June 23 〜 June 29,  2014

”Why Sports Make Us Superstitious?”
スポーツ・ファンが縁起を担ぐ理由とは?


今週のアメリカでは、木曜に行われたワールド・カップ、チームUSA対ドイツ戦が、サッカーの試合としては かつて無いほどに注目と話題を集めていたけれど、 その結果、チームUSAは破れはしたものの、決勝リーグに駒を進めたことで、 遂にメディアも認め始めたのが アメリカがサッカー・ネーション(サッカー国)になったということ。
これまで、どうやっても盛り上がらなかったアメリカのサッカー人気であるけれど、 チームUSAの誰も期待しなかった善戦ぶりに加えて、今回のワールド・カップの試合のレベルの高さ、 エンターテイメント性も手伝って、今週はワールドカップ報道の前に、他のスポーツの報道がすっかり霞んでいた印象。
ニューヨーク・ポスト紙でさえ、チームUSAが決勝リーグに駒を進めた翌日、金曜には そのニュースを フロント・カバーとバック・カバーの双方に、写真入りでフィーチャーしたのだった。(写真上)

今週末から決勝リーグがスタートしたワールドカップであるけれど、 ニューヨーク・ポスト紙の2人のスポーツ・クリティックが予選リーグの戦いぶりを検証して、 再度予測をした結果では、決勝カードは、「ブラジル対オランダで、ブラジルの勝利」 という予測と、「コロンビア対アルゼンチンで、アルゼンチンの優勝」という意見に分かれているのだった。




さて、今回のワールドカップで予想以上の善戦を見せているチームUSAのファンの間での スローガンになっているのが、「We Believe」、「I Believe That We Will Win」。
これは、チームUSAがドイツ、ポルトガル、ガーナという強豪に囲まれたグループで、 予選リーグ突破が絶望的と言われた中から生まれてきたスローガン。 後者の「I Believe That We Will Win」は ワールドカップを放映するケーブル・スポーツ・ネットワーク、ESPNがワールドカップのプロモーションとして 製作したCMの中で謳われていたもので、 大統領専用機エアフォース・ワンの中で木曜の対ドイツ戦を観戦していたオバマ大統領も、 チームUSAの決勝リーグ進出が決まったと同時に、アメリカ国旗のイメージと共に「Believe」というツイートをしていたほど。

そんな信じるしか無いほど勝ち目が無い状況からでも、チームが徐々に善戦を続けると、ファンは縁起を担ぎ出すもの。
私の友人のアメリカ人は、チームUSAが勝利した対ガーナ戦をコンピューターのライブ・ストリーミングで観て、 対ポルトガル戦は終了直前まで、タブレットで観戦していたものの、勝利の瞬間をTVで観ようとしたら 同点に追いつかれて引き分け。 対ドイツ戦は、最初からTVで観戦していたところ USAが敗れてしまったので、来週火曜日の決勝リーグ、対ベルギー戦は、 「絶対にTVでは観ない」と宣言しているのだった。

今週のニューヨーク・タイムズ紙のスポーツ欄にも、同じ服を着用してチームを応援したり、 スタジアムにお守りの石を持って行くなど、縁起を担ぐサッカー・ファンの様子が記事になっていたけれど、 縁起を担ぐのは、スポーツ選手もスポーツ・ファンも同様。
80年代にウィンブルドンを連覇していたプロ・テニス・プレーヤーのビヨルン・ボルグは、 毎回、同じホテルの同じ部屋に滞在し、同じスケジュールで練習をして、同じ物を食べていたのは有名なエピソード。 またテニスの世界では サービス・エースを取ったボールで次のサーブを打ちたがるプレーヤーが少なくないのは、 トーナメントでボールボーイ泣かせになっている縁起の担ぎ方。
テニスに限らず プロ・スポーツ・プレーヤーには、  トーナメントやシーズン中のヴィジターとして訪れる街に、 ラッキー・レストランやラッキー・ヘアサロン等があって、そこで毎回同じ物を食べて、同じようにヘアカットをしてもらうというのは、 非常にありがちなことなのだった。





一方のファンに関して言えば、アメリカで最も縁起を担ぐファンが多いスポーツは断然フットボール。 約60%のファンが、試合の日に何らかの縁起を担ぐルーティーンをしており、それが試合結果に影響すると信じているという。
フットボール・ファンの縁起の担ぎ方で最も多いのは、 チームのジャージーを身につけて観戦することで、そのジャージーは負けるまで洗濯しないのが通常。 それ以外には、「試合中に同じ食べ物を食べる」、「同じ場所に座って観戦する」、 「必ず同じ友達と試合を観戦する」というのが一般的。
2013年にビール会社が1万人のフットボール・ファンを対象に行った調査によれば、 試合観戦の縁起を担ぐルーティーンを貫くあまり、2%すなわち1万人中200人が、 恋愛関係や結婚生活がダメになった経験があるとも回答しているのだった。

