July 5 〜 July 11 2010




” Don't Follow Their Advice ”


今日、7月11日で長かったワールドカップも全68試合を終えて閉幕したけれど、結果はベネディクト・ローマ法王が予想した通りスペインの勝利。 一方アメリカのジョー・バイデン副大統領は、「いつも自分の予想は外れる」と前置きをしながら オランダの勝利を予想していたのだった。
私はこの試合を友人宅のウォッチ・パーティーで観ていたけれど、そこに居たサッカー・ファンの共通した意見は、 決勝戦が今回のワールドカップの試合の中で一番退屈だったということ。 実際、延長戦に入ってからは、スペインが得点するまでは、皆ゲームに集中できなくなっていたほど 面白みに欠く展開に感じられていたのだった。

さて、先週から今週に掛けて アメリカで最も大きく報じられていたのがロシア人スパイ逮捕のニュース。
スパイと言っても、逮捕された10人のロシア人はごく普通の移民で、普通の生活を営みながら、アメリカの一般の人々の行動や メディアの様子をロシアのエージェントにレポートしていた程度のスパイ活動。 そのコミュニケーションの方法なども幼稚なまでにシンプルで、アマチュア・レベルであることが指摘されていたのだった。
では、そんなアマチュア・スパイが一体何の役に立つのかという疑問が出てくるけれど 彼らの役割はソサエティに溶け込んで、人脈を作ること。そしてその人脈の中から有益な人物とコネクションを作り、 後にその人物にKGBがコンタクトできるようにする、もしくはその人物と友人関係になり、 世間話の中から機密事項やその鍵となりうる事実を聞き出すのが仕事であったという。
逮捕された10人のスパイの中で、一躍スター的存在になってしまったのが、フレンズ時代のジェニファー・アニストンにそっくりと言われる 28歳の美女、アナ・チャンプマン(写真左)。 彼女はそのヌード写真がイギリス人の元夫によってインターネット上で公開され、そのベッドマナーまでもが報道されるようなセンセーションぶりだったけれど、 そのアナ・チャップマンはニューヨークで不動産ビジネスを行っていたビジネス・ウーマン。 その美貌を生かして、ソーシャル・コネクションを広げてきた彼女のストーリーは、 ハリウッドで映画化されるという噂さえ飛び交っているのだった。
結局、逮捕された10人のスパイは、ロシア側の提案で ロシアが拘束している4人のアメリカ人スパイと 交換する形で 国外追放となったけれど、アナ・チャップマンについてはメディアが 「追放はもったいない」として 惜しまれていたのだった。


もう1つ今週のアメリカで大きな話題となっていたのが、NBAのスター・プレーヤーでフリーエージェントとなったルブロン・ジェームスの移籍先。
彼はNBAのキャリアがスタートして以来、クリーブランド・キャバリアーズに所属してきており、もちろんキャバリアーズも 多額の契約金を積んで その契約の更新をオファーしていたけれど、それ以外にもシカゴ・ブルス、マイアミ・ヒート、ニューヨーク・ニックスなどが 彼に移籍のオファーをしていたために、その争奪合戦が行われていたのだった。
彼の移籍がメディア・サーカスと言われるほど大きな注目を集めていた理由の1つはNBAのチャンピオンシップが地元にもたらす経済効果。 ニューヨークはホーム・チーム、ニックス(正式名称はニッカーボッカーズ)がチャンピオンシップを争えるレベルから遠ざかって久しいけれど、 もしルブロン・ジェームスが移籍して優勝した場合、その経済効果は60億円と言われているのだった。
このため、ブルームバーグ市長や、ニックスの大ファンとして知られるスパイク・リー監督がルブロンのニックス移籍のために キャンペーンを続けていた一方で、シカゴ・ブルスへの移籍のためには 何とオバマ大統領が 自らルブロンに2度も電話を掛けたことが伝えられており、 一国の大統領まで巻き込んだ移籍劇になっていたけれど、オバマ大統領についてはそんな時間があったらもっと別の問題に取り組んで欲しいというのが 国民の偽らざる気持ちなのだった。
そのルブロン・ジェームスが移籍先を発表したのが 7月8日、木曜午後9時にESPNが放映した生中継の特番。 彼がたった一言「マイアミ・ヒート」という移籍先を言うためだけのイベントを1時間に引き伸ばした同番組は、 ESPN史上 最高の視聴率を記録したのだった。
でも、ルブロン・ジェームスをずっとサポートしてきたクリーブランド・キャバリアーズのファンは、この発表が行われた途端に 失望と同時に 怒りを露わにしており、 彼のユニフォームに火をつけて燃やしている様子が報じられた他、 ニューヨークでも ニックス・ファンが 「ルブロン・ジェームスにはニューヨークに来るだけのガッツが無い」と 彼をこき下ろすようなコメントをしており、当然のことながら喜んだのはマイアミのファンだけ。
このメディア・サーカスを巻き起こした移籍劇によって ルブロン・ジェームスは各都市に敵を沢山作ったことが指摘されているのだった。


