July 7 〜 July 13 2008




” モーゲージ・クライシス & アイフォン 3G ”


今週も、引き続きヤンキーズのアレックス・ロドリゲスの マドンナを巻き込んだ離婚騒動が大きく報じられていたアメリカ。
でも 最も深刻なニュースとして伝えられたのは、アメリカの住宅ローンの元締めとも言えるフレディ・マックとファニー・マエという大手2社の株価が 今週に入ってから大暴落を見せたこと。これによって 2008年に入ってから、2社の株価はそれぞれ70%前後値下がりしたことになったけれど、 人々にとってあまり馴染みのないフレディ・マックとファニー・マエがどんな会社かと言えば、 早い話が 金融機関から住宅ローンを買い取ったり、その保障をしては、 それをボンドにして投資家に売ることによって資金を調達する機関で、 住宅ローンを商品に例えるとすれば、その卸売りを金融機関に対して行っている企業である。
この2社はアメリカ政府によって設立された、言わば ”半官半民” のような特殊な存在であるため、 「経営が行き詰まることがあっても、政府が救済するであろう」という見方が根強く、 2社はこの立場を利用して ことにここ数年急速に ビジネスを拡大し、エグゼクティブが多額の給与を受け取る一方で、 投資家達にとって 同2社は 安全かつ 効率の良い投資対象として見なされてきたのであった。
でも、それもサブプライム問題が浮上するまでの話。 この2社の株の暴落を受けて、今週のウォール・ストリートは 今年初めにベア・スターンズが崩壊した時と 同様の緊張が走ったとさえ言われていたのだった。
そもそも フレディ・マックとファニー・マエという2社だけで 所有、もしくは保障をしているアメリカの住宅ローンは、日本円にして567兆円に相当するもの。 なので、もしこの2社が破綻するようなことがあれば、アメリカ中のありとあらゆるローン、住宅だけでなく、ビジネス・ローンや クレジット・カードのローンにまで影響を及ぼすのはもちろん、引いてはアメリカ経済に大打撃を与えるのは容易に想像が出来ること。
投資家の間では、政府が早期に2社の救済に乗り出すことを 望む声が聞かれていたというけれど、もしそれが実現した場合、 政府が投入することになるのは アメリカ国民の血税な訳である。 このため、一部のエグゼクティブや大金持ちが さんざん好き勝手に儲けたシワ寄せが一般庶民に降りかかるという 最悪のシナリオを危惧する記事が今日、日曜付けのニューヨーク・タイムズ紙やインターネット上のファイナンス・サイト などに掲載されていたのだった。

その一方で、株価ではないものの 金曜日にダウンして、アメリカの多くの人々を困惑させたものはと言えば アップル・コンピューターのメイン・サーバーである。
この日 7月11日は、日本同様 アメリカでもアップルの新バージョンのアイフォン、” 3G” の発売日。 なので、昨年のアイフォンの発売日同様、アップルの直営店や アイフォンを5年間独占で扱う携帯電話会社、AT&Tのショップには、徹夜組を含む多くの人々が 誰よりも早く アイフォン 3G を手に入れようと行列を 作っていたのだった。
でも今回が 昨年の販売時と異なる部分が2点あって、まずその1つは購入したアイフォンを 海外に転売されたり、 別の携帯電話会社で使用されてしまうのを防ぐために、購入時にストアでアクティベートしなければいけない という部分。 これはアイフォンのパートナーである AT&T の利益を考慮して、アイフォンをAT&T以外のネットワークでは 使用出来なくするのに非常に効果的な手段と見なされていたのだった。
加えてもう1点、昨年の販売時と異なる点は、 この発売日を 既存のアイフォン・ユーザーに 提供する アップグレード・ソフトウェアの ダウンロード解禁日としていたこと。 アメリカ国内だけで 600万人と言われるアイフォン・ユーザーであるけれど、これらの人々がアイフォンをアップグレードするためには、 アイチューンを通じてアップルのサーバーにコネクトしなければならず、 この多数のアップグレードと、新規購入者の多数のアクティベーションが重なった結果、アップルのサーバーはダウンしてしまい、 復活してからもスピードが遅くて話にならない という状態に陥ってしまったという。

