June 18 〜 June 25, 2012

” Un-Divorce ”


今週、アメリカで最も報道時間が割かれていたのは、週半ばの猛暑のニュース(写真上左)。
ニューヨーク・エリアだけでなく、テキサスから、中西部までをヒート・ウェイブ(熱波)が襲ったけれど、 気温は30度台前半でも、湿度とUVインデックスが高かったために、体感温度が40度近くなっていたのが今週の猛暑。 一部の冷房が無い学校は休校になっていたのに加えて、ニューヨークではクイーンズやロード・アイランドを中心に、 何千もの世帯が電力消費過剰による停電になっていたのだった。

加えて金曜の夜、多くのTV局が生中継で伝えたのが、ペンシルヴァ二ア州立大学のフットボール・チームの元アシスタント・コーチ、 ジェリー・サンダスキーが20年以上にも渡って、自らが運営するチャリティを通じて知り合った10人以上の少年達を性的に虐待していたという事件の裁判で、 サンダスキーに対して有罪の判決が下ったというニュース。(写真上、右)
この裁判の様子は、今週多くのメディアが長く報道時間を割いて詳細を伝えていたけれど、それというのも彼に虐待された被害者のうちの8人が、 その生々しい虐待の様子を明らかにする証言を行なっていたため。
今週のメディアでは、裁判で証言を求められなかった被害者で、既にサンダスキーを民事法廷で訴えている男性が、 いかに彼が少年時代に虐待を受けたかを明らかにしていたけれど、 今になって彼がそれを明らかにした理由については、「当時は虐待を喋ったら、大学に勤めている父親をクビして、家族中に惨めな思いをさせてやると、 センダスキーに脅されていた」と説明していたのだった。

どうしてフットボール・チームのアシスタント・コーチごときが 大学人事に口を出せるほど権力があるかといえば、 ペンシルヴァ二ア州立大学のフットボール・チームは、大学に年間50億円をもたらすドル箱ビジネスであり、 同大学にとって最大の誇り。 同大学は、地元エリアに最大の雇用をもたらす存在で、大学周辺の地域は、フットボール・カルチャーを中心にした独自の 政治とモラルで動いているのだった。
なので、少なくとも これまでは大学のフットボール・チームにとって不名誉なスキャンダルは、周囲がよってたかって揉み消しに掛っていたのが実情。 正直なところ、私もジェリー・サンダスキーが裁判不成立などで、上手く裁きを逃れると思っていたので、有罪判決は当然とは思うものの、少々意外なのだった。 それというのも 陪審員のうちの3人は大学関係者。 しかも判決が出る前に、彼が訴追された48件の罪状のうち、3件を無効とする判断が下されていたのだった。

裁判の最中には、ジェリー・サンダスキーが自ら無罪を訴える証言を行なうことが見込まれていたけれど、 その証言を弁護側が取り止めることになったと言われる理由が、もし彼が証言台に立った場合、彼が養子縁組した息子が、 「自分も養父に性的に虐待された」と証言するとことを検察側が明らかにしたためで、 これは裁判関係者の誰もが予想をしえなかった展開。特に弁護側にとっては、当初、養子の息子がサンダスキーをサポートする姿勢を見せていただけに、 ”寝耳に水”の大打撃になっていたのだった。
学生を含む、大学エリアの地元の人々の反応は、この有罪判決を支持する声が多く、 その被害者の8人の生々しい証言は、たとえDNA証拠が存在しなくても「賠償金目当てに口裏を合わせているだけ」という弁護側の言い分が通らないほどに、 信憑性が感じられたのだった。



ところで、アメリカでは毎週のようにYouTubeのビデオがきっかけで、”時の人”が生まれては消えていくのが常であるけれど、 今週、そのYouTubeが生んだ ”にわかスター” となったのが、ニューヨーク州ローチェスターで、スクール・バスのモニターを務めるカレン・クライン。(写真上左)
8人の孫が居るという彼女は、20年以上、年収約120万円を受け取って、毎日のようにスクール・バスに同乗して、モニターを務めてきたけれど、 今週、YouTubeにアップされたのが、彼女がそのバスの中で、4人の中学1年の少年から”いじめ”を受けている様子を撮影したビデオ。(写真上右)
少年達から その体型、年齢、容姿などについて、屈辱的な言葉を浴びせられ続けた彼女は、終始 彼らを無視していたけれど、 このビデオが 今週、世界的な大センセーションを巻き起こし、アメリカだけでなく、世界中のメディアが報じるニュースになってしまったのだった。
その結果、ビデオがアップされた2日後には、いじめを行なった少年やその家族には 苦情や、非難の電話&Eメールが殺到。中には殺人の脅しまであったという。 逆にカレン・クラインのもとには、彼女に同情し、励ますEメールが世界中から寄せられ、その多くが少年達と同じ年齢、もしくはそれ前後の子供達で、 その中には 虐待を行なった少年に成り代って 彼女に謝罪するメールが多数見られたという。
さらに、カレン・クラインにバケーションをプレゼントしようというインターネット上の基金がカナダ人男性によって設置され、5000ドル(40万円)を目標にしていた同基金には、 1週間を待たずして、世界中から50万ドル(4000万円)が寄せられていることも報じられているのだった。
彼女のもとには、いじめを行なった少年の両親が次々と謝罪に訪れ、少年達もそれぞれに彼女に書面で謝罪した様子が週末になって報じられていたけれど、 彼女自身は、自分のことを良く知らない人々がバケーションをプレゼントしてくれようと 寄付してくれたことに対して戸惑う気持があると同時に、 彼女に寄せられた沢山のEメールを読んで、「まだまだ世の中には、善良な子供達が沢山居ることを実感できて嬉しい」とメディアに語っていたのだった。



