July 3 〜 July 9




World Cup Final Week ア・ラ・カルト



今日、7月9日の決勝をもってワールド・カップが終了してしまったけれど、ニューヨークではスポーツ・バーやリトル・イタリーのレストランはもちろん、 個人宅でも かなりウォッチ・パーティーが行われていて、私の住んでいるビルの中でも、私がウォッチ・パーティーに出掛けた友人のアパートのビルでも、 フードやドリンクを抱えた人と 何回もすれ違ったし、エレベーターの中でも 「どっちを応援しているの?」という会話が飛び交っていた。

私が知る限り、ニューヨークでワールド・カップを観ていた人の間では、今回の大会は「前回に比べてずっと楽しめた」という声が非常に多く、 その要因は、時差が少ないドイツでの開催とあって、放映時間が昼間であったことに加え、 試合の放映体制が 前回とは比較にならないほど改良されたことにもあるようだった。
事実、前回2002年大会では、決勝後の表彰セレモニーの前にABCが放映を打ち切ったことが非難轟々のリアクションを呼んでおり、 ブラジル優勝の余韻を楽しみたいサッカー・ファンはスペイン語のケーブル局にチャンネルを替えなければならなかったし、 その一方でゲームの解説者はイギリス人の場合が多く、アメリカ英語に慣れている人間には、発音が聞きにくいだけでなく、 その表現も不思議に思えるものが多かった。例えば、アメリカ人であれば「Great Game!(グレート・ゲーム!)」というところを、 イギリス人だと「Lovely Match! (ラブリー・マッチ)」などと言う訳で、 ブリティッシュ・イングリッシュというのは、アメリカン・イングリッシュを話す人にとっては、非常に知的に聞こえるものではあるけれど、 スポーツ解説として聞くには 少々「女々しい」という印象が拭えなかったのである。

それに比べて、今回はちゃんとABCが表彰セレモニーを最後まで放映したし、解説もアメリカン・イングリッシュになっていたけれど、 今回のワールドカップではヨーロッパ勢が圧倒的に優勢だったのは、結果が証明する通り。 データによれば、今大会がヨーロッパで開催される10度目のワールドカップであったけれど そのうちの9回は ヨーロッパの国が勝利を収めており、唯一の例外は1958年のスウェーデン大会でブラジルがチャンピオンに輝いていること。
またホスト国アドバンテージという点で見てみると、1934年のイタリア、66年のイングランド、74年の西ドイツ、98年のフランスがそれぞれ ホスト国としてチャンピオンになっており、移動が少なく、サポーターが多いというのは、ワールドカップでは有利に働くようである。

そのホスト国、ドイツは、今回3位に終わっているけれど、ワールド・カップの歴代ホスト国としては 「ベスト!」の呼び声が高く、各国のサポーターを親切に迎え、飲んで、食べて、楽しませたという点に関しては、アメリカを始め、各国のメディアが 賞賛する部分。したがって、今大会が ドイツにもたらした経済効果は大きいと指摘されるけれど、 その中で、唯一 「当てが外れた」と言われているのは、ドイツの風俗産業。
ワールドカップは、世界各国から多くの旅行者が見込まれるだけに、従業員を増やしてまで儲けようとした店は多かったとのことだけれど、 肝心の客足はサッパリだったという。やはりワールドカップで訪れる旅行者の多くは、家族連れや団体客で、試合後は ビア・ホールで大騒ぎするという 健康志向(?)。加えて、日頃訪れるドイツ人客も 当然のことながらワールドカップに夢中で、大会期間中の風俗エリアは 閑古鳥状態であったことがレポートされていたのである。

