July 15 〜 July 21, 2013

” Different Kind of Marriage ”


猛暑に見舞われた今週のアメリカであるけれど、メディアがその全米各地の猛暑と同様にレポートしていたのが、 全米各地で行なわれていた、トレイヴォン・マーティン事件の判決を不服とする抗議運動。
先週土曜日に、黒人ティーンエイジャー、トレヴォン・マーティンを正当防衛を理由に射殺したフロリダの民間警備、ジョージ・ジマーマンに対する 無罪判決が出て以来、各地でその判決に対する抗議デモが行なわれており、中でも 先週日曜夜のニューヨークのタイムズ・スクエアでは、人々が交通を遮断して練り歩き、 何人もの逮捕者が出ていたのだった。

その勢いは今週末も続いており、7月20日の土曜日にも全米の各都市で 抗議活動が行なわれていたことが報じられているけれど、 法律関係者は 一様に陪審員の判決を支持。その一方で メディアの中には、挙動不審を理由に黒人青年が警察や警備の調べを受けて、正当防衛を理由に射殺されるケースは、 トレイヴォン・マーティン以外にも 年間に約300件起こっていることから、 「同事件に関してのみ、判決を覆そうと抗議するのでは意味が無い」との指摘も聞かれているのだった。

例えば、ニューヨークで賛否両論を醸している NYPD(ニューヨーク市警察)のパトロールに 「Stop and Frisk /ストップ&フリスク」というものがあるけれど、 これは街中の警備にあたる警官が、挙動不審と認められた人物に対して、理由を明らかにする事無く、職務質問や身体検査を行なうことが出来るというもの。
ストップ&フリスクによってNYPDは、ドラッグや銃の不法所持を効率的に取り締まり、犯罪率の低下をもたらしてきたものの、 同時に問題視されてきたのが、レイシャル・プロファイリング(人種偏見に基づく捜査)。 すなわちストップ&フリスクが黒人層を中心に行なわれていること。
NYPDの言い分によれば、これは人種差別ではなくデータに基づく捜査。 というのもニューヨーク市の犯罪の78%を犯しているのが黒人層、特に若い男性。 その黒人層は ニューヨークの人口の約25%と言われるけれど、 このうち若い男性が占める割合が単純計算で その4分の1だとすると、 人口の8.25%に当たる特定の人種層が、全体の78%の犯罪を犯しているという計算になるのだった。
またブルックリン、ブロンクスといった犯罪多発地域は 黒人の居住者が多いこともあり、 NYPDの説明では 黒人層の挙動不審者を中心に ストップ&フリスクを行なうのは、理に適った捜査。
その結果、ストップ&フリスクの最中にポケットに手を入れた黒人少年が、銃を取り出そうとしたと思われて 警官に射殺される 事件等が起こっており、これはトレヴォン・マーティン事件と同様のシナリオ。 当然のことながら 警官は正当防衛が認められて、裁判になるどころか、逮捕さえされない状況がまかり通っているのだった。

世論の中には、こうした無益な犠牲者を防ぐためには、レイシャル・プロファイリングよりも むしろ 正当防衛に関する現行法の見直しが必要という声も少なくないのだった。
すなわち、現行の法律では「相手が銃を持っていると思った」だけで 相手を射殺してしまい、結果的に相手が武器を所持していなくても認められるのが正当防衛。 身の危険を感じただけで、相手を殺害する武器の使用が法律で認められてしまうのだった。
この正当防衛の法律を強烈にプロテクトしているのが、NRAことナショナル・ライフル・アソシエーション。 最も政府、特に共和党に対して強力なパワーを持つと同時に、アメリカの銃規制が一向に進まない最大の要因となっている団体。
したがって、ジェイZ、ビヨンセなど、様々なセレブリティも加わって抗議活動が行なわれているトレイヴォン・マーティン事件であるけれど、 「これによって何かが変わるか?」については、政治、法律のコメンテーターたちがこぞって 「期待できない」とはっきり述べているのが実情なのだった。



話は替わって、7月24日をもってニューヨークで同性婚が合法になってから2周年を迎えるけれど、 ピュー・リサーチによれば、2004年にマサチューセッツ州で 同性婚が合法になって以来、結婚に至った ゲイカップルの数は 約7万1200件。 またLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)人口のうち、52%が 結婚を希望していることが明らかになっているのだった。