ところで毎年6月になると、明らかに増えるのが、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載される 結婚のアナウンスメント。
このアナウンスメントには、カップルの略歴と、両親についての説明、その馴れ初めなどが簡単に記載されていて、 カップルの写真が掲載されている場合もあるけれど、ここ2〜3年はゲイ&レズビアン・カップルのアナウンスメントが目に見えて増えているのだった。
果たしてゲイ&レズビアン・カップルが、ストレート・カップル同様に高い離婚率になるかどうかは、今後のデータが見守られるところだけれど、 現時点のアメリカの離婚率は50〜60%。 結婚25周年を迎えられるカップルは33%、35周年が迎えられるカップルは20%、金婚式に値する50周年が迎えられるカップルについては、健康の問題もあるとは思うけれど、 僅か5%になっているのだった。

最も離婚が多い年齢層は、男女とも20〜24歳。
離婚率は、子供が居ないカップルの方がごく僅かに高いといわれるけれど、子供が居て離婚するカップルの多くは、子供が出来てから不仲になっているのが実情。
また、1度離婚をした人は その後も離婚を繰り返す傾向があって、初婚カップルの離婚率が41%〜50%なのに対して、2度目の結婚の離婚率は60〜67%。 これが3度目になると、その率は73〜74%にアップしているのだった。この原因の1つとして指摘されるのは、一度離婚をすると、その経験を生かして、再婚する際に 離婚に十分備えるようになるので、回を重ねることに 簡単に離婚が出来るようになることなのだった。
さらに、親の離婚は子供にも影響するようで、両親が離婚している人の離婚率は、両親が結婚している人の4倍という数字も明らかになっているのだった。

アメリカの地域別に離婚率を見た場合、都市部の方が離婚が多いかと言えば、決してそのようなことは無くて、 2009年の調べで、最も離婚が多かったのは、通常アメリカ人が ”ど田舎”扱いをするオクラホマ州。 同州をはじめ、テキサスなどの南部の離婚率が最も高く、逆にニューヨークやボストンなどの北東部は離婚率が最も低くなっているのだった。

ところで、妻と夫とでは どちらが離婚の主導権を握っているかと言えば、その答えは妻。
アメリカにおける離婚では、その3分の2が 妻が夫に見切りをつけた段階で踏み切るもので、 言い換えれば、夫にとって全く幸せでない結婚であっても、妻がとりあえず満足している、もしくは離婚の必要を感じていない場合は、 離婚に至らないケースが多いという。
私がこのデータに非常に納得する部分があるのは、この春、私の友人が2人離婚をすることになったけれど、 どちらのケースも私の友人である妻側が決心したために、離婚することになっているのだった。 そのうちの1人については、私は夫のことも良く知っているけれど、彼は結婚に対して基本的に無関心なスタンスで、 私の友達が離婚を切り出さなければ、そのまま結婚していると思うし、彼女が離婚をしたいと言えば 特に引き止める理由も、必要も無いという感じなのだった。
でも私の周囲だけでなく、世の中には 夫が結婚という状態に無関心で、 妻側が見切りを付けた時点で離婚に至るようなカップルは 決して少なくないというか、非常に多いように思うのだった。

その一方で、アメリカの郊外や地方でありがちなのが、コミュニティの中の1カップルが離婚した途端に、 将棋倒しのように離婚するカップルが増えていくというケース。
特に、最初の一例が比較的 簡単に離婚が成立した場合、離婚後の妻には、その後 複数の既婚の女友達から離婚のアドバイスを求める 電話が頻繁に掛ってくるというのは良くある話で、誰かが 離婚しても十分暮らしていける前例を作ると、 それをモデルに、自分の離婚を現実的に考えるようになる妻が多いと言われるのだった。



ところで、アメリカで離婚をした50〜60%のカップルと、結婚を続けている40〜50%のカップルで、精神的幸福度が高いのはどちらかと言えば、 予想を裏切って前者であるとのこと。 前者は 結婚には失敗したものの、その状況から脱出しているので、一度離婚さえ成立すれば精神的には幸福になるケースが多いという。 逆に後者は、その半数近くが 幸せでない結婚生活を続けていることが明らかになっており、決して「幸せであるから、離婚をしない」という訳ではないという。
それを裏付けるように35%の既婚女性が、「自分に経済力があれば離婚したい」と答えているデータも得られているけれど、 アメリカがリセッションに入って以来、若干の減少傾向を見せ始めたのが離婚。 逆に徐々に増え始めているのが ”Un-Divorce/アンディヴォース” なのだった。