さて今週私は、友人のUCLA時代のルームメートがウエスト・コーストから来ているというので、そのルーム・メイトを含む 女性4人でディナーをしていたけれど、その時話題になったのが ニューヨークの方がシングル・シーンというものが確立されていて、 ウエスト・コーストより シングルで居るのが心地好いという事実。
このことは私はウエスト・コーストに移った友人からよく聞くことだったけれど、その友人の元ルームメイトは 30歳のバースデーを ”シングル・シングル” (ボーイフレンドの居ないシングル) で迎えることに抵抗を感じて、 デートのコーチング・クラスに通い始めたというのだった。
一体 このデートのコーチングで何が学べるかと言えば、「パーティーの席、バーやクラブなどで どうやって男性にアプローチをするか」、 「携帯番号を交換した後、どうやってデートに持ち込むか」、「ファースト・デートではどうやって振舞うべきか?」という デート・マニュアルの内容をそのままカリキュラムにしたような内容。 中でも、一番大切と見なされているステップは ”コミュニケーション” で、このコミュニケーションを学ぶために 2時間が費やされているというのだった。
コミュニケーションと言えば、現在アメリカの若い男女間で最も一般的、かつ重要なメディアとなっているのが テックス・メッセージ=携帯メール。 なので 2時間を費やしてボーイフレンドになるかも知れない男性への携帯メールの打ち方を学んでいるのが ”コミュニケーション”のステップなのだそうで、そんなシンプルな行動について どうやったら 2時間もレクチャーが出来るのか?に 興味があった私は、逐一その内容を聞いていたのだった。

そのレクチャーによれば、女性の携帯メッセージは ”スリー S” が鉄則で、そのスリーSとは ”Short、Simple & Sweet (ショート・シンプル&スウィート)” なのだという。
そして理由が無い限りは自分から2回続けて携帯メールを送付せず、相手の返事を待つこと。 相手が時間を置いて携帯メールをしてきたら、直ぐに返事をすると 携帯電話を睨み付けて相手のメールを待っていたように思われるので、 最低でも10分は待って返事をすること。 そして、よほどの事が無い限りは携帯メールの返事として 電話を掛けないようにすること、といった”基本事項”を学んだ後、 女性が男性に送るべきでない携帯メールの内容をレクチャーされたという。
では、女性はどんなメールを男性に送るべきではないか と言うと、 タブー視されるのが ワンワード・メール。 ”Hey”、”Hi” というのがその典型なのだそうで、 私はそんなメールを受け取ったことも、送ったことも無いので、「何でそんな意味の無いテックスを送るの?」と訊いてしまったけれど、 食事の場に居たもう1人の女友達は以前、パーティーで出逢った後、一度デートした男性に「Hey!」という一言メールを送付したことがある と言っていたのだった。

彼女の場合、どうしてそんな内容の無いメールをしたかと言えば、デートの後 男性が連絡をくれなくなったので、 女友達に薦められて 相手の出方を見ようとしたためだそうで、 お互いにそれほど知らない仲であるだけに、携帯メールでコミュニケートするような話題が無かったので、 とりあえずは「Hey!」とメールして相手が何か言ってくるかをチェックしようとしたのだという。
彼女は彼女で「それってタブーだったの?」と驚いていたけれど、西海岸から来た友達の元ルームメイトによれば、 その「Hey!」メールを受け取った殆ど男性の反応は 私の反応と全く同じで、「何でこんな意味の無い携帯メールを送ってくるんだろう?」というもの。 なので「頭が悪いと思われるから止めた方が良い」というのが そのレクチャー。
さらにレクチャーでは、多くの男性は「Hey!」というメールに対して 「Hey Back!」という 同じように意味の無いテックスを返してくる場合が 殆どだそうで、返事が返ってこない場合も少なくないのが ワンワード・メールであるという。
それを聞いた「Hey」メールを送付した友達は、頭を抱えながら 彼女も「Hey Back!」メールを受け取ったと認めていたので、 このコーチングは確かに 的を得ているように思われるのだった。

