June 6 〜 June 12 2011

” Happiness Is So Easy ”

今週のアメリカでは 先週に引き続き、ツイッターのアカウントから、女性たちに自分のヌード写真、性器の写真を送付していた ニューヨークの下院議員、アンソニーウェイナー関連のニュースが大きく報じられていたけれど、 彼は自分でヌード写真を撮影して、送付したことを認めながらも、法は犯していないとして辞職の意志が無いことを表明しているのだった。
実際、彼はセクスティングを数人の女性と取り交わしていたものの、実際には女性たちと関係した訳ではないどころか、彼女らに会った事さえないのが実情。 加えて、今週に入ってからは 昨年結婚したばかりの彼の妻が第一子を妊娠していることが発覚し、彼が所属する民主党議員からは辞職を迫られているものの、 ニューヨーカーのアンケート調査によれば、彼が辞任する必要は無いという意見が過半数を占めているのだった。

このスキャンダルは、ツイッターやフェイスブックで、女性と知り合ってセクスティングをすることが、果たして浮気にあたるのか?といった論議から始まって、 どうして自分のヌード写真を携帯電話で撮影して、いとも簡単に送付してしまうのか?といった分析など、今週も様々なネタをメディアに提供していたけれど、 私が携帯メールというものを使い始めて以来、最もショッキングな内容のメールが届いたのが今週金曜日のこと。

そのメールの送り主はCUBE New Yorkがビジネスの口座を持つ銀行で、CUBEの口座が残高不足で、現時点で マイナス998万1909ドル66セント (約マイナス8億125万1千円)の残高になっているという内容。 思わず我が目を疑って、「一、十、百、千、万・・・」と単位を数えてしまったけれど、直ぐに間違いだと分かっても、笑い飛ばせないのがアメリカという国。
というのも、私は報道番組で同様の被害にあった女性のストーリーを見たことがあって、彼女の場合、マイナスになった残高が trillion / トリリオン という単位。 その金額が アメリカの抱える負債額より多かったにも関わらず、銀行に電話をしてクレームをしたところ、 「それが貴方の負債額なのだから、払いなさい」というとんでもないリアクションが返ってきて、TV局が事態の仲介に乗り出して、やっと 残高を戻してもらえたという恐ろしい状況なのだった。

なので、私も慌てて銀行に電話をしたところ、「貴方の口座は凍結されているので、その部門の人間と話してください」と言われて、 電話を別部門に回されたけれど、自分の身分の証明のためにソーシャル・セキュリティ番号から、生年月日、母親の旧姓、口座番号、暗証番号などを全てチェックされて、 その後、テレフォン・バンカーから ニューヨークのストーニーブルックにある銀行の支店で、CUBE New Yorkの口座番号を使った偽の小切手が換金されそうになったけれど、 直ぐに偽造だと分かったので、口座が凍結されたという状況を説明されたのだった。
小切手の宛名は、外人の女性名で、幸いCUBE New York の口座からは一銭も引き落とされていなかったけれど、 私はその口座をクローズして、新しい口座を開く羽目になってしまったのだった。


「被害が無かったなら良かった」と思うのは尚早で、会社の銀行口座番号を替えるというのは、非常に手間が掛る作業。 というのも、その口座から税金が引き落とされ、カード会社からの売り上げが振り込まれ、会社のエクスペンスが支払われている訳で、 これが個人の口座なら、新しい口座番号を渡すだけで変更が出来るけれど、それが会社となると新しい口座番号の小切手を提出したり、 銀行からのレターを提出するといった義務が生じるケースがあって、このトラブルの収拾にはまだまだ時間を要するのだった。
私が疑問に思ったのは、何故被害額が無かったにも関わらず、 マイナス998万1909ドル66セントの残高という携帯メールが送付されて来たのか?ということだけれど、 銀行の説明によれば、「そういう携帯メールを送付すれば、口座主が銀行に直ぐにコンタクトしてくるため」とのこと。 なので、驚くような金額の携帯メールをあえて送付するというのが 私が出向いた支店のバンカーの説明であったけれど、 そう言っておきながら、彼は席を外した時に、別のスタッフに 「彼女の残高がマイナス$9ミリオンになっていたんだ」と言って、そのスタッフを驚かせていたので、 その言い分は客を安心させるためのビジネス・トークだったかもしれないのだった。

ところで、 CUBE New Yorkの口座は、 あえて”オーバードロウン・プロテクション” と呼ばれる、小切手が不渡りになった時に 銀行が立て替えてくれるというサービスに加入しておらず、これはこうした偽造小切手やハッキングなどで、とんでもない金額が引き落とされそうになった時に、 このサービスに入っていなければ、小切手や支払いが不渡りになるだけで、被害が防げるため。
銀行側は、「中小企業は これに入っておけば、金策が苦しくなっても 倒産が防げる場合があるので、入っておくように」 としきりに勧誘してくるけれど、 私は 「そこまで金策に追われたなら、借金を抱える前にビジネスを閉めるべき」という考えの持ち主なので、どんなに勧められても そのサービスを断っているのだった。
なので今回の事件で、 たとえ金銭的な被害がなくて、コンピューターの数字の上でだけの一時的なマイナス残高だったとしても、 CUBE の口座の残高以上の金額が引き落とされたかのような プロセスが行なわれたということも私にとっては腑に落ちない点。
いずれにしても、この”オーバードロウン・プロテクション”は、毎月フィーが請求される上に、今回のように小切手が偽造された場合、 残高以上の金額を、銀行に借金をしてまで 犯人に支払ってしまうかもしれないわけで、私は益々このサービスの意義が見出せない状況に陥ってしまったのだった。

