June 13 〜 June 19 2016

”Amazon & Starbucks Rule!?”
人々がショッピングに行かない時代!
最後に生き残るビジネスは… アマゾン・ドット・コム&スターバックス!?



今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのは、先週日曜にフロリダ州オーランドのゲイクラブ、パルスで起こった 49人の犠牲者を出した 米国史上最悪の銃撃事件。
以前FBIにテロリストとしてマークされていたことがある容疑者、オマー・マティーンのコンピューターからゲイのデート・サービスへのアクセスが見られたことから、 週明けには彼自身もゲイであったという説が浮上したものの、彼の携帯電話にゲイのデートアプリが入っていなかったことから、 現時点ではオマー・マティーンが今回の犯行に及ぶ前にゲイ・ピープルについてリサーチをしていたとの見方の方が有力なのだった。
その一方で今週はなぜFBIの要注意人物に戦闘用の銃が購入できるのか?、それ以前になぜ戦闘用の銃が一般に販売されているのか?、 というアメリカで一向に進まない銃規制に対する疑問が投げかけられていたけれど、これはアメリカでこうした銃撃事件が起こるたびに浮上するもの。 何人犠牲者が出ようと、国民の大半が銃購入の際のバックグラウンド・チェックを望んでいても、そこから全く先に進まないのは ありとあらゆる銃規制に対して合衆国憲法修正第2条(国民が武器を保持する権利)を掲げて反対するアメリカン・ライフル・アソシエーションから 多額の献金を受けている共和党議員が上院と下院で過半数を占めていることが最大のネックになっているのだった。




先週発表されたのが、このところ業績が悪化しているラルフ・ローレンが1000人の従業員を解雇し、 50の店舗を閉店して経費削減を図るというニュース。
店舗を閉店しているのはラルフ・ローレンに限ったことではなく、昨今ではオンライン・ショッピングが売上げを伸ばす一方で、 どんどん下降線を辿っているのが店舗による売上げ。 先日、友人がドーバー・ストリート・マーケットに出かけたところ、広い店内に誰も来店客が居なかったと言っていたけれど、 私自身も オンライン・ショッピングばかりしていて、最後に何時 店舗で服やシューズを購入したか、全く思い出せない状態。
先日アメリカ人の友人とソーホーの某ブティックで時間潰しをしていた際にも 友人が「ストアって品数が少ないから、何も買う気になれない」と言っていたけれど、それだけでなくオンライン・ショッピングに慣れると、 購入したものを持ち歩かなければならないのも面倒で、 どうして以前は 購入したシューズやアパレルの袋を持ってウキウキ歩いていたのか、自分でも不思議に思えるほどなのだった。


人々がストアでショッピングをしなくなったのは郊外も同様。 その結果、現在存亡の危機に瀕し始めたのが アメリカの小売りビジネスの象徴であったショッピング・モール。 過去6年に閉鎖された大型ショッピング・モールの数は25軒以上。今後経営難から閉鎖が見込まれるのは60軒。 10年も経たないうちに、さらに15%のショッピングモールが消え失せることが見込まれているのだった。
私がアメリカに来たばかりの1990年代には、アメリカ人が買い物をするだけでなく、映画を観るにも、食事をするにも出かけていたのがショッピングモール。 ティーンエイジャーが友達とハングアウトしていたのもショッピング・モールで、 ”モール・ラッツ”(直訳すればモールのドブネズミであるけれど、 モールでたむろす子供たちのこと)という言葉が生まれていたけれど、今時のティーンエイ ジャーはショッピング・モールなどには出かけないので、 既に死語になりつつあるのがこの言葉。 そのティーンエイジャーは 言うまでもなく オンラインでショッピングを行うけれど、そもそもあまり外に出たがらない世代。 ハングアウトと言えば、もっぱらソーシャル・メディアを使ったもので、 特にスナップチャットを使ったコミュニケーションが圧倒的になっているのだった。

その一方で、彼らの親の世代がショッピング・モールに行かなくなっている理由は、広いモールを荷物を持ちながら歩き回って、 さらに広いパーキング・ロットに駐車した車を探して、往路&復路ともに30分前後のドライブをして、そのガソリン代を払うよりも、 オンラインでオーダーをして 家まで品物が届けられる方が遥かに簡単な上に 時間が掛からないため。
また ここ数年でどんどんミドル・クラスが減ってきているので、モールを歩きながら、 楽しんでするようなショッピングに費やす可処分所得が減ってきていることも一因と言えるけれど、 それ以上に、 オンラインの方が複数のストアを回ることなく、確実に自分が探しているものを、他店との価格比較をしながら、 より安価で購入できることも 大きな利点。
閉鎖されたショッピング・モールの多くは、今も人々が出かけなければならない病院、オフィス、教会などに コンバートされていることが伝えられているのだった。




