July 8 〜 July 14, 2013

” Body Issue & Lifespan ”


今週のアメリカのメディアでは、週明けに盛んに行なわれていたのが、 先週土曜日にサンフランシスコの空港で起こった アシアナ航空機着陸失敗事故の原因究明報道。 そんな中、航空専門家が指摘していたのが、昨今の航空機事故において、死者の数が激減しているという事実。
今回のアシアナ航空の事故では2人の死者を出しているけれど、今や航空機内のインテリアはシートから、 カーペットまで全て不燃性の素材が用いられ、非常口からの脱出が 効率良く、迅速に行なえるようにデザインされているため、 航空機が着陸直後に爆発炎上でもしない限り、乗客生存の可能性がどんどん高まっているとの事なのだった。
専門家が、万一同様の事故に遭遇した場合にアドバイスするのは、まずは荷物を捨てて逃げること。 そして機内で火災が起こった場合、不燃性素材から発せられる有毒ガスは 天井に向かって上がって行くので、頭を低くしながら逃げること。 さらに逃げる際に、ハンカチやタオル(水を含んだ状態のハンカチやタオルが最も理想的)を 鼻と口に当てることが出来れば 尚良いそうで、 こんな些細な事で、5分間でも避難可能な状態が長らえた場合、生存確率が激増することを 指摘しているのだった。
そもそも着陸事故後に、生存者が命を落とす最大の要因となるのは 有毒ガスと炎の熱。 このため 皮底の靴、天然素材の衣類の着用も 生死を分けるポイントとなり得るもの。
女性の場合、ストッキングを着用していると、それが熱で溶けた火傷のせいで、歩行不可能になって死亡するというケースは、 航空機事故だけでなく、一般の火災の場合でも指摘されているのだった。

一方、週末に入ってからアメリカで大報道になったのは、 2012年2月26日にフロリダで 地元住宅区域の警備、 ジョージ・ジマーマン(29歳)によって射殺された黒人ティーンエイジャー、トレイヴォン・マーティンの事件の判決のニュース。
当時 このコラムでもお伝えした事件は、フロリダの母親宅に一時滞在していた17歳のトレイヴォン・マーティンが夜間、セブン・イレブンに買い物に出かけたところ、 彼を 不審者だと思った ジマーマンに尾行され、その後 2人は 口論、もみ合いとなった末に、 ジマーマンがトレイヴォンを 正当防衛を理由に射殺したというもの。
トレイヴォンは武器を所持しておらず、そのポケットの中に入っていたのはキャンディとアイス・ティーのボトル。 しかしフロリダの現地警察が、ジマーマンの正当防衛を覆すだけの証拠がないとして 彼を不起訴処分としたことから、 これを不服としたトレヴォンの両親が ツイッター上でスタートしたのが ジマーマンの逮捕と起訴を求める署名運動。 そしてこれが引き金で、事件がメディア・サーカスに発展していったのだった。

以来、多くの黒人セレブリティが ジマーマン起訴のムーブメントに同調した一方で、オバマ大統領も 同事件に言及し、その社会的プレッシャーを受けて現地警察は事件から 約6週間後に ジマーマンを第二級殺人罪で起訴したのだった。
この事件の裁判がスタートしたのは、6月後半からで その判決が下されたのが7月13日、土曜日の夜。 全米のニュース・メディアが見守った この判決は 「無罪」で、 以来、これを不服とした人々が アメリカ各地で抗議や暴動を起しており、 オバマ大統領は 「判決を冷静に受け止めるように」と 人々に呼びかけていたのだった。