このトラブルは、直ぐに何らかの事件や作業ミスの被害に遭ったことが分かるものであったけれど、私が今、USPS(アメリカの郵便局)に捜査を依頼しているのが、 CUBE New Yorkのコーポレート・アカウントが何者かによって悪用されていて、 その人物が送った荷物の支払いがCUBE New Yorkのアカウントから引き落とされているということ。
なので、コーポレート・アカウントを閉めようとしたけれど、捜査が進行中のアカウントは閉めさせて貰えないとのことで、今も、毎月のように1〜2個の何者かの荷物が CUBE New Yorkのアカウントを使って送付されているのだった。 これが発覚したのは、2ヶ月前のことで、昨年末までは遡って被害を調べたけれど、 それ以上 遡るのは極めて困難な作業。なので、あまり考えたくはないけれど、発覚以前にも、ずっと誰かにアカウントが悪用されていたかも知れないのだった。


アメリカでビジネスをするに当たっては、時に銀行でさえ とんでもないミスをするので、お金の動きに常に目を光らせなければならないけれど、 それは、銀行口座やコーポレート・アカウントだけでなく、送られてくる請求書、クレジットカードの明細など全てに言えること。
私が過去1〜2年で最も苦い経験をしたのは、 ビジネス関係の弁護士がとんでもない請求書を送りつけてきた際。 CUBE New Yorkは会社の規模が小さい上に、クライアントとしての付き合いが長いということで、1時間の弁護士フィーを600ドルから400ドルにしてもらっていたけれど、 彼に依頼した仕事が一段落して、4ヶ月後に送付されてきたのが どうしたらそんな金額になるのか分からない、日本円にして100万円近い請求書。
その内訳を見てみると、「クライアント(私)とのコンタクト」と称して、30分のフィー、$200ドルが度々チャージされているので、それらの日に 何があったのか、自分の記録と照らし合わせると、Eメールで アポイントメントの確認をしただけで、「I'll see you on Tue at 2PM」というセンテンスをタイプしただけだったりするのだった。 もちろん、この程度の連絡事項では、フィーを請求する権利など無いのは言うまでも無いこと。
私は、別の弁護士とも 過去に2回ほど 酷い目に遭っているので、いくら長い付き合いでも、その弁護士との全ての通信記録と、 彼が送付してきた書類などを日付別にファイルしてあったけれど、 彼の請求書の明細と、私の記録が著しく異なっており、そもそも この請求書を送付してくる以前から、書類を紛失したり、既に支払ったフィーを2重請求してくるなど、 業務内容に不信感を覚える状況が続いていたのだった。

私がクレームの電話をしたところ、逆切れされてしまったけれど、個人や2〜3人のパートナーで経営している弁護士事務所の怖いところは、 個人の経済状況や私生活が、その仕事内容に反映されてしまうこと。
私がかつて嫌な経験をした弁護士は、彼自身が離婚訴訟を抱えて、妻に大金を払うことになった途端に、 人が変わって 強欲になった上に、仕事ぶりも散漫。 とても信用できないので 替えることにしたけれど、 彼に預けてあった書類を取り戻すために、弁護士を使わなければならない状況に追い込まれてしまったのだった。

そういう苦い経験を度々味わう唯一のメリットは、新しいトラブルに見舞われても「またか!」と思って、頭に来ることはあっても、 とりあえず それ以上 打ちのめされたり、落ち込んだりすることがないこと。
でも金曜は、銀行口座の手続きで仕事時間をすっかり取られて、そのせいで出掛ける元気も時間もなくなってしまったので、 その替わりに、土曜日に友達と ルークスのロブスターロール とシャンパンの験直し(げんなおし)ディナーをしたけれど、 あまりの美味しさに すっかりハッピーになってしまって、友達と「Happiness is so easy to acheive! (幸せになるなんて簡単!)」と言って 笑っていたのだった。

私の意見では、苦い経験や、辛い思いをして、自分を不幸だと思う人というのは、さほどそういう思いをしていなかったり、 打ち込むものが無くて、退屈な人生を送っている人。
だからこそ ちょっとしたことで被害者意識に浸ったり、自分より幸せそうな人を見て妬むことになるけれど、いろんな事件や出来事が次から次へと襲ってくると、 逆に人生の楽しいことやハッピーなことにフォーカスしていなければ、やっていけないもの。 なので、人が羨むような人生を送っている人が、実際には意外に不幸だったりするし、考えただけで疲れてしまうような、大変そうな人生を送っている人の方が、 ずっと幸せで、中味の濃い人生を送っていたりするのである。
そう考えると、トラブルや辛い経験は幸福を増幅させるためのエッセンス。甘いデザートだけ食べていたら、飽きてしまって、糖尿病になるだけだけれど、 辛いもの、酸っぱいものをアペタイザーやメイン・ディッシュで食べた後のデザートは格別に美味しいし、満足感が得られるもの。 加えて、食べ終わってからも、思い出すだけで幸せになれたりするのである。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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