結局アップルのサーバーは午後4時頃には本来のスピードと機能を取り戻したと言われるけれど、 その間、アイフォン 3Gを購入した人々は せっかく買ったアイフォンを使うことが出来なかったのはもちろんのこと、 アップグレードを試みた既存のユーザー達は、アップグレードが完了していないためにアイフォンが使えないという状況。 またストアに行列していた人々は、アクティベーションに時間が掛かっていることを説明されないまま 長時間 待たされ続けることになり、中には人々が怒り出してしまったストアもあったようだった。

さて、以前のこのコラムに書いたように 発表のプレス・カンファレンスの最中にアップルの株価が10ドルも下がって、 ウォール・ストリートからは 「期待外れ」 の厳しいリアクションを受けていたのが 新しい アイフォン 3G。
その最大のセールスポイントは、価格が 8ギガ・バイトのメモリーで199ドル、16ギガなら299ドルと手頃になったことで、 特に 昨年発売されたアイフォンが8ギガ・バイトのメモリーで 600ドルだったことを思えば、大バーゲンと言えるお値段。(その後、アップルは同モデルの値下げに踏み切っている)
また、 3Gは以前の半分のスピードでウェブサイトをダウンロードすることが出来、スクリーンは明るく、以前にも増して見易い上に、 サイズが若干小さくなって、以前よりも軽量。後面に滑らかなカーブが付けられたお陰で、以前より手でホールドし易くなっているという。
またアイフォンの問題点と言われた バッテリー・ライフも長くなり、 さらにウェブをブラウズしながら電話が出来るという機能も新たに加わっているという。
でも以前のモデル同様に、ヴォイス・ダイヤリング・システムやコピー&ペーストの機能、ビデオ録画 といった現在の 携帯電話では スタンダードとなっている機能が欠落している上に、 メモリーカード・スロットが付いていないというのは あまり評判が良く無い部分。 とは言っても 携帯端末機のMP3プレーヤーとしては最高音質であると同時に、ブラックベリーよりも 複数言語の切り替えが簡単に出来るという。
またユーザーにとって大きな魅力となるのが、もう直ぐ立ち上がるソフトウェア提供のためのオンライン・カタログ、「アイフォン APP ストア」で、 これを利用すればコンピューターに接続することなく、アップ・グレードや新しいソフトウェアのダウンロードが可能になるという。

こうした様々なフィーチャーやアップグレードがあるものの、専門家の間では「昨年発売されたオリジナルに比べて、 特に革命的な商品では無い」と指摘されるのが、アイフォン3G。 加えて 一部で指摘されるのは、価格が下がってもサービス料金がアップする分、決して安い携帯端末機では無いということ。
まず、新しいアイフォンは AT&Tの3G(サード・ジェネレーション)ネットワークを利用するため、月々の基本料金が60ドルから70ドルにアップするという。 ちなみにこの基本料金はアイフォン 3Gに限った料金ではなく、AT&Tの3Gネットワークを利用する携帯電話 全てに共通した料金であるという。 でもこの70ドルにタックスやその他のフィーが加わる上に、テキスト・メッセージ(携帯メール)料金として最低5ドルが加わることになるという。 したがって、アイフォン 3Gの購入と 同時に AT&Tと交わされる2年の契約を終了する時点では、以前のアイフォンを使用する2年間よりも 出費が多くなっている計算であるという。
そして使用から2〜3年が経過すればアイフォンのバッテリーの入れ替えを行うことになるけれど、これには86ドルを支払わなければならないわけで、 お手頃価格になった3Gとて決して安いとは言えないのが実際のところである。