そんな中、ウェディング・ウェブサイト ”The Knot / ザ・ノット”が 行なったアンケート調査結果によれば、 同じ ”ウェディング ”に 望む ゲイ・カップルとストレート・カップルでは、 そのプロセスや、セレモニー自体がかなり異なることが伝えられているのだった。
例えば ストレートのカップルの場合、男性がプロポーズをして婚約に至るのが通例。 婚約指輪を用意して、男性が跪いてプロポーズするというのが 最も伝統的なプロポーズで、 シャンパン・グラスの中にリングを入れてプロポーズするのも よく見られる光景。
でも、昨今では 友人とダンス・リハーサルをして プロポーズを ミュージカル仕立てにしたり、 セスナ機のフライト中や、スクーバ・ダイビングの最中にプロポーズするなど 手の込んだプロポーズを ビデオに収めて、ソーシャル・メディア上で公開するのがちょっとしたブーム。 今では スポーツ・イベントの電光掲示板を使ったプロポーズや、飛行機雲によるプロポーズ程度では、 誰も全く驚かなくなっているのだった。
これに対してゲイ・カップルの場合は、特にどちらが相手にプロポーズをするという訳ではなく、 2人で話し合って結婚を決めるというのがごく一般的なシナリオ。

またウェディングの費用については、ストレート・カップルの場合、伝統となっているのが花嫁の父親が全費用を負担するというもの。 良家であればあるほど、この傾向は今も顕著で、それもあって花嫁が フラワー・アレンジから、 ウェディング・ケーキなど詳細に至るまで、自分が幼い頃から描いてきた理想通りに企画するのが ヘテロセクシャルのウェディング。
現時点で 約60%のストレート・カップルのウェディングが 花嫁側の負担で行なわれており、残りの40%が費用折半、もしくは新郎側の負担になっているのだった。
でもゲイ・カップルのウェディングにおいては、その86%が コスト折半。 残りの16%は、収入 もしくは財産の多い側の負担というのが一般的であるという。

ウェディング・セレモニー自体で、ストレート・カップルとゲイ・カップルが異なる点は、 まずヴァージン・ロードを歩く際に ストレート・カップルの 74%が 家族によってエスコートされるのに対して、 ゲイ・カップルの場合、家族がエスコートするケースは その半分以下の35%。 殆どの場合、友人によるエスコートになるという。
またストレート・カップルが宗教的なセレモニーを行なう傾向が強いのに対して、 ゲイ・カップルは ”ジャスティス・オブ・ピース”と呼ばれる治安判事にセレモニーの執行を委ね、 結婚の宣誓についても、宗教とは無関係に自ら宣誓文を作成して 誓い合うケースが多くなっているのだった。

さらに婚姻が成立した後、ストレート・カップルの場合 76%の花嫁が新郎のラスト・ネームを名乗るのに対して、 ゲイ・カップルの場合は、68%が お互いのラスト・ネームをキープする という調査結果が得られているのだった。

すなわち よりトラディショナルで、家族に囲まれた宗教的なウェディングを行なっているのがストレート・カップル、 交友関係中心のゲストで、カジュアルかつ、モダンな結婚をしているのがゲイ・カップルということになっているのだった。


離婚が多いアメリカでは、ストレート・カップルについては、これまでありとあらゆる調査データが出され、 結婚生活や恋愛関係の指南本が数え切れないほど登場しているのは周知の事実。 でもゲイ・カップルについては、その実生活や実態が 驚くほどリサーチされていないと同時に、知られていないのが実情。
そんな中、ナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルスが 2000年から10年に渡って、 合計1000組のゲイ・カップルとストレート・カップルを追跡調査した結果を、つい最近になって発表しているのだった。

調査対象の中には 10年間に別れたカップルもあり、最終的に残ったのは約750組のカップル。 調査がスタートした2000年は、ヴァーモント州がアメリカ史上初めて ゲイカップルの シビル・ユニオン(法的に認められたパートナー関係)の合法化に踏み切った年なのだった。

その調査結果によれば、ゲイ・カップルとストレート・カップルを比較して確実に言えるのは、 ゲイ・カップルの方が幸福度が高い一方で、別れる確率も高いということ。
ゲイ・カップルの幸福度を裏付けるデータとしては、愛情面、性生活において ゲイカップルの方がストレート・カップルよりも満足度が高いこと。 そして カップルとしての親密度が高いことが挙げられているけれど、 この要因として社会学者が分析するのは、「同性同士の方がお互いの考えていることを理解し易く、ミス・コミュニケーションが少ない」ということ。 異性間のカップルにありがちな、性別による価値観や考え方の違い、それを乗り越えるための妥協や歩み寄りを必要しない分、 同性カップルの方が 信頼 や 精神的絆 の強い関係を築く傾向にあることが指摘されているのだった。

加えてゲイ・カップルは、 ストレート・カップルのように 伝統や社会的な一般概念に捉われることなく、 自分達に合った関係を築くことが出来るのも、幸福度が高い要因。
ストレート・カップルの場合、「男性の方が高学歴で高収入であるべき」とか、「家事や育児は主に女性の仕事」というような 概念に捉われて、カップルが不仲になることが非常に多いのに対し、 ゲイ・カップルについては そうしたルールや概念が存在していないため、お互いに合った暮らし方を 自分達で模索できるという点で、余分なフラストレーションやストレスを感じずに済むと言われているのだった。

