June 3 〜 June 10, 2012

” Geek VS. Old Man ”

今週は、NBA(ナショナル・バスケットボール・リーグ), NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)という2つのプロ・スポーツ・リーグの ファイナルとチャンピオン・シップが行なわれていたのに加えて、テニスのフレンチ・オープン、野球ではヤンキーズVS.メッツのサブウェイ・シリーズが 行なわれているなど、特に週末はスポーツ報道が大忙し。
その中で最も大きく、そしてショッキングなニュースとして伝えられたのが、土曜にニューヨークのベルモント・パークで行なわれた ホース・レースに 1978年以来、34年ぶりのトリプル・クラウン(三冠王)を賭けて出場予定だった ”アイル・ハブ・アナザー”(写真上)が、 その前日、金曜にリタイアを発表し、レースに参加することなく トリプル・クラウンの夢が破れてしまったという報道。
このニュースは、メジャーな新聞全ての土曜の第一面を飾っただけでなく、ニューヨーク・タイムズ紙が 読者の携帯電話に発信するニュース・アラートでも 報じたもので、その発表直後にダフ屋が取引きしていたベルモントのチケット価格が、3分の1以下に下がってしまったことも 伝えられているのだった。
トリプル・クラウンとは、アメリカの競馬で最も歴史があるケンタッキー・ダービー、3週間前に行なわれたプリークネス・ステーク、 そして 今週末のニューヨークのベルモント・ステークの3つのイベントの勝者を指す言葉。 最後にこれが達成された1978年以来、11頭が最初の2つのレースに勝利したものの、ベルモントで敗れており、 3つのレースの中で最も距離が長いベルモントで勝利するのは、非常に難しいと言われているのだった。
”アイル・ハブ・アナザー”がリタイアした理由は怪我によるもので、競馬の世界では過去にレース中に致命傷を負った馬を、 その場で注射で永眠させる措置が取られてきた例があるだけに、馬の健康を重視した今回の判断は 好意的に受取られていたのが実情。 でもケンタッキー・ダービーを含む 2つのレースの勝利があまりにドラマティックだっただけに、今週は ”アイル・ハブ・アナザー”をメディアが 大きく取り上げており、それだけに 私のような ”にわかファン” を含めた 多くの人々を ガッカリさせていたのだった。
ちなみに、以下は2つのレースをフィーチャーしたYouTubeのビデオのリンク。これを観れば、如何にアメリカ中が ”アイル・ハブ・アナザー”に期待を寄せていたかが理解出来ます。

2012 ケンタッキー・ダービー
2012 プリークネス・ステーク



土曜日は、セントラル・パーク・テニス・センターでコート・タイムを待っている人の間でも、ヤンキー・スタジアムのサブウェイ・シリーズの観客の間でも ”アイル・ハブ・アナザー”のリタイアが話題になっていたけれど、 ビジネス・メディアが 「ベースボールと並んで、アメリカのナショナル・パスタイム(国民的娯楽)になりつつある」と、 ジョーク交じりで 今週報じていたのが、フェイスブックの創設者マーク・ザッカーバーグに対する訴訟。 フェイスブックの株式公開以来、今週までに 彼に対しては既に13の訴訟が起こされているとのことで、この数はまだ増えることが見込まれているのだった。

