June 9 〜 June 15,  2014

”National Character Judged By World Cup Result”
ワールド・カップで国民性がジャッジされる?


先週まで ワールド・カップ・フィーバーが さほど盛り上がっていなかったアメリカであるけれど、 今週半ばから いきなり増えたのがメディアのワールド・カップ特集。 週末には、TVのスポーツ・ニュースがワールド・カップ報道にかなりの時間を割いていたけれど、 私が時々、日本に住む友達に言うのが、ワールド・カップを開催国に居る気分でTV観戦したかったら、 ニューヨークに来るべきということ。
先週 日曜のニューヨーク・タイムズ紙には、ニューヨークで参加32カ国の試合を見るベスト・スポットのリストが掲載されていたけれど、 そのベスト・スポットとは、その国出身のニューヨーカーが集まって ワールド・カップ観戦をすることで知られるバーやレストラン。 どの国がワールド・カップに出場しても、街中に必ず盛り上がっているスポットが幾つも存在するというのは 人種の坩堝、ニューヨークならでは。
でも自国のチームが敗れて ガッカリしている時に、逆に勝利に沸いている一群に出くわすこともあれば、 審判のコールを巡って、対戦国のサポーター同士が口論する様子が見られることも決して珍しくないのだった。


そのワールド・カップと言えば、審判のコールが物議を醸すのは毎度のことであるけれど、 日本でも報道されている通り、その第1号となったのが木曜に行われたホスト国、 ブラジル対クロアチア戦で、日本人レフリー、ユウイチ・ニシムラが ブラジルに与えたペナルティ・キック。
ニューヨーク・ポスト紙は、この試合のブラジルの勝利を「醜い勝利」と痛烈に批判したヘッドラインを打ち出した一方で、 ユーロスポーツのイギリス版には、「ブラジルの新しい国民的ヒーローは、ストライカーのネイマールではなく、ユウイチ・ニシムラだ」という 皮肉たっぷりのヘッドラインも見られ、同じくイギリスのデイリー・メール紙は、前半にブラジルのネイマールが肘でクロアチアのルカ・モドリックを 突き飛ばしたプレーも、本来ならレッド・カードであるべきなのに、”ブラジルびいき”のニシムラがイエロー・カードで 片付けたと批判。クロアチアに対して非常に同情的な記事を掲載していたのだった。
逆にブラジルのメディアで踊っていたのは、”ARIGATO”、 “It’s all ours! World Cup. Neymar. Croatia’s goal. Even the ref (ワールド・カップ、 ネイマール、クロアチアのゴール、さらにはレフリーまで、全て我々の物!)”といったヘッドライン。
欧米のスポーツ・コメンテーターや、サッカー・ウェブサイトは、ユウイチ・ニシムラが4年前、2010年のワールドカップの準決勝、 ブラジル対オランダの試合で、ブラジルのミッド・フィルダー、フェリペ・メロに イエロー・カードを差し出すべきところを、 誤ってレッド・カードを出して退場させ、結果的にその試合でブラジルが敗れていることから、 ”ニシムラがブラジルに対して4年前の罪ほろぼしをした” という見方を示しており、「May Be... / 恐らく」という言い回しで、それを示唆するフォックス・スポーツのコメンテーターから、 それを断言するヨーロッパのフットボール・ウェブサイトまでが、同じセオリーを展開しているのだった。




さて、アメリカのメディアのワールド・カップ特集に頻繁に登場するのが、”ワールド・カップ・イケメン・リスト”。
必ずその筆頭に名前が挙がるのは、今もポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド。 NYタイムズ紙では、”次のベッカムは誰か?” という先週末の特集記事で 「世界のファッション&広告業界の注目が開催国、 ブラジルのスター、ネイマールに注がれている」と指摘していたのだった。
それ以外にイケメン特集で必ず名前が挙がるのは、日本の本田選手、ネイマールのチームメイトのオスカー、スペインのゴール・キーパーであるイケル・カシージャス、 そしてドイツのゴール・キーパー、マヌエル・ノイアー等。
ちなみに私の日本人以外の女友達が、「He's Hot!」とか、「He's Cool!」といって 褒めるのが本田選手で、アジア人男性に全く興味がないという友達までもが 「彼は例外!」というほどにアピールしているのだった。

それとは別に、ニューヨーク・ポスト紙は 出場全チームの優勝確率と、その決勝までの予測を掲載していたけれど、 それによれば、優勝候補筆頭はホスト国ブラジルで、勝算は3分の1、次いで同じ南アメリカのアルゼンチンで4分の1。 それに次ぐのがドイツとスペインで、それぞれ6分の1。それ以降は勝算がぐっと下がって、ベルギーの18分の1、イタリア、フランスが共に25分の1、 イギリス、ウルグアイが28分の1、そしてオランダが30分の1。 最も勝率が低い国は、ホンデュラスで2500分の1、次いでイラクの2000分の1。 日本は、土曜に敗れたアイヴォリー・コースト、クロアチア等と並んで150分の1。アメリカは250分の1。
ちなみに、NYポストの2人のコメンテーターの予測では、決勝はブラジル対アルゼンチンというカードは一致しているものの、 優勝国については その予測が分かれていいるのだった。





