June 26 〜 July 1 2018

”Learning from Venezuela's Hyperinflation”
コーヒー1杯を札束で買うヴェネズエラの
ハイパーインフレーションに学ぶ 明日は我が身 !?



今週のアメリカで最大の報道になっていたのは最高裁判事の引退のニュースで、 その後任をトランプ大統領が指名することから、今後見込まれるのが アメリカが益々コンサバティブかつ右寄りの社会になって行くこと。
その一方で、アメリカのみならず世界中の人々を驚かせたのが ニコラス・マデューロ政権下での経済破綻が伝えられる ヴェネズエラのインフレーションが4万%に達したというニュース。 ここまでのインフレになると コーヒー1杯を買うために、国内で最も流通している100ボリバー紙幣が1万枚必要とのことで、 最低賃金労働者の1カ月の給与がコーヒー5倍分に相当する計算。 現時点で100万ボリバーをUSドルに換算した場合、1ドルにも満たない 僅か29セントとなるのだった。
ヴェネズエラでは、そんな紙切れ同然になった紙幣で作ったクラフトグッズを食料や生活用品と取り替えようとしている状況。 インフレーションというのは「物の価値が上がって、お金の価値が下がる」という状況であるのは言わずと知れた事であるけれど、 ヴェネズエラのようなハイパーインフレーションは、国が紙幣を印刷し過ぎた結果 起こる状況である様子を まざまざと見せつけているのだった。






そんな破たんを招いたと言われる ニコラス・マデューロ大統領は元バスの運転手で、組合のリーダーから2000年に選挙に出馬して当選。 2013年死去したヒューゴ・チャベス大統領のお気に入りとして知られ、同政権下で様々なポジションを担当。 2012年からは副大統領を務め、チャベス大統領死去1カ月後に行われた特別選挙で 50.62%の投票を獲得して大統領に選出されているのだった。
今ではチャベス大統領を上回る独裁者として知られるマデューロ大統領であるけれど、 その政権誕生直後から徐々に低下していったのがヴェネズエラのソシオエコノミックス。 インフレ、犯罪の多発、貧困層増加と飢餓、政府による言論統制など、様々な側面で社会が悪化。 その悪化に拍車をかけたのが国営石油産業のPDVSAの段階的な崩壊。
かつては世界第5位の石油産出国で、豊かな国家であったヴェネズエラは 1日あたり130万バレルを米国に輸出し、アメリカの国内石油価格に大きな影響を与えていた存在。 ヴェネズエラの輸出利益の95%、国内総生産の4分の1を占めてきたのがPDVSAの石油であるものの、 2016年以降は生産量が以前の半分に減っており、その減速は止まらない状況。 にも関わらずマデューロ政権は国際支援をことごとく断り、反面政府の出費は増え続ける一方。
ヴェネズエラは既に債権の殆どがデフォルト状態で、その総額は日本円にして約6兆6000億円、 これに対して同国の外貨準備高は僅か2700億円と見積もられているのだった。
2017年の段階で 国民の90%が貧困層となり、食料も不足して 成人国民1人当たりが 平均で11キロ体重を落としているという 飢餓状態。そんな4万%インフレーションを招いた張本人、 マデューロ大統領は 5月の選挙で更に6年間の任期延長が決まったばかりなのだった。




でもアメリカとて そんなヴェネズエラを高見の見物とは行かない状況。 2018年3月にはアメリカの負債総額が史上初めて21兆ドル(約2326兆円)を上回ったことが伝えられたけれど、 トランプ政権による大幅減税のせいで、アメリカは向こう10年間に毎年1600億ドル(約1兆7719億円)の税収を失う計算。 したがって利息が膨らみ 収入が減る典型的な貧乏家庭のシナリオ。
また老朽化する橋やトンネル、ハイウェイの修復は一向に手付かずで、修復が必要な橋の数だけでも全米で6万以上。 中には一回に渡るトラックの台数を制限する橋まで存在する有り様で、 そんなインフラ老朽化による輸送の遅れや保険料等がアメリカ経済にもたらすダメージは年間10億ドル。 にも関わらず、トランプ政権が最優先で取り組みたがっているのが、国境警備関係者さえ「無駄」と主張する メキシコとの国境の壁の建設で、それに30億ドルの予算を割こうとしている状況。 加えて北朝鮮のような軍事パレードに約30億円を投じようとしているのがトランプ政権で、 同政権の関税引き上げ政策に対する今後の世界各国の報復措置等を考慮すると、 決してヴェネズエラの状況を他人事とは言っていられないどころか ウォーレン・バフェット、ビル・ゲイツといったビジネス界の大御所や 経済専門家は2008年のファイナンシャル・クライシス(日本でいうリーマン・ショック)より大きな経済破綻が ここ2〜3年のうちに起こるとまで警告しているのだった。