さらに言えば、AT&Tの3Gネットワークは全米50州のうちの僅か16州にしか普及しておらず、 その16州の中でも ネットワークがカバーしているのは 2〜3の街のみ。 この3Gネットワークのエリア圏内でなければ、アップルが広告で高々と謳っている2倍のインターネットのスピードは実現しないという。
加えて その2倍のスピードを実現するために、3Gネットワークではバッテリーを2倍消費するとのことで、 バッテリー・ライフが伸びたと言われる同モデルでも 5時間の使用がマキシマム。 したがって、3Gエリア圏外や、インターネットを使う時以外は 3Gフィーチャーのスイッチをオフにしておかないと、 どんどんバッテリーが減っていってしまうという。

でも、今のアメリカでは 人々が行列して買い求める商品が登場し、そのサービスに喜んで 以前より高額なフィーを支払おうとしているのは、 景気の視点からは歓迎すべきこと。それ以外は先述のモーゲージ・クライシスのように景気の先行きを案じさせるニュースが 圧倒的に多いのである。
その1つといえるのが、 アメリカで過去数年、最もアグレッシブに成長を遂げていたはずの カジュアル・ウェア 小売チェーン、 スティーブ & バリーが 今週に入って 倒産に追い込まれたという報道。 このスティーブ & バリーは、以前CUBE New York のファッション・ニュースのセクションでもお伝えしたサラー・ジェシカ・パーカーの クロージング・ブランド、 ” ビットゥン ” を手掛けている会社で、他にもヴィーナス・ウィリアムスや 女優アマンダ・バインズの ブランドも製作しているビジネス。
年商 11億ドル(約120億円)と言われ、既存店舗の売り上げも20%伸ばしていたと言われる スティーブ & バリーであるけれど、過去4年間に200店以上というスピード出店を あまり好ましくないロケーションで続けてきたのに加えて、 利益を削りすぎた価格設定が災いして、業績が急激に悪化。 そして 同社にローンや買収を持ちかける企業も現れなかったため、あれよあれよ という間に倒産してしまい、 業界関係者さえもを驚かせる結果となっている。

その一方で、今週報じられていたのが サブプライム問題が深刻なカリフォルニアの一部の地域でハエが大量発生しているというニュース。
モーゲージ(住宅ローン)を支払えず、オーナーが手放した家に買い手が付かないのはサブプライム問題の 典型パターンであるけれど、カリフォルニアの そうした家の中には 場所柄、 庭に小さなプールがある家が多いという。
このハエの大量発生は それらのプールに張ってある水が原因で起こっているもので、長い間 買い手が付かず放置されて、 汚水と化したプールの水からは大量のハエが生まれているという。
この状況を改善するため、現地では水の表面に油を撒いたりしているようだけれど、水を抜くとプールのひび割れなどに繋がるのだそうで、 近隣に空家が多いエリアの住人は、この夏、ハエの問題に悩まされているという。

さて 話は全く変わるけれど、個人的に今週最もビックリしたものと言えば、ルーサー・バーガーと名付けられた写真の右のチーズ・バーガー。
これは日本にも進出しているクリスピー・クリームのドーナツをバンズにしてチーズ・バーガーに仕上げたもので、 これが食べられるのが、他でもない グーグル社内 のカフェテリア。 見ただけで、脂っぽいルーサー・バーガーであるけれど、興味半分に食べた中にはヤミツキになる人が少なくないという。
これを見て 思い出したのが 肥満とドラッグ中毒が原因で死亡してしまった エルビス・プレスリー の好物であったと言われるサンドウィッチ。 プレスリーは、トーストしたパンの間にピーナッツ・バターとフルーツ・ジャムをたっぷり塗って、 脂が滴るジューシーなベーコンを挟んで 食べるのが大好きであったという。
でもこのサンドウィッチにしても、耳で聞いていると気持ちが悪いコンビネーションであるものの、 実際に試食した友人は 「意外に美味しかった」と語っていたのだった。
日本とは異なり、完全にブームが去ってしまって久しいアメリカの クリスピー・クリームであるけれど、 スシからチャイニーズまで、ありとあらゆるフードが揃うことで有名な グーグルのカフェテリアで、 こんな形でカルト的な人気を博していたというのには、驚いたと同時に 興味深いとさえ思えてしまったのだった。





Catch of the Week No. 1 July : 7 月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 June : 6 月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 June : 6 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 June : 6 月 第 3 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。