July 12 〜 July 18 2010




” Aging Gracefully or Staying Young? ”



猛暑が続いているニューヨーク。今年は夏が暑いだけでなく、全米における1年を通じた平均気温も高くなっていることが伝えられているのだった。
そんな猛暑のニュースと共に 今週アメリカで最も大きく報じられていたのは上のニューヨーク・ポスト紙の表紙にフィーチャーされた3つのニュース。
一番左、ヤンキーズのオーナー、ジョージ・スタインブレナー氏死去のニュースはニューヨークのみならず、全米で大きく報じられたけれど、 それほどにユニークで、強烈なキャラクターであったのが同氏。 1973年に約8億円で買収したヤンキーズを2009年には1000億円フランチャイズに育て上げた熱血オーナーであったけれど、 37年間のオーナーシップでクビにしたマネージャーの数は20人以上。
その名言の中には「I will never have a heart attack. I give them. / 私は決して心臓発作は起こさない、人(=クビにする人物)に起こさせるだけ。」 というものがあったけれど、スタインブレナー氏の死因は心臓発作。
週末にはヤンキー・スタジアムで追悼イベントが行われており、ヤンキーズのプレーヤーはジョージ・スタインブレナー氏の頭文字「G.M.S.」と彼の愛称、 「The Boss」 の文字がフィーチャーされた追悼パッチを付けて今シーズン中プレーすることになっているのだった。

今週の最も明るいニュースとして報じられたのは、写真上中央、メキシコ湾で4月20日から続いていた原油流出事故で、 遂に流出を食い止めるキャップの装着に成功したというニュース。 でも政府とBP側では、現時点のテスト結果を慎重に見守る姿勢で、この方法が永久に流出を食い止めるのに有効であるかの結論は 先送りにしているのが実情。
加えてオイルの流出がストップしても、まだまだ環境汚染という大きな課題と問題が残る訳だけれど、 とりあえず問題解決へ向けての糸口としては、歓迎されるニュースとなっているのだった。

そして今週、エンターテイメント・メディアから通常のニュース番組までもが大きく報じていたのが写真上右側の、 俳優メル・ギブソンのドメスティック・アビュースを立証するテープ公開のニュース。
メル・ギブソンに虐待されたと被害者とされているのは、2009年4月に離婚したメル・ギブソンとの間に同年10月、子供をもうけたロシア人シンガー、 オクサナ・グリゴリエヴァ。 2人の関係は2010年4月に終わったことが伝えられていたけれど、 その後オクサナ側の訴えを受けて、ロサンジェルスの保安局がメル・ギブソンのドメスティック・アビュースについて捜査を開始。
そして、先週からメディアに出回り始めたのが オクサナ側が録音した メル・ギブソンとの電話会話テープで、 そこには放送禁止用語、人種差別用語を口走りながら オクサナをののしり続ける、怒りで常軌を逸したメル・ギブソンの声がフィーチャーされていたのだった。
今週までに、同様のテープが4本もメディアに公開されているけれど、録音テープは双方が同意の上に録音した場合以外、 すなわち盗聴テープであった場合は 裁判の証拠としては採用されないのがアメリカの法律。 したがって、このテープが原因でメル・ギブソンが虐待容疑で有罪になることは無いかもしれないけれど、テープのせいで 彼のイメージが過去2週間で地に落ちたのは言うまでもないこと。 しかもオクサナ側は、「メル・ギブソンに殴られた後」と銘打った写真まで公開しており、 今回の騒動は 一時 ビリオネアになる勢いで稼ぎ続けていたメル・ギブソンにとって、「キャリア自殺」とも言える問題になっているのだった。

今回のメル・ギブソンの事件と言い、タイガー・ウッズの愛人問題と言い、 「女性は証拠を保存する生き物」 という怖さを思い知った男性は少なくないと言われているけれど、どちらのケースも相手の女性を選ぶ時点から失敗しているというのが 私の個人的な感想なのだった。


さて、今週のニューヨーク・タイムズ木曜版のスタイル・セクションに掲載されていたのが 「Aging Gracefully, The French Way / エイジング・グレースフリー、ザ・フレンチ・ウェイ」というタイトルの記事。
この記事の中では、女性達が年齢と共に ボトックスやアイリフトなど、ありとあらゆることをトライしてエイジングと戦うタイプと、 写真下、一番右のジェーン・バーキンのようにエイジングを容認、もしくは放置して、自然に年齢を重ねるタイプに分かれるとしながらも、 カトリーヌ・ドヌーブ(写真下右から2番目)が66歳、ジュリエット・ビノッシュ(写真下一番左)が46歳、 イザベル・ユペール(写真下左から2番目)が57歳という例を挙げて、フランス人女性が優雅に美しくエイジングをしている 秘訣を分析していたのだった。


この記事によれば、フランス人女性が美しくエイジングをする秘訣のNo.1として挙げていたのが太らないこと。
実際、アメリカでは2004年に出版された「French Women Don't Get Fat / フレンチ・ウィメン・ドント・ゲット・ファット」という 本がベストセラーになったことがあったけれど、 これはダイエット本ではなくて、ライフスタイル・フィロソフィーのガイド本。 その中に書いてあったのは以下のような内容。