さらにビジネスの世界では、今週、フェイスブックの初代プレジデントで、映画「ソーシャル・ネットワーク」の中で ジャスティン・ティンバーレークが演じたキャラクター、ショーン・パーカー(写真上、左側)が、彼と一緒にミュージック・ダウンロード・サイト、”ナップスター”を立ち上げた ショーン・ファニング(写真上、右側)と再びチームを組んで、新たなソーシャル・ネットワーク・サービス、”Airtime / エアタイム” を スタートしたことが大きなニュースになっていたのだった。
ナップスターが音楽業界を永遠に変えた革命的な存在であっただけに、この2人が立ち上げた ”エアタイム”は、メディア&ビジネス界から大注目を浴びたけれど、これはビデオ・ベースのソーシャル・ネットワークで、 スカイプのようにソフトウェアをダウンロードする必要が無く、サイトにアクセスして ビデオ・チャットやビデオ・シェアリングが出来るというもの。またシェアしているビデオを見ている相手のリアクションが、同時に 楽しめることもエアタイムのメリットと説明されているのだった。
エアタイムのプレス・カンファレンスに訪れたセレブリティ、オリヴィア・マンは家の中の別室に居る友達とのコミュニケーションに エアタイムを使っていることをコメントしていたけれど、ソーシャル・ネットワークに フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを もたらそうというのが同ビジネス。 でもメディアの専門家のリアクションは、直ぐに大きなビジネスになる可能性は低いとする声がマジョリティになっていたのだった。


エアタイムのビジネスがビッグになるか否かは別として、今やすっかりステータスが落ちたウォール・ストリートの金融の男性に代わって、 独身女性がターゲットとすべきと言われているのが、シリコン・ヴァレーのリッチなエンジニア達。
今週木曜のニューヨーク・タイムズ紙のスタイルセクションでは、「Bachelor Ville / バチェラー・ヴィル」というタイトルで、 シリコン・ヴァレーのリッチな独身男性の特集が組まれていたのだった。(写真下)


もちろん、先月までは シリコン・ヴァレーで最もリッチな独身男性といえば、文句なしにフェイスブックの創設者、マーク・ザッカーバーグであったけれど、 彼が結婚してしまった後も、ビリオネアとまではいかなくても、資産数十億〜数百億円の若いエンジニアがシリコン・ヴァレーには 何人も存在していて、記事にはツイッターの共同設立者のジャック・ドルセイ、マッシュヴィルのCEO、ピート・キャッシュモア、 フェイスブックの立ち上げ当時からのスタッフで、現在ベンチマーク・キャピタルのジェネラル・パートナーになっているマット・コーラーなどが フィーチャーされていたのだった。
でも、記事によれば彼らは1日16時間働き、自分の髭を剃る時間もないハードワーカー。ハリウッドやニューヨークと異なり、仕事がレジャーという ライフスタイル。したがって「ワーク・ハード、プレイ・ハード」だったウォール・ストリートの金融男性とは全く異なる存在なのだった。
また、シリコン・ヴァレーの男性は仕事時間が長いだけに ワイフやガールフレンドは、マーク・ザッカーバーグ夫人のプリシラ・チャンのように、 自らもキャリアの追求で多忙な女性が少なくないのだった。

ここまで聞くと、ゴールド・ディッガー(お金目当ての女性)タイプで低学歴のモデルとデートしていたウォール・ストリートの金融男性よりも 地に足が着いているように見受けられるのが、シリコン・ヴァレーのギーク(英語で言うオタク)・ミリオネアであるけれど、 いざ、デート相手、結婚相手として考えた場合、かなり問題が多いことも指摘されているのだった。

マーク・ザッカーバーグにしても かなりの変わり者で、グーグルのエグゼクティブからフェイスブックのCOOになったシェリル・サンドバーグが、 彼に社会性を持たせるために かなりの ”教育” をしたことが伝えられているけれど、 シリコン・ヴァレーでも、ニューヨークのシリコン・アレーでも、ギーク・タイプのエンジニアは、社交性や社会的常識が 欠落しているケースが多いと言われているのだった。
また、投資家への挨拶のイベントにも フーディー姿で登場して顰蹙を買ったマーク・ザッカーバーグ同様、 多くのギーク達は、常にジーンズにフーディーズといったアウトフィット。 自分がファッションに気を配らないのと同様に、女性のファッションにもさほどこだわらないので、 女性側はクリスチャン・ルブタンのシューズをねだっても、買ってもらえないどころか、 デートのためにファッショナブルに装う甲斐が無いとも言われるのだった。
さらに、グルメであるか無いかは別として、とりあえずデートで女性を高額レストランに連れて行き、 クラブで5000ドルを支払ってボトル・サービスをオーダーしていた金融男性に比べると、 ギーク・エンジニアのデート・バジェットは 極めて小額。 マーク・ザッカーバーグがハネムーンで出かけたローマで、夫人とマクドナルドでランチを食べている姿が メディアで報じられていたけれど、デートがコーヒー1杯でも不思議ではないのがギーク・エンジニア。 そもそも、彼らは ワインを理解するどころか、お酒を飲まない人々が多く、 その替わり マウンテンデューやレッドブルといったハイ・カフェインのドリンクをエナジー・ソースにしているケースが殆どなのだった。