私は 法学部を出ていることもあって、裁判には非常に興味があるので、これまでアメリカの様々な裁判のニュースをフォローしてきたけれど、 トレヴォン・マーティン裁判に関しては 検察側の立証があまりに弱過ぎるので、裁判というシステムの下で 過去の判例と照らし合わせた場合、 陪審員の下した判決は、”妥当” というのが個人的な感想。
裁判では 「ジマーマンの発砲が正当防衛であったか?」が大きな争点となっていたけれど、 私がこれまで見てきたアメリカの裁判の中で、最も茶番と言える光景が展開されていたのが、 弁護側、検察側が共に、 事件当時、地元住人が警察へ通報した際に バックグラウンドで 「Help」と叫んでいた声が、 それぞれジマーマンの声、トレイヴォンの声であると立証しようと試みた際。
助けを求めているのがジマーマンの声であれば 彼の正当防衛が立証され、トレヴォンであれば それが崩れる訳であるけれど、 この「Help」という叫び声は、声門鑑定の専門家が機械を使っても どちらの声だか判別できない音声の悪さ。 にも関わらず 弁護側、検察側がそれぞれ ジマーマン、トレイヴォンの母親や友人達を次々と証言台に立たせて、 「誰の声であるか?」と訪ねる様子は、国民の税金を使ってこんな馬鹿げたことに時間を割いて良いのだろうか?と 真剣に考えさせられる様子なのだった。

結局のところ、この事件は目撃者もなく、状況証拠だけに頼る罪の立証。 事件の日に 本当に何が起こったかを知る2人のうちの1人が死去し、もう1人が罪を裁かれる身となれば、 恐らく その本人さえも 自分が有利なように記憶を書き換えているはずで、そうなると この事件の真相は 今となっては誰にも分からないのだった。
そんな状態で 行なわれる裁判というのは、弁護側、検察側のどちらが陪審員を説得できるか?の対決でしかない訳で、 どちらに軍配が上がったとしても、それが事実とは言えないし、それが正しいとも言えないのだった。

この判決前に、アメリカ人の友達と トレヴォン・マーティン裁判について話していた際、 友人が 黒澤監督の映画「羅生門」を持ち出してきたけれど、 同作品は、私がこれまで アメリカ人と会話をしていて、最も頻繁に浮上する日本映画。
その中では、3人の事件の当事者が それぞれ事件について全く異なる証言をし、 最後に その一部始終を目撃していた人物が真相を語るという展開で、言うまでもなく黒澤監督の代表作の1つ。 友人と私の共通した見解は、そんな当事者とは全く利害関係の無い第三者が 一部始終を目撃している、 もしくは事件の全容がビデオに撮影されているケースでない限り、全ての同様の事件において 正当な裁きは難しいというもの。
でも、その一部始終を目撃した第三者が ドラッグを常用していたり、何らかの前科がある場合、 裁判では 簡単にその目撃証言の信憑性を覆すことが出来てしまうのも また事実なのだった。




話は全く変わって、今週 もう1つメディアで大きな注目を集めていたのが、スポーツ・ケーブル局、ESPNが出版するESPNマガジンの ボディ・イッシュー。
毎年、ESPNマガジンのボディ・イッシューでは アメリカのアスリート達が ヌード姿でその肉体美をアピールすることで知られていて、 今年も、女性レースカー・ドライバーのコートニー・フォース(写真上 上段 左側、25歳、身長172cm、体重58s)、NFLサンフランシスコ・フォーティーナイナーズの クォーターバック、コリン・カパーニック (写真上 上段 右側、25歳、身長193cm、体重104s)、 テニス・プレーヤーのジョン・イスナー、ビーチ・バレーボールのオリンピック・ゴールドメダリスト、ケリー・ウォルシュ等が、 鍛えられたボディでグラビアにフィーチャーされていたのだった。
中でも 今回最も話題が集中していたのは、77歳にして とても年齢を感じさせない 若々しいボディを披露していた ゲーリー・プレーヤー (写真上 下段、身長168cm、体重66s)。

ゲーリー・プレーヤーは、数多いプロ・ゴルファーの中でも PGAツアー、シニア・ツアーの双方で、グランドスラム・タイトルを全て制覇した 唯一の人物。彼は今も 広告に出演し、ゴルフ・コースをデザインし、年に7ヶ月はビジネス目的の旅行をするなど、現役時代と変わらぬ忙しさ。
「人間の身体は、100歳までは生きられるように出来ている」と語るゲーリー・プレーヤーは、エクササイズをする度に、 頭の上から 足の先まで、全身を鍛えているというけれど、 彼曰く 身体の中で最も大切なのは コア、すなわちボディの中核。 このため彼は、かつて1日1000回だった腹筋運動を 今では1200回に増やしたとのことで、メディシン・ボールを使ったり、ウェイトを使ったりしながら、腹筋と背筋を強化しているとのこと。
食事は70%ヴェジタリアンで、コーヒーは1日1杯。そのエネルギー・レベルは45歳に匹敵することを自ら自負しているのだった。