借金をしているのはアメリカ政府だけでなく、国民も同様。アメリカでは現在、クレジット・カード負債が史上最高レベルに達しており、 2018年末には4兆ドル(約443兆円)に達する見込み。 2008年以降、一時減少傾向を見せたカード負債が徐々に増え始めたのは、失業率が低下し始めた2012年のことで、 トランプ政権になってそれほど給与は上がらないものの、「雇用が安定した」というコンシューマー・コンフィデンスが この負債増加の背景にあると言われるのだった。




ヴェネズエラについては マデューロ政権ではなく、 一般市民の救済措置として本格的に動きだしたのが 大量のビットコインを市民に直接 モービル・エアドロップするというプラン。既にヴェネズエラだけでなく、 政情不安な貧困国の市民を救うため多額の寄付が集められ、腐敗した政府を通さずに 救援資金を市民に届ける手段として、最も用途が幅広く 信頼性のあるビットコインが選ばれているのだった。
ヴェネズエラ自体もPetroという自国のクリプトカレンシー(仮想通貨)を経済救済措置としてクリエイトしたばかりであるけれど、 政府のクリプトカレンシーでは国債と同じなので、インヴェスターが手を出さないのは当然のこと。

日本では ”仮想通貨”といういかにも胡散臭いネーミングのせいで 仮想通貨を信頼しない人は少なく無いようだけれど、 ビットコインが生まれたのは 前述の2008年のファイナンシャル・クライシス(リーマン・ショック)を受けて、 国や銀行、そして国が発行するフィアット・カレンシー(ドル、円等)に頼らない金銭取引手段の必要性に迫られてのもの。
当時アメリカでは ”ベイルアウト” と称してアメリカ政府が何十億ドル分もの紙幣を印刷して大手銀行を救済した訳だけれど、 クリプトカレンシーは この時に高値を付けていたゴールド、プラチナなどの貴金属と同様に マイニング、すなわち金鉱同様の掘り出す作業が必要な通貨。 ビットコインのクリエーターと言われながら その実在が定かでない サトシ・ナカモトは、 ビットコインの発行に対してそれに見合う マイニングという労力の裏付けを設定した訳で、 そのマイニングの 改ざん不可能でオープンな記録がブロックチェーン。 したがって理論的な見地からは、最初から詐欺目的で作られたものでない限りは クリプトカレンシーの方が、 一部の金融のお偉方の決めた方針に従って、 ボタン1つで何千億枚でも簡単に印刷&流通されるフィアット・カレンシーよりも本来は信頼すべき価値がある通貨なのだった。

世の中では貧富の差が開いて、今では一桁のミリオネアが平民と言われる時代。 あたかも貧しい人々の財産を大金持ちが吸い取ったように見受けられているけれど、 2008年にあれだけ余分なドルが印刷されてアメリカでインフレが起こらなかったこと等を考えれば、そのお金が何処に行ったかは 容易に想像がつくところ。
もし再び大規模なファイナンシャル・クライシスが起こった場合に アメリカがデフォルトでもしようものならば、 現在のヴェネズエラのように 国民が100ドル札で折り紙をしていても全く不思議ではないのだった。

さて6月1週目のこのコラムでクリプトカレンシーについて書いて以来、 ご質問や問い合わせを何件か頂いたけれど、 私がクリプトカレンシーをサポートすることもあって、CUBE New York でも もうすぐクリプトカレンシーでのお支払いの受付をスタートする予定です。
クリプトカレンシーの未来を信じる、信じないは別として、 クレジット・カード会社や送金会社に知らず知らずのうちに支払っているフィー等を考えると、 使い方を心得ていたら たとえ儲けられなくても 節約になるのがクリプトカレンシー。
中には「クリプトカレンシーは盗まれるから危ない」という人も居るけれど、満員電車のスリ被害や 火事でタンス貯金が燃えたり、泥棒に盗まれるリスクや頻度と比べた場合、果たして現金がそれほど安全なものかは 私は疑わしいと思っているのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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