アメリカでは つい最近、シリコン・ヴァレーで働くアジア人女性が、セクハラ裁判を起こして 大きなニュースになったけれど、 ハイテク・エンジニアリングは、女性が極めて少ない世界なだけに、女性に対する意識も遅れているフィールド。 なので、その世界で働くギーク・エンジニアは、ただでさえデートの経験不足なところに来て、女性に差別的な意識さえ抱いているケースがあるので、 交際してプリンセスのように扱ってもらおう などというのはまず無理な話。
したがって、「男性の経済力で、楽で豊かな思いをしたい」と思う女性にとっては、理想的とは程遠いのがギーク・エンジニアなのだった。



そうしたゴールド・ディッガー・タイプの女性達が 昨今ターゲットにしているのは、自分の父親、もしくはそれ以上に年上のリッチな男性たち。
今や20代の女性が、50代、60代のリッチな男性とデートする例が非常に増えていることが伝えられていて、 その理由は、本来彼女らがデートするべき ”ジェネレーションY” と呼ばれる若い世代の男性に 「デート相手に貢ぐ」という コンセプトが全く無いため。
この世代は、女性の大学卒業者数が 米国史上 初めて男性を上回った世代で、 女性と男性に給与格差が無いどころか、時に女性の方が稼ぎが良かったりするジェネレーション。 加えて ジェネレーションYは、インターネットが普及してから育った世代なだけに、 「チャットで出会った相手と、 デートをする時は セックスをする時」というような、インスタントな性関係がまかり通る世代。
したがって男性達は、 バースデーに花束やギフトをプレゼントしたり、ロマンティックなレストランに女性を連れて行ったりすることなく、 簡単に女性と関係してきているので、「女性のために何かをしよう」という意識が希薄であることが指摘されているのだった。

これに対して50代以上の男性は、若い頃から 女性を口説くために努力を重ねてきたジェネレーションで、 「デートは男性が支払う」のは当たり前。 加えて、自分の経済的パワーを見せなければ、若い女性を相手にすることが出来ないことも心得ているので、 贅沢なデートを20代女性に提供しているのだった。
こうした男性側にとって 20代が好ましいのは、その若さはもちろんのことであるけれど、やはり扱い易いこと。 女性は20代の後半に差し掛かってくると、自立してくるだけでなく、 物を見る目が肥えてくるので、贅沢を要求するようになるそうで、 年齢を重ねるにつれて 「扱い難い割りに、高くつく」ようになってくるのが、ゴールド・ディッガータイプの女性達なのだった。

こうした20代のゴールド・ディッガーは、同じジェネレーションYのボーイフレンドとは、 初めてのデートで簡単にセックスをしてしまうことは珍しくないけれど、 父親ほどに年上の男性との関係では 慎重な姿勢を取るもの。
私のテニスのパートナーは、独身でリッチな60代の男性にテニスを教えているけれど、 その男性は、いつも20代の女性とデートをしていて、確かに彼は60代にしては若いルックスで、身なりも良く、 ユーモアのセンスもあるという。 その60代男性曰く、「彼が20代の女性とデートしていることを批判する連中は彼にヤキモチを焼いているだけ」とのことで、 お相手はロシア人モデルから、ヨガのインストラクターまで、なかなかの美女揃いであるという。 とは言っても、「数回ディナーをしただけで、相手に逃げられるケースが少なくないようだ」と私のテニスのパートナーは分析していたのだった。

