June 17 〜 June 23, 2013

” Born In 1961 ”


今週も 過去2週間同様、エドワード・スノーデンに関する報道が続いていたアメリカであるけれど、 彼の証言で 米国家安全保障局(National Security Agency、以後NSA)が国民のプライバシーを侵害するスパイ行為だけでなく、 中国企業に対するハッキングも行なっていたことが明らかになっており、 エドワード・スノーデンは、今週正式に 国家機密を漏らしたというスパイ容疑で 訴追されているのだった。
でもスパイ容疑による訴追ついては、彼が他国の政府のために働いていた訳ではないだけに、否定的な声も聞かれており、 スノーデンが潜伏していた香港では、彼を擁護する世論が圧倒的。 アメリカ政府は、香港政府に対して 「彼の身柄の引渡しの協力が得られない場合、友好関係にヒビが入る」と脅しを掛けていたけれど、 そのスノーデンは日曜には香港からロシアに向かい、エクアドル政府に対して亡命の希望を出したことが伝えられているのだった。

今週、海外のニュースとして最も大きく報じられたのは、ブラジルで行なわれている政府に対する大規模な抗議活動のニュース。
ブラジルといえば世界第6位の経済大国ではあるけれど、実際には貧富の差が激しく、多くの人々が貧困生活を強いられているのは周知の事実。 このブラジルの大規模なデモは、バス運賃の値上げに対する抗議から始まったもので、 当初はリーダー不在、目的意識も定かでない抗議活動と言われていたけれど、 それが今では 「ワールドカップ反対」という サッカー王国、ブラジルとしては考えられない方向に展開しつつあるのだった。
そもそも 政府がバス運賃の値上げを決めたのは、ワールドカップの準備に当てる 米ドルにして130億ドル(約1兆3000億円)を捻出するためであるけれど、 来年に控えたワールド・カップだけでなく、ブラジルは サッカー大会誘致の度に インフラ整備や、学校、病院といった国民の基本的なニーズが ないがしろにされてきた歴史があるのが実情。 2007年のパンアメリカン・ゲームスを誘致した際も、リオ・デ・ジャネイロ政府は大会開催の利益で ハイウェイ、モノレール、地下鉄を整備すると謳っておきながら、実際には大会がオーバー・バジェットで、 これらが実現しないだけでなく、逆に財政難を招いていたような状態。
それだけでなく、つい最近になってブラジル・フットボール・コンフェデレーションの長年のプレジデントが 体調を理由に辞任しているけれど、その本当の理由は汚職、すなわちスポーツ・イベント・プロジェクト落札に際して 賄賂を受取っていたことが指摘されているのだった。

すなわちサッカー大会が誘致される度に 国民が税金をむしり取られ、それによって一部の富裕層が益々大金持ちになるというのが これまでのシナリオだったけれど、国民の怒りや不満がブラジル・チームの勝利で払拭されるという トリックが そろそろ通用しなくなってきたことを露呈したのが今回の抗議活動。
デモの参加者は「Nos nao precisamos de Copa do Mundo / We Don't Need World Cup」 と書いた プラカードを掲げ、世界中にワールドカップのボイコットを呼びかける有り様。 こうした抗議活動を 沈静化するために、ペレ、ロナウドといったブラジル・サッカー界の歴代のスーパースターが、 公共広告で国民に訴えたけれど、これに対するリアクションは 逆に彼らに対する怒りのバックラッシュ。
「ペレやロナウドは ワールドカップが行なわれれば、広告出演等でさらに大金持ちになるだけ」と、かつてのヒーロー達にも 怒りの矛先が向けられているのだった。 それだけでなく 国民の怒りは サッカー界全体にも向けられており、数千人のデモ参加者が「ブラジルよ、目を覚ませ! ネイマールなんかよりも学校教師の方がずっと大切だ!」と叫ぶ様子は、 世界のサッカー関係者を驚かせていたのだった。
ちなみにネイマールは、現在バルセロナでに所属している21歳のブラジル人フォワードのネイマール・ダ・シウバ・サントス・ジュニオール のこと。ネイマール自身は国民の抗議活動を支持していると言われていたけれど、 今のブラジル国民にとって、サッカーで大儲けをする人間はスタジアム建設の関係者から、プレーヤーまで、全て敵と見なされているようなのだった。



今週のアメリカ国内で 最も大きく報じられたのは 俳優、ジェームス・ギャンドルフィーニ死去のニュース。
HBOの人気ドラマ 「ザ・ソプラノズ」で、メイン・キャラクターである トニー・ソプラノを演じて スターダムにのし上がった彼のあまりに突然の死は、アメリカに大ショックを与えていたのだった。

