July 6 〜 July 13 2015

” Rich Gets Richer ”
今週の ”リッチ・ゲッツ・リッチアー ”


今週のアメリカでは、水曜にニューヨーク商品取引所のコンピューター・システムがダウンし、 70万件以上の取引がペンディングになったのに加えて、同じ日の朝にはユナイテッド航空の コンピューター・システムがダウン。全米の空港で、ユナイテッド航空機が足止め状態になっていたのだった。
これらは、その日のうちにハッキングが原因のトラブルではないと発表されていたけれど、 今週、アメリカ政府にとって深刻なハッキング・トラブルになっていたのが、連邦政府のコンピューターから職員の個人情報が 中国人ハッカーによって盗まれた事件。
これが最初に報じられた6月の時点では、「420万人の個人情報が流出した」 と伝えられていたけれど、今週明らかになっのたが その数が 実は2,150万件であったという新たな事実。 これを受けて、オバマ政権の内務省人事局のトップ、キャサリーン・アーチュレタが辞任に追いやられたと同時に、 簡単に盗まれるようなシステムに、全ての人事情報を入力していた政府側にも批判が集中していたのだった。

さて、ギリシャのデフォルト情勢を静観しているアメリカであるけれど、ギリシャからの移民が多いニューヨークでは、 母国の状況が少なからず影響を与えており、まずギリシャ・レストランの経営者達は 母国からチーズやオリーブ・オイル等の食材の 入手が難しくなっていることを嘆いている状況。一方、家族や親戚がギリシャに暮らす人々は、 アメリカから送金しようと思っても、銀行で送金が没収状態になって 家族に届かないことを危惧しているのだった。
そのギリシャの観光地では、米ドルのキャッシュの支払いを受けるビジネスがどんどん増えているとのこと。 投資家の間でも、現在は乱高下の激しい株式よりも 人気が高いのがボンドとUSドル。 したがって、ドル高はまだまだ続くと思われるけれど、そのドル高のお陰で 国内の原油&ガソリン価格は低下しており、 車社会、アメリカでは、このことは一般国民の可処分所得の増加を意味するもの。 車を複数所有する家庭では、現在のガソリン価格低下のお陰で、毎月600〜800ドル前後の可処分所得が増える計算になっているのだった。





ギリシャ情勢に話を戻せば、1月に急進左派のチプラス政権に変わって以来、大金持ちは直ぐに銀行のキャッシュをゴールドやジュエリー、 ニューヨークを含む海外の不動産等に投じたことが伝えられていたけれど、 春過ぎから 同様に 銀行のキャッシュで ベンツなどの高級車やロレックスの時計などを購入し始めたのが 小金持ちの人々。
これらのギリシャ国民が危惧していたのは、一足先の2013年に金融破たんに陥ったサイプレス(キプロス)に対する金融支援策で、 10万ユーロ以上の銀行預金に対して、一律9.9%が課税された措置。同様の政策が行われて 財産を税金で持っていかれるよりも、 金目の物に替えて、課税されないようにしようという考えが その背景にあるのだった。

したがってギリシャの富豪クラスは、とっくに財産を海外に移している訳であるけれど、 そんな中、今週ロンドンで行われたニッキー・ヒルトン&ジェームス・ロスチャイルドの盛大なウェディングのゲストとして 姿を見せて、メディアからの顰蹙を買ったのが、ギリシャのパウルス皇太子と夫人のマリー・シャンタル妃。
マリー・シャンタルは、父親がデューティー・フリー・ショップの共同創設者であるビリオネア、ロバート・ミラーであるため、 国民の税金で贅沢をしていると思う人は居ないものの、 自国の民が食べる物にも困っている時に、贅沢なウェディングで、ビリオネア仲間とパーティーに興じている様子は、 ニューヨーク・ポスト紙を始めとするメディアに皮肉られていたのだった。

ところで、ニッキー・ヒルトン&ジェームス・ロスチャイルドの結婚は、ファミリー総資産60億ドルのヒルトン家と、 ファミリー総資産160億ドルのロスチャイルド家の経済力の統合を意味するとも見られるもの。
ニッキーのワードローブは、ウェディング・ドレスから、デイタイムのカクテル・ドレスまで、全てヴァレンティノで、 特にウェディング・ドレスは オートクチュールで、そのお値段は5万ユーロ(約684万円)。 ウェディング・シューズは クリスチャン・ルブタンのカスタムメイドで、税込みで約2000ドル(約24万円)。

「Rich gets Richer / リッチ・ゲッツ・リッチアー」を絵に描いたような婚姻であるけれど、 前述のマリー・シャンタルの姉妹も、ビリオネアの娘として かつては 「Rich gets Richer」ウェディングで、知られた存在。 マリー・シャンタルの姉のピアは、ゲッティ・オイルの後継者、クリストファー・ゲティと結婚。 妹のアレクサンドラは、デザイナーのダイアン・フォン・ファーステンバーグの息子である金融マン、アレクザンダーと結婚。 (ちなみにダイアン・フォン・ファーステンバーグは、プリンス・イーゴン・オブ・ファーステンバーグの元妻で、1972年の離婚までは プリンセスを名乗った貴族)
ピアもアレクサンドラも共に、その後 離婚しているものの、ピア、マリー・シャンタル、アレクサンドラの3人は、 90年代半ばのニューヨークの社交界では、”ミラー・シスターズ”として、誰もが知る花形的存在になっていたのだった。