そうまでして、何故スポーツ・ファンが縁起を担ぐかと言えば、それによって心の安心を得るため、 もしくは試合結果にポジティブなインパクトをもたらす何かをしているという満足感や、 試合結果をコントロールしているような意識を味うため。
そして、たまたまその縁起を担ぐルーティーンを怠って、チームが試合に負けた場合には、 自分を責めることによって、自分自身とチームとの絆を深めたり、 チームの勝利における自分の存在の大切さを勝手にでっち上げてしまうのが極めて熱烈なスポーツファン。 こうしたファンは、試合結果が日常生活に大きく影響してしまうタイプなのだった。

でも、多くのファンは前述のように約60%が自分が縁起を担ぐことが試合結果に影響すると考える一方で、 約25%は「チームが負けても、自分の縁起を担ぐルーティーンとは無関係」と捉えているとのこと。 要するに縁起を担ぐことを楽しんでいたり、習慣にしているだけのファンも多いようなのだった。


世の中には、スポーツとは全く無関係に 縁起を担ぐ人も多いけれど、欧米のカルチャーでラッキーと見なされるのは、 4つ葉のクローバー、 「セックス・アンド・ザ・シティ 」のキャリーもペンダントでつけていたホース・シュー、 ウィッシュ・ボーン(鳥類のV字型の骨)、ギャンブルをする人にとってはダイス(サイコロ)もラッキー・チャーム、 動物ではなぜか象。
その他、道端でペニー(1セント・コイン)を拾うこともラッキーなサイン。また木のテーブルや壁などをノックすること、こぼれた塩を左肩に振り掛けることは 悪運を防ぐお守りと見なされているのだった。
逆にアンラッキー、バッド・ラックの象徴とされるのは黒猫、ハシゴの下を通ること、地面や床の割れ目を踏みつけること、 鏡を割ること、部屋の中で傘を開くこと、新郎が結婚式の前に花嫁姿の新婦を見る事。

さらに ラッキーとアンラッキーを語る上で忘れてはならないのが数字であるけれど、 13日の金曜日に代表されるように、アンラッキーの象徴として嫌われるのが13という数字。
私が住んでいるビルには 13階が無くて、12階の上は14階になっているけれど、 これはアメリカ人が13階に住みたがらないためで、高級コンドミニアムやオフィス・ビルは殆ど同様。 でも、航空会社のデータによれば、13日の金曜だからといってフライトの乗客数が減ることは無いという。

逆にラッキー・ナンバーとして好かれるのは、圧倒的に7。2007年7月7日には、 ラスベガスで結婚するカップルが記録的に多かったことが伝えられているのだった。
一方、中国人が好む番号は8で、昨今、それを理解してきているニューヨークの不動産ブローカーは、 中国人バイヤーに、あえて8が並んだ数字で交渉しているとのこと。

こうしたラッキー・ナンバーや、バッドラック・ナンバーは、それなりのエピソードに裏付けられている場合が多いけれど、 アメリカ人にとって最も新しく バッドラック・ナンバーに加わったのは、説明するまでも無く、911/ナイン・イレブン。
数年前にクレジット・カード会社が、有効期限 09/11(2011年9月)のカード発行したところ、「どうしても嫌だから変えて欲しい」という リクエストが殺到。 縁起を担ぐ人々がカードを使用しなくなってはビジネスにならないので、カード会社が 別の有効期限でカードを再発行した様子は、当時 ちょっとしたニュースになっていたこと。

かく言う私は、ラッキー・ナンバーはあっても、アンラッキー・ナンバーは持たない主義。 でもニューヨーカーなので、どうしても911という数字からは 嫌な思いを抱くもので、 その数字と出くわしてしまったのが 日本に一時帰国した際に滞在したホテル。
911という部屋番号の鍵を渡された途端に、嫌な予感がよぎって、よほど変えてもらおうかと思ったけれど、 日本でそんな事を言っても、分かってもらえないかと考え直して、そのまま滞在することにしたのだった。
その結果、私はホテルの部屋で 長年大切に毎日つけていたリングを失くしてしまい、それも神隠しのように どこを探しても出てこないという不思議さ。 凄く気分が悪かったものの、厄落としと思ってリングをギブアップすることにしたのだった。

その時に思ったのが、嫌な予感というのは自分をプロテクトしようとする本能のシグナル。 本能的に何らかのシグナルを感じている場合には、それに従うのが自分をプロテクトする有効な手段。
したがって 余計な縁起を担ぐよりも、本能に従うべきというのが、私がその経験から学んだことなのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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