とは言っても、実際のところはファッションの都と言われるパリでさえ、昨今は女性達がどんどんカジュアルな装いをするようになっているし、 女性の平均体重がどんどん増えてきているのが現在のフランス。
なので、出版から6年が経過した後の現在、この本と同じライフスタイルがどれだけ存在して、どれだけ効力を持つのかは 今となっては微妙なところであるけれど、今週木曜のニューヨーク・タイムズ紙の記事では エイジングだけにフォーカスを絞り、フランス人女性のように優雅にエイジングする10のポイントを挙げていたのだった。
それは以下のようなもの。


私はこの10のポイントを読んで、納得する部分とそうでない部分があったけれど、 最も反論したくなった部分は、「5番目のジムに行くよりスパに行く、エクササイズはしない」という部分。
パリジェンヌのエクササイズである 「街をハイヒールで歩く」 だけでは、 メタボリズムが下がってきたら、とてもじゃないけれど体重を保てる運動量ではないし、 たとえスパでボディ・ラップをして体重を落としたとしても、ある程度の運動をしない限りは 心臓や血管にどんどん錆びが溜まって、骨や筋肉が弱まっていくのを野放しにするようなもの。
別にジムでのエクササイズにこだわる必要は無いと思うけれど、何らかのスポーツや、アウトドアのランニングなど、 自分で楽しめるアクティビティを見つけて身体を動かすのは、 単に身体の健康のためだけでなく、ハッピー・ホルモンと呼ばれるエンドーフィンを脳がリリースすることにより 心と精神の健康を保つためにも必要なこと。

上記の10ポイントだけを読んでいると、スキンケアやファッションで表面だけを整えているので 外からは優雅にエイジングをしているように見えても、 血液や内臓はどんどん老化を続けているから 身体の内側は優雅とは程遠いコンディションのように思えるのだった。

私は個人的にどうしてフランス人がそれほどまでにエクササイズやジムを嫌うのかは理解に苦しむけれど、その原因の 1つには「退屈で、やりたくないこと」、「辛くて苦しいこと」という先入観が非常に強いことが挙げられると思われるのだった。
これに対してアメリカ社会の、特に中流以上はトレーナーを雇ってジムでエクササイズをしたり、 ヨガやピラーテ、ダンスやボクシング等、様々なクラスに ワークアウトと交友関係を広げるための双方の目的で 通っていたりする。
そんなアメリカのフィットネス・メディアの見出しに登場するフレーズや トレーナー達のフィロソフィーというのは、「ステイング・ヤング」、もしくは 「アンチ・エイジング」。 優雅であっても 「エイジング=年を取る」というのは既に誤ったコンセプト。
アメリカにおけるエクササイズは「エイジングを遅らせる」 もしくは、「時計の針を戻すほどに若返る」ためのプログラムが組まれている場合が 非常に多く、そうした自然の摂理に逆らう行為を試みる以上、ある程度の努力やチャレンジが要求されるのは 当然と言えば当然と言えるものなのだった。

もちろん、フランス人女性の食べ物の量を制限して、アクティブなライフスタイルを送り、ストレスを貯めない、 スキンケアにお金と労力を使うというのは非常に正しいコンセプト。 そして、それらは先進国であれば何処の国の女性達でも心がけていると言えることで、アメリカとて例外ではないもの。
したがってフランス人女性の「エイジング・グレースフリー」 と アメリカ人女性の「ステイング・ヤング」の分岐点になっているポイントは、 ズバリ、エクササイズと言えるのだった。

5月 第 4 週目のこのコラム で、2009年のノーベル医学生理学賞を受賞した 若さと健康を保つ秘訣、テロメアとテロメラーゼについて書いたけれど、 老化によって短縮していくテロメアを修復するテロメラーゼは エクササイズによって働きが活発になるもの。 スパのラッピングやライポサクション(脂肪吸引)などでは働きが活発にならないもの。
また冷たいシャワーで皮膚細胞に送り込まれる酸素の量はエクササイズで送り込まれる酸素の量に比べれば極めて微量。 なので、フランス人女性のエイジング・グレースフリーの秘訣は、確かに優雅な響きで 比較的楽に実現できることだけれど、 やはり老化が進むことには変わりない訳で、若さを保ち、老化を防ごうと思ったら、エクササイズが必要なのは明らかな事実なのだった。

でも私はフランス人女優はハリウッド女優よりずっと素敵な女性が多いと思っていて、 先述のイザベル・ユペールなどは絶対ハリウッドからは出てこないタイプの名女優。時々物凄く老けて見えたり、 信じられないほど美しく見えたりするカメレオンのような存在。
先述のエイジングを容認しているジェーン・バーキンにしても(彼女はフランス女優と見なされているけれど、実はロンドン生まれのイギリス人)、 今ではすっかり普通のオバサンのような容姿になってしまったけれど、そんな状態でも彼女が出演した映画をみると、やはり とても魅力があることは否定できないのだった。
それでも、私は女性である限り、人間である限りは エイジングと戦うべき という考えの持ち主。
例えば写真左は、若かりし日のジェーン・バーキン。スタイルが良く、それだけに脱ぎっぷりも良かった彼女であるけれど、 これだけの美貌と 抜群の魅力を あっさりエイジングを理由にギブアップしてしまうのは私から見れば犯罪行為にさえ思えるもの。
私は、ジェーン・バーキンには今も魅力があることを認めながらも、 彼女が、カトリーヌ・ドヌーブほど不自然な美容整形を繰り返さなかったとしても、何らかの ”自己保存” を試みていたら、 きっと どうしようもなく魅力的な50歳、60歳になっていただろうと思えるだけに、 それが残念でならないのである。





Catch of the Week No. 2 July : 7月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 July : 7月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 June : 6月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 June : 6月 第 3 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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