ESPNのボディ・イッシューでヌード撮影に応じた理由については、彼が 肥満をアメリカの深刻な社会問題として捉えているためで、 「現代社会は 脂肪と糖分が多い食事やジャンク・フードを食べ過ぎて、十分なエクササイズをしていない」というのが彼の考え。 カウチに寝転がってTVを見ながら 死ぬのを待っているような人々に、ボディ・イッシューを通じて 「身体を動かす大切さを 訴えたかった」 と語っているのだった。


ゲーリー・プレーヤーのコメントは、奇しくも今週アメリカで報じられた平均寿命にニュースを裏付けるもの。
その報道によれば、2010年のアメリカの平均寿命は男性が76歳で、40年前である1970年の67歳から9歳アップ。 女性の平均寿命は 81歳で、同じく1970年の76歳から5年延びているのだった。
しかしながら この平均寿命の伸び率は、日本やスイスといった長寿国に比べるとかなりスローで、 その原因となっているのが アメリカの深刻な肥満問題。

またアメリカの平均寿命で興味深いのは、国内の何処に暮らすかで その寿命に大きな差が出ることで、例えばアメリカ国内で男性の平均寿命が最も長いのは、ヴァージニア州フェアファックス郡で81歳。 これは2011年度の日本人男性の平均寿命よりも2年長い数字。
ところが そこから250マイル離れたウェスト・ヴァージニア州マクダウウェル郡に行けば、男性の平均寿命がアメリカ国内で 最も短い64歳となり、この数字はアフリカの貧困国家、ガンビアと同等であるという。

女性に関しては 最も平均寿命が長いのはカリフォルニア州マリン郡で85歳。これは 世界一長寿な日本人女性の2011年度の平均寿命に1年及ばない数字。 逆にアメリカ女性の平均寿命が最も短いのは ケンタッキー州ペリーで72歳。 これはベトナム人女性の平均寿命に等しいと指摘されているのだった。

平均寿命のデータは 肥満率と深い関わりを見せていて、ケンタッキー、ミシシッピー、ルイジアナ等、 典型的な南部の高脂肪、高塩分、高糖分、高カロリーの食事をしている州が、 確実に平均寿命が短くなっているけれど、これはすなわち、 不健康な食生活がまかり通る 肥満が多いコミュニティに属していると、 誰でも寿命が短くなるということ。
この数字が医療関係者にとってショックを与えているのは、アメリカが先進国の中で 最も医療に費やす出費が多い国家であると同時に、 医療リサーチでも世界をリードする存在であるためで、 最先端の医療を誇る経済大国の中に、 食べ物と医療が行き渡らない 貧困開発国と同等の平均寿命エリアがあるというのは、 常識では考え難いことなのだった。

そんなアメリカ人の死因のトップ3は、過去20年間 全く変わっていないとのことで、1位が心臓病、次いで肺がん、脳卒中。 そして成人が最も多く抱える健康問題は、腰痛というデータが得られているのだった。


今週は かつての激太りから すっかりスリムな姿になって スナップされたレディ・ガガも話題になっていたけれど、 短期間に体重が10キロ以上体重が増えた彼女が、「ルックスを気にせずに食べて、ヘルシーな今が一番幸せ!」と語り、 ファンに対しても 「どんなサイズでも誇りを持つように」と呼び掛けたのは、昨年9月のこと。
この時 彼女が華々しくスタートした 「ボディ・レヴォルーション2013」 のムーブメントは、いつの間にか消え失せてしまったけれど、 それは レディ・ガガ自身と彼女のファンの健康のためには 好ましいことと言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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