さて、今やギリシャは スーパーマーケットやドラッグ・ストアは空っぽ。貧しい人々の食料援助は寄付で賄われているけれど、 銀行が預金の引き出し制限を始めてからというもの、スープ・キッチンに食べ物を求めてやってくる人々の数は増える一方で、 既に需要に供給が追いつかない状態。このため既に多くのスープ・キッチンでは、 家賃が支払えない、仕事が無い等、本当に生活に困っている何らかの証明を見せない限り、 食料を支給しない方針に切り替えようとしているとのこと。
アメリカのメディアは、そんな日に日に悪化するギリシャの様子を 写真入り(写真上左)で報じているけれど、 「ギリシャかと思ったら、ニューヨークだった…」というのが、昨今のニューヨークにおけるホームレス増加を報じる写真(写真上右)。
ニューヨークにおけるホームレスの増加については、今週、ビル・デブラジオ市長も記者会見の席でその危惧を表明していたけれど、 このところ物乞いをするホームレスが増えていると言われるのが、アッパー・ウエストサイドのブロードウェイ沿い。 そして、ホームレスの寝床になっているのがイースト・ヴィレッジのトンプキン・スクエア。
1990年代初頭の経済不況の際にも、トンプキン・スクエアはホームレスの溜まり場になっていたけれど、 ジュリアーニ政権で、そのクリーンアップが図られ、市民の憩いの場に戻っていたのが同公園。
ところがここ6ヶ月ほどでホームレスが増えて、近隣の住人が「ここまで増えたのは初めて」という 数に達しているとのこと。 実際、ニューヨーク市のシェルターに暮らすホームレスの数は、5万8000人を超えて近年で最高のレベル。 それ以外にストリートにも3000人以上のホームレスが居ると指摘されるのがニューヨークの現状。
特にトンプキン・スクエアについては、薬物中毒等のジャンキーが増えているそうで、 近隣住人の中には、夜は同公園には近寄らないという人が増えているのだった。




ホームレスがここへ来て急激に増えているのは、ニューヨークの不動産価格の上昇に伴って 家賃が高騰し、 レントが払えない人々が増えているためで、 家族用のシェルターに暮らす人々の中には携帯電話を所持し、ホームレスではあっても、ジョブレスではない人が多いのが実情。 こうした人々は、子供を学校に送り届けてから 仕事に通うという、一見まともな生活をしながらも、家賃が高すぎて家が無い という状況に陥っているのだった。
そうかと思えば、ギリシャ人の大富豪が財産隠しのために購入するような高額コンドミニアムが どんどん増えているのが現在のニューヨークで、 目下 売りに出されている高額コンドミニアムのトレンドは、 ホテルとのコンプレックスという作り。 コンドミニアムの住人になれば、ジムやバー、ルーム・サービス等、 ホテルの施設やサービスの恩恵が受けられるという 至れり尽くせりのアメニティなのだった。

特に海外から投資をする人々は、 こうしたホテルとのコンプレックスになったコンドミニアムを好む傾向が 強まっているというけれど、自分で住んでいる間に物件価格が高騰する状況を狙っているニューヨーカーが、 今、狙いを定め始めたといわれるのが、ブルックリンのディトマス・パーク。 それと言うのも、女優のミッシェル・ウィリアムスがここに物件を購入したためなのだった。
ミッシェル・ウィリアムスは、ハリウッド女優でありながら ブルックリンに長く暮らしていることで知られる存在であるけれど、 彼女は2005年に ブルックリンのボーラムヒルのタウンハウスを360万ドル(約4億4000万円)で購入(写真上左)。 その後、婚約者の故ヒース・レジャーとそこに暮らしていたけれど、当時は近隣の人々も、不動産関係者も 「ハリウッド俳優のカップルが何故あんなところに家を買ったのか?」と 不思議がっていたのが同ロケーション。
ところがボーラムヒルは、ここ数年のブルックリン・ブームで 最も不動産価格がアップしたエリアの1つ。 彼女は購入から9年後の2014年に、その物件を 何と244%アップの 880万ドル(約10億8000万円)で売却しているのだった。

このようにブルックリンの今はパッとしないエリアの物件を購入して、じっくり暮らしながら値上がりを待つ状況を、 メディアはミッシェル・ウィリアム・エフェクト(ミッシェル・ウィリアム効果)と呼んでおり、 彼女が不動産の値上がりを見抜くパワーがあるとして、「彼女をフォローしてディトマス・パーク・エリアを買うのが硬い投資!」 とまで報じているのだった。
彼女が新たに購入したのは、築114年、全18室、8ベッドルームの庭付きの邸宅(写真上右)で、購入価格は245万ドル(約3億円)。 これが報じられた途端に、ディトマス・パークは投資性の高い物件を探す不動産ハンターの間で、 一躍ホットスポットになってしまったのだった。

ミッシェル・ウィリアムスが9年で6億円以上の儲けを得られるほどの不動産価格の高騰=レントの高騰が、 低収入の人々をホームレスに追いやるというのは皮肉なパラドックス。 そうかと思えば、ニッキー・ヒルトンは庶民の年収の手取りよりも高額なウェディング・ドレスで結婚しているけれど、 低所得者の暮らしが苦しければ 苦しいほど、富裕層が潤うというのは かつては開発途上国で顕著だった経済状況。
でもリーマン・ショック以降は、世界各国でこのシナリオが展開されているのは周知の事実なのだった。

Will New York 宿泊施設滞在



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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