June 2 〜 June 8,  2014

” Summer's Hottest Food Trend , Bagle!”
この夏最もホットなフード・トレンド、"ベーグル"


昨今日本の友人からメールが来ると、アメリカでワールドカップ熱が盛り上がっているかを訊かれるけれど、 その答えは、少なくとも現時点では「No」。アメリカ人の多くはワールドカップが何時からスタートするか知らないだけでなく、 アメリカがどのグループに属して、そのグループにどの国が含まれているかなど、全く知らないのが実情。 その答えはグループGで、アメリカ以外は ドイツ、ガーナ、ポルトガルという顔ぶれ。 したがって、サッカーをフォローしているファンの間では、アメリカがセカンド・ステージに勝ち残るのはほぼ絶望と見なされているのだった。

今週末になって、ようやくニューヨーク・タイムズ・マガジンが リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドらを表紙にフィーチャーして、ワールドカップ特集を組んでいたけれど、 アメリカのスポーツ・ファンが 現時点でワールドカップにさほど関心を払っていない理由は、 NBA(プロバスケット・リーグ)、NHL(プロ・ホッケー・リーグ)という米国4大プロ・スーポーツのうちの2つが チャンピオンシップを迎えているため。
NBAはマイアミ・ヒートVS.サンアントニオ・スパーズという リーグのベスト・チームの対決。 NHLは20年ぶりにチャンピオン・シップに駒を進めたNYレンジャースと エリート・チームであるLAキングスという視聴率が取れる好カード。
このため今週のスポーツ報道では、テニスのフレンチ・オープンやメジャー・リーグ・ベースボールが、何時に無く 影が薄い存在になっていたのだった。


中でも、ソーシャル・メディア上でセンセーションになっていたのが、NBAファイナルの第1戦で マイアミ・ヒートのルブロン・ジェームスが、試合中、脚の筋肉が攣った激痛で歩けなくなり、 担ぎ出されたシーン。 ツイッター上では、「#lebroning / #ルブロニング」というハッシュタグが登場して、 ルブロン・ヘイターがこの様子のパロディ写真を次々とアップ。
目下、NBAの現役プレーヤーの中で、スニーカー・ラインの売り上げが最も高い ルブロン・ジェームスであるけれど、彼が2010年にマイアミへの移籍を発表した際に行った 古巣クリーブランドのファンを侮辱するかのような特番アナウンスメント以来、 彼は嫌いなスポーツ選手のトップ10にもランクされる ヘイター(Hater)が多いプレーヤー。
ちなみに嫌われているアスリートのランキングには、ドーピングのランス・アームストロング、不倫問題のタイガー・ウッズ、 殺人で起訴されているブレード・ランナーことオスカー・ピストリウス等、社会的に問題を起こしたプレーヤーが上位にランクされ、 ルブロン・ジェームスは、その10位前後に必ず名前が挙がる存在になっているのだった。




これに対して、引退後11年が経過しても、常に好きなアスリートのトップ、もしくは上位に必ずランクされているのがマイケル・ジョーダン。 そのマイケル・ジョーダンのスニーカー、ナイキのエア・ジョーダンはアメリカ国内のバスケットボール・シューズ市場の 半分以上のシェアを誇る超ドル箱ライン。
ルブロン・ジェームスのスニーカーの2013年度の売り上げは約300億円で、前述のように現役プレーヤーとしてはトップであるけれど、 エア・ジョーダンの2013年の年間売り上げは日本円にして約2500億円。 米国におけるバスケットボール・シューズ全ての年間売り上げが約4500億円なので、エア・ジョーダンは市場の56%のシェアを獲得している計算になるのだった。

エア・ジョーダンは、第1号モデルが売り出されてから今年で20年目。 その20周年に合わせて出版された、"Michael Jordan: The Life, / マイケル・ジョーダン:ザ・ライフ” によれば、ジョーダンは当初ナイキよりもアディダスと契約をしたがっていたとのこと。 乗り気でない契約であったためか、彼はナイキが提示した利益の25%という非常に高いロイヤルティには満足せず、 高級車のギフトを契約条件につけてきたことが同書で明らかになっているのだった。
それでもエア・ジョーダンのシューズとアパレルの全世界における売り上げは毎月約2000億円。、 2013年度の世界売り上げは約2兆6000億円で、ナイキはその約84%と見込まれる利益の50%を着服していると言われるので、 マイケル・ジョーダンには足を向けて眠れない状況。
ジョーダン本人は エア・ジョーダンのロイヤルティや広告出演で、2013年に約90億円を稼ぎ出しているけれど、 これは彼の現役時代の最高年俸、80億円を上回る金額になっているのだった。