さて、今回のワールドカップは、ボールに関わらないプレーまでが、複数アングルのカメラで捉えられており、 今日のファイナルでフランスのジダンが見せたヘッド・バット(頭突き)から、審判も騙されるイエロー・カード・プレーまでが、 クリアなスロー映像で何度となく リプレイされていたけれど、フィールドでプレーをしていなくても、ワールドカップでは「ごまかしが利かない」ことを 学ばされたのが、現在、アメリカのメジャーリーグ・サッカーのニューヨーク・レッドブルスに所属するユーリ・ジョルカエフ。
ジョルカエフは、98年フランス大会でジダンと共にフランス・チームのミッド・フィールダーを務めたフランス人プレーヤーであるけれど、 その彼が、自分の所属するレッドブルスのゲームを「家族の緊急事態」と言って欠場し、先週末 こっそり向ったのが フランクフルトで行われた フランスVS.ブラジル戦のクォーター・ファイナル(準々決勝)。 ところが彼はスタジアムで観戦する姿をTVカメラで映し出されてしまったために、所在がバレてしまい、現在 レッドブルスは 彼の処分を検討しているところだという。
「プレーヤーまでもが 試合を抜け出してワールドカップを観に行ってしまった」 というのは、メジャーリーグ・サッカーにとっては 大きな屈辱であるけれど、気持ちが分からないでもないところが アメリカ・サッカー界の悲しい現実であったりする。

でも今週の世の中は、北朝鮮のミサイル発射実験に始まり、ニュージャージーからローワー・マンハッタンを繋ぐPATH(パス)・トレインが アルカエダのテロの標的にされていたというニュース、アメリカ史上最悪の粉飾決済を行ったエネルギー会社、エンロンのケネス・レイ会長が 一般投資家に対して罪を償うことなく、64歳で死去したニュースが報じられたかと思えば、ペプシ・コーラが コカ・コーラの製品情報や フォーミュラを盗むために$1.5ミリオン(約1億7500万円)を費やしてスパイ行為をさせていたことが明らかになり、 週末には今年70歳になるテナー、ルチアーノ・パバロッティがすい臓がんの摘出手術を受けたことも伝えられ、 政治、ビジネス、エンターテイメント、全てにおいて物々しい1週間であったし、 スポーツ界でも ワールドカップ以外に、ウィンブルドン、ツール・ド・フランスなど大イベントが目白押しだったのが今週。
ルチアーノ・パバロッティについて言えば、90年に行われたワールドカップ・イタリア大会の前夜祭で、プラシド・ドミンゴ、ホゼ・カレラスと共演し、 この時のパフォーマンスと それを収録したCDで、3大テナー・ブームを巻き起こしたのは、覚えている人も多いはず。 このうちプラシド・ドミンゴは 今回のワールドカップでも、パフォーマンスを行う顕在ぶりを見せているけれど、 パバロッティについては、一時 200キロを超えたと言われる体重が、健康障害の要因と指摘されて久しい存在である。

「肥満は健康の大敵」というのは 改めて説明する必要もないけれど、 ウィリアム・パウンドストーンの著書「ビッグ・シークレット」によれば、先述のペプシが大金を費やしたコカ・コーラのフォーミュラは、99%は砂糖水で 残りがヴァニラ、シナモン、オレンジ、レモン等。 したがって、飲みすぎれば肥満の原因になるのは容易にうなづけるものとなっている。
昨今のアメリカでは、子供達の肥満が深刻になってきたために、 各ソフト・ドリンク・メーカーが学校の自動販売機から、自主的にコカ・コーラやスプライトといった砂糖を多分に含むドリンクを排除し、 代わりにミネラル・ウォーターを入れるようになってきているけれど、これもソフト・ドリンク業界がボトルド・ウォーターのビジネスに 参入しているからこそ実現したことで、ビジネスとは 決してきれい事だけでは片付けられないものである。

さて、ワールドカップを熱心に観ていた人ほど陥り易いのが ポスト・ワールドカップ・シンドローム(症候群)と呼ばれるもの。
これはワールドカップが終了し、エキサイティングな試合が見られない物足りなさ、次の試合を楽しみにしたり、ウォッチ・パーティーを 企画する楽しみがなくなってしまうことによる精神的な落ち込みや虚脱感を言うけれど、個人的には、 これを味わう程にワールドカップをエンジョイしたというのは、決して悪い事ではないと思っていたりするのである。



Catch of the Week No.1 July : 7月 第1週


Catch of the Week No.4 Jun : 6月 第4週


Catch of the Week No.3 Jun : 6月 第3週


Catch of the Week No.2 Jun : 6月 第2週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。