その男性は、つい最近、何とか数回ディナーをした女性と関係しようと、彼女を週末の旅行に誘う計画をしたそうで、 「もしニューヨーク郊外のハンプトンのサマー・ハウスに誘ったら、女性は 友達が近くに居るからと言って逃げてしまうかもしれない」 と考えて、バハマ旅行に誘ったという。 バハマであれば、ニューヨークから飛行機で2時間。 しかも相手の女性は自分と同じホテルに泊まるしかない というのが彼の思惑なのだった。
私は ここまで話を聞いて、 「その60代の男性が そんな策略めいた考えでウィークエンド・トリップを計画しなければならないほど、 相手が乗り気でないのなら、絶対に女性は旅行に行きたがらない」と、テニスのパートナーに言ったけれど、 案の定、誘われた女性は「スリーピング・アレンジメントはどうなるの(夜眠る時はどうするの)?」と60代男性に訊ねてきて、 誘いの返事を濁してしまったという。
セックスが絡まないのであれば、60代にしては若い、マナーが良いリッチな男性と、時々高額なレストランで食事を付き合うのは、 無害だと思って応じる20代女性は少なくないと思うけれど、その男性と明らかにセックスが絡むと思しきウィークエンド・トリップに付き合うのは 「話が別」 と女性が考えていても全く不思議ではないもの。
また、純粋にお金目当てで年配の男性と付き合う女性の場合、セックスは相手が自分に払ってくれたお金への見返りだと思っているので、 「相手が自分に貢いでくれるまで 応じない、払いが悪ければ別を探す」という徹底した姿勢を貫いているのだった。
そんな したたかそうな女性が、取り立ててリッチな訳でもないセレブリティDJ と あっさりワンナイト・スタンド(一夜の関係)に応じてしまったりするのは、 不思議と言えば不思議ではあるけれど、要するにそれは女性側が相手の男性に対して どれだけ乗り気であるかの問題だと思うのだった。

年配の男性が 20代の女性を相手に出来る背景には、経済力だけでなく、ヴァイアグラ、シアリスといった ED治療薬の存在があると指摘されるけれど、 私の20代の女友達が語っていたのは、「ヴァイアグラが存在しない方が、20代の女性が60歳の男性とデートしたがる」ということ。 「リッチで、頭が良くて、マナーが良い、興味深い男性と食事をするなら、相手が何歳でも、社交性が無いギークとデートをするより ずっと楽しめると思うけれど、その60歳の男性が自分をセックスの対象だと思いながら、食事をしていると思ったら 気持ちが悪くて・・・」というのが 彼女の言い分なのだった。
私は私で、それを聞いて「ED治療薬がなかったら、果たして60歳の男性に 20代の女性とデートしようという自信や意欲が 沸くだろうか?」と思ってしまったけれど、高齢の男性が若い女性を相手にする例は、ヴァイアグラ発売前から見られた傾向。 でもその数が増えたのが、ヴァイアグラが普及してからのことで、ここへ来て ジェネレーションYの男性が 女性に貢がないことから、若い女性とのデートに意欲的になる年配男性とお金目当てに年配男性を狙う女性との、需要と供給のバランスが 取れてきている状況が窺えるのだった。

ところで、つい最近明らかになったのが不倫をしている男性は、心臓発作を起こす確率が高いという医学データ。
これは不倫相手が往々にして男性より若いことから、ED治療薬を服用したり、相手の若さに合わせたアクティビティを強いられること、 不倫を妻や周囲に隠すためのストレスや労力が、心臓に負担を掛けているためだという。
私にとっては、人生は ストレス・フリーで、健康、かつ幸せが一番大切であるけれど、 人によってはそれが、自分に無理を強いて得る 金銭的な贅沢あったり、セックスであったり、高齢にして若い女性とデートが出来る優越感であったりするし、 そうかと思えば、出来るだけ働かずに、友達と酔っ払ったり、マリファナでハイになって楽しむことが人生だと思う人々も居る訳で、 人生の価値観というのは、本当に十人十色だと思うのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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