今や洗剤、歯磨き粉、ティッシュペーパー、食材、それも生鮮食料品に至るまでがオンラインでオーダーされる時代になっているので、 「出掛けるとすれば外食くらい…」と思いきや、目下急速にオンラインで市場を拡大しているのが レストラン・フードのデリバリー。
レストラン予約がオンラインで行われるようになって久しいご時世であるけれど、昨今、カーシェアリングのウーバーから アマゾンまでもが参入してきているのがレストラン、それも従来からデリバリーを行ってきたようなピザやチャイニーズなどではなく、 有名シェフのレストランからのデリバリー。
一体どんなコンディションでフードが届くのかと興味があったので、先日友達を呼んでレストラン・フードのデリバリーを試食してみたけれど、 有名なレストランからのデリバリーはプレオーダー、すなわち従来のデリバリーのように思い立った時に電話をするのではなく、 数日前にオーダーするものが殆ど。でもオーダーさえ前もってしておけば、時間通りにフードがデリバリーされただけでなく、 料理のコンディションも 一部温め直したものがあったけれど、まずますと言えるレベル。 デリバ リー・フィーを払う方が レストランに出かけてチップやタックスを支払うより安いのはもちろんだけれど、やはり価格の差が出るのはワイン。
レストランではワインをグラスでオーダーすると、1杯分のお値段はボトル1本分のお値段。良心的なレストランであれば、そのグラス一杯のポーションは ボトルの4分の1。 でも通常はボトルの5分の1がグラス・ポーションのスタンダード。シャンパンは ほぼ例外無しにボトルの6分の1。 ワインをボトルでオーダーした場合でも、レストラン側はストアの約3倍の価格を付けているので、ワインをゲストの持ち寄りにした場合は、 ディナーの一人当たりの費用がレストランで食事をするのに比べて2分の1程度になる計算。 それもあって、この試食ディナーは大好評になっていたのだった。

ニューヨークでビジネスの大きな足かせになっているものと言えば 高額レントと人件費。なので 近い将来、レストランがそんなレント&ウェイター給与をカットして、 オンライン・デリバリーのみのオペレーションに切り替えたとしても不思議ではないけれど、 ファッションの世界に目を向けても、今や世界最大のオンライン・アパレル販売業者はアマゾン・ドット・コム。 そのアマゾンがTシャツ等のノベルティ・アパレル以外の、ファッション・アパレルを販売し始めたのはほんの数年前のこと。 小売りの専門家は向こう2〜3年以内に アマゾンがオンライン上だけでなく、世界最大のファッション小売り業者になることを見込んでいるのだった。
これを受けて、このところ業績不振が続くギャップ社までもが アマゾンを通じたオンラインショッピングをスタートするという、 以前では考えられなかったストラテジーに切り替えようとしているのが現状なのだった。




それほどまでに人々がストアに行かなくなっているのが現在のアメリカで、 ニューヨークのクイーンズでは 昨年書籍チェーンのバーンズ&ノーブルズが業績不振のため店舗を2軒クローズした結果、 ブックストアが1軒も無くなってしまったことが伝えられているのだった。 書籍と言えば アマゾンがビジネスをスタートしたカテゴリーであるけれど、現在 クイーンズでは かつてのように読書を好む地元のコミュニティが集えるブックストアの存在が必要と考える団体が、 利益本位の大手ブック・ストア・チェーンではなく、個人経営の書籍店を誘致しようという活動をスタートしたことが伝えられるのだった。

とは言っても、Eブックスが益々普及する一方で、かつてのブックストアで見られたようなコミュニティが集うスペースとなって久しいのが スターバックスに代表されるWiFiが使えるコーヒー・ショップ。 そのスターバックスではディナー・メニューの開発が急がれて久しい状況。 2017年にはニューヨークのミートパッキング・ディストリクトにあるグーグル本社の向かいに、 世界最大のスターバックス店舗がデビューすることになっているけれど、その時点までには ブレックファスト、ランチ、ディナーが 全てスターバックスでサーヴィングされる見込みなのだった。

こんな状態だと、やがては一流シェフのディナーがスターバックスでパッケージ販売される日も近いように思うけれど、 それ以上に私は、アマゾンがこの先 車を販売しても、Eトレードのようなオンライン投資に参入しても、全く不思議ではないと思うのだった。
スターバックスにしても、今や弱小金融会社よりも キャッシュ・デポジットが多い企業になっており、その金額は2016年3月末の段階で12億ドル(約1260億円)。 もちろんスターバックスは金融業を営んでいる訳ではないけれど、 現在アメリカのスターバックスの支払いの40%以上を占めているのが、リワード・カード&アプリによる支払い。これは日本のPASMO等と同様で、 リワード・カードやスマートフォンのアプリにお金を入れて、それで支払いを済ませるというシステム。
現在のアメリカではミレニアル世代を中心に銀行離れが起こっており、銀行に高い手数料を支払うよりも、 自分が頻繁に利用するスターバックスにお金をプールして、支払いを簡略化したり、様々な特典を受け取る方がベターと考える人々が増えているとのこと。 同様の現象は オンライン・ショッピングの支払いに頻繁に用いられるペイパルでも起こっており、ペイパルのアカウントを使って金銭の振込み、 受け取りを済ませ、銀行口座を一切持たない人々がどんどん増えているとのこと。 経済の専門家は、これらが新世代の金銭マネージメントのパターンと分析しているのだった。
いずれにしても、これらのことを総合して考えると 「アマゾンとスターバックス以外に、長期展望で生き残れる販売業は 果たしてあるのだろうか?」という疑問さえ生まれてくるのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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