アンディヴォースとは、直訳すれば「不離婚」であるけれど、要するに法的に離婚をせず、カップルが分かれて暮らす状況のこと。
どうしてリセッションをきっかけにこれが増えたかといえば、人々に離婚をするだけの経済力が無くなってきているため。 離婚をするということは、その手続きのために多額の弁護士料を支払うことを意味するのはアメリカでは常。 夫婦に財産があり、結婚生活が長いほど、親権、養育費、扶養手当など、離婚の争点は増えるもので、 アメリカでカップルが平均的に離婚の手続きに費やす期間は、約1年。
よほど、切羽詰って離婚をしたいケースであれば、弁護士に大金を払って、1年を費やしてでも離婚をするだろうけれど、 夫婦が一緒に暮らしていくのには限界を感じていたとしても、結婚という経済状態に価値を見出しているケースは非常に多いのだった。 そもそも夫婦で税金の申告をした方が、別世帯での申告よりも節税になるのはもちろんのこと。 また夫婦のどちらかが勤める企業が、カバー率の高い健康保険を従業員の家族にも適用していた場合、 離婚をせずに その恩恵を受けることによって、年間百万円単位の保険料が節約できるのは珍しくないケース。
さらにアンディヴォースでは、夫婦が別々に暮らす以外は、生活やソーシャル・ステータスに 何ら変化をもたらさないので、 家族や親類の口出しを受けることも無ければ、子供の精神状態にも殆ど影響を及ぼさないことが指摘されているのだった。 加えて アンディヴォースの状態になってからの方が、夫婦の関係がスムースになるというのは、ほぼ100%のカップルが 認めているとのことで、それぞれが別の相手と交際をしていたり、一緒に暮らしているケースも珍しくないのだった。

このアンディヴォースを最初に記事にしたといわれるのが、2010年のニューヨーク・タイムズ紙であるけれど、 同記事の中で アンディヴォースの例として紹介されていたのが、アメリカではマイクロソフト社のビル・ゲイツ会長に次ぐ富豪である、投資家のウォーレン・バフェット。 彼は1977年に結婚した妻、スーザン・バフェットと、彼女が死去した2004年まで婚姻関係を続けたものの、 その何年も前から、2006年に彼の現在の妻となったアストリッド・メンクスと一緒に暮らしており、 離婚を避けて、アンディヴォースの状態であったことが説明されていたのだった。
ウォーレン・バフェットのように何兆円もの財産がある場合、離婚するよりも、結婚し続けていたほうが、 財産面で遥かに利点が多いのは明らかな事実。
また同記事の中では、ローリング・ストーン誌の発行人であるヤン・ウェナーが、28年の結婚生活を続けた妻と1995年に別居し、 ゲイのボーイフレンドと暮らし始めたものの、離婚はせず、アンディヴォースの状態を続けたことも紹介されていたのだった。

ところで、幸せに結婚しながら、カップルが別々に暮らすケースというのもあって、これは時にアメリカで、 ”ウッディ・アレン婚”と呼ばれるもの。 その理由は、ウッディ・アレンと女優のミア・ファローが交際を続けていた際、2人は 子供の養子縁組をするなど、夫婦同様の カップルでありながら、通りを隔てて別々のアパートに暮らし、 その関係を長く良好に保っていたため。
ウッディ・アレンとミア・ファローは、結婚はしていなかったものの、2人の暮らしぶりは 当時、 ”別居結婚”という新しいカップルのコンセプトとして捉えられており、今でも 家賃をダブルに支払う経済力さえあれば、別居結婚が望ましいと考えるカップルが 決して少なくないと言われるのだった。
フランスでは、カップルが結婚せずして、法的には結婚したと同様の扱いを受けるシビル・ユニオンが メイン・ストリームになって久しいけれど、これは言ってみればアンディヴォースの反対で、アンメリッジと言えるもの。 フランスに代表されるように、ヨーロッパの方がアメリカよりも、トラディショナルな結婚に捉われない傾向が急速に広まっていると言われるのだった。

ところで、アンディヴォースと紛らわしいのが「セパレーティング」という表現。この言葉は、単なる別居を意味する場合から、 「離婚訴訟中」、もしくは「これから離婚をするところ」という表現にも使われるもの。 アンディヴォースは、別居はしても結婚を続けることを意味する言葉であるけれど、 実際にはアンディヴォースの男性でも、デートしたい女性に自分のステータスを説明するために使う言葉は、通常は 「セパレーティング」。
私の女友達は、「男性が”Divorcing / ディヴォーシング(離婚をするところ、離婚訴訟の最中)” という表現を使った場合は、本当に離婚をしようとしているケースが多いけれど、 ”セパレーティング”という表現を使った場合は、離婚の意志が無いと判断する」と言っていたけれど、これは決して外れていないコンセプト。
実際、前述のように普通なら平均1年程度で離婚が成立するはずにも関わらず、自称「セパレーティング」の男性と2年もデートしているような女性の話は 決して珍しくないのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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