June 27 〜 July 3 2016

”FOMO is so Yesterear, Have JOMO”
脱FOMO、今クールでメリットがあるのはJOMO



今週のアメリカは、イギリスのEU離脱投票 ”Brexit / ブレグジット” の混迷を引きずってスタートしたものの、 週の半ばからは株価が持ち直してきたこと、週末から独立記念日の連休を控えていたこともあり、 先週末の悲観的なムードとは異なっていたのが実情。
それに代わって今週ショッキングに報じられていたのは、イスタンブールの空港、バングラディシュ、ダッカのレストラン、 そして日曜にはイラクのバグダッドと、1週間にISISが犯行声明を出したテロが3件も起こったことなのだった。

ビジネスの世界では、今週に入って ソーダ、サプリメント、アパレルの分野でそれぞれ”Brexit / ブレグジット”を商標登録する企業が現れたことが報じられていたけれど、 その一方で、アディダスが発表したのが2014年からスタートしているラッパー、カニエ・ウエストとのコラボレーション、 ”Yeezy / イージー”の展開拡大のニュース。 現在、アディダスは同ラインのハイエンド・スニーカーを手掛けているけれど、今後はメンズ&ウーマンズのクロージングとアクセサリーも手掛け、 さらにイージーの店舗展開もスタートするというのが新たに発表されたパートナーシップなのだった。
アディダスがこうした動きに出たのは、過去数年メンズ&ウーマンズのアパレルで ”アスリージャー”(”アスレティック”と”レジャー”を合わせた造語) が唯一大きく売上げを伸ばしているセクターであることに加えて、 過去3年に渡って それまでメンズのストリートウェアを兼ねて来たバスケット・ボール関連のシューズとアパレルが 売上げを落としているため。 その唯一の例外がナイキのエア・ジョーダンで、スニーカーは今やコレクターズ・アイテムであり投資アイテム。 アパレルも売上げが伸びていることが伝えられてるのだった。
したがって、エア・ジョーダンのような時代に左右されないブランドを構築することが アディダスにとって最重要課題になっているけれど、 皮肉なことには 1984年にエア・ジョーダンがデビューする前に、マイケル・ジョーダンが自らのスニーカーの契約を結びたがったのは 実は ナイキではなく アディダス。 それというのも80年代前半はアディダスの3本ラインのトラック・スーツが大ブームで、アディダスの方がイメージ的にクールだったとのこと。 このためマイケル・ジョーダンはエア・ジョーダンの契約に際して ナイキ側にかなり難しい条件を突きつけただけでなく、高級車までプレゼントさせたことが 伝えられているのだった。




6月3週目のこのコラムでラルフ・ローレンが経費削減のために米国内の店舗を50軒クローズすることをお伝えしたけれど、 オンライン・ショップがマジョリティになろうとしているご時世に、アディダスが ”Yeezy / イージー”の店舗展開をビジネス・プランに含めるというのは、 よほどの勝算を見込んでのビジネス・プラン。
というのもアメリカでは、ラルフ・ローレン以外にもデパートのメーシーズが40店舗のクローズを決定、大衆デパートのコールズも18軒を閉店、 ディスカウント・ストアのKマートは69店舗、シアーズは10店舗、ターゲットが13店舗、 子供服のチェーン店、チルドレンズ・プレースも200店舗、カジュアル・アパレルのエアロポステルも175店舗の閉店を それぞれ発表している有り様。 スポーツウェア&グッズを販売するスポーツ・オーソリティは、倒産に追い込まれたためその463店舗を全てクローズする事になっているのだった。
このアスリージャー・トレンド、店舗でショッピングをしないという消費動向は、ミレニアル世代のお金と時間の使い方を象徴しているけれど、 未だそのミレニアル世代の影響力が小さかった5年前、2011年4月2週目のこのコラムで触れたのが、当時 新語として浮上していた FOMO / フォモ。これは「Fear Of Missing Out」の略語で、 パーティーなど楽しいイベントに加わっていないと落着かないソーシャル・オブセッションのこと。 自分が招待されないイベントで、友達が楽しそうにしている姿を インスタグラムやフェイスブックといったソーシャル・メディアで見せ付けられて、落ち込んだり、心配したりする心理を指す言葉なのだった。

これに代わって昨今浮上しているのが”JOMO”、もしくは”POMO”。 前者は 「Joy Of Missing Out」、後者は「Pleasure Of Missing Out」の略で、 さほど気が進まないイベントやパーティーにあえて出掛けず、 自分の時間を楽しむことを意味するのだった。




JOMOのコンセプトを生み出したと言われるのが、写真上一番左の2014年に出版された「Joy Of Missing Out」という書籍。 カナダ人の著者クリスティーナ・クルックによるこの本には 「Finding Bakance in a Wired World」というサブタイトルがついているけれど、 これは すなわちインターネットやソーシャル・メディア時代の世の中で、 自分のバランスを見つけるということ。
同書の中では、人間の繋がりやその感情というのは、フェイスブックのポストに「Like」をする以上のものであるとして、 著名人の語録を引用しながら、テクノロジーやソーシャル・メディアに振り回されない人生、人と人が昔ながらの コミュニケーションで結ばれることの重要さについて説いているのだった。 中でも同書のメッセージを象徴していると言われるのが ヘンリー・デヴィッド・ソリーの「Wealth is the ability to fully experience life(豊かさとは人生を十分に楽しむ能力のこと)」 という語録。

でもJOMO、POMOは そのコンセプトが広まるにつれて、クリスティーナ・クルックが意図した 心の豊かさや人との繋がりとは 若干異なる形でミレニアル世代に受け入れられるようになっていったようで、 それは やりたくないことに「No」と言って 自分が好きなように時間を使うこと。
ミレニアル世代がJOMO、POMOを持ち出してくる場合には、 例えば友達にパーティーに誘われても「今日は疲れている」、「人と一緒に居たくない」、 「余計なお金を使いたくない」、「興味が沸かない」といった理由で断ってしまう状況。 そして、「You go! I'll check your Insta later!」と 友達のことはパーティーに送り出すけれど、 後からソーシャル・メディアで自分抜きで友達が楽しんでいるのを見て 心配したり、不安になるFOMOとは異なり、 「この程度のパーティーなら行かなくて良かった」とか、 「まだこんなレストランに行ってるんだ!」などと、冷めた見方をする一方で、 自分はリラックスしながら、ネットフリックスのオリジナル・シリーズを 一気にビンジ・ウォッチングして楽しんでいたりするのだった。




ところで、アマゾン・ドット・コムでは、クリスティーナ・クルックの「Joy Of Missing Out」と一緒に購入される傾向にある本として紹介されていたのが、 近藤 麻理恵著の 「The Life-Changing Magic of Tidying Up (人生がときめく片づけの魔法)」。
JOMO、POMOのコンセプトは、今ではミレニアル世代以外にも広まっているけれど、 基本的にJOMOというのはソーシャル・メディア&インターネットから入ってくる情報や人間関係のしがらみを整理して、 部屋を整頓するように、自分のライフスタイルを整頓して、自分に心地良くすることとも言えるもの。
それと同時に、自分本位にお金と時間を使うということでもあって、 「友達が皆行くから」とか、「仲間はずれになりたくないから」といった理由で、 行きたくもないレストランやコンサートに出かけて、時間やお金を使って、それをソーシャル・メディアに逐一ポストするのは 既に時代遅れどころか、JOMOを実践する人からは愚かで気の毒に見える行為。
JOMOを実践し始めると 「誰が何処で 何をしていても別に気にならない」という 悟りの心境に到達するようなのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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