、Are You Listening?(ねぇNSA、聞いてる?)」と言いながら、 秘密めいたことに言及するアメリカ人も居るけれど、これはまんざらジョークではないといえるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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