ところで、 「ザ・ソプラノズ」と言えば 今も番組のファンの間で物議を醸しているのが その意味不明なラスト・エピソード。
このラスト・エピソードの謎について特集されたウェブサイトまであるほど、番組を観続けた人々にでさえ 意味を成さなかったのが ラスト・シーン。 番組のファンならば、誰もが ジャーニーのヒット曲「ドント・ストップ・ビリービング」が掛る中、何かが起こりそうな気配だけを感じさせて、 ジェームス・ギャンドルフィーニ扮するトニー・ソプラノが、ダイナーのテーブルに座っているシーンを覚えているけれど、 突然 画面が真っ黒になって終わるというのがそのラストの瞬間。
当時のアメリカのこのラスト・シーンに対するリアクションは、2007年の同コラムでも触れていたけれど、 ジェームス・ギャンドルフィーニ死去を受けて明かされたのが、 番組のインサイダーが確認したという このラストシーンの意味。

それによれば、ラストのダイナーのシーンでは、トニー・ソプラノとその家族以外に、不審な人物が映し出されていたけれど、 ジャーニーのBGMが掛る中、その不審者が トニーを1発の銃弾で射殺したというのがその結末のストーリー。 突然画面が真っ暗になるというラストシーンの演出は、 打たれたトニー・ソプラノの立場になってシーンを描いたもので、 突如 目の前が真っ暗になって、音楽が途絶え、意識が無くなるというトニーの死の瞬間を 外から描くのではなく、本人の内側から描くという 試みがなされていたのが問題のラスト・シーンなのだった。
このシーンは、YouTubeで 350万回以上閲覧されているもので 私も この謎解きを聞いて、再び見てみようと思ったところ、 同じように考える人が多いのか、サイトがクラッシュ状態になっていて観ることが出来なかったのだった。

「ザ・ソプラノズ」のラスト・エピソードの放映から6年後にして、 このシーンの謎が解けたのは、 ジェームス・ギャンドルフィーニの死という 非常に残念な事態における 唯一の幸いと言えるものなのだった。





そのジェームス・ギャンドルフィーニ(写真下、上段中央)は、1961年9月18日生まれの51歳。 今週の彼の死がアメリカ中にショックを与えていたのは、その若さも手伝ってのもの。
1961年生まれといえば、他に同じ俳優だと ジョージ・クルーニー(写真下、上段一番左)、メグ・ライアン(写真下、上段一番右から2番目)、 エディ・マーフィー、マイケル・J・フォックス(写真下、下段一番右)、フォレスト・ウィタカー(写真下、下段中央)、ローレンス・フィッシュバーン、 ウッディ・ハリソン、元祖カラテ・キッドのラルフ・マッチオ等が居り、 アスリートでは、元NBAのデニス・ロッドマン、NFLの名クォーターバックであるダン・マリノ、 かなり昔のオリンピック・スターでは体操のナディア・コマネチ、陸上のカール・ルイスが共に 61年生まれ。
ミュージシャンでは、80年代に大ブレークしたカルチャー・クラブのボーイ・ジョージ、 マイリー・サイルスの父親であるカントリー・シンガー、ビリー・レイ・サイルス、 乳がんを克服したレズビアン・シンガー、メリッサ・エスリッジ、「ブリテンズ・ゴット・タレント」で突如スターになった スーザン・ボイル(写真下、下段左から2番目)、ジャズ・トランペットのウィントン・マルサリス。 ビジネスの世界では、ティモシー・ガイズナー元財務長官(写真下、下段一番左)、デザイナーのトム・フォード(写真下、上段一番右)、 「ザ・ロード・オブ・ザ・リング」で知られるピーター・ジャクソン監督(写真下、下段右から2番目)等が居るけれど、 これらに加えてオバマ大統領(写真下、上段左から2番目)も 1961年8月4日生まれなのだった。



上10枚の写真で比べると、同じ1961年生まれの中でも 明らかに老けて見えるのがジェームス・ギャンドルフィーニ。
彼はアルコール依存症で、ヘビー・ドリンカーの上に、ヘビー・スモーカー。加えて かつてはドラッグも常用していたことで知られる存在。
逆に写真上の中で最も若く見えるトム・フォードは、かつてはドラッグを常用し、パーティー三昧の日々を過ごしていたものの、 今やパートナーと養子縁組した子供を育て、ドラッグはおろか、アルコールも一滴も飲まないとのこと。 しかもパーティーも早めに切り上げる早寝早起きぶりで、毎日テニスやエクササイズをして身体を動かし、 食生活も至って健康的であることを自ら語っているのだった。