さらにゲイ・カップルは、 ストレート・カップルに比べて子供が居る確率、住宅ローンを抱える確率、 お互いの家族がカップルの生活に介入してくるケースが極めて少ないことが挙げられており。 ”子供”、”経済問題”、”義理の家族との関係” というのは、ストレート・カップルが離婚に至る理由の上位を占めているもの。
したがって、ゲイ・カップルはお互いを理解し易いだけでなく、カップルが不仲になる要因が極めて少ない状態で 関係を続けられることが、その幸福度に繋がっていると指摘されているのだった。

でも、一度関係が上手く行かなくなった場合に、少なくともこれまでは いとも簡単に別れることが出来たのがゲイ・カップル。
先月 連邦最高裁が、男女間の婚姻のみを結婚関係と認める法令、通称 ”DOMA / ドーマ” に違憲判決を下すまで、 ゲイ・カップルに対しては アメリカ合衆国の法律が 結婚にも離婚にも適用されることが無かったので、 一度別れると決めたら、荷物を纏めて出て行くだけのケースが非常に多かったのが ゲイ・カップル。
すなわち ゲイ・カップルの方が カップルの幸福度が高いのは、不幸な状態で 無理に関係を続けないことも その大きな要因になっているのだった。

ゲイ・カップルとストレート・カップルに共通して言えるのは、結婚、もしくはシビル・ユニオン等、 法的な手続を踏んだ関係の方が、カップルとして長続きするということ。
でもストレート・カップルにおいては、その関係の長さが 幸福度の指針にはならないこともデータに現れており 既婚女性の30%以上は、経済的に自立できないことを理由に離婚せずに我慢する傾向にあるという。 経済面以外でも、子供の問題や社会的プレッシャー、離婚手続の難しさを理由に、不幸な結婚生活を続けるストレート・カップルは 決して少なくないことが指摘されているのだった。



それとは別に、数週間前に別離が報じられたのが 俳優のジョージ・クルーニーと元女子プロレスラーのステーシー・キーブラー(写真上)であるけれど、 2人が交際していたのは約1年半。
その間、2回のオスカーを含む 数々の授賞式イベントで、ジョージ・クルーニーのアーム・キャンディ(エスコート相手として 華になるパートナーのこと)を 務めた彼女であるけれど、「子供を生んで、自分の家族を築きたいという」という理由から、 結婚の意志が全く無い ジョージ・クルーニーとの別れを決意。彼女から別れを言い渡したことが報じられているのだった。
でも、このケースで驚くべきは、ステーシーがクルーニーから 約10億円の手切れボーナスを受取るという事実。 通常、手切れ金は別れたい方が相手に対して支払うものであるけれど、ジョージ・クルーニーの場合、最初から結婚の意志が全く無いことを 明らかにした交際。 彼と付き合う女性に 結婚や出産の願望がある場合、結婚の意志が無い彼のために 若く、美しい時期を 費やすことになる訳で、その慰謝料と 彼のプライバシーの口止め料的な意味をこめて ステーシーに支払われるといわれるのが 10億円の手切れボーナスなのだった。

このニュースを聞いて、私の女友達は こぞってジョージ・クルーニーとの交際を希望していたけれど、 結婚することなく、ここまでフェアに扱ってもらえるのはかなり珍しい例。
でも 結婚するとなれば メガ・リッチのビジネスマンやセレブリティの場合、トム・クルーズ、タイガー・ウッズ、もっとも最近ではマイケル・ジョーダンのように、 プリナップ(婚前にサインする財産分与の協約書)の段階で 結婚1年に対して1億円支払い、もしくは5年の結婚で10億円など、 離婚慰謝料をビジネス年俸のように設定するケースは 決して少なくないのだった。

前述のDOMA/ドーマに話を戻せば、そもそも 「ゲイの婚姻をアメリカ合衆国が認めない」という この法令が 最高裁で違憲判決を受けるに至ったのは、 レズビアンの伴侶に先立たれたニューヨーカー、エディス・ウィンザーが、 その伴侶の財産相続に当たって IRS(国税局)に婚姻関係を認めてもらえず、 日本円にして3600万円もの相続税の支払いを命じられたことを不服として 訴訟を起したのがきっかけ。
エディス・ウィンザーは、「ヘテロ・セクシャルなら、1週間も一緒に暮らしたことが無い、形だけの夫婦でも、 伴侶としての 税制の恩恵を受けるのに、本当に愛し合って 長年一緒に暮らして来たカップルが、ゲイだからと言って差別されるのはおかしい」と主張し続けてきたけれど、 実際のところドーマの違憲判決で 最も大きな違いが出ると指摘されるのが金銭面。
ドーマが覆されたことによって、相続税率もさることながら、ゲイカップルにも適用されることになるのが伴侶の年金や、兵役恩給等の受け取り。

そう考えると 今の時代における結婚というものは 愛情関係もさることながら、カップルの金銭面の法的保証やプロテクションを得るためのシステム という側面が大きいと言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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