スポーツ以外で今週アメリカで大きく報じられていたのが、オバマ政権が米軍グァンタナモ基地に拘留されていたタリバン上層部5人と引き換えに、 アフガニスタンでタリバンに拘束されていた米軍兵、ボウ・バーグダール釈放の取引をしたという一件。 オバマ大統領が先週金曜日にホワイト・ハウスのローズ・ガーデンで、バーグダールの両親と共に、この釈放を プレスに発表した際には 美談として捉えられていたのが このニュース。
ところが、蓋を開けてみればボウ・バーグダールがタリバンに捕らえられたのは彼が勝手に基地から抜け出したため。 これは米軍内で 最も厳重に罰せられる脱走兵に当たる行為。
それだけでなく、彼の捜索に出た同じ部隊の兵士が何人も捜索中に命を落としており、 今週に入ってからメディアが報じたのがバーグダールが持っていた反米思想。
そんな彼を、タリバンで最もパワフルかつ、影響力を持つ5人のメンバーと引き換えに釈放する取引を、 下院の承認を得ずに行ったオバマ政権には、野党 共和党はもちろん、与党 民主党からも、そして国民からも非難が続出。 共和党内では この独断の取引が違法であるとして、「オバマ大統領を弾劾裁判にかけるべき」との声が高まる一方で、 バーグダールの出身地、アイダホ州ヘイリー では帰還する彼のために盛大なセレブレーションが予定されている という報道が国民の怒りを買い、 現地への抗議やバケーション予約のキャンセルが殺到。ソーシャル・メディア上でもバッシングの対象となったため、 ヘイリーではセレブレーション・イベントをキャンセルしたことが伝えられているのだった。





ルブロン・ジェームスの筋肉痙攣から、ボウ・バーグダールの釈放まで、昨今のニュースはソーシャル・メディアが ファンや世論の反応を素早く、そして如実に反映していると言えるけれど、 そんなソーシャル・メディアの影響が非常に大きいカテゴリーと言えるのがフード・トレンド。
新しいフード・トレンドとなりうるものが登場すると、多くの人々が我先にと そのフードやレストランをトライして、インスタグラムやツイッターを初めとするソーシャル・メディアに 写真やレビューををいち早くアップするのは 今に始まったことではないもの。 昨今では レストランやフード・ショップ側が巧みにソーシャル・メディアを利用して オープン前からトレンドを煽るので、 TVや雑誌などのトラディショナルなメディアは、 既にソーシャル・メディアによってクリエイトされたトレンドを レポートするという形の報道体制になりつつあるのだった。

そんな中、この夏のニューヨークの最大のフード・トレンドになっているのが ベーグル。 そして そのベーグル・トレンドの目玉的存在になっているのが、NoLita/ノリータに4月末にオープンした ブラックシード・ベーグル。

このベーグルの何がそんなに特別なのかと言えば、レシピにハチミツを使うモントリオール・スタイルと ベーグルの本場であるニューヨーク・スタイルをミックスしたハイブリッド・ベーグルであるということ。 なのでオープン初日から このハイブリッド・ベーグルを味わおうという人々が大行列を成して、 45分待ちとも、1時間待ちとも言われていたのだった。
同店をオープンしたのはニューヨーク出身のマット・クリーグマンとモントリオール出身のノア・バーナモフ。 ニューヨークのベーグル専門店がハンド・ネッディング(手でドウをこねること)でリング状の形を作って、 そのベーグルを先ず茹でてから、その後オーブンで焼くのは当たり前のプロセス。 でも同店の場合、前述のようにモントリオール・スタイルなのでドウの中とそれを茹でるお湯の中に ハチミツが入っているというのが純然たるニューヨーク・スタイルと最も区別されるべき点。


同店のメニューには11種類のシグニチャー・サンドウィッチがあって、 中でも最も人気なのは、ビーツでキュアしたサーモン、ホースラディッシュ・クリーム・チーズ、ハーブを挟んだもの(写真上左)、 そしてトビコのスプレッド、サーモン、 バターレタスを挟んだもの(写真上右)で、様々なメディアで この2つのサンドウィッチがフィーチャーされているのだった。

ニューヨークに住み始めた人の多くが、少なくとも一時的に中毒のように食べるようになるのが ベーグルであるけれど、かく言う私もその1人で、 ベーグルにはかなり煩いことを自負している立場。
なので、ブラックシード・ベーグルの存在を知った時は、トライしてみたくてたまらなかったけれど、 ニューヨーカーを20年以上やっていると、ベーグルのために1時間行列するというのは あり得ない時間の使い方。 なので、オープン直後のハイプが落ち着くのを待とうと思っていたけれど、 近隣に住む友人が買ってきてくれることになったので、めでたく今週末に トライすることが出来たのだった。