ワールド・カップで祖国が敗れると、サッカー・ファンなら誰もが落ち込むものであるけれど、 同じ敗れた状況でも、日本人の私より遥かに辛いであろうと思われたのが 同じビルに住むスペイン人の住人と、 ウルグアイ人の友達。 というのも、金曜にオランダに敗れたスペイン、土曜にコスタリカに破れたウルグアイは、どちらも大番狂わせだったので、 その敗戦報道が大きかっただけでなく、翌日の試合の放映の際もスポーツ・コメンテーターが何度もその敗戦を話題にしていたため。
さらにウルグアイ人の友人にとって面白くなかったのが、ニューヨーク・タイムズ紙が今日6月15日付けで掲載した スポーツ欄のコラム。ウルグアイと言えば1930年の初回ワールド・カップのホスト国であり優勝国。その後、1950年にも 優勝しているけれど、近年は 2010年大会で準決勝まで勝ち残ったのが最高の成績。 でも、徐々に昔の栄光を取り戻しつつあることが指摘され、今回のワールドカップではベスト8入りが見込まれていたのがウルグアイ。
しかしながら予選リーグで 強豪イタリア、イギリスを含む激戦区のグループDに振り分けられ、唯一勝って当然と思われていた コスタリカに3−1で敗れたことで、ウルグアイ人の友人曰く 「決勝リーグ進出は、ほぼ絶望的」という状況。
これについて NYタイムズ紙のコラムは、イギリスの作家、シリル・コノリーの「神は滅ぼそうとしている人間には、まず明るい希望を与えるもの」 というフレーズを用いて、ウルグアイのサッカーが過去の栄光によって 逆にダメになっている様子を説明していたのだった。 そして、自国の決勝リーグ進出が絶望的になったのを悟って 「これからはリラックスして、ワールドカップの試合が見られる」 などと語る ウルグアイ人のメンタリティーを ”ノスタルジー追求型”、”不本意ながらも敗北を受け入れつつ、それを楽だと思う被虐趣味” と指摘し、 それが そのままウルグアイの国民性になっているとも記述しているのだった。


私は、スポーツ欄にしては厳しい国民性のジャッジなので、ちょっと意外に思いながらこの記事を読んでいたけれど、 「神は滅ぼそうとしている人間には、まず明るい希望を与えるもの」というフレーズについては、妙に納得してしまったのだった。

私がそれを納得したのは、ウルグアイとは全く無関係の O.J.シンプソン裁判に思いをはせた際。
今週は、90年代に「世紀の裁判」としてアメリカ中のメディア報道が集中した O.J.シンプソンの妻とその友人殺害事件裁判の 20周年。当時は、未だDNAが動かぬ証拠としての地位を確立していなかったのに加えて、 妻と友人殺しの罪を問われた被告人、O.J.シンプソンは NFLを引退して、俳優になったセレブリティ。 黒人コミュニティではヒーロー的な存在。
今から、この裁判を振り返ると O.J.シンプソンの無罪は本当にあり得ないと言えるけれど、 アメリカ国民が8ヶ月に渡って見守った裁判は、黒人中心の陪審員によって 僅か4時間で判決が下され、 彼は無罪放免。 この裁判結果に対するリアクションは、黒人層と白人層で真二つに分かれていて、 当時、白人 クリスチャンの友人がこの判決に腹を立てて、「やがては神が本当の判決を下すことになる」と、 まるで呪いを掛けるように語っていた言葉が、私の脳裏にはっきり残っているのだった。

そして、この言葉をまざまざと実感したのが 今週、 O.J.シンプソン裁判20周年特番で、 彼の弁護団のフォローアップ・レポートを見た際。 その顔ぶれは、キム・カダーシアンの実父、ロバート・カダーシアン (写真上でO.J.シンプソンの隣に座っている男性)、 マイケル・ジャクソンの弁護も担当したことがあるジョニー・コックラン、 当時カリフォルニアで最も実力があった白人弁護士、ロバート・シャピーロ、F・リーベイリーという錚々たる顔ぶれ。
O.J.シンプソン裁判の勝利で、当時のアメリカで 押しも押されもせぬスター弁護士になった彼らであったけれど、 ロバート・カダーシアン、ジョニー・コックランは若くして死去。 ロバート・シャピーロは息子を麻薬中毒で失い、 今は弁護士を辞めて、麻薬撲滅運動に献身する状態。F・リーベイリーは、自らの法律上の問題で、 弁護士資格を奪われ、何年にも渡って複数の州で弁護士資格を申請しては断られ続けているのだった。
そしてO.J.シンプソン本人は、2007年に彼のメモラビリアを巡る 拳銃強盗、誘拐容疑で有罪となって、現在はネヴァダ州で服役中。

同裁判の判決が読み上げられた時は、愕然としたと同時に、アメリカの陪審員制度に大きく失望した私だけれど、 その時の法廷で、笑顔で裁判の勝利を分かち合っていたメンバーが、ことごとく 悲運を辿っているのは 本当に驚くべきことなのだった。

話をワールド・カップに戻せば、決勝リーグに入った場合、その勝敗を残酷に決めてしまうのがPK戦。 今日、6月15日付けのニューヨーク・タイムズには、1995年〜2012年までのプロ・サッカーの試合における 9,017のペナルティ・キックを分析したデータが掲載されていたのだった。
それによればペナルティ・キックをゴールの右側に蹴る確率と、左側に蹴る確率はほぼ6対4。 でもそのゴールが決まる確率は、どちらに蹴った場合も 共に約8割とのことなのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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