でも的は得ていても、常識で分かりそうなことばかりをレクチャーしているのがこのクラスで、 「Hey」や「Hi」の替わりに「How are You?」、「Hey, What's New?」とメールするように と 教えていることにも呆れたけれど、 それ以上に、お金を払って このレクチャーを受けている女性が沢山居るという事実に 私はビックリしてしまったのだった。
女友達に言わせれば、もし相手がよく知る友達であれば 「Hey」などというメールを打たずに、久しぶりだったら「How are you? I miss you!」などと 携帯メールを送れるけれど、相手が1度デートして以来 連絡をして来ない男性、しかもこちらは2度目のデートがあると期待していたりする場合、 どうコミュニケーションをするべきなのか?の まともな判断ができなくなって そんなメールを送ってしまうのだという。
加えて彼女の場合、そのタブー・メールを送付するに至るに前には、 もう1つのタブー事項、 ”女友達に相談する” という プロセスが絡んでいた訳であるけれど、 私が年下の女友達に何度と無くアドバイスしていることの1つが、「男性の問題は、男性にアドバイスを求めるべきで、女友達のアドバイスほど あてにならないものは無い」ということ。
これは別に女友達がジェラシーで、友達の恋愛が失敗するように仕向けているという意味ではなくて、 女性ほど男性を理解してない生き物はこの世に存在しないため。 なので、女友達は勝手な憶測や思い込みでアドバイスをすることになるけれど、これに対して男性は 自分の経験や男性としての考えで 状況を判断してアドバイスをしてくれるもの。
加えて男性特有のシンプルな思考回路で「ダメなものはダメ」と言ってくれる分、 ありもしない希望を繋ぐ女友達のアドバイスに比べて 時間やエネルギーを無駄にしないで済むし、後で自己嫌悪に陥るような みっともない失敗もしないで済むというのが私の考えなのである。
実際、ウエスト・コーストから来た友人の元ルームメートのコーチング・インストラクターも男性だそうで、 彼自身のデートの経験から女性にアドバイスをしていると語っていたのだった。


2月2週目のこのコラムで 心理学者が「恋というものは愛情の始まりというよりは、 ” ある種の錯乱状態 ”と表現している」ことに触れたけれど、 今やこうした”錯乱状態” にある男女をターゲットに、まともな第三者から見れば ”当たり前 ”と思えるような 携帯メールの打ち方、 デートのマナー、褒め言葉として言ってはいけないこと などをアドバイスするレクチャー、DVD などが ドル箱ビジネスとして成立している現状は驚くべきもの。
この状況を考えているうちに 思い出したのが、作家名までは覚えていないけれど、12歳の時に読んだ日本のSF短編小説。
ストーリーは 宇宙飛行士が長年の宇宙生活を終えて地球に戻ってきて、彼の帰還を祝う盛大なVIPパーティーに出席するという設定。 でも宇宙飛行士は社交の場を遠ざかっていたため、パーティーのマナーや どんなスピーチや会話をしたら良いか などが全く分からない状態。 そこで知人に相談したところ、薦められたのが小さなイヤフォンの着用。 そのイヤフォンからは 必要なアドバイスがタイムリーに送られて来て、「ここで こういうジョークを言って、 ここでこの人に挨拶をして・・・」といった的確なアドバイスを受けた彼は、自分でも最高の出来と思える 完璧な立ち振る舞いとマナーでパーティーを乗り切ることが出来たのだった。
そこで、知人に「これ(イヤフォン)が無かったら、あんなに上手く振舞うことは出来なかったよ。ありがとう」とお礼を言ったところ、 知人のリアクションというのが 「君だけじゃないから大丈夫」、 「あのパーティーに来ていたゲストも全員 イヤフォンのアドバイス通りに振舞っていたんだ」というもので、それが短編のエンディングになっていたのだった。
私は このエンディングが何とも言えずにショッキングだったので、同小説を時々思い出してきたけれど、 イヤフォンこそは付けていなくても、現在のデートのコーチング・クラスはまさにこの状態。
インターネット上のアドバイスによれば、女性はデートで好印象を与えるためには腕を組むことさえ許されないし、 男性は女性の目を見つめて話さなければならず、視線を唇や胸元に下ろしてはいけないことになっているのだった。

でもありとあらゆる デートや恋愛のコーチング・サイトやレクチャーに登場する極めつけのアドバイスは、「Be Yourself」 すなわち 「自分らしくあること、自分らしく振舞うこと」。
あまりに一般的なアドバイスになっているので、今更言われても聞き流してしまうけれど、 ふと考えれば こうしたデートのコーチングは、「アレをするな、コレを言うな、ああ言え、こうしろ」と さんざん人の行動や言動を規制しておいて、最後に最も大切な事として 「自分らしく振舞うように!」 というのは あまりに矛盾していると言えること。
そんなアドバイスにお金を払うよりも、私の見解で 恋愛にとって大切なのは 「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」の精神。
沢山の人に出会って、失敗を恐れず トライし続ける方が、他人が作ったマニュアルで自分を縛り付けるより 遥かに 自分を磨くことが出来る上に、学べることが多い というのが私の意見なのである。





Catch of the Week No. 1 July : 7月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 June : 6月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 June : 6月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 June : 6月 第 2 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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