ローカル・メディアの中には、既にブラックシード・ベーグルをニューヨークのNo.1ベーグルに挙げているところもあるので、 期待に胸を膨らませて、友達が持ってきてくれた袋の中身を出したところ、 まずガッカリしたのが、そのあまりに小さいサイズ。
私は、ベーグルの味をジャッジする際は そのまま何もつけずに味わうか、さもなくばクリームチーズを挟んで味わうようにしているので、 友人にはクリームチーズのスプレッドを挟んだものを買ってきてもらったけれど、 ベーグルの間に挟まれたクリーム・チーズは、通常のベーグル・ショップ5分1程度の量。 ダイエットには適しているけれど、クリーム・チーズ自体の味がチェックできないような量なのだった。

友人は、ビーツでピンク色に染まったスモーク・サーモンのサンドウィッチを自分用に オーダーしていたけれど、同店のサンドウィッチはレタスを挟んだり、 アルファ・アルファを挟むなど、ニューヨークのスタンダードでは かなり邪道と見なされる中身が多いのだった。 でもビックリしたのは そのお値段。
私の”クリーム・チーズを挟んだ”というよりは、”クリーム・チーズを少量なすりつけた”ベーグルの価格は 何と約6ドル。普通のベーグルショップの約1.5〜2倍のお値段で、半分の以下のボリューム。
友人のサンドウィッチは 12ドル。 コーヒーとベーグルだけで15ドルという、お値段になっていたのだった。


味はといえば、美味しいと言えば 美味しいものの、私に言わせるとテクスチャーは今ひとつで、 NYのベスト・ベーグルとは言えない というのが本音。 友人のサンドウィッチはトーストしてあって、「どうしてその日の朝に作りたてのベーグルを トーストするのか分からない」と言いながら食べていたのだった。
ニューヨーカーの中にはトーストしたベーグルのこともを邪道と考える人が少なくないのが実情で、 私自身も、買ってきたベーグルを冷凍した場合は、トーストはせず、フライパンに少量の水を入れて、蒸して温めるのが常。 ベーグルは茹でる段階でドウの表面に出来た膜が水をはじくので、フライパンで蒸し焼きにしても、 水分がベーグルに入り込むことは無くて、こうすることによって焼きたての食感が戻ってくるのだった。

ブラック・シード・ベーグル以外にも、ニューヨークではこの春から初夏に掛けて話題のベーグル・ショップが2店舗オープンしていて、 ベーグルがフード・トレンドになっているのは、それらのショップの話題性も手伝ってのこと。
ブラック・シード・ベーグルに関しては、既に第2店舗目がダウンタウンの新しいフードコート、Hudson Eats /ハドソン・イーツ内にオープン。 そして夏の間は、ニューヨーク郊外のリゾート地、モントークにもショップをオープンするというけれど、 友人と私の間では、このお値段とボリュームで 果たして同店の人気が何時まで続くか?というのが正直な感想なのだった。 というのも、当たり前に美味しいベーグルというのはニューヨークに幾らでも存在しているのに加えて、 ベーグルの魅力は、安くて、美味しくて、直ぐに買えて、腹持ちが良いこと。 でもブラック・シード・ベーグルは 味を除いては、全てこれらの魅力とは対極にある存在なのだった。
それでも”2014年度のクロナッツ” と言われるほど 現時点で話題とトレンドになっているのが ブラック・シード・ベーグル。


その クロナッツといえば、発売から1年が経過した時点でも、未だに行列が出来る大人気ぶり。 しかもこれからは夏の観光シーズンに入るので、再び行列が長くなることが予測されているのだった。
クロナッツを並ばずに味わう方法は、大量オーダーを入れることであるけれど、 その大量オーダーとて、受付開始から3分で1000通の申し込みが寄せられるという とんでもない人気ぶり。 そんな不可能なミッションである、クロナッツの大量オーダーをやっとの思いで達成したのが先週末のこと。 正直なところ、クロナッツを並ばずに食べることがこんなに難しいこととは思わなかったのだった。
この大量オーダーは、Cube New Yorkのディナー・クラブのメンバーのための クロナッツ・パーティーのために確保したもので、同パーティーは ”NY*おもてなし料理教室” を行っている ひでこ・コルトンさんとのジョイント・イベントになる予定。 日程は7月20日。詳細は決まり次第サイトでアナウンスしますが、 Cube New Yorkの参加枠でご参加いただけるのはディナー・クラブにご登録いただいているメンバーのみなので、 もし参加ご希望で、未だご登録をしていないは、ここをクリックしてお申し込みください。(登録は無料で、その他の ディナー・イベントにもご参加いただけます!)
当日は、ドミニク・アンセル・ベーカリーのもう1つのヒット商品、クッキー・ショット (写真上右)も味わって頂けることになっています。 お楽しみに!





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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