June 8 〜 June 14 2009




” Am I Your Friend Or Your Customer? ”


今週のアメリカで火曜に報じられたのが、昨年10月から TARP(Troubled Asset Relief Program)のベイルアウト・マネー(救済金) を受け取ってきた10の銀行に対して、オバマ政権がその返済を認める決断を下したというニュース。
これによって、ゴールドマン・サックス、アメリカン・エクスプレス、JPモーガン・チェイス、モーガン・スタンレーといった 金融機関から$68.3ビリオン(約6兆7250億円)が返済されることになるけれど、この金額は TARP資金から金融機関に支払われたベイルアウト・マネー総額の4分の1に当たるという。 そもそも これらのベイルアウト・マネーは 銀行の資金繰りを良くして、返済能力のある中小企業や一般の人々に対する ビジネスや住宅ローンが 従来通り提供されることを狙ったもの。
でも後者の目的が未だ達せられないまま、金融機関の株価がもとに戻り始め、経営が安定してきた段階での TARPマネーの返済は、 金融機関にとっては 今後政府の介入を排除出来るので、これまで通りの高額給与やボーナスが支給できるということ。 加えて このプログラムが事実上、金融機関のみを救済するものでしかなかったことを露呈しているのだった。
それでも 今週にはヘッジファンドも 昨年のマイナスを大きく挽回し始めていることが報じられ、株価も 年明けの段階に比べて始めてプラスに転じており、消費者の景気信頼指数も昨年のリーマン・ブラザースの破綻以来、 始めてアップしたことが伝えられているのだった。


さて、アメリカの大学は既に夏休みに入り、学生達は企業でサマー・インターン(研修生)として無償で 働き始めているけれど、このサマー・インターン制度というのは 学生にとっては将来の進路を決める大切な経験であり、 企業側にとっては 優秀な学生の青田刈りのチャンス。
またファッションや出版、エンターテイメント業界のインターンシップは、 業界と政財界のコネクション作りに使われるケースが非常に多いのだった。 例えば、シャネルのような一流のファッション・ブランド、ヴォーグ誌、ハリウッドの有名なエージェンシーなどでは、 政治家やセレブリティ、実業界の大物の子女をインターンとして雇うのが通例。 こうした子女達を受け入れることによって、企業側はその親達とのコネクションを深めるだけでなく、 子女の世代が社交界でメジャーな存在になる時代にも備えている訳である。
こうした業界は、もっぱら給与が安い上に 長時間の勤務を強いられるので、子女達はインターンの経験を通じて 業界がどんなものかを味わったり、自分に必要なコネクションを手に入れて、 その後、実際に就職することは殆ど無いのが実情。
なので、ヴォーグ誌を発行するコンディ・ナスト社などでは、インターンの方が社員よりも 遥かにリッチで、ソーシャル・コネクションも広いといった状況がしばしば生じてしまうことが指摘されていたのだった。

でもインターン・プログラムは例年通りでも、雇用が増えない状況は相変わらず。
ことに現在は、レイオフされて仕事が見つからない若い層が増えている一方で、ファイナンシャル・クライシスで 年金の30〜40%を失った50代の人々が、引退を止めてジョブ・ハンティング(職探し)に加わってきていることが伝えられており、 目下の就職戦線は 言うまでも無く 買い手市場。 その雇う側の傾向としては 仕事の経験が浅く、職場に居着く可能性が低い20代の若者よりも、真面目で仕事を理解している50代の人々を 雇用する例が少なくないのだそうで、特にカストマー・サービスや事務仕事など、忍耐や経験を要する職場では さらにその傾向が顕著であるという。
そんな職探しをしている20代の若者の間で、密かに流行っているのが タトゥー(刺青)を消すこと。 女性の場合、インタビューにはスカート・スーツで出掛けた方がウケが良いと言われるけれど、 せっかく脚線美をアピールしようとしても、足首にタトゥーがあるのは やはりマイナス。 また女性でも男性でも、レジュメを差し出した手首にタトゥーがあるというのも 特にコンサバな業界ではネガティブな印象を与えるようで、レーザー・サロンでは 今年に入ってからタトゥーを消したいという若い層が訪れる件数が非常に増えていることが伝えられているのだった。


昨今のアメリカでは、仕事がある人でも就労時間が減ったための給与カットを埋めるため、 これまで仕事をしてこなかった主婦等が 夫の給与カットの余波を受けたり、夫のレイオフに備えようと、何らかの収入源を求めていると言われるけれど、 実際、私の友達でも 最近ディナーに現れない女の子が居て、どうしたのかと思ったら 週末の夜はベイビー・シッターをしているのだという。
彼女の場合、激安のイタリア・パッケージ・ツアーで10日間ほど旅行に出掛けたところ、 戻ってみたらクレジット・カードの請求額にビックリしたのだそうで、 加えて、彼女が勤める法律事務所は今年に入ってから残業が無く、そのせいで給与が減っていたという。
収入源として Eベイで物を売ったり、旅行者を自宅に滞在させてルームメイト・スタイルのB&B(ベッド&ブレックファスト)を 営む例などは良く耳にするけれど、 私の友達の間で昨今大きな物議を醸していたのが ホーム・パーティー・スタイルのビジネス。
アメリカでは、古くはタッパウェア、鍋のセットなど、ホーム・パーティーを通じた販売は 決して珍しくないけれど、昨今では様々なホーム・パーティーを企画してこれを収入源とする例が増えているという。
例えば、私の友人が出掛けたパーティーは、サイキック占いの先生を招いて、 誰にでも備わっていると言われるサイキック能力開発のレクチャーを約1時間行った後、 1人、1人が先生に自分の将来等を見てもらうというもので、 限定12人。会費は1人40ドルで、そのサイキックの先生は通常1時間で350ドルもチャージしている人であるという。 その先生に個人的に見てもらえる時間は5分で、パーティーに参加した人なら その後個人的に 先生に見て貰う場合、1時間300ドルに割り引いてもらえるという。
主催者側は、紅茶&コーヒー+スウィーツをサーブしてくれて、 参加者同士で歓談しながら 先生が見てくれる順番を待つというのがパーティーの内容。
ところが、このパーティーが 「ボッタクリ」と大不評で、 レクチャーはいい加減だし、個人のセッションも「5分じゃ何も訊けない」 と、 出掛けた友達はカンカンに怒っていたのだった。