でも写真上10人は、著名人とあってグルーミングやスキンケアが行き届いているため、多少のバラつきはあっても それなりに同じ年齢と言われれば、納得出来る顔ぶれ。 でも これが一般人になると、50代という年齢は 若く見える人と、老けて見える人のルックスの格差が非常に大きい世代。
この理由は、殆どの人々が40代の10年間に 最もルックスの老化が進むためで、 その40代にルックスの衰えを防ぐ努力をする、しないで、外観に大きな違いがもたらされるのだった。
今や、「40's is new 30's」、「50's is new 40's」などと言われ、年齢意識が実際年齢より 若返り傾向を示しているけれど、 50歳を超えた人々が語るのが「40歳で若く見えることは難しくないけれど、40代半ばに差し掛かると 老化との戦いが 非常に厳しくなる」ということ。 40代半ばというのは、誰にとっても 努力をしても老化に拍車が掛る時期。 体力や視力の衰え等からも、 自分の若さの限界を 思い知らされる時期であるだけに、この時点で30代から続けてきたエクササイズやスキンケアといった アンチ・エイジングの努力が ガス欠状態で続かなくなるケースも非常に多いのだった。

一部には、40代で最も老化が進む原因は 身体や体内の機能が徐々に衰えるだけでなく、多くの人々が40代で 離婚、解雇、育児の問題など、様々かつ深刻な問題やストレスを抱えるため という分析もあり、 事実、一般の人々のストレス・レベルは、 40〜50代前半が 人生の中のピークと言われているのだった。

そのストレスを食欲やアルコールで発散させようとすると、メタボリズムが下がってきているだけに体重が増えるだけでなく、 糖尿病や肝臓の病を患うことになるのが ありがちなシナリオであるけれど、 世の中には40歳を過ぎても 食べたい物を食べて、スリムな体型を保っているラッキーなDNAの持ち主が居るもの。
でもそのラッキーなDNAの魔力が徐々に衰えてくるのも40代半ばからと言われていて、 老化の進行と共に、 ラッキーなDNAを過信出来なくなるとのこと。 逆に高血圧や糖尿病、乳がん等、家系の病のDNAが 徐々にその影響を高めてくるのがやはり40代、特に半ば過ぎ。
今、私が読んでいる本によれば、人間の老化にDNAが影響するのは30%。 残りの70%ライフスタイルによって決まるとのことで、40代をどう乗り切るかが その後の老化の進行に 大きく影響することだけは確かなのだった。

ところでジェームス・ギャンドルフィーニの死因は心臓発作であったけれど、彼は心臓病の持病があった訳ではなく、 周囲も「彼が至って健康であった」と証言しているのだった。
その彼がホテルのバスルームで倒れる前に食べていた最後の晩餐と言われるのが、巨大なエビのフライ2皿と やはり特大サイズのフォアグラ。これを8杯のアルコールで流し込んでいたという。 この食事は、彼の日頃の食生活より不健康なものだったとは言われるものの、だからといって彼が日頃から 務めて野菜を摂取するような 食生活だった訳でもないことは周囲も認めていること。
つまり、彼が 51歳にしては老けて見えるだけの ライフスタイルを実践していたことは否定せざるを得ないのだった。
ジェームス・ギャンドルフィーニ死去の報道を受けて、心臓外科医が指摘していたのが 「バケーション先で 初めての心臓発作を起す人々が非常に多い」ということ。 その理由は、バケーション中は時差や長旅のせいで 身体が疲れているのに加えて、 連日のように暴飲暴食をしがちであるため。さらに常用薬の摂取を忘れてしまうことから、 健康と思われていた人が突然心臓発作で倒れるケースが少なくないという。
しかしながら、51歳にして そんな心配をしなければならないというのは、今週多くのアメリカ人にショックを与えていたこと。 こうした突然の心臓発作を防ぐために出来ることと言えば、日頃からの摂生しかないけれど、 それが多くのアメリカ人にとって 最も難しいことなのだった。

話は変わって オーストラリアでは、あるナースが死に瀕した患者達の最後の数週間の面倒を見ながら、 彼らがそれぞれ人生において何を一番後悔しているか?を尋ね、その結果を「The Top Five Regrets of the Dying (死の後悔、トップ5)」という 本に纏めているのだった。
それによれば 後悔の第1位になっているのが、「周囲が望む人生ではなく、 自分が生きたいと思う人生を生きる勇気を持ちたかった」ということ。
したがって、健康的なライフスタイルで長生きすることは とても大切であるけれど、その人生で後悔をしないためには、 自分の意思に従って生きるということも 同じく大切だと言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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