参加者の中には、主催者に「お金を返して欲しい」とまで言ってきた人も居たというけれど、 それで懲りなかったのがこの主催者。
次には、自分が着ない服のスワッピング(交換)を企画して、またしても 会費制のパーティーとして 人を集めたのだった。 同様のパーティーは、リセッションに突入してからというもの アメリカ各地で行われているもの。
最もサクセスフルで規模が大きいものは、子供服のスワッピング・イベントで、自分の子供が着られなくなった コンディションの良い服を持って行くと、 替わりに会場から 必要な服を持って帰れるというもの。 このイベントはボランティアによって学校やコミュニティ・センターなどを会場に行われ、もちろん無料。 リセッションで、子供の成長に合わせた服を購入できない親達にとって、非常に有難いイベントになっているのだった。

大人の服でこうしたスワッピング・パーティーをする場合、ワインをサーブするなどして 社交性を持たせたイベントにする場合が殆ど。
でも、やはり大人の服だと ブランド物とH&Mのような安価のアパレルが混じってしまうので、 子供のイベントほど簡単な物々交換にはならないのは容易に想像がつくところ。 なので、主催者がよほどきちんとルールを設定していない限り、その場ではワインで気分が良くなっているかもしれないけれど、 後から文句が来るのは仕方が無かったりするのだった。
私の友達が出掛けたパーティーでも、ドルチェ&ガッバーナのニット・トップを持ってきた女の子が、 替わりにJ・クルーのサンドレスと、バナナ・リパブリックのジャケットを持って帰ったというけれど、 2ブランドとも今はセールの真っ最中。彼女は実際に店に出掛けて、これらのブランドの新品のセール品が今 如何に安くなっているか? を目の当たりにし、自分が1度も着ていないドルチェ&ガッバーナのニット・トップをこれらのブランドのセコハンと取り替えてしまったことを 非常に後悔しただけでなく、このイベントの会費として支払った30ドルで、J・クルーのセール品のサンドレスが買えてしまうことにも 腹が立ってきてしまったのだという。
そこで、彼女は自分のドルチェ&ガッバーナのトップを取り戻したいと言い出したけれど、 彼女が替わりに貰ってきたJ・クルーとバナナ・リパブリックの服は、 それぞれ別の女性の持ち寄りなので、「コレを返すから、アレを返して」という単純な状況ではなく、 大騒ぎになってしまったという。 このパーティーでは一応口約束で、「後からの返品、交換はナシ」という申し合わせがあったというけれど、 パーティーの主催者と参加者が友達同士である場合、 友達から「ドルチェ&ガッバーナの替わりに、 安物を掴まされた」とクレームをされると、主催者も立場が弱くなるようで、 その場で毅然と断われば良いところを、後から引っ掻き回すような行為をしたために、 かなりの顰蹙を買ってしまったようなのだった。

結局、この主催者は家で合計3回ほどパーティーをしたというけれど、 その都度、友人の間では彼女の悪口の嵐状態。 でも本人の前では誰1人として 文句は言わず、「あの時は、楽しかったわ。ありがとう。」などと言ってのけるところが、 人付き合いの怖いところである。
このイベントに実際に出掛けて、その一部始終を話してくれた女の子は 「こんなご時世に友達を相手にビジネスをしようとするなんて、大きな間違い」と言っていたけれど、 私に言わせれば、どんなご時世でも友情が本当に大切だと思うのだったら、友達を相手にはビジネスはするべきでは無いもの。
私は友達に「欲しい」と言われれば、CUBE New York の商品を割引して売る場合はあるけれど、 自分自身が 友達に物を買ってくれと言われるほど 迷惑なことは無いと思っているので、 決して自分から友達にはセールスなどしない主義。でも世の中には 友達に会う度に、いろいろな品物やサービスを売りつけようという人が居るもの。 また、アメリカの場合、友達を通じてチャリティに寄付をさせられるというケースも非常に多いのである。
果たして売り込んでくる側が、”友達” のことを ”金づる=カモ” だと思っているのか?、 それとも 宗教の勧誘のように 自分で本当に素晴らしいと思っているから 薦めてくるのか?、 その真意は定かではないけれど、私の場合、「2回以上、物やサービスをオファーされたら、 友達ではなく セールスだと思う」というのが ガイドラインである。

こうしたセールスを行ってくる人との付き合いを絶って、後からその人が言っていたことを思い出すと、 自分が如何に利用されていたかが良く分かるけれど、友達として付き合っている間は それが分かり難いもの。 「招待するゲストの質を選ぶように言われているから、誰でも誘えるイベントじゃないんだけれど・・・」 などと おだてられて出掛けた結果、20万円、30万円といった買い物をさせられる人は 決して珍しくないのである。
でも金額に関係なく、友だちを相手に自分や自分の知り合いが利益を上げている場合、 友情をマーケティングに使ったツケは必ず回ってくるもの。 そして、それは常に本人の知らないところで囁かれているものなのである。







Catch of the Week No. 1 June : 6 月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 May : 5 月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 May : 5 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 May : 5 月 第 3 週







執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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